麻黄(まおう)とは?感冒初期の悪寒発熱や咳・喘息、鼻づまりに使う生薬を体質別に解説

麻黄(まおう)は、マオウの地上茎を乾燥した生薬です。発汗を促し体表の邪を発散させる働き(発汗解表)や、気道をひろげて咳や喘鳴をしずめる働き(平喘)から、感冒初期の悪寒・発熱・無汗、咳・喘息、鼻づまりなどのケアに用いられてきました。葛根湯・麻黄湯をはじめ、実証寄りの感冒処方に幅広く配合される代表的な生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「体表を発散させ、気道を開いて咳を鎮める生薬」として整理します。
- 麻黄(まおう)はマオウ科Ephedra sinicaなどの地上茎を乾燥した生薬で、日本薬局方に収載されています*①②
- 主成分はエフェドリン、プソイドエフェドリンなどのアルカロイド、フラボノイドなどです*②③
- 漢方では、発汗を促し体表の邪を発散させ(発汗解表)、気道をひろげて咳や喘鳴をしずめる(平喘)働きで用いられます*①②③
- 長期・多量や体質により、不眠・動悸・血圧上昇・口渇などが出ることがあります
麻黄は桂皮・杏仁・甘草など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。動悸が強い、息切れや胸痛、激しい頭痛、血圧の急上昇、不眠が続く場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
麻黄とは
麻黄(まおう)は、マオウ科マオウ(Ephedra sinica Stapfなど)の地上茎を乾燥させた生薬です。『神農本草経』の中品に収載される歴史ある生薬で、日本薬局方にも収載されています。中国北部からモンゴル、中央アジアの乾燥地帯に自生する植物で、その主成分エフェドリンは近代薬理学の発展にも大きな影響を与えたことで知られています。
漢方薬剤師の視点では、麻黄は「辛温解表薬(体を温めながら体表の邪を強く発散させる生薬)」に分類されます。外感の悪寒・発熱・無汗を発散させ、せき・喘鳴をしずめる目的で用いられてきました。実証寄りで冷えをともなう感冒初期や、気道平滑筋のけいれん性の咳に配合されます。桂皮と組み合わせて発汗解表の力を強め、杏仁・甘草と組み合わせて平喘の働きを助けます。
基原・成分データ
麻黄の基本データを整理します。マオウの地上茎を用いること、エフェドリンなどのアルカロイドを含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。麻黄は、辛くわずかに苦く、温める性質で、肺・膀胱に働きます。
「辛」は強く発散させる味とされます。体表の邪を強く発散させ、気道を開く働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えをともなう感冒初期の悪寒・無汗を、あたためて発散させる方向に働きます。
肺に働いて咳・喘鳴を、膀胱に働いて発汗による体表の邪の発散に関わります。
漢方的な働きの軸
麻黄の働きは、大きく二つの軸で整理できます。発汗を促し体表の邪を発散させる軸、気道をひろげて咳や喘鳴をしずめる軸が重なり、感冒初期・咳喘息を整えます。
伝統的な使われ方
麻黄は古くから、発汗解表・平喘を目的に用いられてきました。外感の悪寒・発熱・無汗を発散させ、せき・喘鳴をしずめる目的で用いられてきた歴史があります。麻黄は肺・膀胱に入り、実証寄りで冷えをともなう感冒初期や、気道平滑筋のけいれん性の咳に配合されるのが特徴です。
桂皮・葛根などと組み合わせて、かぜの初期・肩こり・筋肉痛を整える処方(葛根湯・麻黄湯)、細辛・附子などと組み合わせて冷えを伴う咳・悪寒・頭痛を整える処方(麻黄附子細辛湯)に配合されます。また、水様鼻水・くしゃみ・咳・鼻づまりを整える処方(小青竜湯)、咳・喘息・発熱を整える処方(麻杏甘石湯)にも用いられます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
麻黄は、マオウの地上茎ならではの特徴をもつ生薬です。
細い円柱形の地上茎
細い円柱形の地上茎で、節があり、乾燥地帯に自生するマオウ属植物の地上部を用います。
辛みとわずかな苦みで温性
味は辛みが中心で、わずかに苦みも感じられます。温性で、冷えをともなう感冒初期の症状をあたためて発散させる方向に働きます。
他の生薬と組み合わせて使用
桂皮・杏仁・甘草など、他の解表薬・止咳薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。
体質別の向き・不向き
麻黄は体表を発散させ気道を開く生薬です。感冒初期・咳喘息があるか、逆に循環器疾患や高血圧などでないかを見極めることが大切です。
感冒初期・無汗タイプ
感冒初期の悪寒・発熱・無汗がみられるタイプに向きます。麻黄の中心的な使い道です。
判断ポイント:実証寄りの感冒初期。咳・喘息タイプ
気道平滑筋のけいれん性の咳、喘鳴のケアに用いられてきました。
判断ポイント:平喘の働き。発汗が強く出やすいタイプ
体質や処方により発汗が強まることがあります。脱水に注意し、症状が強い場合は中止して専門家へ相談してください。
判断ポイント:発汗が強い場合は要注意。循環器疾患・高血圧のタイプ
心疾患・高血圧・甲状腺機能亢進症・前立腺肥大などの方は注意し、自己判断での継続・中止は避けてください。
判断ポイント:循環器疾患等は要相談。安全性と受診の目安
麻黄は処方の中で用いられる辛温解表薬ですが、交感神経刺激様の作用により、不眠、動悸、血圧上昇、口渇、排尿障害などが出ることがあります。心疾患・高血圧・甲状腺機能亢進症・前立腺肥大などの方は注意し、自己判断での継続・中止は避けてください。動悸が強い、息切れや胸痛、激しい頭痛、血圧の急上昇、不眠が続く場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。
- すぐに相談:動悸が強い、息切れや胸痛、激しい頭痛、血圧の急上昇、不眠が続く
- 服薬中:循環器疾患、甲状腺機能亢進症、前立腺肥大、妊娠・授乳中の方、刺激薬(カフェイン等)併用時は事前に専門家へ相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
麻黄が気になる方は、咳・喘息、冷えとの関係も確認すると理解が深まります。
麻黄を含む漢方薬
麻黄は、感冒初期・咳喘息を整える処方に配合されます。麻黄の体表を発散させ気道を開く働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 夜に飲むと眠れなくなりますか?
覚醒的に働くことがあるため、就寝前は避けることが多いです。動悸や不眠が出たら中止し、専門家に相談してください。
Q. 発汗が強くてつらいのですが?
体質や処方により発汗が強まることがあります。脱水に注意し、症状が強い場合は中止して専門家へ相談してください。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
実証寄りで冷えをともなう感冒初期、気道平滑筋のけいれん性の咳のタイプに向きます。循環器疾患・高血圧などの方は自己判断での使用を避けてください。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
麻黄は、体表を発散させ気道を開いて咳を鎮める生薬ですが、感冒や咳の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

あなたに合う漢方薬を確認しませんか?
KanpoNowでは、症状と体質をもとに、あなたに合った漢方薬の候補をAIが提案します。漢方薬剤師・堀口和彦先生の理論に基づき、AIがあなたの体質を判定します。【AI漢方診断】をご利用ください。
AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。動悸が強い、息切れや胸痛、激しい頭痛、血圧の急上昇がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。循環器疾患・高血圧・甲状腺機能亢進症・前立腺肥大などの方は自己判断を避け、症状が長引く・悪化する場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。