麻子仁(ましにん)
まずは要点
- どんな生薬? 麻子仁(ましにん)はアサ(Cannabis sativa)の成熟種子を乾燥した生薬で、伝統的に潤腸通便・養陰潤燥のはたらきが知られます。乾燥傾向の便秘(高齢者・産後など)、硬便・腹満などに配合されます。*①②③
- 中身は? 脂肪油(リノール酸・オレイン酸など)、タンパク質、微量の配糖体・フェノール類などを含みます。*①③
- 注意点 激しい腹痛や血便、長期に改善しない便秘、原因不明の体重減少などの際は受診を検討します。自己判断での長期連用や過量は避け、用法・用量を守ります。*④
麻子仁の基礎データ
- 読み方: ましにん
- 基原・由来: アサ(Cannabis sativa L., アサ科)の成熟種子。日本薬局方収載(生薬名:CANNABIS SEMEN)。*②④
- 主要成分: 脂肪油(リノール酸・オレイン酸など)、タンパク質、フェノール類ほか。*①③
- 性味: 甘 / 平 帰経: 脾・胃・大腸。*①②
伝統的な使われ方
体液が不足して腸が潤いを失ったタイプの便秘(乾燥・硬便・腹満感)に用います。大黄や厚朴などと合わせて通便と気滞の改善を図り(麻子仁丸)、当帰や地黄などと併用して潤いを補う処方(潤腸湯)にも配合されます。*①②③
この生薬を含む漢方薬例
- 潤腸湯(じゅんちょうとう)(便秘など)
- 麻子仁丸料(ましにんがんりょう)(便秘・腹部膨満・痔など)
- 炙甘草湯(しゃかんぞうとう)(動悸、息切れ、脈の乱れなど)
- 麻仁潤腸丸(まにんじゅんちょうがん)
安全性と受診の目安
腹痛を伴う急性の便秘、下血・血便、吐き気や嘔吐を伴う腸閉塞が疑われる場合は速やかに受診してください。小児・高齢者、基礎疾患や他剤併用がある場合は専門家に確認を。自己判断での長期連用・過量は避けます。*④
- すぐ相談: 強い腹痛、血便・黒色便、嘔吐や発熱を伴う場合。
- 服薬中: 症状が改善しない、悪化する場合は受診。
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
よくある質問
Q. どんな体質・症状に向きますか?
A. 乾燥傾向で腸の潤いが不足し、硬便・腹満・便秘を繰り返す体質(高齢者・産後・虚弱など)に向きます。*①②
Q. どの処方で見ることが多いですか?
A. 代表は麻子仁丸と潤腸湯で、前者は通便・理気、後者は血を補い潤す構成で使い分けます。*①②③
*参考・出典
- 公益社団法人 東京生薬協会「マシニン(麻子仁)」 ①
- ツムラ「漢方ビュー|生薬辞典:麻子仁」 ②
- 富山大学 和漢医薬学総合研究所「伝統医薬DB:麻子仁」 ③
- MSDマニュアル家庭版:受診の目安 ④