紫蘇子(しそし)とは?痰の多い咳喘鳴息苦しさ・便秘に使うシソの実の生薬を体質別に解説

紫蘇子(しそし)は、私たちになじみ深いシソ(紫蘇)の実(種子)を用いる生薬です。上に突き上げる気を降ろして呼吸を落ち着け、痰を減らして咳を止め、腸をうるおして便通を助ける働き(降気平喘・化痰止咳・潤腸通便)から、痰の多い咳・喘鳴・息苦しさ、痰のからむ咳、便秘傾向のケアに用いられてきました。蘇子降気湯の君薬(中心生薬)として知られます。KanpoNowでは、この生薬を「気を降ろして咳・痰をしずめ、腸をうるおす生薬」として整理します。
- 紫蘇子(しそし)はシソ科シソ/チリメンジソ(Perilla frutescens)の果実(種子)を乾燥した生薬で、蘇子(そし)とも呼ばれ、降気平喘・化痰止咳・潤腸通便のはたらきが知られます。痰の多い咳・喘鳴・息苦しさ、便秘などに配合されます
- 主成分は脂肪油(α-リノレン酸を多く含む)、精油(ペリルアルデヒド等)、フラボノイドなどです
- 漢方では、上に突き上げる気を降ろして呼吸を落ち着け(降気平喘)、痰を減らして咳を止め(化痰止咳)、腸をうるおして便通を助ける(潤腸通便)働きで用いられます
- 温めて乾かす性質があり、うるおい不足の空咳や、喉が痛く黄色く粘る痰の出る熱の咳には向きません。軟便の方には慎重に用います
紫蘇子は温燥性があり、痰が少なく空咳の出る陰虚証や、喉が痛く黄色く粘る痰の出る肺熱証の咳には使いません。潤腸通便の働きがあるため、軟便・下痢しやすい方には慎重に用います。持病や併用薬のある方は専門家に相談してください。
紫蘇子とは
紫蘇子(しそし)は、シソ科のシソ(Perilla frutescens Britton var. acuta)またはチリメンジソ(var. crispa)の成熟した果実(種子を含む分果)を乾燥させた生薬で、「蘇子(そし)」とも呼ばれます。シソは、薬味や刺身のツマとしておなじみの、日本人になじみ深い香り野菜です。縄文前期の貝塚からシソの種子が発見されており、本格的な栽培は平安時代に始まったと考えられます。シソは葉・茎・実がそれぞれ生薬になり、葉は蘇葉(そよう)、茎は紫蘇梗(しそこう)、実は紫蘇子(しそし)と呼ばれます。共通して「気を巡らせる」働きをもちます。
漢方薬剤師の視点では、紫蘇子は「止咳平喘薬(咳をしずめ呼吸を楽にする生薬)」に分類されます。上に突き上げる気(気逆)を降ろして呼吸を落ち着け(降気平喘)、痰を減らして咳を止め(化痰止咳)、腸をうるおして便通を助けます(潤腸通便)。痰がからんで気が逆上する咳・喘鳴・息苦しさ、痰の多い咳、腸の乾きによる便秘に用いられます。とくに、上逆した気を降ろす処方「蘇子降気湯」の君薬(中心生薬)として知られ、体力が弱く、足の冷え・のぼせをともなう痰の多い咳・喘鳴に用いられます。
基原・成分データ
紫蘇子の基本データを整理します。α-リノレン酸を含むこと、止咳平喘薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。紫蘇子は、辛く、温かい性質で、肺・大腸に働きます。
「辛」は発散させめぐらせる味とされます。芳香とともに、気を降ろして痰をさばき、咳をしずめる働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えをともなう寒痰(冷えて薄い痰)による咳・喘鳴をあたためてさばく方向に働きます。
肺の気を降ろして咳・喘鳴・痰をしずめ、大腸をうるおして便通を助ける方向に働きます。痰の多い咳・息苦しさ・便秘に関わります。
漢方的な働きの軸
紫蘇子の働きは、大きく三つの軸で整理できます。気を降ろして呼吸を落ち着ける軸、痰を減らして咳を止める軸、腸をうるおす軸が重なり、痰による咳・喘鳴を整えます。
伝統的な使われ方
紫蘇子は古くから、降気平喘・化痰止咳・潤腸通便を目的に用いられてきました。痰がからんで気が逆上する咳・喘鳴・呼吸困難・胸苦しさ、痰の多い咳、腸の乾き(腸燥)による便秘などのケアに用いられてきた歴史があります。とくに、痰がつまって気が上に逆上する「痰壅気逆(たんようきぎゃく)」の咳・喘鳴に適するとされます。炙って用いると肺をうるおす働きが、炒って用いると穏やかな性質になるとされます。
半夏・厚朴・前胡・肉桂・当帰・蘇葉などと組み合わせて、体力が弱く、足の冷え・のぼせをともなう痰の多い咳・喘鳴を整える処方(蘇子降気湯)に配合されます。蘇子降気湯では、紫蘇子が君薬(中心)として、上逆した気を降ろし喘咳を和らげます。また、白芥子・莱菔子と組み合わせて、高齢者の痰の多い咳・喘鳴を整える処方(三子養親湯)に配合されます。腸の乾きによる便秘には、麻子仁・杏仁などと組み合わせて用いられます。
