滋腎通耳湯とは?耳鳴り・聴力低下・めまいに使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月8日 監修:堀口和彦
滋腎通耳湯(じじんつうじとう)

滋腎通耳湯(じじんつうじとう)は、体力虚弱な方の耳鳴り、聴力低下、めまいに用いられる漢方薬です。加齢や過労で耳を養う腎・血・陰が不足し、そこにストレスによる気滞や頭部の虚熱が重なる状態を考えます。KanpoNowでは、この処方を「耳を養う潤いと血を補い、首から耳への巡りを整える漢方薬」として整理します。

滋腎通耳湯はこんな人に向いています
  • 加齢や疲労に伴って、耳鳴りや聞こえにくさが気になる
  • キーン、ジージーなどの耳鳴りがあり、疲れると悪化しやすい
  • ふわふわするめまい、耳の違和感、首肩こりを伴う
  • ストレス or 緊張で耳鳴りが強くなる
  • 口や目が乾く、ほてりや寝汗があるなど、陰虚・血虚のサインがある

反対に、低気圧で悪化する耳閉感、吐き気、むくみ、頭重感など、水分停滞が主役の耳鳴り・めまいでは、五苓散、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯なども比較します。

滋腎通耳湯とは

滋腎通耳湯は、当帰川芎芍薬知母地黄黄柏白芷黄芩柴胡香附子から構成される漢方薬です。

名前の通り、「腎を滋し、耳を通じさせる」ことを目的にした処方です。耳鳴りや聴力低下を、耳だけの問題ではなく、耳を養う腎・血・陰の不足、首肩から耳へ向かう巡りの悪さ、頭部にこもる虚熱から考えます。

ポイント:滋腎通耳湯は、耳鳴りを一時的に抑え込む薬ではありません。耳を養う血と潤いを補い、ストレスによる気の滞りを整えながら、慢性的な耳鳴り・聞こえにくさ・めまいの土台を見直す処方です。

古典における位置づけ

滋腎通耳湯は、中国明代の医学書『万病回春』に記載される処方です。東洋医学では「腎は耳に開竅する」と考え、耳の働きは、腎の力、血の栄養、陰液の潤いと深く関係すると捉えます。

加齢、過労、睡眠不足、慢性疲労によって腎と血が消耗すると、耳を十分に養えなくなり、キーン、ジー、蝉の鳴くような音、聞こえにくさ、ふわふわするめまいが出やすくなります。

さらに、ストレスや緊張が強いと、首肩から耳へ向かう気血の通り道が詰まり、耳鳴りや耳閉感が悪化しやすくなります。滋腎通耳湯は、補う力と巡らせる力を併せ持つ点が特徴です。

滋腎通耳湯らしさ:耳鳴り・聴力低下・めまいがあり、疲労、加齢、睡眠不足、目の疲れ、首肩こり、ストレスで悪化する。口や目が乾く、ほてりや寝汗がある。この「腎陰虚・血虚+気滞」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、滋腎通耳湯が合う状態を、腎陰虚、血虚、気滞、虚熱として考えます。耳は細かな血流と神経の働きに支えられる感覚器です。血と潤いが不足すると、耳を十分に養えず、音への過敏さや聞こえにくさが出やすくなります。

  • 腎陰虚:加齢や過労で腎の潤いが不足し、耳鳴り、聴力低下、ほてり、寝汗が出る状態
  • 血虚:耳や脳、神経を養う血が不足し、ふわふわめまい、疲労、眠りの浅さが出る状態
  • 気滞:ストレスで首肩から耳への巡りが詰まり、耳閉感や耳鳴りが悪化する状態
  • 虚熱:潤い不足によって熱が浮き、頭部や耳まわりが過敏になる状態

当帰・川芎・芍薬は、血を補いながら巡らせる四物湯系の軸です。地黄・知母・黄柏は、腎の潤いを補い、陰虚による虚熱を冷ます方向に働きます。黄芩は頭部にこもる熱感や違和感をさばき、柴胡・香附子はストレスによる気滞をほどきます。白芷は頭部・耳まわりの通り道を開く補助として働きます。

そのため、滋腎通耳湯は、単純な「耳の薬」ではなく、耳を養う力、首肩から耳へ向かう巡り、ストレスによる詰まり、虚熱による過敏さをまとめて見る処方です。

注意:突然の難聴、片側だけの強い耳鳴り、激しいめまい、吐き気、ろれつが回らない、手足のしびれ、強い頭痛、拍動性の耳鳴りがある場合は、漢方で様子を見ず、早めに耳鼻科・医療機関で確認してください。

構成生薬と配合バランス

滋腎通耳湯は、10種類の生薬から構成されます。クラシエの製剤では、黄芩・黄柏・香附子・柴胡・地黄・芍薬・川芎・知母・当帰・白芷が各1.25gから抽出されており、10味が均等に組み合わされた構成です。

