補中益気湯とは?疲労倦怠・胃腸虚弱・食欲不振・ねあせに使う漢方薬を体質別に解説

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、胃腸の働きを補い、不足した気を益す代表的な漢方薬です。元気がなく、胃腸の働きが衰え、疲れやすく、食欲が落ち、病後や術後に体力が戻りにくい方に用いられます。KanpoNowでは、この処方を「弱った胃腸から気を作り直し、下がった気を上へ持ち上げる漢方薬」として整理します。
- 疲れやすく、朝から体が重い
- 食欲がなく、胃腸の働きが弱っている
- 病後・術後に体力がなかなか戻らない
- 手足がだるく、食後に横になりたくなる
- 胃下垂、脱肛、内臓が下がるような感じがある
- 寝汗をかきやすい、風邪をひきやすい
強い発熱、長引く咳、息切れ、急な体重減少、食欲不振が続く、血便・黒色便、強い腹痛、動悸や血圧上昇がある場合は、漢方だけで様子を見ず医療機関に相談してください。
補中益気湯とは
補中益気湯は、黄耆、蒼朮、人参、当帰、柴胡、大棗、陳皮、甘草、升麻、生姜から構成される漢方薬です。
人参と黄耆は、気を補う中心です。柴胡と升麻は、下がった気を上へ引き上げます。蒼朮・陳皮・生姜・大棗は胃腸の働きを整え、食べ物から気を作る土台を支えます。当帰は血を養い、気を支える栄養面を補います。甘草は処方全体を調和します。
古典における位置づけ
補中益気湯は、金・元時代の名医である李東垣が著した『脾胃論』を出典とする処方です。胃腸を中心に気を補い、弱った体を立て直す代表処方として知られています。
処方名の「補中」は、お腹の中心である脾胃を補うこと、「益気」は気を増すことを意味します。別名として「医王湯」と呼ばれることもあり、気虚・脾気虚の基本処方として広く用いられてきました。
現代では、虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒などで比較されます。胃腸を立て直しながら、全身の気力を回復させる処方です。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、補中益気湯が合う状態を、気虚、脾気虚、中気下陥、表虚として考えます。気は、活動する力、内臓を支える力、汗を調節する力、外敵から身を守る力に関わります。
- 気虚:生命活動のエネルギーが不足し、疲れやすく、動くほど消耗する状態
- 脾気虚:胃腸の働きが弱く、食べ物から気を作れない状態
- 中気下陥:気が下がり、胃下垂、脱肛、内臓の重だるさにつながる状態
- 表虚:皮膚のバリア機能が弱く、寝汗や風邪をひきやすさが出る状態
胃腸が弱ると、食べても気が作れず、筋肉、脳、内臓がガス欠のような状態になります。そのため、手足がだるい、食後に横になりたい、朝から体が重い、病後に体力が戻らないといった症状が出ます。
補中益気湯は、人参・黄耆で気を補い、柴胡・升麻で下がった気を引き上げ、蒼朮・陳皮・生姜・大棗で胃腸を整えます。さらに当帰で血を補い、甘草で全体を調和します。気を作り、気を上げ、気を漏らさない方向へ整えるのが特徴です。
構成生薬と配合バランス
補中益気湯は、黄耆・蒼朮・人参・当帰・柴胡・大棗・陳皮・甘草・升麻・生姜の10生薬で構成されます。補気、升提、健胃、補血、調和の働きが組み合わされた、気虚に対する代表処方です。
※実際の配合量は製品により異なる場合があります。
補中益気湯の味・香り・服用時の体感
補中益気湯は、人参・黄耆・甘草・大棗による甘み、陳皮の柑橘系の香り、柴胡のわずかな苦味、生姜の軽い辛味が重なります。強く苦い処方ではなく、比較的甘く飲みやすい印象です。
甘みと軽い苦味
人参・黄耆・甘草・大棗の甘みに、柴胡のわずかな苦味が加わります。
甘い香りと柑橘
人参の甘い香りに、陳皮の爽やかな香り、生姜の軽い香りが重なります。
