益母草(やくもそう)とは?月経不順や月経痛、産後の体力低下、むくみに使う生薬を体質別に解説

益母草(やくもそう)は、メハジキの花期の地上部を乾燥した生薬です。血をめぐらせ月経を整える働き(活血化瘀)や、余分な水をさばきむくみを取る働き(利水消腫)から、月経不順・月経痛、産後の体力低下、むくみなどのケアに用いられてきました。「母の益になる草」という名の通り、古くから婦人科に用いられてきた代表的な生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「母を益し、血と水のめぐりを整える生薬」として整理します。
- 益母草(やくもそう)はシソ科メハジキ(Leonurus japonicus Houttuyn)またはL. sibiricusの花期の地上部を乾燥した生薬です*①②
- 主成分はアルカロイド(レオヌリン、スタキドリン等)、フラボノイド(ルチン)、有機酸などです*①③
- 漢方では、血をめぐらせ月経を整え(活血化瘀)、余分な水をさばきむくみを取る(利水消腫)働きで用いられます*①②③
- 子宮筋の収縮力・緊張性を増強する働きが報告されているため、妊娠中の使用は避けます
益母草は当帰・川芎など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。大量出血、強い腹痛、妊娠の可能性がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
益母草とは
益母草(やくもそう)は、シソ科メハジキ(Leonurus japonicus Houttuyn、またはLeonurus sibiricus Linné)の花期の地上部を乾燥させた生薬です。「母の益になる草」という意味の名前が示す通り、婦人薬として古くから利用されてきました。和名の「メハジキ」は、子供たちが茎を短くちぎり弓なりに曲げて上下のまぶたにはさみ、まぶたを閉じる勢いで遠くへ弾き飛ばして遊んだことに由来すると伝えられています。西洋でもローマ時代から婦人向けの薬として用いられ、英名は「マザーワート」と呼ばれています。
漢方薬剤師の視点では、益母草は「活血化瘀薬(血のめぐりを促し瘀血を除く生薬)」に分類されます。婦人のさまざまな瘀血証(血のめぐりが悪くなった状態)に用いられ、月経不順・月経痛、産後の体力低下、下腹痛などのケアに応用されます。あわせて利水消腫の働きもあり、むくみにも用いられます。似た働きをもつ生薬に沢蘭(シロネ)があり、益母草が微寒、沢蘭が微温とされ、寒熱によって使い分けられます。
基原・成分データ
益母草の基本データを整理します。メハジキの花期の地上部を用いること、レオヌリンなどのアルカロイドを含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。益母草は、辛く甘くわずかに苦く、やや冷やす性質(微寒)で、肝・心・膀胱に働きます。
「辛」は血をめぐらせる味とされます。瘀血をめぐらせ月経を整える働きと結びつきます。
「微寒」はやや涼〜寒寄りの性質で、瘀血にこもった熱をおだやかに冷ましながらめぐらせる方向に働きます。
肝に働いて瘀血をめぐらせ、心に働いて血をめぐらせ、膀胱に働いてむくみに関わります。
漢方的な働きの軸
益母草の働きは、大きく二つの軸で整理できます。血をめぐらせ月経を整える軸、余分な水をさばきむくみを取る軸が重なり、月経トラブル・むくみを整えます。
伝統的な使われ方
益母草は古くから、活血化瘀・利水消腫を目的に用いられてきました。婦人のさまざまな瘀血証に用いられ、月経不順・月経痛、産後の体力低下、下腹痛、むくみなどのケアに用いられてきた歴史があります。益母草は肝・心・膀胱に入り、利尿作用もあることから急性糸球体腎炎にも応用されてきました。
当帰・川芎などと組み合わせて、産後の神経症・体力低下・月経不順を整える処方(芎帰調血飲第一加減)に配合されます。他にも、天麻鉤藤飲・八珍益母丸などの古典的な処方にも用いられてきました。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
益母草は、メハジキの花期の地上部ならではの特徴をもつ生薬です。
茎・葉・花からなる地上部
茎・葉・花からなり、葉の多いもの、青味を帯びた新しいものが良品とされます。茎は細く質が柔らかいものを良品とします。
辛みと甘みで微寒性
味は辛みと甘みがあり、性質は微寒。瘀血にこもった熱をおだやかに冷ましながらめぐらせる方向に働きます。
他の生薬と組み合わせて使用
当帰・川芎など、他の補血薬・活血薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。
体質別の向き・不向き
益母草は血と水のめぐりを整える生薬です。月経不順・むくみがあるか、逆に妊娠中で自己判断が難しくないかを見極めることが大切です。
月経不順・月経痛タイプ
月経不順・月経痛がみられるタイプに向きます。益母草の中心的な使い道です。
判断ポイント:瘀血による月経トラブル。むくみタイプ
むくみのケアに、利水消腫の働きで用いられてきました。
判断ポイント:利水消腫の働き。産後の体力低下タイプ
産後の体力低下・下腹痛には、当帰・川芎など他の生薬と組み合わせて用います。
判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。妊娠中のタイプ
子宮筋の収縮力・緊張性を増強する働きが報告されているため、妊娠中の使用は避けてください。
判断ポイント:妊娠中は禁忌。安全性と受診の目安
益母草は処方の中で用いられる活血化瘀薬ですが、子宮筋の収縮力・緊張性を増強する働きが報告されているため、妊娠中の使用は避けます。血液凝固促進の作用も知られているため、出血傾向のある方は注意が必要です。大量出血、強い腹痛、妊娠の可能性がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:大量出血、強い腹痛、妊娠の可能性がある場合
- 服薬中:妊娠中の方、出血傾向のある方、持病や他剤を併用している場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
益母草が気になる方は、生理不順、むくみとの関係も確認すると理解が深まります。
益母草を含む漢方薬
益母草は、月経不順・産後の体力低下を整える処方に配合されます。益母草の血と水のめぐりを整える働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 沢蘭(たくらん)との違いは?
どちらも活血袪瘀・利水退腫の働きをもちますが、益母草が微寒、沢蘭(シロネ)が微温とされ、寒熱によって使い分けられます。
Q. なぜ「メハジキ」と呼ばれるのですか?
子供たちが茎を短くちぎり弓なりに曲げて上下のまぶたにはさみ、まぶたを閉じる勢いで遠くへ弾き飛ばして遊んだことから「メハジキ」の名がついたと伝えられています。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
瘀血による月経不順・月経痛、産後の体力低下、むくみのタイプに向きます。妊娠中の使用は避けてください。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
益母草は、母を益し血と水のめぐりを整える生薬ですが、月経不順やむくみの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。大量出血、強い腹痛がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。妊娠中の方は使用を避け、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。