石膏(せっこう)とは?高熱・口渇・のぼせやほてり、熱性の咳に使う清熱瀉火の生薬を体質別に解説

石膏(せっこう)は、天然に産する含水硫酸カルシウム鉱石を精製し、砕いて用いる鉱物性の生薬です。体にこもった強い熱を力強く冷ます働き(清熱瀉火)から、高熱・強い口の渇き・多汗をともなうのぼせやほてり、肺の熱による咳や喘鳴のケアに用いられてきました。植物・動物由来の生薬とは異なり、鉱物そのものを用いるのが大きな特徴です。KanpoNowでは、この生薬を「体にこもった強い熱を力強く冷ます生薬」として整理します。
- 石膏(せっこう)は天然の含水硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O)を精製した鉱物性の生薬で、日本薬局方に収載されています*①③
- 主成分は硫酸カルシウム二水和物で、無臭・無味に近く水にほとんど溶けません*①
- 漢方では、体にこもった強い熱を力強く冷まし(清熱瀉火)、消耗した体液を守りながら渇きを止める(生津止渇)働きで用いられます*①②
- 大寒の性質が強く冷やす力が強いため、冷え・胃腸虚弱の方には慎重に用います。持病がある場合は専門家に相談してください
石膏は大寒の性質が強く、体を強く冷やす方向にはたらくため、冷え性・胃腸虚弱の方には慎重に用います。39℃以上の高熱が続く、激しい頭痛や呼吸困難がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。多くの場合、他の生薬と組み合わせて用いられます。
石膏とは
石膏(せっこう)は、天然に産する含水硫酸カルシウム鉱石を精製し、細かく砕いて用いる鉱物性の生薬です。『神農本草経』の中品にも収載される歴史の古い生薬で、色が白く清らかで、繊維状に結晶がみられ砕けやすいものが良品とされます。植物性・動物性の生薬とは異なり鉱物由来であることが大きな特徴で、日本漢方では陽明病期の裏熱証、中国医学では肺・胃における気分の実熱証に用いる要薬として位置づけられています。
漢方薬剤師の視点では、石膏は「清熱瀉火薬(体にこもった熱を除去する生薬)」に分類されます。高熱・強い口の渇き・多汗・顔面紅潮などの陽明熱に、知母・粳米などと配合され(白虎湯・白虎加人参湯)、肺熱による呼吸促迫・咳嗽には麻黄・杏仁などと配合されます(麻杏甘石湯)。同じ清熱瀉火薬に分類される山梔子・知母などと働きが近い一方、石膏は鉱物ゆえに冷ます力が強く、熱性疾患の急性期に用いられることが多いのが特徴です。
基原・成分データ
石膏の基本データを整理します。鉱物性の生薬であること、硫酸カルシウム二水和物を主成分とすることが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。石膏は、辛く甘く、非常に冷やす性質(大寒)で、肺・胃に働きます。
「辛」は発散させ熱を散らす味、「甘」は体液を生み渇きを止める味とされます。強い熱を散らし、渇きを止める働きと結びつきます。
石膏は「大寒」に分類される非常に冷やす性質で、体にこもった強い実熱を力強く冷ます方向に働きます。
胃に働いて陽明熱(高熱・口渇・多汗)を冷まし、肺に働いて熱性の咳嗽・喘鳴をやわらげる方向に働きます。
漢方的な働きの軸
石膏の働きは、大きく二つの軸で整理できます。強い熱を力強く冷ます軸、消耗した体液を守りながら渇きを止める軸が重なり、陽明熱・肺熱を整えます。
伝統的な使われ方
石膏は古くから、清熱瀉火・生津止渇を目的に用いられてきました。高熱・強い口の渇き・多汗・顔面紅潮などの陽明熱、肺熱による呼吸促迫・咳嗽・喘鳴、歯痛や頭痛、いらだち・落ち着かなさ(煩躁)などのケアに用いられてきた歴史があります。石膏は肺・胃の気分に入り、強い熱を力強く冷ます力が特徴です。
知母・粳米・甘草などと組み合わせて、高熱・強い口の渇き・多汗を整える処方(白虎加人参湯)、麻黄・杏仁などと組み合わせて、肺熱による咳嗽・喘鳴を整える処方(麻杏甘石湯)に配合されます。冷やす力が強いため、他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。なお、そのまま砕いて用いる「生石膏」は清熱瀉火・除煩止渇の内服に、火で焼いた「煅石膏」は収斂・生肌を目的とした外用にと、加工により用途が使い分けられます。
