縮砂(しゅくしゃ)とは?食欲不振胃もたれ腹部膨満・冷えの腹痛・胃腸虚弱の下痢に使う生薬を体質別に解説

縮砂(しゅくしゃ)は、スーッとした爽やかな芳香をもつ、ショウガ科シュクシャの種子を用いる芳香性の健胃生薬です。芳香で胃腸の湿をさばいて気をめぐらせ、胃腸を温めて下痢を止める働き(化湿行気・温中止瀉)から、食欲不振・胃もたれ・腹部膨満、冷えによる腹痛、胃腸の弱りによる下痢のケアに用いられてきました。砂仁(しゃにん)とも呼ばれ、安中散・香砂六君子湯など、胃腸を整える処方に配合されます。KanpoNowでは、この生薬を「芳香で胃腸の気をめぐらせ、温めて整える生薬」として整理します。
- 縮砂(しゅくしゃ)はショウガ科シュクシャ(Amomum xanthioides)の種子塊を乾燥した生薬で、砂仁(しゃにん)とも呼ばれ、化湿行気・温中止瀉のはたらきが知られます。食欲不振・胃もたれ・腹部膨満、冷えの腹痛、胃腸虚弱の下痢などに配合されます
- 主成分は精油(ボルネオール、酢酸ボルニル、樟脳、リモネン等)です
- 漢方では、芳香で胃腸の湿をさばいて気をめぐらせ(化湿行気)、胃腸を温めて下痢を止める(温中止瀉)働きで用いられます
- 芳香成分が飛びやすいため、煎じる際は最後に短時間だけ加える(後煎)ことがあります
縮砂は温めて乾かす性質があり、うるおい不足で乾いて熱をもつ方(陰虚・実熱)には向きません。妊娠中は自己判断での使用を避け、専門家に相談してください。持病や併用薬のある方も専門家にご相談ください。
縮砂とは
縮砂(しゅくしゃ)は、ショウガ科のシュクシャ(Amomum xanthioides Wallich)の成熟した種子の塊を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。「砂仁(しゃにん)」とも呼ばれます。タイ・ラオス・ミャンマー・カンボジア・ベトナムなどの林内の陰湿地に生える多年草で、草丈は2〜3mになります。果実は熟しても緑色のままで、丸い果実の中が薄い膜で3室に分かれ、各室に多角形の種子が10〜20個密着しています。ショウガやウコンと同じショウガ科で、全草に精油を多く含む、芳香性の健胃生薬です。日本では、ハナミョウガの種子を「伊豆縮砂」と呼び、かつて代用としました。
漢方薬剤師の視点では、縮砂は代表的な「芳香化湿薬(芳香で湿をさばく生薬)」です。爽やかな芳香で胃腸にこもった湿をさばいて気をめぐらせ(化湿行気)、胃腸を温めて下痢を止めます(温中止瀉)。胃腸の働きが停滞して起こる食欲不振・胃もたれ・腹部膨満・みぞおちのつかえ、冷えによる腹痛、胃腸虚弱による下痢に用いられます。胃を開き、脾を健やかにする働きから、香砂六君子湯・参苓白朮散などの胃腸薬に配合されます。冷えて胃が痛むときには良姜・乾姜と組んで安中散に、気の停滞には香附子と組んで用いられます。
基原・成分データ
縮砂の基本データを整理します。精油を豊富に含むこと、芳香化湿薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。縮砂は、辛く、温かい性質で、脾・胃・腎に働きます。
「辛」は温めて発散させ、めぐらせる味とされます。芳香とともに、胃腸の湿をさばいて気をめぐらせる働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えて停滞した胃腸をあたためて、気をめぐらせ下痢を止める方向に働きます。
脾・胃を温めて気をめぐらせ、食欲不振・胃もたれ・腹部膨満・下痢をやわらげる方向に働きます。冷えの腹痛・胃腸の停滞に関わります。
漢方的な働きの軸
縮砂の働きは、大きく三つの軸で整理できます。湿をさばいて気をめぐらせる軸、胃腸を温めて下痢を止める軸、気を整えて安定させる軸が重なり、胃腸の停滞・冷えを整えます。
伝統的な使われ方
縮砂は古くから、化湿行気・温中止瀉を目的に用いられてきました。脾胃の気滞・湿の停滞による食欲不振・胃もたれ・腹部膨満・みぞおちのつかえ・腹痛、冷えによる胃痛、胃腸虚弱による下痢などのケアに用いられてきた歴史があります。芳香性の健胃薬として、胃を開き、脾を健やかにする目的で、多くの胃腸薬に配合されます。気の停滞をめぐらせる働きから、つわり時のむかつきにも応用されてきました。
良姜・乾姜などと組み合わせて、冷えによる胃痛を温めてやわらげる処方(安中散)、六君子湯に香附子・藿香とともに加えて、気うつをともなう胃もたれ・食欲不振を整える処方(香砂六君子湯)、人参・白朮・茯苓などと組み合わせて、胃腸虚弱による下痢を整える処方(参苓白朮散)、枳実・半夏などと組み合わせて、嘔吐やみぞおちの痛みを整える処方(枳縮二陳湯)に配合されます。香附子と組むと上腹部痛・消化不良を、良姜と組むと冷えの胃痛を、それぞれ改善する方向にはたらきます。
