治頭瘡一方とは?乳幼児湿疹・頭部や顔のジュクジュク湿疹に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月9日 監修:堀口和彦

治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)は、頭部や顔面の湿疹、かゆみ、化膿、ジュクジュクした乳幼児湿疹に用いられる漢方薬です。赤み、熱感、汁が出る、かさぶたが厚くなる、かゆくて掻いてしまうといった「湿熱が上部の皮膚に吹き出した状態」を考えます。KanpoNowでは、この処方を「頭や顔にこもった熱・湿・かゆみ・化膿傾向を、冷まして乾かし、下へ逃がす漢方薬」として整理します。

治頭瘡一方はこんな人に向いています
  • 頭皮や顔の湿疹が赤く、ジュクジュクしている
  • 乳幼児湿疹で、汁やかさぶたが目立つ
  • 頭部・顔面のかゆみ、化膿傾向、かさぶたを繰り返す
  • 脂漏性湿疹のように、赤みと湿り気がある
  • 便秘傾向があり、体の上に熱がこもりやすい

反対に、カサカサに乾いた湿疹、老人性乾燥肌、冷えや胃腸虚弱が強い方、下痢しやすい方、妊娠中または妊娠の可能性がある方では慎重に考えます。

治頭瘡一方とは

治頭瘡一方は、川芎蒼朮連翹忍冬防風甘草荊芥紅花大黄から構成される漢方薬です。

連翹・忍冬で皮膚の熱や化膿傾向を冷まし、防風・荊芥でかゆみや風をさばきます。蒼朮はジュクジュクした湿を乾かし、川芎・紅花は血の巡りを助けて皮膚の修復を支えます。大黄は上にこもった熱を便通とともに下へ逃がす役割を持ちます。

ポイント:治頭瘡一方は、乾燥した皮膚を潤す処方ではありません。赤く、熱く、ジュクジュクして、かゆみやかさぶたを伴う頭部・顔面の湿疹に向きやすい処方です。

古典における位置づけ

治頭瘡一方は、日本で生まれた経験方で、本朝経験方の一つとされます。香川修庵による経験方とも伝えられ、古くから小児の頭部湿疹、胎毒、頭瘡、顔面や上部の発疹に用いられてしてきました。

処方名は、「頭や顔にできる瘡、つまりジュクジュクした湿疹やかさぶたを治すための一方」という意味で理解できます。名前の通り、頭部・顔面・上半身の皮膚トラブルに焦点を当てた処方です。

漢方的には、風湿熱の皮疹、すなわち、かゆみ、発赤、熱感、化膿傾向、水疱、滲出液、痂皮を伴う状態を目標にします。小児では、これを「胎毒」と表現することもあります。

治頭瘡一方らしさ:頭や顔に出る。赤い。かゆい。ジュクジュクする。かさぶたができる。化膿しやすい。乳幼児の湿疹に多い。この「上部の湿熱皮膚症状」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、治頭瘡一方が合う状態を、湿熱、風湿熱、血の滞り、上部の熱毒として考えます。頭や顔は、熱や風の影響を受けやすい場所です。ここに余分な湿が加わると、赤く腫れる、汁が出る、かさぶたになる、かゆみが強い、といった皮膚症状が出やすくなります。

  • 湿熱:余分な水分と熱が結びつき、赤み・ジュクジュク・かゆみ・化膿を起こす状態
  • 風湿熱:かゆみを動かす風、ジュクジュクの湿、赤みの熱が皮膚で重なる状態
  • 血の滞り:炎症が慢性化し、かさぶた、赤黒さ、治りにくさが残る状態
  • 上部の熱毒:体にこもった熱が頭・顔・首まわりへ上がり、皮膚に吹き出す状態

連翹・忍冬は熱と毒を清め、防風・荊芥はかゆみと風を散らします。蒼朮は湿を乾かし、ジュクジュクを減らす方向に働きます。川芎・紅花は血の巡りを助け、かさぶたや慢性化した皮膚の修復を支えます。大黄は上にこもった熱を下へ通し、甘草は全体を調和します。

そのため治頭瘡一方は、「冷ます」「乾かす」「かゆみを散らす」「巡らせる」「下へ逃がす」という方向を持つ処方です。

注意:湿疹が急に広がる、強い腫れや熱感がある、膿が多い、発熱を伴う、乳児の機嫌が悪い、顔やまぶたが腫れる場合は、感染やアレルギーなどの確認が必要です。自己判断で漢方だけにせず、医療機関に相談してください。

構成生薬と配合バランス

治頭瘡一方は、9種類の生薬で構成されます。赤みや化膿傾向を冷ます生薬、ジュクジュクを乾かす生薬、かゆみを散らす生薬、血の巡りを助ける生薬、便通から上部の熱を下へ逃がす生薬が組み合わされています。

