五味子(ごみし)とは?慢性のから咳・寝汗多汗・頻尿・口の渇きに使う生薬を体質別に解説

五味子(ごみし)は、チョウセンゴミシの成熟果実を用いる生薬です。肺を引き締めて咳をしずめ、汗や尿のもれを引き締め、うるおいを生んで心をしずめる働き(斂肺止咳・斂汗固渋・生津・寧心安神)から、慢性のから咳、寝汗・多汗、頻尿・遺精、口の渇き・疲労感のケアに用いられてきました。酸・苦・甘・辛・鹹の五つの味をもつことが名の由来です。KanpoNowでは、この生薬を「もれを引き締め、うるおいを生む収渋の生薬」として整理します。
- 五味子は、マツブサ科チョウセンゴミシ(Schisandra chinensis)の成熟果実を乾燥した生薬です
- 主成分はリグナン類(シサンドリン、ゴミシンA/B、シュサンドロール等)、有機酸、多糖です
- 漢方では、肺を引き締めて咳をしずめ(斂肺止咳)、汗や尿のもれを引き締め(斂汗固渋)、うるおいを生んで心をしずめる(生津・寧心安神)働きで用いられます
- かぜの初期で熱や痰が多いときの咳には不向きなことがあります
五味子は「引き締める」性質のため、かぜの初期で熱や痰が多いときの咳には不向きです。体質により胃部不快・便秘が出ることがあり、妊娠中・授乳中は専門家に相談してください。
五味子とは
五味子(ごみし)は、マツブサ科のチョウセンゴミシ(Schisandra chinensis (Turcz.) Baill.)の成熟した果実を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。「北五味子」とも称されます。名の「五味子」は、果実の皮・肉は甘酸っぱく、種は辛く苦く、全体では酸・苦・甘・辛・鹹の五つの味をもつことに由来します。『神農本草経』の上品に収載された、歴史の古い生薬です。秋に真紅の実をつけ、酸味があり食用にもなります。
漢方薬剤師の視点では、五味子は代表的な「収渋薬(漏れ出るものを引き締める生薬)」です。肺を引き締めて慢性の咳をしずめ、汗・尿・精などのもれを引き締めます。あわせて、うるおい(津液)を生んで口の渇きをやわらげ、心をしずめて不安・不眠を整えます。慢性のから咳、寝汗・多汗、頻尿・遺精、口渇・疲労、動悸・不眠などの「漏れ」や虚弱傾向に向くとされます。同じ収渋薬の山茱萸・烏梅などと働きが通じます。
基原・成分データ
五味子の基本データを整理します。リグナンを含むこと、収渋薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。五味子は、酸味と甘みが中心で、温かい性質で、肺・腎・心に働きます。
五つの味をもちますが、薬性としては「酸」(引き締め収める味)と「甘」(補い養う味)が中心です。もれを引き締めうるおいを生む働きと結びつきます。
「温」はおだやかに温める性質で、冷やさずに引き締め、慢性の虚弱傾向に合わせやすい傾向です。
肺を引き締めて咳をしずめ、腎を補ってもれを引き締め、心をしずめる方向に働きます。慢性の咳・多汗・頻尿・不眠に関わります。
漢方的な働きの軸
五味子の働きは、大きく三つの軸で整理できます。肺を引き締める軸、もれを引き締める軸、うるおいを生み心をしずめる軸が重なり、虚弱による「漏れ」を整えます。
伝統的な使われ方
五味子は古くから、斂肺止咳・斂汗固渋・生津・寧心安神を目的に用いられてきました。慢性の咳・喘息様の咳、寝汗・多汗、頻尿・遺精・夜尿、口渇や息切れ、動悸・不安・不眠などの「漏れ」や虚弱傾向のケアに配合された歴史があります。ただし、引き締める性質のため、かぜの初期で熱や痰が多いときの咳には向きません。
乾姜・細辛などと組み合わせて寒飲の咳・鼻水・喘鳴をさばく処方(小青竜湯・苓甘姜味辛夏仁湯)、麦門冬などと組み合わせて痰の多い咳を整える処方(清肺湯)、人参・地黄などと組み合わせて気血を補い倦怠感を整える処方(人参養栄湯)、茯苓・桂皮などと組み合わせてのぼせ・動悸を整える処方(苓桂味甘湯)に配合されます。人参・麦門冬とあわせてうるおいと気を養う「生脈散」も知られます。
