藿香(かっこう)とは?夏かぜ・食欲不振・胃腸の不調に使う生薬を体質別に解説

藿香(かっこう)は、シソ科パチョリの地上部を用いる生薬です。芳しい香りで胃腸にたまった湿を除き、気の巡りを整え、夏の暑さや湿気による不調をやわらげる働き(芳香化湿・解暑)から、夏かぜ、食欲不振、吐き気、下痢などのケアに用いられてきました。KanpoNowでは、この生薬を「香りで湿を除き、胃腸を整える、芳香化湿の生薬」として整理します。
- 藿香は、シソ科パチョリ(Pogostemon cablin)の地上部からつくられる生薬です
- 主成分は精油(パチョリアルコールなど)で、シソ科の中でも香りが強い植物です
- 漢方では、香りで湿を除き(芳香化湿)、暑さをさばき(解暑)、吐き気を止める(止嘔)働きで用いられます
- 香りが働きの中心のため、煎じすぎに注意し、体質に合わせて用いることが大切です
香味性のスパイス系サプリメントとの重複に注意が必要です。妊娠・授乳中や持病のある方は、自己判断での使用を避け、症状が続く場合は専門家に相談してください。
藿香とは
藿香(かっこう)は、シソ科のパチョリ(Pogostemon cablin)の地上部を乾燥させた生薬です。精油ではパチュリとして知られ、シソ科の中でも香りが強い植物として有名です。中国の広東省などで産出される「広藿香(こうかっこう)」が代表的で、日本に自生するカワミドリ由来のものは「土藿香」として区別されます。
漢方薬剤師の視点では、藿香は代表的な「芳香化湿薬」です。芳しい香りで胃腸にたまった湿(余分な水分)を除き、気の巡りを整えて胃腸の働きを回復させます。とくに、夏の高温多湿や、冷たい飲食物のとりすぎによる胃腸の不調(いわゆる夏かぜ・夏バテ)に向くとされます。
基原・成分データ
藿香の基本データを整理します。精油を豊富に含むこと、芳香化湿薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。藿香は、辛くほんのり温かで、肺・脾・胃を整える方向に働きます。
「辛」は巡らせ、発散させ、湿をさばく方向の味です。香りで気を動かす芳香化湿の働きと結びつきます。
「微温(ほんのり温)」はおだやかに温める性質で、冷えを助長しにくく、湿をさばく方向に働きます。
脾・胃の湿をさばいて胃腸の働きを整え、肺を通じて体表の邪をさばく方向に働きます。夏かぜ・胃腸の不調に関わります。
漢方的な働きの軸
藿香の働きは、大きく三つの軸で整理できます。湿を除く軸、暑さをさばく軸、吐き気を止める軸が重なり、湿気や暑さによる胃腸の不調をやわらげます。
伝統的な使われ方
藿香は古くから、芳香化湿・解暑・止嘔を目的に用いられてきました。香りで胃腸の湿をさばく働きから、夏の高温多湿や冷たい飲食物のとりすぎによる胃腸の不調、悪寒・発熱・頭痛を伴う夏かぜのケアに配合された歴史があります。祛暑薬(暑邪を除く薬)の代表として、夏かぜの処方によく用いられます。
蘇葉・半夏などと組み合わせて夏かぜをさばく処方(藿香正気散)、縮砂と組み合わせて胃腸を整え吐き気を止める処方(香砂六君子湯など)に配合されます。とくに藿香正気散は、夏かぜ・胃腸炎の代表的な処方として知られます。
形状・味・使われ方の体感
藿香は、見た目・香り・味に特徴があります。強い芳香が最大の特徴です。
方形の茎と卵形の葉
茎は四角く、葉は卵形。茎が太く堅く、断面が緑色を帯び、葉が厚く柔軟なものが良品とされます。
強く特徴的な芳香
パチョリアルコールによる、強く特徴的な芳香があります。この香りが湿をさばく働きの中心です。
やや辛い風味
味はやや辛く、香辛料のような風味があります。香気を保つため、気密保存が望ましいとされます。
体質別の向き・不向き
藿香は香りで湿をさばく生薬です。湿がたまっているか、逆に潤い不足で乾いていないかを見極めることが大切です。
湿による胃腸の不調・夏かぜ
夏の湿気や冷たい飲食物で胃腸に湿がたまり、食欲不振、吐き気、下痢、腹部の張りが出るタイプに向きます。藿香の中心的な使い道です。
判断ポイント:湿気や冷飲で胃腸が重だるい。悪心・嘔吐、口のねばり
胃の気の巡りの乱れによる悪心・嘔吐や、口のねばり、みぞおちのつかえのケアに用いられてきました。吐き気が気になるとき候補になります。
判断ポイント:吐き気・口のねばりがある。スパイス系サプリとの重複
香味性の強いスパイス系サプリメントと重複すると、温め・発散が過剰になることがあります。重複がある場合は用量に注意してください。
判断ポイント:香味系の重複に注意する。潤い不足で乾くタイプ
香りで発散し湿をさばく性質のため、潤い不足で乾きやすい(陰虚)タイプや、熱が強く口が渇くタイプには合いにくいとされます。
判断ポイント:乾燥・強い口渇があれば避ける。安全性と受診の目安
藿香は芳香性健胃薬として広く用いられ、比較的おだやかな生薬です。ただし、香りが働きの中心のため、煎じすぎると効果が弱まるとされます。体質や持病、併用薬によって合わないことがあります。症状が長引く・悪化する場合は、自己判断を避けてください。
- すぐに相談:発熱・下痢・嘔吐が強い、脱水が心配される、症状が長引く
- 服薬中:妊娠中・授乳中、持病や他の薬の併用がある場合は、事前に専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
藿香が気になる方は、下痢、食欲不振との関係も確認すると理解が深まります。
藿香を含む漢方薬
藿香は、夏かぜや胃腸の不調を整える処方に配合されます。同じ藿香を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. パチュリ(精油)と同じものですか?
同じシソ科パチョリに由来します。精油としてはパチュリの名で香料に使われ、漢方では生薬「藿香」として、性味・帰経の理論に沿って用います。
Q. どんなときに使われますか?
夏の高温多湿や冷たい飲食物による胃腸の不調、悪寒・発熱・頭痛を伴う夏かぜ、食欲不振、吐き気、下痢などに用いられます。藿香正気散が代表的な処方です。
Q. 性味・帰経は?
性味は辛・微温、帰経は肺・脾・胃とされます。香りで胃腸の湿を除き、暑さをさばき、吐き気を止める働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
藿香は、香りで胃腸の湿を除く生薬ですが、夏かぜや胃腸の不調の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。発熱・下痢・嘔吐が強い、症状が長引くといった場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。