附子(ぶし)とは?強い冷えや腹痛下痢、関節痛・神経痛に使う生薬を体質別に解説

附子(ぶし)は、トリカブト類の塊根の子根を加工(減毒)した生薬です。体を温め寒さを散らす働き(温陽散寒)、消耗した陽気を回復させる働き(回陽救逆)、痛みを止める働き(止痛)から、強い冷え、腹痛・下痢、関節痛・神経痛などのケアに用いられてきました。有毒生薬を加工処理して減毒した、力の強い温裏薬です。KanpoNowでは、この生薬を「体の芯を温め、重い冷えと痛みを立て直す生薬」として整理します。
- 附子(ぶし)はハナトリカブト(Aconitum carmichaelii Debeaux)などの塊根の子根を加工したもので、日本薬局方に収載されています*①②
- 主成分はアコニチン、メサコニチン等のジテルペンアルカロイドで、加工によりベンゾイルメサコニン等へ変化します*②③
- 漢方では、体を温め寒さを散らし(温陽散寒)、消耗した陽気を回復させ(回陽救逆)、痛みを止める(止痛)働きで用いられます*①②③
- 有毒生薬です。自己調製や過量は大変危険で、口唇のしびれ・悪心、動悸・不整脈など中毒症状に注意します
附子は乾姜・人参・甘草や桂枝・芍薬、麻黄・細辛など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。医療者の指導の下で用い、長期・多量は避けます。自己判断での使用や粉末の単独投与は絶対に避けてください。
附子とは
附子(ぶし)は、キンポウゲ科トリカブト類(Aconitum carmichaelii Debeauxなど)の塊根の子根を加工(減毒)させた生薬です。日本薬局方に収載され、加工ブシ末として製剤化されることもあります。トリカブトは有毒植物として知られますが、附子は加工処理により毒性を減じたうえで漢方処方に配合される、重要な温裏薬です。真武湯や八味地黄丸などにも配合されています。
漢方薬剤師の視点では、附子は「回陽救逆薬(消耗した陽気を回復させる生薬)」に分類されます。陽虚・寒証による四肢厥冷、腹痛・下痢、むくみや腰膝冷痛、関節痛・神経痛などに用いられてきました。乾姜・人参・甘草等と組み合わせて脾胃を温め(理中丸類)、桂枝・芍薬等とともに気血を調え(桂枝加附子湯)、麻黄・細辛と配合して寒飲の咳をさばきます(麻黄附子細辛湯)。
基原・成分データ
附子の基本データを整理します。トリカブト類の子根を加工すること、アコニチンなどの成分が加工により変化することが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。附子は、辛く、非常に強く温める性質(大熱)で、有毒であり、心・腎・脾に働きます。
「辛」は強く発散させ温める味とされます。体の芯まで冷えを散らし、消耗した陽気を回復させる働きと結びつきます。
「大熱」は非常に強く温める性質で、陽虚・寒証による重い冷えを、力強くあたためる方向に働きます。有毒生薬のため取り扱いには注意が必要です。
心に働いて陽気を回復させ、腎・脾に働いて四肢厥冷・腹痛下痢・腰膝冷痛に関わります。
漢方的な働きの軸
附子の働きは、大きく三つの軸で整理できます。体を温め寒さを散らす軸、消耗した陽気を回復させる軸、痛みを止める軸が重なり、強い冷え・腹痛下痢・関節痛を整えます。
伝統的な使われ方
附子は古くから、温陽散寒・回陽救逆・止痛を目的に用いられてきました。陽虚・寒証による四肢厥冷、腹痛・下痢、むくみや腰膝冷痛、関節痛・神経痛などのケアに用いられてきた歴史があります。附子は心・腎・脾に入り、有毒生薬を加工処理して減毒したうえで配合される、力の強い温裏薬です。
芎帰調血飲などと組み合わせて月経不順・産後の神経症を整える処方(芎帰調血飲第一加減)、朮と組み合わせて冷え・関節痛・神経痛を整える処方(桂枝加朮附湯)に配合されます。また、桂枝芍薬知母湯・香砂六君子湯などにも用いられます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
附子は、トリカブト類の子根ならではの特徴をもつ生薬です。
加工処理された子根
トリカブトの塊根の子根を加工処理したもの。生の状態では有毒であるため、必ず減毒加工を経たものが用いられます。
辛みが強く大熱性
味は辛みが強く、性質は大熱。体の芯まで力強くあたためる方向に働きますが、有毒生薬のため単独での使用は避けます。
他の生薬と組み合わせて使用
乾姜・人参・甘草や桂枝・芍薬、麻黄・細辛など、他の温裏薬・補気薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。
体質別の向き・不向き
附子は体の芯を温める力の強い生薬です。陽虚・寒証の重い冷えがあるか、逆に熱証や妊娠中でないかを見極めることが大切です。
強い冷え・四肢厥冷タイプ
陽虚・寒証による四肢厥冷、強い冷えがみられるタイプに向きます。附子の中心的な使い道です。
判断ポイント:陽虚・寒証による強い冷え。関節痛・神経痛タイプ
腰膝冷痛、関節痛・神経痛のケアに用いられてきました。
判断ポイント:止痛の働き。腹痛・下痢タイプ
腹痛・下痢には、乾姜・人参・甘草など他の生薬と組み合わせて用います。
判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。熱証・自己調製のタイプ
有毒生薬のため、自己調製や過量は大変危険です。熱証の方には基本的に用いず、必ず医療者の指導の下で用います。
判断ポイント:自己判断での使用は厳禁。安全性と受診の目安
附子は有毒生薬です。自己調製や過量は大変危険で、口唇のしびれ・悪心、動悸・不整脈など中毒症状に注意します。医療者の指導の下で用い、長期・多量は避けます。しびれ・口の灼熱感、吐き気・動悸・めまいなどが現れたらすぐ中止し受診してください。既往症(心疾患・腎疾患)や多剤併用中は必ず専門家に相談してください。自己判断での使用や粉末の単独投与は絶対に避けます。
- すぐに相談:動悸・息切れ、不整脈、激しいしびれやけいれん、意識障害
- 服薬中:指示外用量・自己加工は不可。症状が改善しない場合は受診する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
附子が気になる方は、冷え、しびれとの関係も確認すると理解が深まります。
附子を含む漢方薬
附子は、強い冷え・関節痛・神経痛を整える処方に配合されます。附子の体の芯を温める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 麻黄附子細辛湯と四逆湯の使い分けは?
麻黄附子細辛湯は寒冷感の強い感冒初期などで悪寒・咳・水様鼻汁に用い、四逆湯は四肢厥冷・下痢・腹痛などの重い虚寒に対応します。両方とも附子を要薬とします。
Q. トリカブトの毒性は大丈夫ですか?
附子は加工処理により毒性を減じたうえで漢方処方に配合されます。ただし有毒生薬であることに変わりはなく、自己調製や過量は大変危険なため、必ず医療者の指導の下で用いる必要があります。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
陽虚・寒証(手足の冷え、腹痛・下痢、むくみ、腰膝冷痛、関節痛)に向きます。体質に応じて乾姜・人参・桂枝・細辛などと組み合わせます。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
附子は、体の芯を温め重い冷えと痛みを立て直す生薬ですが、冷えや痛みの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。動悸・息切れ、不整脈、激しいしびれやけいれんがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。有毒生薬のため自己判断での使用や自己加工は絶対に避け、症状が長引く・悪化する場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。