附子(ぶし)

まずは要点

  • どんな生薬? 附子(ぶし)はトリカブト類(Aconitum spp.)の子根を加工(減毒)した生薬で、温陽散寒・回陽救逆・止痛のはたらきが知られます。強い冷えや手足の冷感、腹痛・下痢、関節痛など「寒」による症状の改善を狙って配合されます。*①②③
  • 中身は? ジテルペンアルカロイド(アコニチン類)が加工によりベンゾイル体などに変化します。温陽・鎮痛と関連する成分として報告があります。*②③
  • 注意点 有毒生薬です。自己調製や過量は大変危険で、口唇のしびれ・悪心、動悸・不整脈など中毒症状に注意します。医療者の指導の下で用い、長期・多量は避けます。*①②④

附子の基礎データ

  • 読み方: ぶし
  • 基原・由来: ハナトリカブト(Aconitum carmichaelii Debeaux)などの塊根の子根を加工したもの(日本薬局方収載)。*①②
  • 主要成分: アコニチン、メサコニチン等のジテルペンアルカロイド(加工でベンゾイルメサコニン等へ)。*②③
  • 性味: 辛 / 大熱 帰経: 心・腎・脾 ※有毒。*①③

伝統的な使われ方

陽虚・寒証による四肢厥冷、腹痛・下痢、むくみや腰膝冷痛、関節痛・神経痛などに用いられてきました。乾姜・人参・甘草等と組み合わせて脾胃を温め(理中丸類)、桂枝・芍薬等とともに気血を調え(桂枝加附子湯)、麻黄・細辛と配合して寒飲の咳をさばきます(麻黄附子細辛湯)。*①②③

この生薬を含む漢方薬例

安全性と受診の目安

しびれ・口の灼熱感、吐き気・動悸・めまいなどが現れたらすぐ中止し受診してください。既往症(心疾患・腎疾患)や多剤併用中は必ず専門家に相談を。自己判断での使用や粉末の単独投与は絶対に避けます。*②④

  • すぐ相談: 動悸・息切れ、不整脈、激しいしびれやけいれん、意識障害。
  • 服薬中: 指示外用量・自己加工は不可。症状が改善しない場合は受診を。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

よくある質問

Q. 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)と四逆湯(しぎゃくとう)の使い分けは?

A. 前者は寒冷感の強い感冒初期などで悪寒・咳・水様鼻汁に用い、後者は四肢厥冷・下痢・腹痛などの重い虚寒に対応します。両方とも附子を要薬とします。*②③

Q. どんな体質・症状に向きますか?

A. 陽虚・寒証(手足の冷え、腹痛・下痢、むくみ、腰膝冷痛、関節痛)に向きます。体質に応じて乾姜・人参・桂枝・細辛などと組み合わせます。*①②③

*参考・出典

  1. 公益社団法人 東京生薬協会「ブシ(附子)」
  2. ツムラ「漢方ビュー|生薬辞典:附子」
  3. 富山大学 和漢医薬学総合研究所「伝統医薬DB:附子」
  4. MSDマニュアル家庭版(受診目安の一般情報)

堀口和彦(漢方薬剤師) 監修:堀口 和彦(漢方薬剤師)

執筆: KanpoNow編集部

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