厚朴(こうぼく)とは?胃腸のつかえ腹部膨満・のどのつかえ感・咳喘鳴に使う生薬を体質別に解説

厚朴(こうぼく)は、朴葉味噌でおなじみのホオノキの樹皮を用いる生薬です。滞った気をめぐらせ、余分な湿をさばき、上に逆らう気を下ろす働き(理気・燥湿・降逆)から、胃腸のつかえ・腹部膨満、のどのつかえ感(梅核気)、咳や喘鳴のケアに用いられてきました。半夏厚朴湯の中心的な生薬として知られます。KanpoNowでは、この生薬を「気と湿をさばき、つかえを下ろす生薬」として整理します。
- 厚朴は、クスノキ科(モクレン科)ホオノキ類(Magnolia obovata/M. officinalis)の樹皮を乾燥した生薬です
- 主成分はマグノロール、ホノキオールなどのリグナン様成分、精油成分です
- 漢方では、滞った気をめぐらせ(理気)、余分な湿をさばき(燥湿)、上に逆らう気を下ろす(降逆)働きで用いられます
- 長期・多量で胃部不快・眠気が出ることがあり、妊娠中は使用に注意します
厚朴は長期・多量の使用で胃部不快・眠気が出ることがあります。眠気が出る場合は車の運転等に注意してください。妊娠中は使用に注意し、持病や他の薬がある場合は専門家に相談してください。
厚朴とは
厚朴(こうぼく)は、モクレン科(クスノキ科と分類されることもある)のホオノキ(Magnolia obovata Thunberg)またはカラホオ(Magnolia officinalis)の樹皮を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。日本産はホオノキの樹皮(和厚朴)、中国産はカラホオの樹皮(唐厚朴)を用います。ホオノキは日本の野生樹木では最大級の葉と花をつける落葉高木で、大きな葉は食べ物を包むのに使われ、岐阜県飛騨高山の「朴葉味噌」で親しまれています。『神農本草経』の中品に収載された生薬です。
漢方薬剤師の視点では、厚朴は代表的な「理気薬・芳香化湿薬」です。滞った気をめぐらせ、余分な湿をさばき、上に逆らう気を下ろします。胃腸のつかえ・腹部膨満、食べすぎや湿による胃腸の不調、のどのつかえ感(梅核気)、咳や喘鳴に用いられます。厚朴・大黄の組み合わせで便通の滞りをさばき(承気湯類)、厚朴・杏仁の組み合わせで咳をしずめる(桂枝加厚朴杏仁湯)など、組み合わせによって働きが引き出されます。半夏厚朴湯の中心的な生薬として知られます。
基原・成分データ
厚朴の基本データを整理します。マグノロールを含むこと、理気薬・芳香化湿薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。厚朴は、苦く辛く、温かい性質で、脾・胃・肺に働きます。
「辛」は巡らせ発散させる味、「苦」はさばいて下ろす味とされます。滞った気をめぐらせ、湿をさばき、気を下ろす働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えて滞った気・湿をあたためながらさばく方向に働きます。
脾・胃を通じて胃腸のつかえ・湿をさばき、肺を通じて気を下ろして咳をしずめる方向に働きます。腹部膨満・咳・のどのつかえに関わります。
漢方的な働きの軸
厚朴の働きは、大きく三つの軸で整理できます。気をめぐらせる軸、湿をさばく軸、気を下ろす軸が重なり、気・湿の滞りによる不調を整えます。
伝統的な使われ方
厚朴は古くから、理気・燥湿・降逆のはたらきで用いられてきました。胃腸のつかえ、腹部膨満、食べすぎや湿による消化不良・食欲不振、咳やゼイゼイという喘鳴などのケアに配合された歴史があります。気うつや緊張に伴う、のどの違和感・つかえ感(梅核気=うめの種がのどにつかえたような感じ)にも用いられます。消化器の疾患や精神神経症をやわらげる生薬として、古くから重んじられてきました。
半夏・茯苓・蘇葉・生姜と組み合わせて、のどのつかえ感・不安を整える処方(半夏厚朴湯)、蒼朮・陳皮などと組み合わせて胃腸のつかえ・食滞をさばく処方(平胃散)、蘇子などと組み合わせて咳・喘鳴を整える処方(蘇子降気湯)、藿香などと組み合わせて食あたり・胃腸のかぜをさばく処方(藿香正気散)、柴胡剤と半夏厚朴湯を合わせた処方(柴朴湯)に配合されます。半夏厚朴湯の中心的な生薬です。