治頭瘡一方の構成を、川芎18%、蒼朮18%、連翹18%、忍冬12%、防風12%、甘草6%、荊芥6%、紅花6%、大黄4%として合計100%で示した構成イメージです。 治頭瘡 一方
川芎18%
蒼朮18%
連翹18%
忍冬12%
防風12%
甘草6%
荊芥6%
紅花6%
大黄4%
治頭瘡一方の内部構造
赤み・ジュクジュク・かゆみ・かさぶたを、冷まして乾かし、巡らせて下へ逃がす構成です。
熱毒を冷ます軸 連翹・忍冬 皮膚の赤み、熱感、化膿傾向を内側から清める方向に働きます。
湿とかゆみをさばく軸 蒼朮・防風・荊芥 ジュクジュクした湿と、動くようなかゆみをさばきます。
巡らせて下へ逃がす軸 川芎・紅花・大黄 血の巡りを助け、かさぶたやこもった熱を下へ抜く方向を支えます。

※円グラフは、治頭瘡一方の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:治頭瘡一方は、頭や顔のジュクジュクした湿疹を、冷まして乾かし、かゆみと熱を外へ逃がす処方です。

治頭瘡一方の味・香り・服用時の体感

治頭瘡一方は、連翹・忍冬・大黄の苦味、川芎・紅花の独特なえぐみ、蒼朮・防風・荊芥の薬草らしい香りが重なる処方です。小児に使われることもありますが、味はややクセがあります。

苦味とえぐみ

連翹・忍冬・大黄の苦味に、川芎や紅花の独特な風味が重なります。

薬草系の香り

川芎のセリ科らしい香り、防風・荊芥のハーブのような香りがあります。

褐色〜暗褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では褐色からやや暗い色調に見えます。

湿疹が乾く経過

合う方では、ジュクジュクが少しずつ乾き、かさぶたが落ち着いていく経過が期待されます。

服用の工夫:苦味やクセがあるため、小児では少量の水やぬるま湯でペースト状にして飲ませる、味の濃いものに少量混ぜるなどの工夫が必要なことがあります。乳幼児・小児では、年齢や体重に応じて必ず専門家に相談してください。

症状別の向き・不向き

治頭瘡一方は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、頭部・顔面、赤み、熱感、ジュクジュク、かゆみ、かさぶた、化膿傾向、便秘傾向、乾燥の有無です。

乳幼児のジュクジュク湿疹

頭や顔に赤み、汁、かさぶた、かゆみがあり、熱と湿が目立つタイプに向きます。

判断ポイント:乾燥よりジュクジュク。

頭部・顔面の湿疹・かさぶた

頭皮や顔に湿疹が出て、赤み・かゆみ・かさぶたを繰り返す場合に比較します。

判断ポイント:上部に出る湿熱皮疹。

脂漏性湿疹のような赤み・湿り

皮脂や湿り気、赤み、かゆみが強く、乾燥よりも湿熱が目立つ場合に比較します。

判断ポイント:湿りと熱があるか。

化膿傾向・膿みやすい湿疹

赤く腫れ、膿みやすく、かさぶたを作る皮膚症状に、清熱解毒の方向で考えます。

判断ポイント:赤み・膿・熱感。
×

カサカサ乾燥型の湿疹

乾燥, 粉ふき、ひび割れ、老人性の乾燥肌のようなタイプでは、乾かす方向が合わないことがあります。

判断ポイント:乾燥型には不向き。

下痢しやすい・胃腸が弱い小児

大黄を含むため、便がゆるい、食欲がない、胃腸が弱い場合は慎重に見ます。

判断ポイント:便通と胃腸の強さ。

体質別の向き・不向き

治頭瘡一方は、湿熱、風湿熱、上部の熱毒が中心のタイプに向きます。カサカサ乾燥型、血虚・陰虚、胃腸虚弱、下痢しやすいタイプでは慎重に考えます。

湿熱タイプ

赤み、熱感、ジュクジュク、かゆみ、化膿傾向があるタイプです。治頭瘡一方の中心像です。

判断ポイント:熱と湿が皮膚に出ている。

風湿熱タイプ

かゆみが強く、赤みと湿りがあり、頭や顔など上部に出やすいタイプに向きます。

判断ポイント:かゆみ・湿り・赤み。

便秘傾向を伴う上部の熱

便秘がちで、熱が上にこもり、顔や頭に皮膚症状が出やすい場合に比較します。

判断ポイント:大黄が必要な状態か。

脾気虚・胃腸虚弱タイプ

胃腸が弱く、下痢しやすい、食欲がないタイプでは、大黄や冷ます方向が負担になることがあります。

判断ポイント:下痢しないか。
×

血虚・陰虚の乾燥タイプ

皮膚を潤す力が不足し、カサカサ乾くタイプでは、当帰飲子など潤す処方を比較します。

判断ポイント:ジュクジュクか、カサカサか。

効能・効果

治頭瘡一方の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、代表的には次のように整理できます。

湿疹、くさ、乳幼児の湿疹

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

治頭瘡一方は、小児の湿疹にも使われる処方ですが、大黄、甘草、紅花を含みます。便通、胃腸状態、妊娠可能性、授乳中、他の漢方薬との併用に注意します。

大黄による下痢・腹痛に注意

大黄には便通を動かす力があります。下痢、軟便がある方では悪化することがあります。服用後に腹痛、下痢、食欲不振が強く出る場合は、効きすぎているか、体質に合っていない可能性があります。

