阿膠(あきょう)とは?貧血・乾燥・出血傾向に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年6月28日 監修:堀口和彦
阿膠(あきょう)

阿膠(あきょう)は、ウマ科ロバの皮などを長時間煮詰めて作る、動物由来の膠(にかわ)です。主成分はコラーゲン由来のゼラチンで、漢方では「血を養い、潤いを与え、出血を抑える」生薬として、貧血傾向、乾いた咳、皮膚や粘膜の乾燥、不正出血などのケアに用いられてきました。KanpoNowでは、この生薬を「血を補い、体に潤いを巡らせる、滋養性の動物生薬」として整理します。

まずは要点
  • 阿膠は、ロバの皮などを煮詰めて作る動物由来の膠(にかわ)からつくられる生薬です
  • 主成分はゼラチン(コラーゲン由来)で、アミノ酸を豊富に含みます
  • 漢方では、血を養う(滋陰補血)、出血を抑える(止血)、乾きを潤す(潤燥)働きで用いられます
  • 粘性が高く消化に負担がかかるため、胃腸が弱い体質(脾胃虚弱)には不向きとされます

動物由来の生薬のため、体質や既往によっては合わないことがあります。服用後に胃腸症状や皮膚症状が出た場合は、自己判断で続けず専門家に相談してください。

阿膠とは

阿膠(あきょう)は、ウマ科のロバの皮を主原料に、長時間かけて煮出し、不純物を除いて濃縮・乾燥させた膠(にかわ)です。古くは中国・山東省の阿県(あけん)の水を用いて作られたことが名の由来とされ、滋養に富む生薬として珍重されてきました。

漢方薬剤師の視点では、阿膠は単なる「滋養強壮の素材」ではありません。血を養い(補血)、体に潤いを与え(滋陰)、出血を抑える(止血)という三つの働きを併せ持ち、血の不足と乾燥が重なった状態を内側から立て直す生薬として位置づけられます。

ポイント:阿膠は「血を養う」「潤いを与える」「出血を抑える」を同時に行う動物生薬です。貧血傾向、乾いた咳、皮膚・粘膜の乾き、不正出血などが重なるタイプに用いられます。

基原・成分データ

阿膠の基本データを整理します。動物由来であること、主成分がゼラチンであることが、働きと注意点の両方を理解する鍵になります。

阿膠(アキョウ)の生薬
阿膠の基礎データ
動物由来の膠(にかわ)で、主成分はコラーゲン由来のゼラチン。血を養い潤いを与える滋養性の生薬です。
読み アキョウ
基原・由来 ウマ科ロバの皮(ほか骨・腱など)を加熱抽出し、濃縮・乾燥した膠 *①②
主成分 ゼラチン(コラーゲン由来)、アミノ酸など *①②

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。阿膠は、甘く穏やかで、肺・肝・腎を潤し養う方向に働きます。

味(五味)

「甘」は滋養し不足を補う味、「鹹(かん)」はかたまりをやわらげ潤す方向の味とされます。

性(四気)

「平」は、温めも冷ましもしない穏やかな性質で、幅広い体質に合わせやすい傾向です。

帰経(働きかける臓腑)

肺の潤い、肝の血、腎の陰を養う方向に働きます。乾いた咳(肺)、血の不足(肝)、潤い不足(腎)に関わります。

漢方的な働きの軸

阿膠の働きは、大きく三つの軸で整理できます。血を養う軸、出血を抑える軸、乾きを潤す軸が重なり、血の不足と乾燥が同時に起きた状態を立て直します。

血を養う軸 滋陰補血 不足した血と潤いを補い、貧血傾向、顔色の悪さ、めまい、動悸、不眠などを支えます。
出血を抑える軸 止血 血を養いながら出血を抑え、不正出血、月経過多、血便など、血が漏れ出る不調のケアに用いられます。
乾きを潤す軸 潤燥 肺や粘膜に潤いを与え、乾いた咳、のどや肌の乾燥に伴う不調を和らげる方向に働きます。
一言でいうと:阿膠は「血を養い、潤いを与え、出血を抑える」生薬です。血の不足と乾燥が重なり、貧血・乾いた咳・不正出血などが同時に出るタイプに輪郭がはっきりします。

伝統的な使われ方

阿膠は古くから、滋陰補血・止血・潤燥を目的に多くの処方へ配合されてきました。とくに、血の不足を補いながら出血を抑える働きから、婦人科系の不正出血や月経過多のケアに用いられた歴史があります。

