防已黄耆湯とは?むくみ・水太り・汗かき・膝の腫れ痛みに使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月13日 監修:堀口和彦
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)は、『金匱要略』に記される、疲れやすく汗をかきやすい「水ぶとり」タイプのむくみ・関節の腫れ痛みに使われる漢方薬です。体の気が不足して水を巡らせる力が弱くなり、さらに汗を調節する皮膚のバリア機能も落ちている状態を、気を補いながら余分な水をさばくことで整えます。KanpoNowでは、この処方を「汗が漏れやすく、水がたまりやすい体質を、黄耆で引き締め、防已で水を抜く漢方薬」として整理します。

防已黄耆湯はこんな人に向いています
  • 疲れやすく、少し動くだけで汗をかきやすい
  • 色白で筋肉が柔らかく、いわゆる水ぶとり傾向がある
  • 夕方に足がむくみ、靴や靴下の跡が残りやすい
  • 膝などの関節が腫れぼったく、重だるく痛む
  • 便秘よりも、むくみ・汗・だるさが前面に出ている
  • ガッチリした固太りではなく、締まりがなく水を含んだような体質

急な強いむくみ、息切れ、胸苦しさ、尿量低下、片足だけの腫れ、強い関節痛、発熱、赤く腫れた関節がある場合は、漢方だけで様子を見ず医療機関に相談してください。

防已黄耆湯とは

防已黄耆湯は、黄耆防已蒼朮大棗甘草生姜から構成される漢方薬です。

黄耆は不足した気を補い、汗が漏れやすい体表の弱さを整えます。防已は下半身や関節まわりに停滞した水をさばき、腫れや重だるい痛みを軽くする方向に働きます。蒼朮は胃腸を整えながら湿を乾かし、大棗・甘草・生姜は胃腸を守り、処方全体を調和します。

ポイント:防已黄耆湯は、むくみだけを抜く処方ではありません。気虚で汗が漏れやすく、水がたまりやすい「表虚+水滞」の体質を、補気と利水の両面から整える処方です。

古典における位置づけ

防已黄耆湯は、中国の古典『金匱要略』を出典とする処方です。処方名は、中心生薬である防已と黄耆の名を冠しています。

古典的には、体表の守りが弱く汗が出やすく、体に水が停滞して重だるく、関節や下半身に水がたまりやすい状態で考えられてきました。現代では、むくみ、多汗症、水ぶとり、肥満に伴う関節の腫れや痛みなどで比較されます。

同じ「むくみ」でも、防已黄耆湯は、体力があり便秘がちで赤ら顔の実熱タイプではなく、疲れやすく汗をかきやすい虚証寄りの水太りタイプで考える処方です。

防已黄耆湯らしさ:疲れやすい。汗をかきやすい。筋肉が柔らかい。水ぶとり. 足がむくむ。膝が重だるく腫れる。便秘よりも水の停滞が目立つ。この「気虚+表虚+水滞」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、防已黄耆湯が合う状態を、気虚、表虚、水滞、湿痰、気虚水毒として考えます。気が不足すると、水を巡らせるポンプ作用が弱くなり、同時に皮膚の毛穴を引き締める力も落ちます。

  • 気虚:疲れやすく、体を引き締める力や水を動かす力が不足した状態
  • 表虚:皮膚のバリアが弱く、少し動くだけで汗が漏れやすい状態
  • 水滞・湿痰:余分な水が皮下や下半身、関節まわりに停滞する状態
  • 気虚水毒:気が足りないため水が動かず、むくみ・重だるさ・多汗が同時に出る状態

体表の防衛力が弱いと、汗がだらだら漏れ出ます。水を巡らせる力も弱いため、余分な水が下半身や関節にたまり、むくみ、膝の腫れ、関節の重だるい痛みにつながります。

防已黄耆湯は、黄耆で気を補って汗の漏れを整え、防已で停滞した水をさばき、蒼朮で胃腸と湿を整えます。水を抜くだけではなく、水を動かす力と体表の締まりを立て直す点が特徴です。

注意:むくみや関節の腫れは、腎疾患、心不全、肝疾患、甲状腺疾患、静脈・リンパの問題、関節炎、感染症、薬剤性などが関係することがあります。急なむくみ、息切れ、胸苦しさ、尿量低下、片足だけの腫れ、赤く熱を持つ関節は医療機関で確認してください。

構成生薬と配合バランス

防已黄耆湯は、黄耆・防已・蒼朮・大棗・甘草・生姜の6生薬で構成されます。黄耆で気を補い、表を固め、防已で水をさばき、蒼朮で湿を乾かし、大棗・甘草・生姜で胃腸を守る構成です。

防已黄耆湯の構成イメージを示す円グラフです。 防已黄耆湯
黄耆30%
防已30%
蒼朮18%
大棗12%
甘草6%
生姜4%
防已黄耆湯の内部構造
気を補って汗を整え、停滞した水をさばく構成です。
補気固表の軸 黄耆 不足した気を補い、皮膚のバリア機能を整え、汗が漏れやすい状態を支えます。
利水消腫の軸 防已・蒼朮 下半身や関節に停滞した水をさばき、むくみや重だるい腫れを整えます。
調和健胃の軸 大棗・甘草・生姜 胃腸を守りながら、補気と利水の働きを調和します。