甘草による偽アルドステロン症への注意

甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複に注意してください。

妊娠中・妊娠の可能性がある方

治頭瘡一方には大黄と紅花が含まります。妊娠中または妊娠している可能性がある方は、自己判断で使用しないでください。

授乳中の注意

大黄に含まれる成分が母乳へ移行し、乳児に下痢を起こすことがあります。授乳中の方は、使用前に医師・薬剤師へ相談してください。

小児への服用は年齢・体重に応じて相談

乳幼児や小児では、年齢、体重、便通、食欲、皮膚状態を見ながら判断します。苦味があるため、飲ませ方の工夫は必要ですが、自己判断で量を増やしたり長く続けたりしないでください。

洗いすぎ・こすりすぎに注意

ジュクジュクやかさぶたが気になっても、強くこすって洗うと皮膚のバリアが傷つきます。ぬるま湯でやさしく洗い、必要な保湿や外用薬は医師・薬剤師に相談してください。

湿熱を助長する食生活に注意

甘いもの、脂っこいもの、乳製品の摂りすぎは、体内の湿熱を助長し、かゆみやジュクジュクを悪化させることがあります。小児では、お菓子や甘い飲み物、脂肪分の多い食事を見直します。

相談・受診を優先したいサイン

  • 湿疹が急に広がる、強く腫れる、熱を持つ
  • 膿が多い、発熱を伴う、痛みが強い
  • 乳児の機嫌が悪い、哺乳が落ちる、ぐったりする
  • 顔やまぶたが腫れる、目の周囲に広がる
  • 服用後に下痢、腹痛、食欲不振が強く出る
  • むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下が出る
  • 妊娠中、妊娠の可能性がある、授乳中
すぐ相談:発熱を伴う皮膚感染、膿が多い、顔や目の周囲の腫れ、乳児のぐったり、服用後の強い下痢・腹痛、むくみ・筋力低下がある場合は、治頭瘡一方で様子を見ず医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

治頭瘡一方が気になる方は、アトピー、かゆみ、肌荒れ、アレルギー、便秘との関係も確認すると理解が深まります。

皮膚の湿疹に使う漢方薬でも、頭や顔のジュクジュク型か、赤いニキビ型か、乾燥型か、化膿型かで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 治頭瘡一方はどんな湿疹に向いていますか?

頭部や顔面に出やすく、赤み、かゆみ、ジュクジュク、かさぶた、化膿傾向を伴う湿疹に向きます。乾燥してカサカサする湿疹とは見分けます。

Q. 乳幼児湿疹に使えますか?

効能・効果上、乳幼児の湿疹が含まれます。ただし、小児では年齢・体重・便通・胃腸状態に応じた判断が必要です。自己判断で量を増やさず、専門家に相談してください。

Q. 乾燥肌やカサカサしたアトピーにも向きますか?

乾燥が中心の場合は合いにくいことがあります。治頭瘡一方は、湿り・赤み・熱感・ジュクジュクが目立つタイプに向く処方です。乾燥型では当帰飲子などを比較します。

Q. 下痢しやすい子にも使えますか?

大黄を含むため慎重に考えます。服用後に便がゆるくなる、腹痛が出る、食欲が落ちる場合は、量が合っていないか体質に合わない可能性があります。

Q. 妊娠中に飲めますか?

自己判断で飲まないでください。大黄と紅花を含むため、妊娠中または妊娠している可能性がある方は、必ず医師・薬剤師に確認してください。

参考・出典

  • PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
  • ツムラ「治頭瘡一方エキス顆粒(医療用)」添付文書
  • KEGG MEDICUS「ツムラ治頭瘡一方エキス顆粒(医療用)」医療用医薬品情報
  • 漢方スクエア「治頭瘡一方」処方解説
  • 古典・経験方:本朝経験方、香川修庵伝承方、浅田宗伯『勿誤薬室方函口訣』関連記載
  • 公益社団法人 東京生薬協会・富山大学 和漢医薬学総合研究所等の生薬資料

治頭瘡一方が合うか迷った方へ

治頭瘡一方は、乳幼児湿疹や頭部・顔面のジュクジュクした湿疹に使われる漢方薬ですが、すべての皮膚トラブルに合うわけではありません。湿熱なのか、乾燥なのか、化膿傾向があるのか、胃腸が弱いのか、感染やアレルギーとして医療機関で確認すべき状態なのかまで含めて判断することが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。湿疹が急に広がる、強い腫れや熱感がある、膿が多い、発熱を伴う、乳児の機嫌が悪い、哺乳が落ちる、顔やまぶたが腫れる、服用後の下痢・腹痛・食欲不振、むくみ・血圧上昇・こむら返り・筋力低下などがある場合は、医療機関にご相談ください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、下痢・軟便、著しい体力低下、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。