紫根(しこん)とは?火傷凍傷ひびあかぎれ・湿疹皮膚炎にきび・発疹に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月5日 監修:堀口和彦
紫根(しこん)

紫根(しこん)は、古くから高貴な紫色の染料として知られる、ムラサキの根を用いる生薬です。血の熱を冷まして解毒し、皮膚のできものや発疹をさばき、傷の治りを助ける働き(清熱涼血・解毒透疹・活血生肌)から、火傷・凍傷・ひび・あかぎれ、湿疹・皮膚炎・にきび、発疹のケアに用いられてきました。とくに、華岡青洲が考案した外用の軟膏「紫雲膏」に配合されることで広く知られます。KanpoNowでは、この生薬を「血の熱を冷まして解毒し、皮膚と傷を癒す生薬」として整理します。

まずは要点
  • 紫根(しこん)はムラサキ科ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon)の根を乾燥した生薬で、清熱涼血・解毒透疹・活血生肌のはたらきが知られます。火傷・凍傷・ひび・あかぎれ、湿疹・皮膚炎・にきび、発疹などに応用されます
  • 主成分はナフトキノン系色素のシコニン類(シコニン、アセチルシコニン等)、ロスマリン酸などのポリフェノールで、抗炎症・抗菌・創傷治癒促進などの作用が報告されています
  • 漢方では、血の熱を冷まして解毒し(清熱涼血・解毒)、発疹をさばき(透疹)、傷の治りを助ける(活血生肌)働きで用いられます
  • とくに外用の軟膏「紫雲膏」で知られ、火傷・ひび・あかぎれなどに用いられます

紫根は、広範囲や深い傷、高熱をともなう感染の徴候、強い痛みや出血をともなう傷、顔や関節部の重度の熱傷などの際は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。自己判断での長期連用・過量は避け、用法・用量を守ってください。

紫根とは

紫根(しこん)は、ムラサキ科のムラサキ(Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zucc.)の根を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。ムラサキは草丈30〜60cmの多年草で、初夏に白い小さな花を咲かせ、根が紫色をしています。名の「紫草」は根が紫色であることに由来します。『神農本草経』に「紫草」の名で収載された、歴史の古い生薬です。根は古くから高貴な紫色の染料として珍重され、法隆寺の宝物にも紫根で染めたものが残り、江戸時代には庶民の色「江戸紫」として親しまれました。現在、野生のムラサキは激減し、絶滅危惧種に指定される「幻の薬草」です。

漢方薬剤師の視点では、紫根は「清熱涼血薬」に分類されます。血の熱を冷まして解毒し(清熱涼血・解毒)、皮膚の発疹をさばき(透疹)、傷の治りを助けます(活血生肌)。シコニン類には、抗炎症・抗菌・創傷治癒促進などの作用が報告されています。火傷・凍傷・外傷の治りの促進、湿疹・皮膚炎・にきびなどの皮膚トラブル、麻疹などの発疹に用いられます。とくに、江戸時代の名医・華岡青洲が考案した外用の軟膏「紫雲膏」(紫根・当帰・豚脂・ゴマ油・ミツロウ)に配合され、火傷・ひび・あかぎれ・痔などに広く用いられます。内服では、紫根牡蛎湯として皮膚・粘膜症状に用いられます。

ポイント:紫根は「血の熱を冷まして解毒する」「発疹をさばく」「傷の治りを助ける」生薬です。火傷・凍傷・ひび・あかぎれ、湿疹・皮膚炎・にきび、発疹などが気になるタイプに用いられてきました。とくに外用の軟膏「紫雲膏」で知られます。

基原・成分データ

紫根の基本データを整理します。シコニンを含むこと、清熱涼血薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。

紫根(シコン)の生薬
紫根の基礎データ
ムラサキ科ムラサキの根を用いる生薬。血の熱を冷まして解毒し、皮膚と傷を癒す働きがあります。
読み シコン(ムラサキの根・紫草)
基原・由来 ムラサキ科ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zucc.)の根。日本薬局方収載 *①②
主成分 ナフトキノン系色素シコニン類(シコニン、アセチルシコニン等)、ロスマリン酸、リトスペルミン酸 *②③