また、肺や粘膜を潤す働きから、乾いた咳や、のど・肌・粘膜の乾燥に伴う不調にも使われました。血を養う働きと潤いを与える働きを併せ持つため、「血虚」と「陰虚(潤い不足)」が重なった状態に向く生薬とされています。

形状・味・使われ方の体感

阿膠は、見た目・性質・使われ方に独特の特徴があります。固形の膠を砕いたり溶かしたりして用いる点が、植物性の生薬とは異なります。

琥珀色の固形の膠

つやのある黒褐色〜琥珀色の固形のかたまり。砕くと、ガラスのように透明感のある破片になります。

ほのかな甘みとコク

味は甘く、独特のコクがあります。動物由来らしい風味があり、好みが分かれることもあります。

溶かして用いる

煎じ液や湯に溶かして服用するのが伝統的。粘性が高く、ほかの生薬とは扱いが異なります。

体質別の向き・不向き

阿膠は滋養性が高い一方、消化に負担がかかる生薬です。血の不足や乾燥があるかどうかに加え、胃腸の強さを見極めることが大切です。

血虚+陰虚(血の不足と乾燥)

貧血傾向、顔色の悪さ、めまい、動悸に加え、乾いた咳や肌・粘膜の乾燥が重なるタイプに向きます。阿膠の中心的な体質像です。

判断ポイント:血の不足と乾きが同時にある。

出血傾向(不正出血・月経過多)

血を養いながら出血を抑える働きから、婦人科系の不正出血や月経過多のケアで候補になります。出血が続く場合は医療機関での確認も大切です。

判断ポイント:血の不足を伴う出血傾向がある。

胃腸がやや弱い体質

粘性が高く消化に負担がかかるため、胃腸がやや弱い方では、胃もたれや食欲低下が出ることがあります。少量から様子を見るか、専門家に相談してください。

判断ポイント:胃もたれが出たら量や継続を相談。
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脾胃虚弱が強い・湿が多い体質

胃腸が著しく弱い方、食欲不振や下痢が続く方、体に余分な水分(湿)がたまりやすい方では、阿膠の粘性が負担となり、不向きとされます。

判断ポイント:消化力が弱い・湿が多いなら避ける。

安全性と受診の目安

阿膠は粘性が高く消化に負担がかかるため、胃腸が弱い方では不向きとされます(腹部膨満・下痢・食欲低下などに注意)。また動物由来のため、体質や既往によっては合わないこともあります。

  • すぐに相談:服用後に腹痛・下痢など消化器症状が続いた、皮疹・かゆみなどが出た
  • 服薬中:持病がある、ほかの薬を併用している場合は、自己判断での継続・中止を避け、専門家に相談する
すぐ相談:出血が続く、強い貧血症状がある、服用後に消化器症状や皮膚症状が出た場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

阿膠が気になる方は、貧血、口や肌の乾き、乾いた咳、生理不順との関係も確認すると理解が深まります。

阿膠を含む漢方薬

阿膠は、血を養い潤いを与える働きから、婦人科系や滋養を目的とした処方に配合されます。同じ阿膠を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。

よくある質問

Q. 阿膠はどんな体質に向きますか?

貧血傾向や乾燥(血虚・陰虚)が重なるタイプのケアに用いられます。血を養いながら潤いを与える働きがあるため、血の不足と乾きが同時に出る方に向きます。

Q. 成分は何ですか?

主成分はゼラチン(コラーゲン由来)で、アミノ酸などを含みます。ロバの皮などを長時間煮詰めて作る、動物由来の膠(にかわ)です。

Q. 胃腸が弱くても飲めますか?

阿膠は粘性が高く消化に負担がかかるため、胃腸が著しく弱い方(脾胃虚弱)には不向きとされます。胃もたれや食欲低下が出る場合は、量や継続について専門家に相談してください。

Q. どのように服用しますか?

伝統的には、煎じ液や湯に溶かして服用します。市販の漢方製剤では、阿膠を含む処方として顆粒や錠剤の形で利用できます。製品の用法・用量に従ってください。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

阿膠は、血を養い潤いを与える生薬ですが、単独で使うものではなく、処方の一部として体質に合わせて用いられます。自分の体質に阿膠を含む処方が合うのか、別の方向が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。出血が続く、強い貧血症状がある、日常生活に支障があるといった場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。