香附子(こうぶし)とは?ストレスの気のふさがり・イライラ・月経不順月経痛に使う生薬を体質別に解説

香附子(こうぶし)は、ハマスゲの根茎を用いる、芳しい香りをもつ生薬です。肝の高ぶりをやわらげて滞った気をめぐらせ、月経を整えて痛みをやわらげる働き(疏肝理気・調経止痛)から、ストレスによる気のふさがり・イライラ、胸やお腹の張り、月経不順・月経痛のケアに用いられてきました。「気病の総司、女科の主帥」と呼ばれる、気をめぐらせる代表生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「肝をのびやかにし、滞った気をめぐらせる、理気の要薬」として整理します。
- 香附子は、カヤツリグサ科ハマスゲ(Cyperus rotundus L.)の根茎を乾燥した生薬です
- 主成分は精油成分(シペロン、シペロール、α-シペロンなど)です
- 漢方では、肝の高ぶりをやわらげて滞った気をめぐらせ(疏肝理気)、月経を整えて痛みをやわらげる(調経止痛)働きで用いられます
- 気をめぐらせる代表生薬で、とくにストレスや月経のトラブルに用いられます
名は「附子(ぶし)に似て香りがある」ことに由来しますが、キンポウゲ科の附子(トリカブト)とはまったくの別物で、香附子に附子の毒性はありません。うるおい不足で乾いた方は用量に注意し、持病や併用薬のある方は専門家に相談してください。
香附子とは
香附子(こうぶし)は、カヤツリグサ科のハマスゲ(Cyperus rotundus L.)の根茎(塊茎)を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。ハマスゲは浜辺の砂地や道端に生える生命力の強い多年草で、地下茎の先が小さく塊状に肥大したものを用います。塊茎には芳しい香りがあります。名の「香附子」は、根茎が「附子(ぶし)」に似た形で「香り」をもつことに由来しますが、キンポウゲ科の附子(トリカブト)とは基原も性質もまったく異なる別の生薬です。
漢方薬剤師の視点では、香附子は代表的な「理気薬(気をめぐらせる生薬)」です。肝の高ぶりをやわらげて、ストレスなどで滞った気をのびやかにめぐらせ、月経を整えて痛みをやわらげます。「気病の総司(気の病を治す元締め)、女科の主帥(婦人科の主将)」と称されるほど、気の滞りと婦人科の症状に幅広く用いられます。ストレスによる気のふさがり・イライラ、胸やお腹・脇の張り、月経不順・月経痛に向くとされます。
基原・成分データ
香附子の基本データを整理します。芳香性の精油を含むこと、理気薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。香附子は、辛くわずかに苦く甘く、偏りのない平で、肝・三焦に働きます。
「辛」は巡らせ発散させる味、「苦」はさばく味、「甘」は調える味とされます。滞った気をめぐらせ、肝をのびやかにする働きと結びつきます。
「平」は温めも冷やしもしない偏りのない性質で、幅広い体質に合わせやすく、長く用いやすい傾向です。
肝をのびやかにして気の滞りをめぐらせ、三焦(気・水のとおり道)を通じて全身の気のめぐりを整えます。ストレス・月経のトラブルに関わります。
漢方的な働きの軸
香附子の働きは、大きく三つの軸で整理できます。肝をのびやかにする軸、気をめぐらせる軸、月経を整える軸が重なり、気の滞りによる不調を整えます。
伝統的な使われ方
香附子は古くから、疏肝理気・調経止痛を目的に用いられてきました。ストレスなどによる気の滞り(肝鬱気滞)、気のふさがり・イライラ、消化不良、胸・脇・お腹の張るような痛み、月経不順・月経痛・無月経、乳房の張りなどのケアに配合された歴史があります。「気病の総司、女科の主帥」と称され、気の滞りと婦人科のトラブルに幅広く用いられる代表的な理気薬です。
蘇葉などと組み合わせて気のふさがり・胃腸の不調をさばく処方(香蘇散)、縮砂などと組み合わせて上腹部痛・消化不良をやわらげる処方(香砂六君子湯・香砂平胃散)、当帰・川芎などと組み合わせて婦人ののぼせ・月経トラブルを整える処方(女神散)、川芎・荊芥などと組み合わせて頭痛をさばく処方(川芎茶調散)、抑肝散に陳皮・半夏を加えた処方(抑肝散加陳皮半夏)に配合されます。香蘇散の主薬として知られます。
