艾葉(がいよう)とは?冷えによる下腹部痛や月経痛、不正出血に使う生薬を体質別に解説

艾葉(がいよう)は、ヨモギまたはオオヨモギの葉と枝先を乾燥した生薬です。寒さと湿をさばき痛みを止める働き(散寒除湿・止痛)や、経を温め出血を止める働き(温経止血)から、冷えによる下腹部痛・月経痛、不正出血・月経過多などのケアに用いられてきました。葉の裏の綿毛はお灸の「もぐさ」の原料にもなる、身近で多彩な使われ方をもつ生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「体を温め、冷えによる痛みと出血を整える生薬」として整理します。
- 艾葉(がいよう)はキク科ヨモギ(Artemisia princeps Pampanini)またはオオヨモギ(A. montana)の葉及び枝先を乾燥した生薬です*①②
- 主成分はクマリン類(ウンベリフェロン、スコポレチン)、フェニルプロパノイド、モノテルペノイド(シネオール)、セスキテルペノイド(カリオフィレン)などです*①
- 漢方では、寒さと湿をさばき痛みを止め(散寒除湿・止痛)、経を温め出血を止める(温経止血)働きで用いられます*①②③
- 子宮を刺激する作用が知られているため、妊娠中の内服は自己判断を避け、専門家に相談してください
艾葉は阿膠・川芎・当帰など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。葉の裏の綿毛はお灸の「もぐさ」の原料にもなり、入浴剤としても親しまれています。強い出血が続く、腹痛が急激に悪化する場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
艾葉とは
艾葉(がいよう)は、キク科ヨモギ(Artemisia princeps Pampanini)またはオオヨモギ(A. montana Pampanini)の葉及び枝先を乾燥させた生薬です。『名医別録』の中品に収載され、「あらゆる病に灸をする。煎じて用いれば、下痢、吐血、下部のちく瘡、婦人の漏血を止め、陰気を利し、肌肉を生じ、風寒をしりぞけ、人に子を有らしめる」と記された歴史ある生薬です。葉の裏に密生する白い綿毛は灸治療に用いる「もぐさ」の原料となり、食用・薬用・鍼灸用・入浴用と様々な場面で活躍することから「ハーブの女王」とも呼ばれます。
漢方薬剤師の視点では、艾葉は「温裏薬(体の内側を温める生薬)」に分類されます。体内に入った寒邪を散らす散寒薬に位置づけられ、烏頭・附子・肉桂・乾姜・呉茱萸などと同じ仲間です。冷えによる下腹部痛・月経痛に用いられるほか、温経止血の働きから不正出血・月経過多にも応用されます。阿膠・川芎などと配合される芎帰膠艾湯は、伝統的な止血薬として知られています。
基原・成分データ
艾葉の基本データを整理します。ヨモギの葉と枝先を用いること、クマリン類などの成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。艾葉は、苦く辛く、温める性質で、肝・脾・腎に働きます。
「辛」は発散させ温める味、「苦」は湿を乾かす味とされます。寒さと湿をさばき痛みを止める働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えによる下腹部痛・月経痛を、あたためてやわらげる方向に働きます。
肝に働いて経を温め出血を止め、脾・腎に働いて冷えによる腹痛に関わります。
漢方的な働きの軸
艾葉の働きは、大きく二つの軸で整理できます。寒さと湿をさばき痛みを止める軸、経を温め出血を止める軸が重なり、冷えによる痛み・出血傾向を整えます。
伝統的な使われ方
艾葉は古くから、散寒除湿・止痛・温経止血を目的に用いられてきました。冷えによる下腹部痛・月経痛、不正性器出血・月経過多、下痢・吐血などのケアに用いられてきた歴史があります。艾葉は肝・脾・腎に入り、体を温めながら止血する力が特徴です。
阿膠・川芎・当帰などと組み合わせて、痔出血や不正出血・月経過多・貧血を整える処方(芎帰膠艾湯)に配合されます。冷え性の方が多く用いる処方として知られ、下半身の出血に応用されてきました。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
艾葉は、ヨモギならではの特徴をもつ生薬です。
裏に白い綿毛のある葉
葉の表面は緑色で、裏面には白い綿毛が密生しています。この綿毛を精製したものが灸治療用の「もぐさ」です。
独特の芳香
ヨモギ特有の独特な芳香があり、味は苦みと辛みが中心です。温性で、体を内側からあたためる方向に働きます。
煎じ薬・もぐさ・入浴剤として使用
他の生薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるほか、もぐさとしてのお灸、入浴剤としても用いられます。
体質別の向き・不向き
艾葉は体を温め冷えによる痛みと出血を整える生薬です。冷えによる痛み・出血傾向があるか、逆に妊娠中で自己判断が難しくないかを見極めることが大切です。
冷えによる下腹部痛・月経痛タイプ
冷えにともなう下腹部痛・月経痛がみられるタイプに向きます。艾葉の中心的な使い道です。
判断ポイント:冷えによる痛み。不正出血・月経過多タイプ
不正性器出血や月経過多、痔出血のケアに用いられてきました。
判断ポイント:温経止血の働き。もぐさ・入浴剤としての民間利用タイプ
お灸のもぐさや入浴剤として、冷え性・肩こり・腰痛のケアに民間的に用いられてきました。
判断ポイント:外用としての利用も豊富。妊娠中の内服自己判断タイプ
子宮を刺激する作用が知られているため、妊娠中の内服は自己判断を避け、専門家に相談してください。
判断ポイント:妊娠中の内服は要相談。安全性と受診の目安
艾葉は処方の中で用いられる温裏薬ですが、子宮を刺激する作用が知られているため、妊娠中の内服は自己判断を避け、専門家に相談してください。胃腸が著しく虚弱な方、食欲不振・悪心・嘔吐のある方も注意が必要です。強い出血が続く、腹痛が急激に悪化する場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い出血が続く、腹痛が急激に悪化する
- 服薬中:妊娠中の方、著しく胃腸が虚弱な方、持病や他剤を併用している場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
艾葉が気になる方は、生理不順、冷えとの関係も確認すると理解が深まります。
艾葉を含む漢方薬
艾葉は、冷えによる痛み・出血傾向を整える処方に配合されます。艾葉の体を温める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
※お使いの製品にどの生薬が含まれるかは、製品の添付文書・成分表示をご確認ください。処方の選択や併用については、薬剤師・登録販売者など専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. もぐさとの関係は?
ヨモギの葉の裏にある白い綿毛を集めて精製したものが、灸治療に用いる「もぐさ」です。年数を経て熟成させたものほど良いとされ、「七年の病に三年の艾を求む」ということわざにもその考え方が表れています。
Q. 食用にもなりますか?
刻んで餅に入れる草餅が有名で、別名「モチグサ(餅草)」とも呼ばれます。新芽はおひたしや天ぷらにもされますが、有毒なトリカブトの葉と形が似ているため、野生品を採取する際は注意が必要です。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
冷えによる下腹部痛・月経痛、不正出血・月経過多のタイプに向きます。妊娠中の内服は自己判断を避け、専門家に相談してください。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
艾葉は、体を温め冷えによる痛みと出血を整える生薬ですが、月経痛や出血の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い出血が続く、腹痛が急激に悪化する場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。妊娠中の方は内服の自己判断を避け、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。