石斛(せっこく)とは?口の渇き・咽喉の乾燥・微熱や寝汗、目の乾き疲れ目に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月8日 監修:堀口和彦
石斛(せっこく)

石斛(せっこく)は、ラン科セッコク属(Dendrobium nobile など)植物の茎を乾燥して用いる生薬です。体液(陰)を養いながら熱を冷ます働き(養陰清熱)から、口の渇き・咽喉の乾燥、微熱・寝汗、また目の乾き・疲れ目のケアに用いられてきました。古来より虚弱体質者の強壮を目的に用いられてきた、滋陰薬の代表的な生薬のひとつです。KanpoNowでは、この生薬を「体液を養いながら渇きと熱をやわらげる生薬」として整理します。

まずは要点
  • 石斛(せっこく)はラン科Dendrobium属植物の茎を乾燥した生薬で、『神農本草経』上品にも収載される滋陰薬です*①③
  • 主成分はアルカロイド(デンドロビン類)、多糖、フェノール類などです*②
  • 漢方では、体液(陰)を養いながら熱を冷まし(養陰清熱)、渇きを止め(生津止渇)、目を明るくする(明目)働きで用いられます*①②③
  • 胃腸が弱く食欲不振・軟便・腹満が目立つ脾虚湿盛タイプには適しません。心配な場合は専門家に相談してください

石斛は硬い茎で成分が出にくいため、煎じ方に工夫が必要です。脾虚湿盛(食欲不振・軟便・腹満)が目立つ場合は自己判断で対処せず、専門家へご相談ください。多くの場合、他の生薬と組み合わせて用いられます。

石斛とは

石斛(せっこく)は、ラン科セッコク属植物(Dendrobium nobile Lindl. など)の茎を乾燥させた生薬です。『神農本草経』の上品に収載され、「味は甘・平。中傷を主治し、痺を除き、気を下し、五臓の虚労による羸痩を補い、陰を強くする」と記載され、古来より虚弱体質者の強壮を目的に用いられてきた高貴薬として知られています。中医学では陰虚・腎虚を改善する滋陰薬に分類され、熱病による口渇、胃陰虚による消渇、腎陰虚による視力減退や腰膝の無力感などに応用されます。

漢方薬剤師の視点では、石斛は「滋陰薬(体液・陰を補う生薬)」に分類されます。胃陰を養って口渇・咽喉の乾燥を潤し(養胃生津)、腎陰を養って目の乾き・視力疲労をやわらげます(明目)。新鮮なもの(鮮石斛)は清熱生津の力が強く熱病傷津に、乾燥品(乾石斛)は一般の陰虚に用いられるなど、加工の違いによっても使い分けられます。

ポイント:石斛は「体液を養いながら渇きと熱をやわらげる」生薬です。口の渇き・咽喉の乾燥・微熱・寝汗、目の乾き・疲れ目が気になるタイプに用いられてきました。硬い茎で成分が出にくいのが特徴です。

基原・成分データ

石斛の基本データを整理します。ラン科植物の茎を用いること、デンドロビン類などのアルカロイドを含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

石斛(セッコク)の生薬
石斛の基礎データ
ラン科Dendrobium属植物の茎を乾燥した生薬。体液を養いながら渇きと熱をやわらげる働きがあります。
読み セッコク(ラン科植物の茎を用いる生薬)
基原・由来 ラン科 Dendrobium nobile Lindl. などの茎 *①③
主成分 アルカロイド(デンドロビン類)、多糖、フェノール類 等 *②

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。石斛は、甘くわずかに鹹く、やや冷やす性質(微寒)で、胃・腎に働きます。

味(五味)
辛 甘 酸 苦 鹹

「甘」は体液を生み潤す味、「鹹」はやわらげて滋養する味とされます。体液を養いながら渇きを止める働きと結びつきます。

性(四気)
熱 温 平 涼 寒

「微寒」はやや涼〜寒寄りの性質で、体液を養いながら熱をおだやかに冷ます方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)
胃 腎

胃に働いて口の渇き・咽喉の乾燥を潤し、腎に働いて目の乾き・視力疲労をやわらげる方向に働きます。

漢方的な働きの軸

石斛の働きは、大きく三つの軸で整理できます。体液を養いながら熱を冷ます軸、渇きを止める軸、目を明るくする軸が重なり、陰虚熱証・目の乾きを整えます。

体液を養い熱を冷ます軸 養陰清熱 体液(陰)を補いながら、熱病後に残る微熱や寝汗をやわらげる方向に働きます。
渇きを止め潤いを生む軸 生津止渇 胃陰を養って津液を生み出し、強い口の渇きや咽喉の乾燥を潤す方向に働きます。
目を明るくする軸 明目 腎陰を補うことで、目の乾き・視力疲労・かすみをやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:石斛は「体液を養いながら渇きと熱をやわらげ、目を明るくする」生薬です。口の渇き・咽喉の乾燥・微熱・寝汗、目の乾き・疲れ目のタイプに輪郭がはっきりします。硬い茎で成分が出にくいのが特徴です。