滋腎通耳湯の構成を、黄芩10%、黄柏10%、香附子10%、柴胡10%、地黄10%、芍薬10%、川芎10%、知母10%、当帰10%、白芷10%として合計100%で示した構成イメージです。 滋腎 通耳湯
黄芩10%
黄柏10%
香附子10%
柴胡10%
地黄10%
芍薬10%
川芎10%
知母10%
当帰10%
白芷10%
滋腎通耳湯の内部構造
耳を養う潤いと血を補い、虚熱を冷まし、ストレスによる耳まわりの滞りを開く構成です。
耳を養う軸 地黄・当帰・芍薬・川芎 腎陰と血を補い、耳や脳、神経を養う土台を支えます。
虚熱を冷ます軸 知母・黄柏・黄芩 潤い不足で上部に浮いた熱や、耳まわりの過敏な不快感を冷ます方向です。
通りを開く軸 柴胡・香附子・白芷 ストレスによる気滞、首肩から耳への巡りの詰まり、頭部の違和感を整えます。

※円グラフは、滋腎通耳湯の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:滋腎通耳湯は、加齢・疲労・睡眠不足で耳を養う力が低下し、そこにストレスや首肩の滞りが重なった耳鳴り・聴力低下・めまいを整える処方です。

滋腎通耳湯の味・香り・服用時の体感

滋腎通耳湯は、黄芩・黄柏・知母の苦み、当帰・川芎・白芷の強い芳香、地黄のもったりした甘み、香附子のハーブ様の香りが重なった複雑な味です。やや苦く、香りがしっかりした処方です。

苦みと甘み

黄芩・黄柏・知母の苦みに、地黄や当帰の甘みとえぐみが重なります。

当帰・川芎の芳香

セロリのような当帰・川芎の香りに、香附子や白芷のハーブ様の香りが立ちます。

灰褐色〜褐色

製品により異なりますが、エキス剤では灰褐色から褐色寄りの粉末・顆粒・錠剤として見えます。

首から耳がゆるむ感覚

合う方では、首肩の緊張や耳まわりの詰まり感が少しずつゆるみ、耳鳴りの過敏さが落ち着く感覚があります。

体験の流れ:苦みと芳香を感じる → 胸や首肩のこわばりが少し抜ける → 耳まわりの緊張がゆるむ →数週間から数ヶ月かけて、耳鳴りや聞こえにくさの土台を整えていく感覚。慢性の耳鳴りでは、短期の即効薬というより体質から整える処方です。

症状別の向き・不向き

滋腎通耳湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、耳鳴りの音、加齢・疲労との関係、聴力低下、めまい、首肩こり、ストレス、乾燥、ほてり、胃腸の強さです。

加齢・過労による耳鳴り・聴力低下

腎や血の不足により、耳を養う力が低下しているタイプで候補になります。ジージー、キーンという慢性的な耳鳴りで比較します。

判断ポイント:加齢・疲労・睡眠不足で悪化。

耳鳴りにめまい・ふらつきを伴う

血虚・腎虚により耳や脳への栄養が不足し、ふわふわするめまいを伴う場合に比較します。

判断ポイント:耳鳴り+ふわふわめまい+疲労。

ストレスで悪化する耳鳴り

柴胡・香附子・白芷を含むため、ストレスや首肩こりで耳の通り道が詰まるタイプにも配慮された構成です。

判断ポイント:緊張・首肩こり・耳閉感。

陰虚による高音の耳鳴り

口や目の乾き、ほてり、寝汗、眠りの浅さがあり、キーンという高音が気になる場合に比較します。

判断ポイント:乾燥・ほてり・高音.

水分停滞型の耳鳴り・めまい

低気圧で悪化し、耳閉感、吐き気、頭重感、むくみを伴う場合は、水毒・湿痰型として別処方を比較します。

判断ポイント:乾燥ではなく水が主役か。
×

胃腸虚弱・下痢しやすいタイプ

地黄や補血薬、苦寒薬を含むため、胃もたれ、腹痛、下痢が出やすい方では不向きな場合があります。

判断ポイント:地黄を受け止められる胃腸か。

体質別の向き・不向き

滋腎通耳湯は、腎陰虚、血虚、気滞が重なるタイプに向きます。湿痰・水毒が主役の場合、著しい胃腸虚弱、冷えが強いタイプでは慎重に考えます。

腎陰虚+血虚タイプ

加齢、過労、睡眠不足で耳を養う血と潤いが不足し、耳鳴り、聴力低下、めまいが出るタイプです。滋腎通耳湯の中心像です。

判断ポイント:耳を養う力の不足。

陰虚+虚熱タイプ

潤い不足により熱が頭部に浮き、キーンという耳鳴り、ほてり、寝汗、口渇、眠りの浅さがあるタイプで候補になります。

判断ポイント:乾く・ほてる・高音。

気滞・ストレス型

ストレスで耳鳴りが悪化し、首肩こり、耳閉感、緊張、イライラを伴うタイプでは、柴胡・香附子の巡らせる方向が役立ちます。

判断ポイント:緊張で耳が詰まる。

脾気虚・胃腸虚弱タイプ

地黄、当帰、川芎などは胃腸に重く感じることがあります。食欲不振、胃もたれ、下痢しやすい方では慎重に判断します。

判断ポイント:補血滋陰薬を消化できるか。
×

湿痰・水毒タイプ

むくみ、頭重感、耳閉感、吐き気、低気圧で悪化するめまいが中心の場合は、潤す処方で重くなる可能性があります。

判断ポイント:水が多いタイプには不向き。

効能・効果

滋腎通耳湯の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、KanpoNowでは代表的に次のように整理しています。

