頭痛で悩む女性

頭痛の漢方とツボを4体質別に解説します(堀口メソッド)

著者:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2025-09-11

頭痛の漢方薬(体質別)
湿痰(しったん)<緊張型>
湿熱(しつねつ)<緊張型>
血瘀(けつお)<片頭痛型>

説明者:堀口和彦 | インタビュー:KanpoNow 横山伸行

動画インタビュー

頭痛では、大きく分けると緊張型と片頭痛型の二つに分けられると思います。

Ⅰ 緊張型

緊張型というのは、緊張が原因でいわゆる肩こりや体のコリ、緊張、こういったものが頭痛を起こします。よく肩こりと頭痛が連動してくる方がいますが、ほとんどが緊張型です。

漢方治療の方向としては、筋肉の緊張をほぐすということになり、元の原因を取り除くことに注力します。例えば重要になってくるのが体の中の「水分の循環」です。水分というのは、体液やリンパ液を指します。

それらの巡りが悪くなったり、不足していたり、ときには余っていたりすることが原因になります。そこを見分けて、体の緊張や筋肉の緊張を緩めるようなお薬を使っていきます。

Ⅱ 片頭痛型

もう一つの方は、片頭痛タイプです。体の中の血管がたくさんありますが、特に頭になるんですが、この頭の側頭部の血管が拡張し、三叉神経(さんさしんけい)が通っているのですが、その神経に血管が触れてしまうのです。

それによって、ズキンズキンと脈打つような頭痛が片頭痛の特徴です。そういった頭痛の場合は、漢方的には血管が関与していると考えます。

血液である、漢方では血(けつ)といいますが、その血液の状態を見分けます。たくさんあるのか、不足しているのか、あるいは循環がいいのか悪いのか、体内の血の状態をみて頭痛を緩和していくのです。

ここからは、体質別にさらに具体的に説明いたします。

湿痰体質

緊張型のところで水のことをお話しましたが、そのタイプの方で水が多いタイプを湿痰(しったん)といいます。水=湿が余って停滞し、水の新陳代謝が低下している状態です。

そういったタイプの方には、胃腸に注目します。胃腸は水の代謝を上げるのにとても重要な臓器で、特に胃腸の働きが弱っているタイプの方が頭痛を起こした場合がこれに該当します。

そういう方に一番よく使うのは、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)という漢方薬です。

胃腸が弱いことから、立ちくらみをしたり軽くめまいがしたり、重いような頭痛である頭重があるようなタイプの方によく使います。

湿熱体質

もう一つの緊張型は、湿が余っていてかつ熱を持つタイプです。熱とは炎症のことで、そういうタイプの方には、体の中の熱をとってあげつつ水の循環を良くするという事が必要になってきます。

こういう方によく使うのは、五苓散(ごれいさん)という漢方薬です。

水の代謝を良くするお薬でむくみや、胃腸が弱く下痢をしたりするようなタイプの方にも使います。

血瘀体質

片頭痛型の方です。血液の問題が多いのですが、一つ目が血瘀(けつお)と呼んでいます。血液の循環が悪い、しかも滞り悪い血が停滞していて、疲労物質が溜まっているタイプの方です。

このタイプで代表的な漢方薬は、桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがんりょう)になります。

このお薬は生理痛や生理で頭が痛くなったりするタイプの方によく使います。女性の方で生理と一緒に頭痛や肩こりが来るタイプの方、生理前に肩がこってくるタイプにおすすめです。

血虚体質

もう一つの片頭痛型は、血が不足しているタイプで、血虚(けっきょ)といいます。このタイプの方は血液が少ないのが理由で、ときに血液をもっと流そうとして血管を広げてしまうのです。

これは自律神経の働きでやっているのですが、エラーを起こして血が不足しているのに空回りするように血管が開いてしまうのです。このことから血管が三叉神経に触れたりして片頭痛を引き起こしてしまうのです。

こういうタイプの方には、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)という漢方薬を使います。

この中に入っている「呉茱萸(ごしゅゆ)」というミカン科の果実を用いた生薬があります。これは開いた血管を締めるような働きがあります。苦い味がするのですが血管を締める作用があります。

併せて「当帰(とうき)」という血を補う成分も入っており、血の不足分を増やし、血の流れを良くして血管を締めてあげる作用があります。貧血気味の方や冷え性で頭痛や肩こりをお持ちの方におすすめです。

頭痛に有効なツボ

後渓(こうけい)

特に緊張型タイプの頭痛の方で、肩こりなども一緒にあるタイプの方におすすめなのが手の小指側の側面にある「後渓(こうけい)」というツボです。

ここを強めに押して下さい。グッと痛いぐらいに押してください。手の方から後ろを通って後頭部に行く膀胱経の経絡になります。後頭部から側面の方もいきます。肩こりや首の筋のこり、首がよく回らないときにも使えます。

中渚(ちゅうしょ)

中渚(ちゅうしょ)の位置

もう一つは片頭痛でこめかみ辺りが痛いタイプの方には、「中渚(ちゅうしょ)」というツボがおすすめです。

これは三焦経という経絡上にあります。小指と薬指の間です。V字の部分、骨と骨の間をグーッと押すと痛いと思いますが、そこです。三焦経の経絡は、首から耳の周りを通ってこめかみに行きますので、こめかみの周辺を緩める、緊張感を取るような作用が期待できます。

豊隆(ほうりゅう)

もう一つは、胃腸が弱いタイプで、むくみやめまいもある頭痛のタイプの方におすすめなツボは、「豊隆(ほうりゅう)」です。膝と足首の間ぐらいです。むくむタイプの方はぽっちゃりしてきます。押すと引っ込みます。頭が重いような感じの方は、強く押してください。お灸もおすすめです。

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FAQ(よくあるご質問)

頭痛の「危険なサイン」は?
突然の激しい頭痛、発熱・項部硬直、麻痺・ろれつ不良、意識障害、頭部外傷後の悪化、50歳以降の新規発症などは至急受診を。
参考:MSDマニュアル:頭痛の概要日本頭痛学会
生活習慣でできる対策は?
睡眠・食事リズムの安定、脱水予防、長時間の同一姿勢を避ける、光・音刺激の調整、カフェイン過剰を避けるなど。
参考:MSDマニュアル:頭痛(一般向け)
市販薬や病院の治療は?
緊張型には鎮痛薬、片頭痛にはトリプタンなど。頻用による薬剤使用過多頭痛(MOH)に注意が必要です。
参考:MSDマニュアル:薬剤使用過多頭痛

その他FAQ

受診の目安

  • 突然の激痛(雷鳴頭痛)、発熱・項部硬直、けいれん、意識障害などを伴う場合
  • 頭部外傷後の頭痛悪化、神経症状(片側麻痺・しびれ・視覚異常・ろれつ不良)を伴う場合
  • 50歳以降に新しく出現した頭痛、がん/免疫不全の既往がある場合、妊娠中の重い頭痛等

参考:MSDマニュアル:頭痛の概要日本頭痛学会

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。持病や服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は自己判断で服用せず、事前にご相談ください。

著者プロフィール

堀口 和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)

光和堂薬局 院長

埼玉県生まれ
東京理科大学薬学部卒
同大学院修士課程修了
総合漢方研究会 学術部員
元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員
公益法人埼玉県鍼灸師会会員
さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)
一般財団法人日本漢方連盟 会員
著書:やさしい漢方入門(健友館)、パプアニューギニアの薬草文化(アボック社)、体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐(万来舎)など

販売薬局:光和堂薬局(さいたま市西区指扇領別所326-1)・許可(さ局)第7105号。

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