延胡索(えんごさく)とは?胃痛・月経痛など痛みに使う生薬を体質別に解説

延胡索(えんごさく)は、ケシ科エンゴサクの塊茎を用いる生薬です。滞った血と気の巡りを動かして痛みをやわらげる働き(活血行気止痛)から、胃痛・腹痛、月経痛、打撲後の痛みなど、さまざまな痛みのケアに用いられてきました。KanpoNowでは、この生薬を「血と気の巡りを動かして痛みを止める、活血の鎮痛生薬」として整理します。
- 延胡索は、ケシ科エンゴサク(Corydalis)の塊茎からつくられる生薬です
- 主成分はアルカロイド(デヒドロコリダリン、テトラヒドロパルマチン、コリダリンなど)です
- 漢方では、血と気の巡りを動かして痛みをやわらげる(活血行気止痛)働きで用いられます
- 活血・行気の性質があるため、妊娠中などは一般に注意が必要とされます
体質や状態により合わないことがあります。妊娠中・授乳中、持病やお薬をお使いの方、出血傾向のある方は、自己判断での使用を避け、専門家に相談してください。
延胡索とは
延胡索(えんごさく)は、ケシ科のエンゴサク(Corydalis)の塊茎を、通常は湯通しして乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。日局では、主成分デヒドロコリダリンの含有量に規格が定められています。
漢方薬剤師の視点では、延胡索は単なる「痛み止め」ではありません。滞った血(瘀血)を動かす活血の働きと、滞った気を巡らせる行気の働きを併せ持ち、その両面から痛みをやわらげる生薬として位置づけられます。古典には「心胸部、下腹部および身体各部の痛みを治す」と記され、痛む場所を選ばず広く用いられてきました。
基原・成分データ
延胡索の基本データを整理します。アルカロイドを含むこと、活血・行気の鎮痛生薬であることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。延胡索は、辛く苦く温かで、心・肝・脾に働き、血と気の滞りを動かします。
「辛」は巡らせ動かす味、「苦」は下げてさばく味とされます。滞りを動かす働きと結びつきます。
「温」はやさしく温める性質で、冷えを伴う血の滞りや痛みに向く方向です。
心・肝の血の巡り、脾の気の巡りに働きます。胸腹部や下腹部の痛み(心・肝・脾)に関わります。
漢方的な働きの軸
延胡索の働きは、大きく三つの軸で整理できます。血を動かす軸、気を巡らせる軸、痛みを止める軸が重なり、血と気が滞って生じる痛みをやわらげます。
伝統的な使われ方
延胡索は古くから、活血行気止痛を目的に用いられてきました。血と気の巡りを動かして痛みをやわらげる働きから、胃痛・腹痛、月経痛、打撲後の痛みなど、さまざまな痛みのケアに配合された歴史があります。古典の薬選には「心胸部、下腹部および身体各部の痛みを治す」と記されています。
日本では、胃の痛みを和らげる安中散などに配合されるほか、血の巡りを整える婦人科系の処方にも用いられます。痛む場所を選ばず幅広く使える点が、延胡索の特徴です。
形状・味・使われ方の体感
延胡索は、見た目・味・使われ方に特徴があります。湯通しした黄色い塊茎が特徴です。
黄色い小さな塊茎
湯通しして乾燥した、不規則な球形の小さな塊茎。外側は黄褐色、断面は黄色〜黄褐色です。
苦みのある風味
味は苦く、わずかに辛みがあります。アルカロイドを含む、独特の風味を持ちます。
湯通しして用いる
通常は湯通ししてから乾燥させて用います。酢で処理すると、痛みをやわらげる働きが高まるとされます。
体質別の向き・不向き
延胡索は血と気の滞りを動かす生薬です。痛みが血や気の滞りによるものか、また妊娠の有無や出血傾向を見極めることが大切です。
血と気の滞りによる痛み
血と気が滞って生じる胃痛・腹痛、胸腹部の張った痛みのタイプに向きます。延胡索の中心的な使い道です。
判断ポイント:張ってつかえるような痛みがある。瘀血による月経痛・打撲痛
血の滞り(瘀血)による月経痛や、打撲後の痛みのケアに用いられてきました。血を動かして痛みをやわらげます。
判断ポイント:瘀血による刺すような痛み。気血が乏しい虚弱な体質
巡りを動かす働きが中心のため、もともと気血が乏しい虚弱な方では、単独・多量では消耗することがあります。補う生薬と組み合わせて用います。
判断ポイント:虚弱な場合は補う処方の中で。妊娠中・出血傾向がある
活血(血を動かす)作用があるため、妊娠中は一般に注意が必要とされ、避けるのが無難です。また、出血傾向のある方も慎重を要します。
判断ポイント:妊娠中・出血傾向は避ける。安全性と受診の目安
延胡索は活血・行気の性質をもち、体質や状態により合わないことがあります。とくに妊娠中は一般に注意が必要とされます。症状が長引く・悪化する、持病や併用薬がある場合は、自己判断での継続・中止を避けてください。
- すぐに相談:強い痛みが続く、出血傾向がある、体調が急に悪くなった
- 服薬中:妊娠中・授乳中、持病や他の薬の併用がある場合は、事前に専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
延胡索が気になる方は、生理痛、お腹の痛みとの関係も確認すると理解が深まります。
延胡索を含む漢方薬
延胡索は、胃腸の痛みを和らげる処方や、血の巡りを整える婦人科系の処方に配合されます。同じ延胡索を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. どんな症状に使われますか?
血と気の巡りを動かして痛みをやわらげる目的で、胃痛・腹痛、月経痛、打撲後の痛みなどのシーンに配合されます。痛む場所を選ばず広く用いられます。
Q. 性味・帰経は?
性味は辛・苦/温、帰経は心・肝・脾とされます。血と気の巡りを動かして、痛みをやわらげる働きがあります。
Q. 注意点はありますか?
活血・行気の性質があるため、妊娠中などは一般に注意が必要とされます。出血傾向のある方や体力が乏しい方も慎重を要します。気になる症状があるときは専門家にご相談ください。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
延胡索は、血と気の巡りを動かして痛みをやわらげる生薬ですが、痛みの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。強い痛みが続く、出血傾向がある、日常生活に支障があるといった場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。