形状・味・使われ方の体感
石膏は、鉱物ならではの特徴をもつ生薬です。
白色〜半透明の板状・繊維状結晶
光沢のある白色の重い繊維状結晶塊で、砕くと針状〜微細結晶性の粉末になります。色が白く清らかで、繊維状に結晶がみられ砕けやすいものが良品とされます。
無味無臭に近い
においも味もほとんどなく、水にも溶けにくい鉱物です。大寒性で、体を強く冷やす方向に働きます。
先煎(せんせん)が基本
硬い鉱物のため、煎じ薬では他の生薬より先に長めに煮出す「先煎」が基本とされます。用量は症状に応じて幅があります。
体質別の向き・不向き
石膏は熱を力強く冷ます生薬です。実熱があるか、逆に冷え・胃腸虚弱でないかを見極めることが大切です。
陽明熱・実熱タイプ
高熱・強い口の渇き・多汗・顔面紅潮がみられるタイプに向きます。石膏の中心的な使い道です。
判断ポイント:高熱・強い口渇・多汗。肺熱による咳嗽・喘鳴タイプ
熱を伴う咳や呼吸のゼーゼー感が続くタイプのケアに用いられてきました。
判断ポイント:熱をともなう咳・喘鳴。胃腸がやや弱いタイプ
大寒の性質のため、胃腸が弱い方は量や配合を調整し、様子を見ながら用います。
判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。冷え性・陽虚タイプ
手足が冷えやすく新陳代謝が低いタイプには基本的に不向きです。
判断ポイント:冷え・陽虚は慎重に。安全性と受診の目安
石膏は処方の中で用いられる清熱瀉火薬ですが、大寒の性質が強く体を強く冷やすため、冷え性・胃腸虚弱の方には慎重に用います。体質や体調により腹部不快・下痢などの消化器症状が出ることもあります。39℃以上の高熱が続く、激しい頭痛や呼吸困難がある、ぐったりして水分が取れない場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:39℃以上の高熱が続く、激しい頭痛や呼吸困難がある、ぐったりして水分が取れない
- 服薬中:症状が改善しない・悪化する場合は中止し受診する。冷え・胃腸虚弱の方、持病・他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
石膏が気になる方は、のぼせ、ほてり、咳・喘息との関係も確認すると理解が深まります。
石膏を含む漢方薬
石膏は、陽明熱・肺熱を整える処方に配合されます。石膏の強い熱を力強く冷ます働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 白虎湯との関係は?
白虎湯は石膏と知母を中心とした代表的な処方で、強い熱・口渇・汗出を冷ますことを目的とします。石膏はその中で清熱瀉火・除煩止渇の役割を担います。
Q. 生石膏と煅石膏は同じものですか?
同じ石膏でも、生のまま用いる生石膏は清熱瀉火の内服に、火で焼いた煅石膏は収斂を目的とした外用にと、用途が異なります。製品の記載を確認することが大切です。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
高熱・強い口の渇き・ほてり・多汗などの陽明熱、熱性の咳嗽・喘鳴、歯痛・頭痛などに向きます。冷え・胃腸虚弱の方は注意しながらの使用が必要です。
参考・出典
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石膏は、体にこもった強い熱を力強く冷ます生薬ですが、熱の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。39℃以上の高熱が続く、激しい頭痛や呼吸困難がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。大寒の性質が強く体を冷やすため、冷え性・胃腸虚弱の方には慎重に用い、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。