杜仲(とちゅう)とは?肝腎不足による腰痛や足腰のだるさに使う生薬を体質別に解説

杜仲(とちゅう)は、トチュウ科トチュウの樹皮を乾燥した生薬です。肝腎を補い筋骨を強くする働き(補肝腎・強筋骨)や、妊娠を安定させる働き(安胎)から、肝腎不足による腰痛・足腰のだるさ、胎動不安などのケアに用いられてきました。折ると白いゴム状の糸を引く、めずらしい性質をもつ生薬で、古くから不老長寿の高貴薬として珍重されてきました。KanpoNowでは、この生薬を「肝腎を補い、筋骨と妊娠を支える生薬」として整理します。
- 杜仲(とちゅう)はトチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides Oliv.)の樹皮を乾燥した生薬で、日本薬局方に収載されています*①②
- 主成分はリグナン類(ピノレジノール等)、グッタペルカ(ゴム様物質)、イリドイド配糖体(ゲニポシド酸、アウクビン等)などです*②③
- 漢方では、肝腎を補い筋骨を強くし(補肝腎・強筋骨)、妊娠を安定させる(安胎)働きで用いられます*①②③
- 1科1属1種というめずらしい植物で、樹皮も葉も折ると白い糸を引くのが特徴です
杜仲は防風・羌活など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。妊娠中に用いる場合は自己判断を避け、専門家の指導のもとで用いることが大切です。
杜仲とは
杜仲(とちゅう)は、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides Oliv.)の樹皮を乾燥させた生薬です。トチュウ科は1属1種からなる小さな科で、以前はイラクサ目やマンサク目に分類されていましたが、近年の分子生物学的解析からトチュウ目として独立した、かなり特異な植物とされています。中国中南部の山林にまれに自生する高木で、樹皮も葉も折ると白いゴム状の糸を引くのが大きな特徴です。日本には絶滅した記録がありますが、大正7年(1918年)に中国から再び渡来し、各地で栽培されています。
漢方薬剤師の視点では、杜仲は「補陽薬(体を温め働きを高める生薬)」に分類されます。『神農本草経』の上品に「杜仲は味辛平。腰脊痛を主治し、中を補い精気を益し、筋骨を堅くし、志を強くし、陰下の痒湿・小便餘瀝を除く」と収載され、一般に強壮・強精・鎮痛薬として知られてきました。現在の中医学では助陽に働く補益薬として、肝腎不足による腰痛や婦人の腹痛などの処方に配合されます。防風・羌活などと組み合わせて、下肢の麻痺・痛みを整える処方(大防風湯)にも用いられます。
基原・成分データ
杜仲の基本データを整理します。トチュウの樹皮を用いること、リグナン類やグッタペルカを含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。杜仲は、甘くわずかに辛く、温める性質で、肝・腎に働きます。
「甘」は補い養う味、「辛」は潤し通す味とされます。肝腎を補いながら筋骨を強くする働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えを伴う肝腎不足を、あたためながら補う方向に働きます。
肝に働いて筋を、腎に働いて骨を養い、腰痛・足腰のだるさや妊娠の安定に関わります。
漢方的な働きの軸
杜仲の働きは、大きく二つの軸で整理できます。肝腎を補い筋骨を強くする軸、妊娠を安定させる軸が重なり、腰痛・足腰のだるさ・胎動不安を整えます。
伝統的な使われ方
杜仲は古くから、補肝腎・強筋骨・安胎を目的に用いられてきました。肝腎不足による腰痛・足腰のだるさ・下肢の無力感、婦人の腹痛、妊娠中の胎動不安などのケアに用いられてきた歴史があります。杜仲は肝・腎に入り、強壮・強精・鎮痛薬として知られ、現在の中医学では助陽に働く補益薬として位置づけられています。
防風・羌活などと組み合わせて、下肢が麻痺して痛むのを止める処方(大防風湯)に配合されます。また、単味で煎じたり、杜仲酒として用いられることも知られています。よく似た働きをもつ続断とは、杜仲が補益に優れ強筋骨に働き腎虚腰痛にもっとも有効とされる一方、続断は通脈に優れ、打撲による損傷に対する接続筋骨の要薬とされ、使い分けられます。
形状・味・使われ方の体感