形状・味・使われ方の体感
香附子は、見た目・香り・味に特徴があります。小さな根茎が生薬になります。
紡錘形の根茎
長さ2〜3cmほどの、紡錘形(ラグビーボール状)の根茎。暗褐色で、輪状の節があります。毛や皮を除いたものは「香附米」と呼ばれます。
特有の芳香
特有の芳しい香りがあり、芳香の強いものが良品とされます。この香りが、気をめぐらせる働きの中心です。アロマにも用いられます。
辛くほろ苦い
味は辛く、わずかにほろ苦く甘みもあります。煎じ液として、理気・調経の処方に配合されます。酢で炒ると肝に入り止痛を高めるとされます。
体質別の向き・不向き
香附子は気をめぐらせる生薬です。ストレスや気の滞りがあるか、逆にうるおい不足で乾いていないかを見極めることが大切です。
ストレスによる気のふさがり・張り
ストレスで気が滞り、気のふさがり・イライラ、胸・脇・お腹の張るような痛みが出るタイプに向きます。香附子の中心的な使い道です。
判断ポイント:ストレスで張ってふさがる。月経不順・月経痛、月経前の張り
気血のめぐりの滞りによる月経不順・月経痛、月経前の乳房やお腹の張りのケアに用いられてきました。婦人科の気の滞りで候補になります。
判断ポイント:月経のトラブル・月経前の張り。うるおい不足で乾いている方
気をめぐらせ発散させる性質のため、うるおい不足(陰虚)で乾いて熱をもつ方では、用量や配合に注意します。
判断ポイント:乾き・ほてりが強ければ注意。過量・長期の使用
副作用の多くは過量・長期使用に起因するとされます。自己判断での過量・長期連用は避け、用量・用法を守ってください。妊娠中は専門家に相談を。
判断ポイント:過量・長期連用は避ける。安全性と受診の目安
香附子は比較的おだやかな理気薬ですが、副作用の多くは過量・長期使用に起因するとされ、用量・用法を守ることが大切です。強い腹痛や不正出血、強い気分の落ち込みが続く場合は、別の原因の確認が必要です。うるおい不足で乾いて熱をもつ方は用量に注意し、妊娠中・授乳中は専門家に相談してください。持病や併用薬がある場合も専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い腹痛、不正出血、強い気分の落ち込みや不眠が続く
- 服薬中:過量・長期連用を避け、妊娠中・授乳中、持病や他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
香附子が気になる方は、ストレス、生理不順、イライラとの関係も確認すると理解が深まります。
香附子を含む漢方薬
香附子は、気のふさがりを整える処方や、婦人科の症状を整える処方に配合されます。同じ香附子を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 「附子(ぶし)」と関係がありますか?
ありません。香附子はカヤツリグサ科ハマスゲの根茎で、名は「附子に似た形で香りがある」ことに由来するだけです。キンポウゲ科の附子(トリカブト)とはまったくの別物で、香附子に附子の毒性はありません。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
ストレスによる気のふさがり・イライラ、胸やお腹・脇の張り、月経不順・月経痛、月経前の張りなどに向きます。気をめぐらせる代表生薬です。
Q. 性味・帰経は?
性味は辛・微苦・微甘/平、帰経は肝・三焦とされます。肝の高ぶりをやわらげて滞った気をめぐらせ、月経を整えて痛みをやわらげる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
香附子は、肝をのびやかにし滞った気をめぐらせる生薬ですが、ストレスや月経のトラブルの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い腹痛、不正出血、強い気分の落ち込みや不眠が続く場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。過量・長期連用は避けてください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。