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。紫根は、甘く塩からく、冷やす寒の性質で、心・肝に働きます。

味(五味)
甘 辛 酸 苦 鹹

「甘」は調え養う味、「鹹(塩からい)」はやわらげさばく味とされます。血の熱を冷まして解毒し、皮膚をやわらげる働きと結びつきます。

性(四気)
熱 温 平 涼 寒

「寒」は冷やす性質で、血の熱・皮膚の炎症を冷ます方向に働きます。冷えの強い体質には慎重に用います。

帰経(働きかける臓腑)
心 肝

心・肝の血に働いて熱を冷まし、血の熱による皮膚の赤み・発疹・炎症をさばく方向に働きます。火傷・湿疹・皮膚炎・発疹に関わります。

漢方的な働きの軸

紫根の働きは、大きく三つの軸で整理できます。血の熱を冷まして解毒する軸、発疹をさばく軸、傷の治りを助ける軸が重なり、血の熱による皮膚トラブルを整えます。

血の熱を冷まして解毒する軸 清熱涼血・解毒 血の熱を冷まして解毒し、皮膚の赤み・炎症・化膿、湿疹・皮膚炎・にきびをやわらげる方向に働きます。
発疹をさばく軸 解毒透疹 血の熱による斑疹・麻疹などの発疹を、体表へすっきり出してさばく(透疹)方向に働きます。
傷の治りを助ける軸 活血生肌 血のめぐりを助けて、火傷・凍傷・ひび・あかぎれ・外傷の治り(肉芽形成)を助ける方向に働きます。紫雲膏の要となる働きです。
一言でいうと:紫根は「血の熱を冷まして解毒し、発疹をさばき、傷の治りを助ける」生薬です。火傷・凍傷・ひび・あかぎれ、湿疹・皮膚炎・にきび、発疹のタイプに輪郭がはっきりします。とくに外用の軟膏で活きます。

伝統的な使われ方

紫根は古くから、清熱涼血・解毒透疹・活血生肌を目的に用いられてきました。火傷・凍傷・外傷の治りの促進、湿疹・皮膚炎・にきびなどの皮膚トラブル、血の熱による斑疹・麻疹の透疹などのケアに用いられてきた歴史があります。外用・内用ともに血行を促進し、皮膚の機能を回復させるとされ、抗炎症・抗菌・創傷治癒促進の作用が、現代の研究でも報告されています。

当帰・豚脂・ゴマ油・ミツロウと組み合わせて、火傷・ひび・あかぎれ・痔などに用いる外用の軟膏(紫雲膏)に配合されます。紫雲膏では、紫根が抗炎症・解毒・肉芽形成を、当帰が血行促進・鎮痛を担います。華岡青洲が考案したこの軟膏は、現在も広く用いられています。内服では、牡蛎などと組み合わせて、湿疹・皮膚炎、貧血をともなう皮膚・粘膜症状を整える処方(紫根牡蛎湯)に配合されます。このほか、紫草快斑湯・紫草消毒飲など、発疹・化膿を整える処方にも用いられてきました。

形状・色・使われ方の体感

紫根は、鮮やかな紫色が最大の特徴の生薬です。

形

ねじれた紫色の根

太く、ねじれながら枝分かれした根。外面は暗紫色〜紫黒色。しばしば縦に裂けます。色が濃く鮮やかで、太いものが良品とされます。

色

高貴な紫色の色素

シコニンによる鮮やかな紫色の色素をもち、油に溶け出します。古くから高貴な紫の染料(江戸紫)として、また紫雲膏の赤紫色として親しまれてきました。

用

軟膏・煎じ

油に成分を移して軟膏(紫雲膏)として外用するほか、煎じ液として内服にも用いられます。医薬部外品・化粧品では「ムラサキ根エキス」として肌荒れ防止に使われます。

体質別の向き・不向き

紫根は血の熱を冷ます生薬です。血の熱による皮膚トラブルがあるか、逆に冷えて下しやすくないかを見極めることが大切です。

◎

火傷・凍傷・ひび・あかぎれ(外用)