褐色〜黄褐色
製品により異なりますが、粉末・顆粒では褐色から黄褐色に見えます。
体に芯が入る感覚
合う方では、お腹が温まり、重だるかった体に一本芯が通るように感じることがあります。
体験の流れ:甘みと陳皮の香りを感じる → お腹がじんわり立ち上がる → 食後のだるさや横になりたい感覚が軽くなる → 姿勢が少しシャキッとし、風邪をひきにくい方向へ体力が戻る感覚。補中益気湯は、気を作り、持ち上げ、守る処方です。
症状別の向き・不向き
補中益気湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、疲労倦怠、胃腸虚弱、食欲不振、病後の衰弱、ねあせ、風邪をひきやすい、下垂感です。
著しい疲労倦怠感
手足がだるい、朝から重い、食後に横になりたいような、脾気虚の疲労に向きます。
判断ポイント:動くほど消耗する疲れ。病後・術後の衰弱
病気や手術の後に、食欲や体力が戻らず、日常生活で疲れやすい状態に比較します。
判断ポイント:回復力そのものが落ちている。胃下垂・脱肛・下垂感
気が下がり、内臓や肛門を支える力が落ちている中気下陥タイプに比較します。
判断ポイント:柴胡・升麻で持ち上げる証。寝汗・風邪をひきやすい
体表の守りが弱く、汗が漏れたり、外邪を防ぎにくい表虚タイプで比較します。
判断ポイント:黄耆で表を固める。胃のポチャポチャ感・吐き気・食欲不振が前面
同じ気虚でも、胃内停水や湿痰が強い場合は、六君子湯を比較します。
判断ポイント:全身疲労か、胃の水か。ガッチリ体型・便秘・のぼせ・赤ら顔
湿熱・実熱タイプでは、補うことで熱やのぼせが悪化することがあります。
判断ポイント:補う段階か、出す段階か。体質別の向き・不向き
補中益気湯は、気虚・脾気虚・中気下陥の基本処方です。体が弱って気を作れない、支えられない、漏れやすいという方向に向きます。熱や老廃物がたまった実証・湿熱では慎重に考えます。
気虚・脾気虚タイプ
疲れやすく、食欲がなく、胃腸の働きが落ち、日常生活で気力が続かないタイプです。
判断ポイント:気を作る力が弱い。中気下陥タイプ
胃下垂、脱肛、内臓の重だるさ、姿勢が保てないような下がる症状で比較します。
判断ポイント:下がった気を上げる。表虚・易感染タイプ
汗が漏れやすい、寝汗をかく、風邪をひきやすい、病後に体調が戻りにくいタイプです。
判断ポイント:体表の守りが弱い。陰虚・ほてりタイプ
補中益気湯は補って上げる処方のため、ほてりや寝汗が陰虚中心の場合は別処方を比較します。
判断ポイント:気虚の寝汗か、陰虚の寝汗か。湿熱・実熱タイプ
便秘、のぼせ、赤ら顔、太鼓腹、熱感があるタイプでは、補うことで火に油を注ぐことがあります。
判断ポイント:熱と老廃物が詰まっていないか。効能・効果
補中益気湯の効能・効果は、KanpoNowページおよび添付文書では次のように整理されています。
体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
補中益気湯は、気虚・脾気虚の代表処方ですが、長期連用や他の漢方薬との併用では注意が必要です。特に甘草を含むため、偽アルドステロン症やミオパチーに注意します。また、添付文書上、間質性肺炎や肝機能障害などにも注意が必要です。
甘草による偽アルドステロン症への注意
甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。
間質性肺炎・肝機能障害への注意
発熱、空咳、息切れ、息苦しさ、黄疸、褐色尿、強いだるさ、食欲不振、発疹、かゆみが出た場合は、服用を中止して専門家に相談してください。
食事指導:消化力に見合った食事
気虚の人は、消化する力そのものが不足しています。体力をつけようとして、焼肉、うなぎ、脂っこいものを無理に食べると、胃腸に負担がかかります。空腹を感じてから、温かく消化のよいものを、よく噛んで少量ずつ摂ることが大切です。