杜仲は、折ると白い糸を引くめずらしい樹皮ならではの特徴をもつ生薬です。
褐色の板状・帯状の樹皮
外面は灰褐色〜暗褐色で不規則な裂け目があり、内面は暗紫褐色で滑らかです。折ると白いゴム状の糸(グッタペルカ)を引きます。
甘みとわずかな辛みで温性
味は甘みとわずかな辛みがあり、温性。肝腎を補いながら、あたためて筋骨を強くする方向に働きます。
細かく刻んで煎じる
成分を効果的に煎出するため、細かく刻んで煎じ薬に用いられるのが一般的です。杜仲酒として用いられることもあります。
体質別の向き・不向き
杜仲は肝腎を補いながら筋骨と妊娠を支える生薬です。肝腎不足による腰痛・足腰のだるさがあるか、逆に妊娠中で自己判断が難しくないかを見極めることが大切です。
肝腎不足による腰痛タイプ
腰痛・足腰のだるさ・下肢の無力感がみられるタイプに向きます。杜仲の中心的な使い道です。
判断ポイント:肝腎不足の腰痛。下肢の麻痺・痛みタイプ
下肢が麻痺して痛むタイプのケアに、防風・羌活などと組み合わせて用いられてきました。
判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。婦人の腹痛タイプ
婦人の腹痛には体質や症状を見極めながら、他の補益薬と組み合わせて用います。
判断ポイント:体質に応じて調整。妊娠中の自己判断使用タイプ
胎動不安に用いられることがありますが、自己判断は避け、専門家の指導のもとで用いてください。
判断ポイント:妊娠中は自己判断を避ける。安全性と受診の目安
杜仲は処方の中で用いられる補肝腎薬ですが、妊娠中に用いる場合は自己判断を避け、専門家の指導のもとで用いることが大切です。また、まれに流通する類似品(ニシキギ科植物由来のものなど)との違いにも注意が必要とされます。強い腰痛が急激に悪化する、妊娠中の出血・下腹部痛が続く場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い腰痛が急激に悪化する、妊娠中の出血・下腹部痛が続く
- 服薬中:妊娠中の方、持病や他剤を併用している場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
杜仲が気になる方は、膝痛との関係も確認すると理解が深まります。
杜仲を含む漢方薬
杜仲は、肝腎不足による腰痛・下肢の痛みを整える処方に配合されます。杜仲の肝腎を補う働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
※お使いの製品にどの生薬が含まれるかは、製品の添付文書・成分表示をご確認ください。処方の選択や併用については、薬剤師・登録販売者など専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. 杜仲茶と生薬の杜仲は同じものですか?
同じトチュウという植物に由来しますが、杜仲茶は近年になって葉を茶剤に加工したもので、本来の生薬「杜仲」は樹皮が薬用部位です。薬用部位が異なる点にご留意ください。
Q. 続断との違いは?
どちらも補肝腎・安胎に働き、腰痛・胎動不安などに用いられますが、杜仲は補益に優れ強筋骨に働き腎虚腰痛にもっとも有効とされる一方、続断は通脈に優れ、打撲による損傷に対する接続筋骨の要薬とされ、使い分けられます。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
肝腎不足による腰痛・足腰のだるさ・下肢の無力感、下肢が麻痺して痛むタイプに向きます。妊娠中の使用は自己判断を避け、専門家の指導のもとで用いてください。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
杜仲は、肝腎を補い筋骨と妊娠を支える生薬ですが、腰痛や不調の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い腰痛が急激に悪化する、妊娠中の出血・下腹部痛が続く場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。妊娠中の方は自己判断を避け、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。