山椒(さんしょう)とは?冷えの腹痛下痢腹部膨満・しぶり腹・寄生虫症状に使う生薬を体質別に解説

山椒(さんしょう)は、うなぎや七味唐辛子でおなじみの、ミカン科サンショウの果皮を用いる生薬です。胃腸を内側から温めて冷えをさばき、冷えの痛みをやわらげ、虫をくだす働き(温中散寒・止痛・殺虫)から、冷えによる腹痛・下痢・腹部膨満、しぶり腹、寄生虫症状の補助のケアに用いられてきました。腸の冷えを温める大建中湯の要薬として知られます。「山椒は小粒でぴりりと辛い」と言われる、存在感のある生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「胃腸を強く温めて冷えの痛みをさばく生薬」として整理します。
- 山椒(さんしょう)はサンショウ(Zanthoxylum piperitum)の果皮を乾燥した生薬で、伝統的に温中散寒・止痛・殺虫のはたらきが知られます。冷えによる腹痛・下痢、しぶり腹、寄生虫症状の補助などに応用され、大建中湯の要薬としても知られます
- 主成分は精油(サンショオール、リモネン等)、サンショウアミド類、リグナン、フラボノイドなどです
- 漢方では、胃腸を内側から温めて冷えをさばき(温中散寒)、冷えの痛みをやわらげ(止痛)、虫をくだす(殺虫)働きで用いられます
- 実熱・口臭・便秘が強いタイプには不向きで、妊娠中の使用は慎重にします
山椒は辛味が強く、胃炎や口内びらんなど粘膜刺激が強い場合は避けます。実熱・口臭・便秘が強いタイプには不向きで、妊娠中の使用は慎重にします。辛味成分による胃腸刺激に注意し、長期連用・過量は避けてください。
山椒とは
山椒(さんしょう)は、ミカン科のサンショウ(Zanthoxylum piperitum DC.)の成熟した果皮を、種子をできるだけ除いて乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。「椒」の字には「芳しい」の意があり、山の薫り高い実であることから「山椒」の名がついたとされます。うなぎの粉山椒や七味唐辛子(山椒・唐辛子・胡麻・麻子仁・陳皮・罌粟子・紫蘇子)でおなじみの、日本固有の香辛料です。『神農本草経』の下品に「蜀椒(しょくしょう)」として収載された、歴史の古い生薬です。
漢方薬剤師の視点では、山椒は代表的な「温裏薬(体の内側を温める生薬)」です。芳香と辛味の刺激が内臓を活性化し、胃腸を内側から強く温めて冷えをさばき、冷えの痛みをやわらげ、虫をくだします。冷えによる腹痛・下痢・腹部膨満、しぶり腹、消化不良、回虫などの寄生虫症状に用いられます。とくに、乾姜・人参・膠飴とともに大建中湯を構成し、腸の冷え・蠕動の低下による腹痛・腹部膨満をさばく要薬です。烏梅丸(回虫症)、当帰湯(冷えの胸腹痛)にも配合されます。
基原・成分データ
山椒の基本データを整理します。サンショオールを含むこと、温裏薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。山椒は、烈しく辛く、温かい性質で、脾・胃・腎に働きます。
「辛」は温めて発散させ、めぐらせる味とされます。烈しい辛味で、胃腸を強く温めて冷えをさばき、痛みをやわらげる働きと結びつきます。
「温(熱に近い温)」は強く温める性質で、冷えきった胃腸をあたためて冷えの痛みをさばく方向に働きます。
脾・胃を強く温めて冷えの腹痛・下痢をさばき、腎を温めて下焦の冷えをやわらげる方向に働きます。冷えの腹痛・腹部膨満・消化不良に関わります。
漢方的な働きの軸
山椒の働きは、大きく三つの軸で整理できます。胃腸を温める軸、痛みをやわらげる軸、虫をくだす軸が重なり、冷えによる胃腸の不調を整えます。
伝統的な使われ方
山椒は古くから、温中散寒・止痛・殺虫を目的に用いられてきました。冷えによる腹痛・下痢・腹部膨満、しぶり腹、消化不良や消化不良による胸苦しさ・みぞおちのつかえ、腹部のガスの停滞、回虫などの寄生虫症状などのケアに用いられてきた歴史があります。芳香辛味性の健胃薬として、胃腸の働きの弱くなった消化不良・食欲不振・胃下垂にも応用されます。
乾姜・人参・膠飴と組み合わせて、腸の冷え・蠕動の低下による腹痛・腹部膨満をさばく処方(大建中湯)に配合されます。大建中湯は、腸管手術後のイレウス(腸閉塞)の予防・改善などにも用いられ、山椒がお腹を温めて回復を助けます。このほか、烏梅などと組み合わせて回虫症による腹痛をやわらげる処方(烏梅丸)、当帰などと組み合わせて冷えの胸腹痛をやわらげる処方(当帰湯)に配合されます。
形状・味・使われ方の体感
山椒は、私たちのよく知る、見た目・香り・味の特徴をもちます。
