膠飴(こうい)とは?虚弱の腹痛しぶり腹・冷えの腹部膨満・乾いた咳に使う生薬を体質別に解説

膠飴(こうい)は、デンプンを糖化・濃縮した、水飴そのもののような甘い生薬です。胃腸をあたためて気を補い、こわばりや急な痛みをやわらげ、肺をうるおして乾いた咳をしずめる働き(補中益気・緩急止痛・潤肺止咳)から、虚弱にともなう腹痛・しぶり腹、冷えによる腹部膨満、乾いた咳のケアに用いられてきました。建中湯群や大建中湯の要薬として知られます。KanpoNowでは、この生薬を「胃腸をあたため補い、急な痛みをやわらげる、甘い滋養の生薬」として整理します。
- 膠飴(こうい)はデンプンを糖化・濃縮した飴で、伝統的に補中益気・緩急止痛・潤肺止咳のはたらきが知られます。虚弱に伴う腹痛・しぶり腹、冷えによる腹部膨満、乾咳などに応用され、建中湯群や大建中湯で要薬です
- 主にマルトース(麦芽糖)を含み、他にグルコース・マルトトリオースなど。形状は粉末飴(結晶)または粘稠な飴状です
- 漢方では、胃腸をあたためて気を補い(補中益気)、こわばりや急な痛みをやわらげ(緩急止痛)、肺をうるおして乾いた咳をしずめる(潤肺止咳)働きで用いられます
- 湿熱・満腹感・悪心を起こしやすい体質では過量を避けます
膠飴は、湿熱・痰熱が目立つ体質(黄色い舌苔・口渇・便秘傾向)には適しません。煎剤では他の生薬を煎じた後に加えて溶かすのが通例です。強い腹痛・血便・高熱などがある場合は受診してください。
膠飴とは
膠飴(こうい)は、デンプン質の植物(トウモロコシ・キャッサバ・ジャガイモ・サツマイモなど)またはイネの種子を、麦芽(ばくが)に含まれる酵素(アミラーゼ)の力で糖化して作った飴で、いわゆる「水飴」にあたります。とろりとした飴色で、やさしい甘みがあります。日本薬局方にも収載され、『名医別録』の上品に「飴」として、また後漢の『傷寒論』『金匱要略』にもその名が登場する、歴史の古い生薬です。伝統的には、もち米から作った飴が薬になるとされてきました。
漢方薬剤師の視点では、膠飴は代表的な「補気・温中」の生薬です。胃腸をじんわりとあたためて気を補い、こわばった筋肉や急な痛みをやわらげ(緩急)、肺をうるおして乾いた咳をしずめます。糖はすみやかに吸収されエネルギーになるため、「体力を補う」働きの根幹となります。とくに、芍薬・甘草とともに「建中湯群(小建中湯・黄耆建中湯・当帰建中湯)」を構成し、また山椒・乾姜・人参とともに大建中湯を構成する、要(かなめ)の生薬です。
基原・成分データ
膠飴の基本データを整理します。糖(マルトース)が主成分であること、補気・温中の生薬であることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。膠飴は、甘く、ほんのり温かい性質で、脾・胃・肺に働きます。
「甘」は補い、ゆるめる味とされます。胃腸を補い、こわばりや急な痛みをやわらげる働きと結びつきます。
「微温(ほんのり温)」はおだやかに温める性質で、冷えて弱った胃腸をやさしくあたためる方向に働きます。
脾・胃をあたためて補い、こわばりや痛みをやわらげ、肺をうるおして乾いた咳をしずめる方向に働きます。虚弱・腹痛・乾咳に関わります。
漢方的な働きの軸
膠飴の働きは、大きく三つの軸で整理できます。胃腸を補う軸、急な痛みをやわらげる軸、肺をうるおす軸が重なり、虚弱や冷えによる不調を整えます。
伝統的な使われ方
膠飴は古くから、補中益気・緩急止痛・潤肺止咳を目的に用いられてきました。虚弱・冷えにともなう腹痛・しぶり腹・腹部膨満に対して補中・緩急として、また乾いた咳・口渇に対して潤肺止咳として用いられてきた歴史があります。糖がすみやかに吸収されるため、体力・気を補う働きが期待されます。傷口に塗って肉の再生を助ける外用の言い伝えも残ります。
芍薬・甘草などと組み合わせて虚弱・冷えの腹痛をやわらげる処方(小建中湯・黄耆建中湯・当帰建中湯=建中湯群)、山椒・乾姜・人参と組み合わせて腸の冷えや蠕動の低下による腹痛・腹部膨満をさばく処方(大建中湯)に配合されます。これらの処方で、膠飴は胃腸をあたため補い、急な痛みをやわらげる要薬となります。煎剤では、他の生薬を煎じて濾した後に、煎液へ膠飴を溶かして服用するのが通例です。
形状・味・使われ方の体感
膠飴は、見た目・味・使われ方に特徴があります。水飴状・飴状の生薬です。
飴色の水飴・粉末飴