形状・味・使われ方の体感
紫蘇子は、私たちのよく知るシソの実の特徴をもちます。
小さな球形の分果
径1〜2mmほどの、小さな球形〜卵球形の分果(種子を含む)。灰褐色〜褐色で、網目模様があります。実が充実したものが良品とされます。
シソ特有の芳香
砕くと、シソ特有の爽やかな芳香があります。この香り(精油)が、気をめぐらせ降ろす働きの一端を担います。
穏やかで油分に富む
味は穏やかで、脂肪油(α-リノレン酸)に富みます。この油分が、痰をさばき、腸をうるおす働きの中心です。えごま油・シソ油の原料としても知られます。
体質別の向き・不向き
紫蘇子は気を降ろし、痰をさばく生薬です。痰の多い咳・喘鳴があるか、逆にうるおい不足の空咳や熱の咳でないかを見極めることが大切です。
痰の多い咳・喘鳴・息苦しさ
痰がからんで気が逆上し、痰の多い咳・喘鳴・息苦しさが出るタイプに向きます。紫蘇子の中心的な使い道で、蘇子降気湯の君薬です。
判断ポイント:痰が多く、咳き込んで息苦しい。腸の乾きによる便秘
腸の乾き(腸燥)による便秘のケアに用いられてきました。脂肪油が腸をうるおすため、痰の咳に便秘をともなうときにも候補になります。
判断ポイント:コロコロした乾いた便秘。軟便・下痢しやすい方
潤腸通便の働きがあるため、軟便・下痢しやすい方には慎重に用います。腎虚が甚だしい場合も、下虚が強いため注意します。
判断ポイント:軟便・下痢しやすければ慎重に。うるおい不足の空咳・熱の咳
温めて乾かす性質のため、痰が少なく空咳の出る陰虚証や、喉が痛く黄色く粘る痰の出る肺熱証の咳には使いません。
判断ポイント:空咳・黄色い痰の熱の咳には使わない。安全性と受診の目安
紫蘇子は食用のシソに由来する穏やかな生薬ですが、温めて乾かす性質があり、痰が少なく空咳の出る陰虚証や、喉が痛く黄色く粘る痰の出る肺熱証の咳には使いません。潤腸通便の働きがあるため、軟便・下痢しやすい方には慎重に用います。強い呼吸困難、高熱、血痰、胸痛、体重減少をともなう長引く咳などがある場合は、別の原因の確認が必要です。自己判断での長期連用は避け、持病や併用薬のある方は専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い呼吸困難、高熱、血痰、胸痛、体重減少をともなう長引く咳
- 服薬中:軟便・下痢が続く、症状が改善しない/悪化する場合は中止し受診する。持病や他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
紫蘇子が気になる方は、咳・喘息、便秘、だるさとの関係も確認すると理解が深まります。
紫蘇子を含む漢方薬
紫蘇子は、痰の多い咳・喘鳴を整える処方に配合されます。紫蘇子の気を降ろし痰をさばく働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 蘇葉(そよう)との違いは?
同じシソから採れますが、部位が異なります。蘇葉は葉で、発汗・発散して気をめぐらせ、かぜの初期や気のふさがりに用います。紫蘇子は実(種子)で、気を降ろして痰の多い咳・喘鳴をしずめ、腸をうるおします。上に向かうか下に降ろすかで働きが対照的です。
Q. えごま油・シソ油と関係がありますか?
紫蘇子(シソの実)は、α-リノレン酸を豊富に含む脂肪油をもち、えごま油・シソ油の原料としても知られます。この油分が、腸をうるおして便通を助ける働き(潤腸通便)の一端を担います。
Q. 性味・帰経は?
性味は辛/温、帰経は肺・大腸とされます。上に突き上げる気を降ろして呼吸を落ち着け、痰を減らして咳を止め、腸をうるおして便通を助ける働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
紫蘇子は、気を降ろして咳・痰をしずめ、腸をうるおす生薬ですが、咳や便秘の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い呼吸困難、高熱、血痰、胸痛、体重減少をともなう長引く咳などがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。うるおい不足の空咳や、黄色く粘る痰の出る熱の咳には向きません。軟便・下痢しやすい方には慎重に用います。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。