形状・味・使われ方の体感
縮砂は、見た目・香り・味に強い特徴があります。芳香ある種子塊が生薬になります。
3室に分かれた種子塊
直径1〜2cmほどの団子状の種子塊。薄い膜で3室に分かれ、各室に多角形の種子が10〜20個密着しています。充実して芳香の強いものが良品とされます。
スーッと爽やかな芳香
砕くと、スーッと爽やかな独特の芳香が立ちます。この精油の香りが、胃腸の湿をさばいて気をめぐらせる働きの中心です。香りが飛びやすいため、後煎(最後に短時間だけ煎じる)が行われます。
辛味と渋み
味は辛く、わずかに渋みがあります。この辛味が、胃腸を温めて気をめぐらせる働きの中心です。生薬に白いものは、石灰を用いて乾燥させたものです。
体質別の向き・不向き
縮砂は芳香で温めてさばく生薬です。胃腸の停滞・冷えがあるか、逆にうるおい不足で乾いて熱をもっていないかを見極めることが大切です。
食欲不振・胃もたれ・腹部膨満
胃腸の働きが停滞して、食欲不振・胃もたれ・腹部膨満・みぞおちのつかえが出るタイプに向きます。縮砂の中心的な使い道です。
判断ポイント:食欲不振・胃もたれ・お腹の張り。冷えの腹痛、胃腸虚弱の下痢
冷えによる腹痛、胃腸虚弱による下痢のケアに用いられてきました。お腹を温めて気をめぐらせたいときに候補になります。
判断ポイント:冷えの腹痛・軟便下痢。妊娠中の方
気をめぐらせ安定させる目的で用いられることもありますが、妊娠中は自己判断での使用を避け、必ず専門家に相談してください。
判断ポイント:妊娠中は専門家に相談。うるおい不足で乾いて熱をもつ方
温めて乾かす性質のため、うるおい不足で乾いて熱をもつ方(陰虚・実熱)には向きません。のぼせ・ほてり・から咳が強い方は慎重にします。
判断ポイント:乾き・ほてりが強ければ向かない。安全性と受診の目安
縮砂は芳香性の健胃薬として穏やかに用いられますが、温めて乾かす性質があり、うるおい不足で乾いて熱をもつ方(陰虚・実熱)には向きません。妊娠中は自己判断での使用を避けてください。強い腹痛が続く、嘔吐がとまらない、体重減少をともなう食欲不振、血便・黒色便などがある場合は、別の原因の確認が必要です。自己判断での長期連用は避け、持病や併用薬のある方は専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い腹痛が続く、嘔吐がとまらない、体重減少をともなう食欲不振、血便・黒色便
- 服薬中:症状が改善しない/悪化する場合は中止し受診する。妊娠中・持病・他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
縮砂が気になる方は、食欲不振、腹痛、下痢との関係も確認すると理解が深まります。
縮砂を含む漢方薬
縮砂は、胃腸を整える処方に配合されます。縮砂の芳香で温める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 「砂仁(しゃにん)」と同じものですか?
はい、縮砂は「砂仁」とも呼ばれます。中国では陽春砂(Amomum villosum)などを主に用い、日本薬局方の縮砂は Amomum xanthioides に由来します。いずれもショウガ科の芳香性健胃生薬です。
Q. なぜ最後に短時間だけ煎じるのですか?
縮砂の働きの中心は、飛びやすい芳香成分(精油)です。長く煮出すと香りが飛んでしまうため、煎じ薬では最後に短時間だけ加える「後煎(あとせん)」という方法がとられることがあります。
Q. 性味・帰経は?
性味は辛/温、帰経は脾・胃・腎とされます。芳香で胃腸の湿をさばいて気をめぐらせ、胃腸を温めて下痢を止める働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
縮砂は、芳香で胃腸の気をめぐらせ、温めて整える生薬ですが、食欲不振や腹痛、下痢の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い腹痛が続く、嘔吐がとまらない、体重減少をともなう食欲不振、血便・黒色便などがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。うるおい不足で乾いて熱をもつ方には向きません。妊娠中は自己判断での使用を避けてください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。