栝楼根(かろこん)

栝楼根(かろこん)は、ウリ科カラスウリ類の根を用いる生薬です。体にこもった熱を冷まし、うるおいを生んでのどの渇きをうるおす働き(清熱・生津止渇)から、熱による強い口の渇き、乾いた咳、化膿を伴う腫れもののケアに用いられてきました。根の粉末は「天花粉(天瓜粉)」としても知られます。KanpoNowでは、この生薬を「熱を冷まし、うるおいを生む、清熱生津の生薬」として整理します。
- 栝楼根は、ウリ科キカラスウリ・オオカラスウリ・トウカラスウリの皮層を除いた根からつくられる生薬です
- 主成分はでんぷん、タンパク質、アミノ酸(シトルリン等)、ステロール(α-スピナステロール)です
- 漢方では、熱を冷まし(清熱瀉火)、うるおいを生んで渇きを止め(生津止渇)、腫れものの膿を出す(消腫排膿)働きで用いられます
- 種子を用いる「栝楼仁」とは薬用部位が異なり、妊娠中は使用を避けるべきとされます
冷えが強い方や胃腸の弱い方には不向きなことがあります。妊娠中の方、持病や併用薬のある方は、自己判断での使用を避け、専門家に相談してください。
栝楼根とは
栝楼根(かろこん)は、ウリ科のキカラスウリ(Trichosanthes kirilowii var. japonica)、オオカラスウリ、トウカラスウリの、皮層(コルク層)を除いた根を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。根に含まれる多量のデンプンは「天花粉(天瓜粉)」と呼ばれ、日本では古くからあせも用のパウダーなどに用いられてきました。
漢方薬剤師の視点では、栝楼根は代表的な「清熱瀉火・生津止渇」の生薬です。肺や胃にこもった熱を冷まし、うるおい(津液)を生んで、熱による強い口の渇きをうるおします。あわせて、化膿を伴う腫れものの膿を出す働き(消腫排膿)ももちます。熱病による脱水傾向や、乾いた咳、糖尿病などによる口渇に用いられてきました。
基原・成分データ
栝楼根の基本データを整理します。デンプンを多く含むこと、清熱・生津の生薬であることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。栝楼根は、甘くほのかに苦く、寒(冷やす)性質で、肺・胃・大腸に働きます。
「甘」はうるおし補う味、「苦」は熱をさばく味とされます。うるおいを生みつつ熱を冷ます働きと結びつきます。
「寒」は冷やす性質で、肺・胃にこもった熱を冷ます方向に働きます。
肺の熱を冷まして乾いた咳をうるおし、胃の熱による渇きをうるおし、大腸をうるおす方向に働きます。口渇・乾いた咳に関わります。
漢方的な働きの軸
栝楼根の働きは、大きく三つの軸で整理できます。熱を冷ます軸、うるおいを生む軸、膿を出す軸が重なり、熱によるうるおい不足や化膿を整えます。
伝統的な使われ方
栝楼根は古くから、清熱瀉火・生津止渇・消腫排膿を目的に用いられてきました。『神農本草経』の中品に「瓜呂」の名で収載され、熱病による脱水傾向、乾燥性の咳や痰、口渇、化膿性疾患などに応用された歴史があります。とくに、うるおいを生む働きから、糖尿病などによる強い口渇(消渇)に用いられてきました。
甘草と組み合わせて虚弱な人の口渇を治す組み合わせ、桂枝湯に加えて項背のこわばりとうるおい不足を整える処方(栝楼桂枝湯)、柴胡と組み合わせて胸脇の熱とうるおい不足を整える処方(柴胡桂枝乾姜湯、柴胡清肝湯)に配合されます。栝楼根と甘草の組み合わせは、虚弱傾向のある人の口渇を治す代表的な配合です。
形状・味・使われ方の体感
栝楼根は、見た目・味・使われ方に特徴があります。白いデンプン質の根が特徴です。
白い塊状の根
皮層を除いた、白色〜淡黄白色の塊状・輪切りの根。デンプン質に富み、粉にすると白く仕上がります。
ほのかな甘みと苦み
味はほのかに甘く、わずかに苦みがあります。デンプン質による、くせのない風味です。
煎じる・天花粉にする
煎じ液として清熱・生津の処方に配合されます。根の粉末は「天花粉」として、あせも用パウダーなどに用いられました。
体質別の向き・不向き
栝楼根は熱を冷ましうるおいを生む生薬です。熱やうるおい不足があるか、逆に冷えや胃腸の弱りがないかを見極めることが大切です。
熱による強い口の渇き
熱によってうるおいが損なわれ、強い口の渇きや、熱病による脱水傾向が出るタイプに向きます。栝楼根の中心的な使い道です。
判断ポイント:熱っぽく、強く口が渇く。乾いた咳・化膿を伴う腫れもの
肺のうるおい不足による乾いた咳や、化膿を伴う腫れもののケアに用いられてきました。乾いた咳や化膿が気になるとき候補になります。
判断ポイント:痰の少ない乾いた咳・化膿。冷えが強い・胃腸が弱い方
甘く冷やしてうるおす性質のため、冷えが強い方や胃腸が弱い方では、冷えや軟便が出ることがあります。用量や配合に注意します。
判断ポイント:冷え・胃腸虚弱があれば注意。妊娠中の使用
栝楼根は、古典的に妊娠中の使用を避けるべき生薬とされています。妊娠中・妊娠の可能性がある場合は使用を避け、専門家に相談してください。
判断ポイント:妊娠中は使用を避ける。安全性と受診の目安
栝楼根はうるおいを生む生薬ですが、冷やす性質のため冷えの強い方には不向きなことがあります。また、妊娠中は使用を避けるべきとされます。強い口渇が続く場合は、糖尿病など別の原因の確認が必要です。持病や併用薬がある場合は専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い口渇・多飲多尿が続く、高熱や脱水が疑われる、化膿が広がる
- 服薬中:妊娠中・妊娠の可能性がある、糖尿病などの持病がある、他の薬を併用している場合は、事前に専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
栝楼根が気になる方は、口の渇き、咳との関係も確認すると理解が深まります。
栝楼根を含む漢方薬
栝楼根は、うるおいを生んで口渇を整える処方や、胸脇の熱を整える処方に配合されます。同じ栝楼根を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 栝楼仁(種子)とは違うのですか?
同じカラスウリ類に由来しますが、栝楼根は「根」、栝楼仁は「種子」で、薬用部位が異なります。栝楼根はうるおいを生んで渇きを止める働きが中心、栝楼仁は乾いた咳や便通を整える働きが中心です。
Q. 天花粉(天瓜粉)とは?
栝楼根に多く含まれるデンプンを、天花粉(天瓜粉)と呼びます。日本では古くから、あせも用のパウダーなどに用いられてきました。
Q. 性味・帰経は?
性味は甘・微苦/寒、帰経は肺・胃・大腸とされます。熱を冷まし、うるおいを生んで渇きを止め、膿を出す働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
栝楼根は、熱を冷ましうるおいを生む生薬ですが、口の渇きや乾いた咳の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。強い口渇・多飲多尿が続く、高熱や脱水が疑われる、化膿が広がるといった場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。