火傷・凍傷・ひび・あかぎれ・軽い外傷のケアに向きます。紫根の中心的な使い道で、外用の軟膏「紫雲膏」として広く用いられます。

判断ポイント:火傷・ひび・あかぎれのケア。
◯

血の熱による湿疹・皮膚炎・にきび

血の熱による湿疹・皮膚炎・にきび、赤みのある皮膚トラブル、発疹のケアに用いられてきました。皮膚が熱をもって赤くなりやすいときに候補になります。

判断ポイント:赤み・化膿・繰り返す湿疹。
△

胃腸が弱く下しやすい方(内服)

内服では、冷やす性質のため、胃腸が弱く下しやすい方は、用量や配合に注意します。まれに皮膚に合わず、かぶれることがあります。

判断ポイント:軟便・かぶれが出れば調整。
×

ジュクジュクした滲出の強い傷(紫雲膏)

紫雲膏は油脂性のため、ジュクジュクと滲出の強い患部や、化膿がひどい傷には向きません。広範囲・深い傷、重度の熱傷は自己処置せず受診してください。

判断ポイント:滲出・化膿が強い傷には使わない。

安全性と受診の目安

紫根(紫雲膏など)は身近に用いられますが、広範囲や深い傷、高熱をともなう感染の徴候、強い痛みや出血をともなう傷、顔や関節部の重度の熱傷などの際は、自己処置せず、速やかに医療機関へご相談ください。ジュクジュクと滲出の強い患部には紫雲膏は向きません。まれに皮膚に合わずかぶれることがあります。小児・高齢者、基礎疾患や他剤併用がある場合は専門家に確認し、自己判断での長期連用・過量は避けてください。

  • すぐに相談:広範な熱傷・凍傷、膿の増悪、発赤の拡大、発熱
  • 使用中:症状が改善しない・悪化する、かぶれが出た場合は中止し受診する。小児・高齢者、基礎疾患・他剤併用がある場合は専門家に相談する
すぐ相談:広範囲や深い傷、高熱をともなう感染の徴候(膿の増悪・発赤の拡大・発熱)、強い痛みや出血をともなう傷、顔や関節部の重度の熱傷などがある場合は、自己処置せず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

紫根が気になる方は、肌荒れ、かゆみ、貧血との関係も確認すると理解が深まります。

紫根を含む漢方薬

紫根は、皮膚トラブルを整える処方・軟膏に配合されます。紫根の血の熱を冷まし傷を癒す働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

よくある質問

Q. 外用(紫雲膏)と内服の違いは?

外用(紫雲膏)は、火傷・凍傷・ひび・あかぎれ・皮膚炎などの局所に用いられます。内服は、涼血・解毒・透疹などを目的に、紫根牡蛎湯などの処方として限られた状況で用いられます。一般には外用の紫雲膏がよく知られています。

Q. 紫雲膏はどんな傷に向きますか?

紫雲膏は油脂性の軟膏で、火傷・ひび・あかぎれ・軽い外傷などに向きます。一方、ジュクジュクと滲出の強い患部や、化膿がひどい・広範囲・深い傷には向きません。判断に迷うときは専門家にご相談ください。

Q. 性味・帰経は?

性味は甘・鹹/寒、帰経は心・肝とされます。血の熱を冷まして解毒し、発疹をさばき、傷の治りを助ける働きがあります。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

紫根は、血の熱を冷まして解毒し、皮膚と傷を癒す生薬ですが、皮膚トラブルの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。広範囲や深い傷、高熱をともなう感染の徴候、強い痛みや出血をともなう傷、顔や関節部の重度の熱傷などがある場合は、自己処置せず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。ジュクジュクと滲出の強い患部には紫雲膏は向きません。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。