※実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:防已黄耆湯は、疲れやすく汗をかきやすい水ぶとりタイプの、むくみ・多汗・関節の腫れ痛みを整える処方です。

防已黄耆湯の味・香り・服用時の体感

防已黄耆湯は、黄耆・甘草・大棗の甘みに、防已の苦味、蒼朮の香ばしさ、生姜の軽い辛味が重なります。全体としては甘苦い印象で、むくみを抜く処方でありながら、黄耆による補う方向があるため、攻め一辺倒ではありません。

甘苦い味

黄耆・甘草・大棗の甘みに、防已の苦味、蒼朮のえぐみが混ざります。

香ばしく穏やか

漢方薬らしい香ばしさに、生姜のほのかな香りが加わります。

淡褐色〜黄褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では淡い褐色から黄褐色に見えます。

むくみが軽くなる感覚

合う方では、汗の漏れが落ち着き、足のむくみや膝の重だるさが軽くなる感覚があります。

体験の流れ:甘苦い味を感じる → 胃腸に負担をかけすぎず水が動く → だらだら汗が落ち着く → 足や膝まわりの重だるい水っぽさが軽くなる感覚。防已黄耆湯は、ただ水を抜くのではなく、気を補いながら汗と水の巡りを整える処方です。

症状別の向き・不向き

防已黄耆湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、疲れやすさ、汗かき、筋肉の柔らかさ、水ぶとり、むくみ、膝など関節の腫れ痛みです。

色白・ぽっちゃり・汗かきの膝痛

筋肉に締まりがなく、汗をかきやすく、膝に水がたまるような重だるい痛みがある場合に比較します。

判断ポイント:水ぶとり+汗かき+膝の腫れ痛み。

疲れやすく、夕方に足がむくむ

気が不足して水を動かせず、足のむくみ、体の重だるさ、多汗が出るタイプに向きます。

判断ポイント:気虚水毒。

多汗症・汗が漏れやすい

少し動いただけで汗が出る、汗が止まりにくい、体表の締まりが弱い表虚タイプで比較します。

判断ポイント:黄耆で表を固める汗。

水ぶとり型の肥満症

便秘が強い固太りではなく、筋肉が柔らかく、むくみやすく、体が重いタイプで比較します。

判断ポイント:脂肪より水の重さが目立つ。
×

ガッチリ固太り・便秘・赤ら顔

熱と老廃物がたまり、便秘やのぼせがある実熱タイプでは、防風通聖散を比較します。

判断ポイント:虚証水太りではなく実証固太り。
×

強い口渇・尿量減少・急性の水毒

喉が渇くのに尿が少ない、二日酔い、急な頭痛や吐き気を伴う水の偏在では五苓散を比較します。

判断ポイント:急性の水の偏在なら五苓散側。

体質別の向き・不向き

防已黄耆湯は、湿痰と気虚が重なるタイプに向きます。水を抜く処方でありながら、黄耆で気を補うため、実証のむくみというより、疲れやすく汗が漏れやすい虚証寄りの水太りに合います。

湿痰+気虚タイプ

余分な水がたまりやすく、同時に疲れやすく、水を巡らせる気が不足しているタイプです。

判断ポイント:むくみと疲れやすさが同時にある。

表虚・多汗タイプ

皮膚のバリア機能が弱く、汗が漏れやすく、動くとすぐに汗をかくタイプです。

判断ポイント:汗を止める力が弱い。

関節に水がたまりやすいタイプ

膝などの関節が腫れぼったく、重だるく、体重やむくみで痛みが出やすい場合に比較します。

判断ポイント:水湿が関節に停滞する。

陰虚・乾燥タイプ

防已や蒼朮など水をさばく生薬を含むため、口渇、乾燥肌、空咳、ほてりが強い方では慎重に考えます。

判断ポイント:抜いてよい水があるか.
×

実熱・湿熱タイプ

便秘、赤ら顔、のぼせ、太鼓腹、熱感があるタイプでは、防已黄耆湯では方向が弱いことがあります。

判断ポイント:冷まして瀉す必要があるか。

効能・効果

防已黄耆湯の効能・効果は、KanpoNowページでは次のように整理されています。

体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

防已黄耆湯は、むくみ・多汗・水ぶとり・関節の腫れ痛みに使われる処方ですが、むくみや関節痛の背景には医療機関で確認すべき疾患が隠れることがあります。また、甘草を含むため、むくみを取る目的で飲んでいるのに、逆にむくみが悪化する場合は注意が必要です。

防風通聖散との使い分け

防已黄耆湯は、色白で筋肉が柔らかく、疲れやすく、汗をかきやすく、便秘が強くない水ぶとりタイプで比較します。防風通聖散は、ガッチリ体型、太鼓腹、便秘、のぼせ、赤ら顔などが目立つ実熱・湿熱タイプで比較します。