伝統的な使われ方

石斛は古くから、養陰清熱・生津止渇・明目を目的に用いられてきました。口の渇き・咽喉の乾燥、微熱・寝汗のほか、目の乾燥・視力疲労のケアに用いられてきた歴史があります。石斛は胃・腎の陰分に入り、体液を養いながら熱をおだやかに冷ます力が特徴です。

口内炎・舌の荒れや痛み・歯周炎などを整える処方(甘露飲)に配合されます。このほか、目の症状に用いる石斛夜光丸、夏の暑気あたりに用いる清暑益気湯、胃陰を養う益胃湯などへの配合も知られています。硬い茎で成分が出にくいため、他の生薬と組み合わせ、煎じ方を工夫して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

石斛は、ラン科植物の茎ならではの特徴をもつ生薬です。

形

黄色〜淡黄褐色の硬い茎

硬く締まった茎状の乾燥生薬。黄色〜淡黄褐色で、光沢のあるものが良品とされます。

味

甘みとわずかな鹹味

甘みとわずかな鹹味があり、微寒性。潤いを補う滋陰薬らしい、やわらかな味わいです。

用

長めに煎じるのがコツ

硬質で成分が出にくいため、やや長めに煎じるか、細切りにして前処理のうえ用います。胃がもたれやすい場合は量を控えめに。

体質別の向き・不向き

石斛は体液を養う生薬です。陰虚熱証があるか、逆に脾虚湿盛でないかを見極めることが大切です。

◎

陰虚熱証・熱病傷津タイプ

口の渇き・咽喉の乾燥・微熱・寝汗が続くタイプに向きます。石斛の中心的な使い道です。

判断ポイント:口渇・咽喉乾燥・微熱・寝汗。
◯

目の乾き・疲れ目タイプ

視力疲労や目のかすみ・乾燥が気になるタイプのケアに用いられてきました。

判断ポイント:目の乾燥・視力疲労。
△

胃腸がやや弱いタイプ

胃もたれしやすい方は量を控えめにし、様子を見ながら用います。

判断ポイント:量を調整して使用。
×

脾虚湿盛タイプ

食欲不振・軟便・腹満が目立つ場合は基本的に不向きです。

判断ポイント:脾虚湿盛は使用を避ける。

安全性と受診の目安

石斛は処方の中で用いられる滋陰薬ですが、脾虚湿盛(食欲不振・軟便・腹満)が目立つ場合には適しません。胃がもたれやすい場合は量を控えめにするなどの工夫が必要です。39℃以上の発熱、激しい咽頭痛・嚥下困難、急速に悪化する眼症状がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。

  • すぐに相談:39℃以上の発熱、激しい咽頭痛・嚥下困難、急速に悪化する眼症状・眼痛、意識障害
  • 服薬中:症状が改善しない・悪化する場合は中止し受診する。腹部膨満・軟便が続く場合、脾虚湿盛タイプの方は専門家に相談する
すぐ相談:高熱、強い喉の腫れ、急な視力低下・眼痛、意識障害がある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

石斛が気になる方は、口の渇きとの関係も確認すると理解が深まります。

石斛を含む漢方薬

石斛は、陰虚熱証を整える処方に配合されます。石斛の体液を養う働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

よくある質問

Q. 麦門冬(ばくもんどう)や玉竹(ぎょくちく)との使い分けは?

いずれも養陰・生津に用いますが、石斛はとくに清熱・明目を兼ね、熱病後の口渇や目の疲れを伴う陰虚に適します。麦門冬は潤肺止咳の比重が高く、玉竹は養胃・滋陰に比重があります。

Q. 煎じ方のコツは?

硬質の茎で成分が出にくいため、やや長めに煎じるか、細切りにして前処理のうえ用います。胃がもたれやすい場合は量を控えめにします。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

口の渇き・咽喉の乾燥・微熱・寝汗が続く陰虚熱証タイプ、目の乾き・疲れ目が気になるタイプに向きます。胃腸が弱く食欲不振・軟便が目立つ方は注意が必要です。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

石斛は、体液を養いながら渇きと熱をやわらげる生薬ですが、乾きや熱の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。39℃以上の発熱、急速に悪化する眼症状がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。脾虚湿盛(食欲不振・軟便・腹満)が目立つ場合には適さないため、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。