形状・味・使われ方の体感
厚朴は、見た目・香り・味に特徴があります。厚みのある樹皮が生薬になります。
厚みのある樹皮
巻いた、または板状の厚みのある樹皮。外面は灰褐色、内面は暗紫褐色で、厚く、内面に油分の光沢があるものが良品とされます。名の「厚朴」は樹皮が厚いことに由来します。
特有の芳香
特有の芳しい香りがあります。この芳香が、気をめぐらせ湿をさばく「芳香化湿」の働きの中心です。
苦く辛い
味は苦く辛く、かむと舌にわずかなしびれを感じます。煎じ液として、理気・化湿の処方に配合されます。
体質別の向き・不向き
厚朴は気と湿をさばく生薬です。気・湿の滞りやつかえがあるか、逆にうるおい不足で乾いていないかを見極めることが大切です。
胃腸のつかえ・腹部膨満
気・湿が滞って、胃腸のつかえ・腹部膨満、食べすぎによる消化不良が出るタイプに向きます。厚朴の中心的な使い道です。
判断ポイント:お腹が張ってつかえる。のどのつかえ感(梅核気)・咳や喘鳴
気うつや緊張に伴うのどのつかえ感(梅核気)、咳や喘鳴のケアに用いられてきました。気の滞り・気の逆流で候補になります。
判断ポイント:のどのつかえ・ゼイゼイする咳。うるおい不足で乾いている方
湿をさばき乾かす性質のため、うるおい不足(陰虚)で乾いている方では、乾きが強まることがあります。用量や配合に注意します。長期・多量では眠気が出ることもあります。
判断ポイント:乾きが強ければ用量に注意。妊娠中の使用
妊娠中は使用に注意が必要とされます。妊娠中・妊娠の可能性がある場合は、自己判断での使用を避け、専門家に相談してください。
判断ポイント:妊娠中は専門家に相談。安全性と受診の目安
厚朴は適量で用いられることが多い生薬ですが、体質や用い方によって胃部不快・眠気などが出ることがあります。眠気が出る場合は車の運転等に注意してください。強い腹痛や持続する吐き気、息苦しさが悪化するなどのときは、別の原因の確認が必要です。妊娠・授乳中や持病のある方、他の薬を使っている方は、自己判断での継続や併用を避け、専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い腹痛や持続する吐き気、息苦しさが悪化する
- 服薬中:眠気が出る場合は車の運転等に注意する。妊娠・授乳中、持病や他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
厚朴が気になる方は、不安(のどのつかえ)、食欲不振、咳・喘息との関係も確認すると理解が深まります。
厚朴を含む漢方薬
厚朴は、のどや胸のつかえを整える処方や、胃腸のつかえ・咳を整える処方に配合されます。同じ厚朴を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 半夏厚朴湯との関係は?
半夏厚朴湯は、厚朴に半夏・茯苓・蘇葉・生姜を配合した処方で、のどのつかえ感や不安に伴う症状の緩和を目的に用いられます。厚朴が気をめぐらせ、つかえを下ろす中心的な役割を担います。
Q. 胃腸薬系の処方にも入りますか?
入ります。平胃散や藿香正気散など、胃腸のつかえや食滞・湿邪に対する処方でも、厚朴が気と湿をさばく重要な役割を担います。
Q. 性味・帰経は?
性味は苦・辛/温、帰経は脾・胃・肺とされます。滞った気をめぐらせ、余分な湿をさばき、上に逆らう気を下ろす働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
厚朴は、気と湿をさばきつかえを下ろす生薬ですが、胃腸のつかえやのどのつかえ、咳の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い腹痛や持続する吐き気、息苦しさが悪化するなどのときは、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。眠気が出る場合は車の運転等に注意してください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。