五苓散との使い分け

五苓散は、口渇、尿量減少、二日酔い、雨の日の頭痛、急性の水の偏在が中心です。防已黄耆湯は、疲れやすさ、汗かき、水ぶとり、下半身のむくみ、関節の腫れ痛みが中心です。

甘草による偽アルドステロン症への注意

防已黄耆湯は甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。むくみを取るために飲んでいるのに、むくみが悪化する、血圧が上がる、こむら返りが増える場合は、服用を中止して専門家に相談してください。

間質性肺炎・肝機能障害への注意

添付文書上、まれに間質性肺炎や肝機能障害などの重篤な副作用が報告されています。発熱、空咳、息切れ、息苦しさ、黄疸、褐色尿、強いだるさ、食欲不振がある場合は、すぐに相談してください。

水分摂取と運動の考え方

むくみがあるからといって極端な水分制限は危険です。一方で、冷たい水を一気に飲むと胃腸の処理能力を超えて湿痰が悪化しやすくなります。温かいものを少量ずつ摂り、じんわり汗ばむ程度のウォーキングや下半身の軽い運動で、水を戻すポンプ作用を助けます。

むくみ・膝痛の受診目安

急なむくみ、息切れ、胸苦しさ、尿が少ない、片足だけの腫れ、赤く熱を持つ関節、強い膝痛、発熱を伴う関節痛がある場合は、心臓・腎臓・肝臓・血栓・感染症・炎症性関節疾患などの確認が必要です。

相談・受診を優先したいサイン

  • 急にむくみが強くなった、体重が急に増えた
  • 息切れ、胸苦しさ、動悸を伴う
  • 尿量が極端に少ない、血尿がある
  • 片足だけ腫れる、痛みや熱感がある
  • 膝や関節が赤く腫れて強く痛む
  • むくみが悪化する、血圧が上がる、こむら返りが出る
  • 発熱、空咳、息切れ、黄疸、褐色尿、強いだるさが出る
  • 1か月程度服用しても改善しない、又は悪化する
すぐ相談:防已黄耆湯はむくみや水ぶとりに使う処方ですが、むくみの悪化、息切れ、胸苦しさ、尿量低下、片足だけの腫れ、赤く腫れた関節がある場合は、医療機関を優先してください。

症状から理解を深める

防已黄耆湯が気になる方は、むくみ、汗、膝・関節 of 痛み、冷え、肥満・体重増加の背景をあわせて見ると、気虚水毒と水ぶとりの全体像がつかみやすくなります。

むくみや肥満に使う漢方薬でも、水ぶとりなのか、固太りなのか、急性の水の偏在なのか、冷えや腎虚なのかで選び方が変わります。防已黄耆湯は、疲れやすく汗をかきやすい虚証寄りの水ぶとりで比較します。

よくある質問

Q. 防已黄耆湯はどんなむくみに向いていますか?

疲れやすく、汗をかきやすく、筋肉に締まりがなく、足や体がむくみやすい水ぶとりタイプに向きます。急なむくみや息切れを伴うむくみは医療機関で確認してください。

Q. 防風通聖散との違いは何ですか?

防已黄耆湯は、色白・ぽっちゃり・汗かき・疲れやすい水太りタイプです。防風通聖散は、ガッチリ体型、太鼓腹、便秘、のぼせ、赤ら顔が目立つ実熱タイプで比較します。

Q. 膝の痛みにも使えますか?

肥満に伴う関節の腫れや痛み、膝まわりに水がたまるような重だるい痛みで比較されます。ただし、赤く熱を持つ関節、強い痛み、発熱を伴う場合は医療機関を優先してください。

Q. 汗かきにも関係しますか?

はい。黄耆が気を補い、体表のバリア機能を整えるため、疲れやすく汗が漏れやすいタイプの多汗で比較します。熱感が強く汗が出るタイプとは分けて考えます。

Q. 甘草の注意はありますか?

防已黄耆湯は甘草を含みます。長期連用や他の漢方薬との併用では、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下などに注意してください。むくみが悪化する場合は服用を中止して相談してください。

参考・出典

防已黄耆湯が合うか迷った方へ

防已黄耆湯は、むくみ、多汗症、水ぶとり、膝など関節の腫れ痛みに使われる漢方薬ですが、すべてのむくみや肥満に合うわけではありません。水ぶとりなのか、固太りなのか、急性の水滞なのか、冷えや腎虚によるむくみなのかを見極めることが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。急なむくみ、息切れ、胸苦しさ、尿量低下、体重急増、片足だけの腫れ、赤く熱を持つ関節、強い関節痛、発熱を伴う関節痛がある場合は、医療機関にご相談ください。服用後に発疹、発赤、かゆみ、胃部不快感、食欲不振、むくみの悪化、血圧上昇、こむら返り、筋力低下、空咳、息切れ、発熱、黄疸、褐色尿、強いだるさなどがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。