とろりとした飴色の液体(水飴)、または粘稠な飴状・粉末飴(結晶)。まさに水飴そのものの見た目です。
やさしい甘み
味はやさしい甘みで、まるでデザートのよう。苦い煎じ薬のイメージを変える、飲みやすい生薬です。この甘みが補い・ゆるめる働きの中心です。
煎液に溶かして加える
煎剤では、他の生薬を煎じて濾した後、熱い煎液に膠飴を溶かして服用します。熱で溶けやすく、甘味と緩和の働きを加えます。
体質別の向き・不向き
膠飴は胃腸をあたため補う甘い生薬です。虚弱や冷えがあるか、逆に湿熱・痰熱がこもっていないかを見極めることが大切です。
虚弱にともなう腹痛・しぶり腹
胃腸が虚弱で、キューッとくる腹痛・しぶり腹、冷えによる腹部膨満が出るタイプに向きます。膠飴の中心的な使い道で、建中湯群の要薬です。
判断ポイント:虚弱・冷えでお腹が痛む。疲れ・食欲不振、乾いた咳
虚弱による疲れ・食欲不振や、うるおい不足による乾いた咳・口渇のケアに用いられてきました。虚弱・乾燥の傾向で候補になります。
判断ポイント:疲れ・食欲不振、乾いた咳。満腹感・悪心を起こしやすい方
甘く濃厚なため、満腹感や悪心(吐き気)を起こしやすい体質では、過量を避けます。腹満・悪心が強い場合は用量に注意します。
判断ポイント:腹満・悪心が出れば過量を避ける。湿熱・痰熱が目立つ体質
甘く湿を生みやすい性質のため、湿熱・痰熱が目立つ体質(黄色い舌苔・口渇・便秘傾向)には適しません。糖尿病など糖質制限が必要な方も専門家に相談を。
判断ポイント:黄色い舌苔・口渇・便秘傾向は不向き。安全性と受診の目安
膠飴は食品としても親しまれる穏やかな生薬ですが、甘く濃厚なため、満腹感・悪心を起こしやすい体質では過量を避けます。湿熱・痰熱が目立つ体質(黄色い舌苔・口渇・便秘傾向)には適しません。強い持続的な腹痛・血便・嘔吐や、高熱・脱水を伴う下痢は医療機関へ相談してください。糖分を含むため、糖尿病など糖質制限が必要な方は専門家に相談してください。
- すぐに相談:38.5℃以上の発熱、激しい腹痛、黒色便・血便、意識障害
- 服薬中:腹満・悪心が強い、症状が改善しない/悪化する場合は中止し受診する。糖質制限が必要な方は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
膠飴が気になる方は、腹痛、だるさ、咳・喘息との関係も確認すると理解が深まります。
膠飴を含む漢方薬
膠飴は、虚弱・冷えの腹痛を整える建中湯群や、腸の冷えをさばく処方に配合されます。同じ膠飴を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. いつ加えればよいですか?(煎剤での扱い)
通例、他の生薬を煎じて濾した後、その煎液に膠飴を溶かして服用します。熱で溶けやすく、甘味と緩和の働きを加えます。
Q. 蜂蜜や甘草との違いは?
甘草は各証に広く用いて急迫(急な痛み・こわばり)をゆるめ、膠飴はとくに虚弱・虚寒での補中・緩急に適すとされます。蜂蜜は潤腸通便・潤肺の比重が高い点が異なります。
Q. 性味・帰経は?
性味は甘/微温、帰経は脾・胃・肺とされます。胃腸をあたためて気を補い、こわばりや急な痛みをやわらげ、肺をうるおして乾いた咳をしずめる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
膠飴は、胃腸をあたため補い急な痛みをやわらげる生薬ですが、腹痛や虚弱、乾いた咳の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

あなたに合う漢方薬を確認しませんか?
KanpoNowでは、症状と体質をもとに、あなたに合った漢方薬の候補をAIが提案します。漢方薬剤師・堀口和彦先生の理論に基づき、AIがあなたの体質を判定します。【AI漢方診断】をご利用ください。
AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。38.5℃以上の発熱、激しい腹痛、黒色便・血便、意識障害などがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。湿熱・痰熱が目立つ体質には適しません。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。