赤褐色の果皮
径4〜5mmの果実がはじけた、赤褐色の果皮。種子をできるだけ除いたものを用います。果柄や種子が除かれ、香りと辛味の強いものが良品とされます。
爽やかで高い芳香
爽やかで高い、独特の芳香があります。この芳香(リモネン等の精油)が、内臓を活性化し、胃腸を温めめぐらせる働きの中心です。
舌がしびれる辛味
「小粒でぴりりと辛い」と言われるとおり、舌がしびれるような独特の辛味があります。この辛味(サンショオール)が、温め・止痛・殺虫の働きの中心です。
体質別の向き・不向き
山椒は胃腸を強く温める、刺激の強い生薬です。冷えの腹痛や消化不良があるか、逆に実熱や便秘・妊娠中でないかを見極めることが大切です。
冷えによる腹痛・下痢・腹部膨満
お腹が冷えて、腹痛・下痢・腹部膨満、みぞおちのつかえが出るタイプに向きます。山椒の中心的な使い道で、大建中湯の要薬です。
判断ポイント:お腹が冷えて痛む・張る。胃腸虚弱の消化不良・寄生虫症状
胃腸の働きが弱くなった消化不良・食欲不振や、回虫などの寄生虫症状の補助に用いられてきました。冷えや虫による腹部症状で候補になります。
判断ポイント:消化不良・冷えの胃腸虚弱。胃炎・口内びらんのある方
辛味が強く粘膜を刺激するため、胃炎や口内びらんなど粘膜刺激が強い場合は避けます。胃部不快が出る場合は用量に注意します。
判断ポイント:胃炎・口内びらんがあれば避ける。実熱・便秘が強い方・妊娠中
強く温める性質のため、実熱・口臭・便秘が強いタイプには不向きです。妊娠中の使用は慎重にし、専門家に相談してください。
判断ポイント:実熱・便秘・妊娠中には使わない。安全性と受診の目安
山椒は香辛料としても親しまれますが、生薬としては辛味が強く、胃腸を刺激します。胃炎や口内びらんなど粘膜刺激が強い場合は避け、実熱・便秘が強いタイプには不向きです。妊娠中の使用は慎重にしてください。長時間持続的な腹痛・血便・嘔吐、高熱や強い脱水を伴う下痢は、別の原因の確認が必要です。長期連用・過量は避け、他剤併用中や基礎疾患のある方は専門家に相談してください。
- すぐに相談:38.5℃以上の発熱、持続する激痛、黒色便・血便、意識障害
- 服薬中:胃部不快感や悪心が強く、症状が改善しない/悪化する場合は中止し受診する。他剤併用・基礎疾患がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
山椒が気になる方は、腹痛、冷え、食欲不振との関係も確認すると理解が深まります。
山椒を含む漢方薬
山椒は、腸の冷えをさばく処方に配合されます。山椒の温める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 花椒(かしょう/ホアジャオ)との違いは?
どちらも Zanthoxylum 属ですが、山椒は主に Z. piperitum(日本在来)、花椒は Z. bungeanum など中国種です。薬能は似ていますが、香り・辛味の質や選品が異なります。花椒は四川料理などに欠かせない香辛料です。
Q. 大建中湯での役割は?
山椒は温中散寒・止痛の要薬で、乾姜の温性と相乗し、人参・膠飴とともに腸管の蠕動や循環を整えます。術後の腸管機能回復などでの応用は、医師の指示に従ってください。
Q. 性味・帰経は?
性味は辛/温、帰経は脾・胃・腎とされます。胃腸を内側から強く温めて冷えをさばき、冷えの痛みをやわらげ、虫をくだす働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
山椒は、胃腸を内側から強く温めて冷えの痛みをさばく生薬ですが、腹痛や冷え、消化不良の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

あなたに合う漢方薬を確認しませんか?
KanpoNowでは、症状と体質をもとに、あなたに合った漢方薬の候補をAIが提案します。漢方薬剤師・堀口和彦先生の理論に基づき、AIがあなたの体質を判定します。【AI漢方診断】をご利用ください。
AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。38.5℃以上の発熱、持続する激痛、黒色便・血便、意識障害などがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。実熱・便秘が強いタイプには不向きで、妊娠中の使用は慎重にしてください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。