形状・味・使われ方の体感
五味子は、見た目・味・使われ方に特徴があります。赤い果実が生薬になります。
しわの寄った赤い果実
径5mmほどの、暗赤色〜黒褐色でしわの寄った球形の果実。果肉の中に腎臓形の種子が入っています。
五つの味をもつ
皮・肉は甘酸っぱく、種は辛く苦く、全体で酸・苦・甘・辛・鹹の五味を感じます。名の由来であり、酸味が中心です。
煎じる・お茶や酒に
煎じ液として、止咳・収渋の処方に配合されます。韓国では健康茶や酒・シロップに加工され、親しまれています。
体質別の向き・不向き
五味子は引き締めうるおいを生む生薬です。慢性の「漏れ」や虚弱傾向があるか、逆に熱・痰の多い急性の状態でないかを見極めることが大切です。
慢性のから咳・喘息様の咳
長引くから咳や、喘息様の咳が出るタイプに向きます。五味子の中心的な使い道で、肺を引き締めて咳をしずめます。
判断ポイント:痰の少ない、長引くから咳。寝汗・多汗、頻尿、口の渇き・疲労
寝汗・多汗、頻尿・遺精、口の渇き・疲労感、動悸・不眠のケアに用いられてきました。虚弱による「漏れ」の傾向で候補になります。
判断ポイント:汗・尿のもれ、口渇・疲れがある。胃腸が弱い方
酸味が強く引き締める性質のため、胃腸が弱い方では、胃部不快や便秘が出ることがあります。用量や配合に注意します。
判断ポイント:胃部不快・便秘が出れば調整。かぜの初期・熱や痰の多い咳
引き締める性質のため、かぜの初期で邪を発散させたいときや、熱・黄色い痰の多い咳、呼吸困難には向きません。邪を閉じ込めてしまうおそれがあります。
判断ポイント:かぜの初期・熱痰の咳には使わない。安全性と受診の目安
五味子は、体質や体調により胃部不快感・便秘・皮膚症状が出ることがあります。熱や黄色い痰を伴う強い咳、胸痛・血痰、夜間の呼吸困難などがある場合は、別の原因の確認が必要です。引き締める性質のため、かぜの初期や熱・痰の多い咳には用いません。妊娠中・授乳中は専門家に相談し、自己判断での長期連用は避けてください。
- すぐに相談:呼吸困難、持続する高熱、血痰・胸痛、夜間の咳発作
- 服薬中:持病や他剤を併用している場合、妊娠中・授乳中は、自己判断での継続・中止を避け、専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
五味子が気になる方は、咳・喘息、多汗、だるさとの関係も確認すると理解が深まります。
五味子を含む漢方薬
五味子は、慢性の咳を整える処方や、気・うるおいを養う処方に配合されます。同じ五味子を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. なぜ「五味子」という名前なのですか?
果実の皮・肉は甘酸っぱく、種は辛く苦く、全体で酸・苦・甘・辛・鹹の五つの味をもつことに由来します。五臓すべてに働きかけるとも解釈されます。
Q. どんな咳に向きますか?
痰の少ない、長引くから咳や喘息様の咳に向きます。引き締める性質のため、かぜの初期や、熱・黄色い痰の多い咳には向きません。
Q. 性味・帰経は?
性味は酸・甘/温、帰経は肺・腎・心とされます。肺を引き締めて咳をしずめ、汗・尿のもれを引き締め、うるおいを生んで心をしずめる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
五味子は、もれを引き締めうるおいを生む生薬ですが、慢性の咳や多汗、疲労の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。呼吸困難、持続する高熱、血痰・胸痛、夜間の咳発作などがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。かぜの初期や熱・痰の多い咳には用いません。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。