休むことも治療
補中益気湯が合う方は、気を消耗しやすい状態です。激しい運動や無理な仕事量は、回復を遅らせます。翌日に疲れが残らない程度の散歩、ストレッチ、深呼吸から始めます。
六君子湯との使い分け
補中益気湯は、全身の倦怠感、下垂感、寝汗、風邪をひきやすさが中心です。六君子湯は、胃のポチャポチャ感、吐き気、胃もたれ、食欲不振など、胃の水と消化機能の弱さが前面に出る場合に比較します。
相談・受診を優先したいサイン
- 疲労倦怠が長く続き、日常生活に支障がある
- 急な体重減少、発熱、寝汗が強い
- 息切れ、胸痛、動悸がある
- 食欲不振が長く続く、黒色便・血便がある
- むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下がある
- 発熱、空咳、息切れ、黄疸、褐色尿、強いだるさが出る
- 1か月程度服用しても改善しない、又は悪化する
症状から理解を深める
補中益気湯が気になる方は、食欲不振、冷え、不眠、ストレス、むくみ、症状一覧をあわせて見ると、気虚・脾気虚・中気下陥の全体像がつかみやすくなります。
似ている漢方薬・構成生薬
疲労倦怠に使う漢方薬でも、気虚が中心なのか、胃の水が中心なのか、血虚が強いのか、心身の不安が強いのかで選び方が変わります。補中益気湯は、胃腸から気を作り、下がった気を持ち上げる処方です。
よくある質問
Q. 補中益気湯はどんな疲れに向いていますか?
胃腸が弱く、食欲がなく、動くほど疲れ、手足がだるく、食後に横になりたいような気虚・脾気虚の疲れに向きます。
Q. 六君子湯との違いは何ですか?
補中益気湯は、全身の倦怠感、気力低下、下垂感、寝汗、風邪をひきやすさが中心です。六君子湯は、胃もたれ、吐き気、胃のポチャポチャ感、食欲不振など胃の症状が前面に出る場合に比較します。
Q. 風邪予防にも使いますか?
体力虚弱で、胃腸の働きが衰え、風邪をひきやすい方に比較されます。ただし、発熱や強い咽頭痛など急性感染症の症状がある場合は、状態に応じた対応が必要です。
Q. 寝汗にも使えますか?
気虚・表虚で汗が漏れやすいタイプの寝汗に比較されます。ほてり、口渇、乾燥、不眠が強い陰虚の寝汗では、別の処方を考えます。
Q. 甘草の注意はありますか?
補中益気湯は甘草を含みます。長期連用や他の漢方薬との併用では、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下などに注意してください。
参考・出典
- PMDA「補中益気湯」添付文書情報
- ツムラ「ツムラ漢方補中益気湯エキス顆粒」製品情報
- KEGG MEDICUS「ツムラ補中益気湯エキス顆粒(医療用)」医療用医薬品情報
- 古典:李東垣『脾胃論』補中益気湯関連記載
補中益気湯が合うか迷った方へ
補中益気湯は、疲労倦怠、虚弱体質、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒に使われる漢方薬ですが、すべての疲れに合うわけではありません。気虚なのか、血虚なのか、胃内停水なのか、湿熱なのか、睡眠やストレスの問題が強いのかを見極めることが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。強い疲労倦怠が長く続く、発熱、急な体重減少、息切れ、胸痛、黒色便、強い寝汗、食欲不振が続く場合は、医療機関にご相談ください。服用後に発疹、発赤、かゆみ、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下、空咳、息切れ、発熱、黄疸、褐色尿、強いだるさ、食欲不振などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。