体力虚弱なものの次の諸症:耳鳴り、聴力低下、めまい

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

滋腎通耳湯は、地黄・当帰・川芎などの補血滋陰薬と、知母・黄柏・黄芩などの清熱薬を含みます。胃腸が弱い方、妊娠中の方、医師の治療を受けている方では、服用前の相談が必要です。

地黄・補血薬による胃腸負担

地黄や当帰を含むため、胃腸が弱い方では、吐き気、食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢が出ることがあります。服用後に胃腸症状が続く場合は、自己判断で継続しないでください。

慢性耳鳴りは数ヶ月単位で見る

慢性的な耳鳴りや聴力低下は、痛み止めのように短時間で変化を感じるとは限りません。滋腎通耳湯は、耳を養う体質の土台を整える処方として、焦らず経過を見ることが大切です。ただし、1ヶ月程度服用しても変化がない場合や悪化する場合は、専門家に相談してください。

水分補給と睡眠の養生

陰虚・血虚タイプでは、こまめな水分補給、十分な睡眠、目の休息が大切です。水分は一度に多く飲むより、常温から温かいものを少しずつ摂る方が合う場合があります。夜更かし、長時間のスマホ・PC、過労は耳鳴りを悪化させる要因になります。

首肩の通り道をゆるめる

耳鳴りは、耳だけでなく首肩のこり、顎の緊張、目の疲れ、ストレスとも関係します。肩甲骨、首、鎖骨まわりをこまめに動かす工夫や、深い呼吸で胸郭をゆるめることが、耳まわりの巡りを助けます。

相談・受診を優先したいサイン

  • 突然聞こえにくくなった、片側だけ急に耳鳴りが強くなった
  • 激しいめまい、吐き気、歩けないほどのふらつきがある
  • 拍動性の耳鳴り、強い頭痛、ろれつが回らない、手足のしびれがある
  • 耳だれ、耳の痛み、発熱を伴う
  • 服用後に吐き気、食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢が出る
  • 1ヶ月程度服用しても改善が見られない、または悪化する
すぐ相談:突然の難聴、強いめまい、片側性の急な耳鳴り、拍動性耳鳴り、神経症状、耳の痛みや発熱がある場合は、滋腎通耳湯で様子を見ず、耳鼻科・医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

滋腎通耳湯が気になる方は、耳鳴り、めまい、肩こり、更年期、睡眠不足との関係も確認すると理解が深まります。

耳鳴りやめまいに使う漢方薬でも、腎虚が主役か、水毒が主役か、ストレスが主役か、血虚が主役かで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 滋腎通耳湯はどんな耳鳴りに向いていますか?

体力が落ち、加齢・過労・睡眠不足を背景に、耳鳴り、聴力低下、めまいが出るタイプに向きます。口や目の乾き、ほてり、寝汗、首肩こり、ストレスで悪化する耳鳴りがある場合に比較します。

Q. すぐ効きますか?

慢性的な耳鳴りや聴力低下では、短時間で変化を感じるとは限りません。耳を養う体質の土台を整える処方として、数週間から数ヶ月単位で経過を見ることがあります。ただし、突然の難聴や強いめまいはすぐ受診してください。

Q. めまいにも使えますか?

効能・効果上、めまいが含まれる製品があります。腎虚・血虚によるふわふわめまいでは候補になります。一方、低気圧で悪化し、吐き気や耳閉感、むくみを伴う水毒型では、苓桂朮甘湯、五苓散、半夏白朮天麻湯などを比較します。

Q. 胃腸が弱い人でも飲めますか?

慎重に考える必要があります。地黄や当帰などを含むため、胃もたれ、吐き気、食欲不振、腹痛、下痢が出ることがあります。胃腸が弱い方は、服用前に専門家へ相談してください。

Q. 甘草は入っていますか?

滋腎通耳湯の代表的な構成には、甘草は含まれません。ただし、他の漢方薬を併用している場合は、全体としての生薬重複や体質適合を確認してください。

参考・出典

滋腎通耳湯が合うか迷った方へ

滋腎通耳湯は、耳鳴り、聴力低下、めまいに使われる漢方薬ですが、すべての耳鳴りに合うわけではありません。腎陰虚・血虚が中心なのか、水毒・湿痰が中心なのか、ストレス性の気滞が強いのか、急な受診が必要な耳鳴りなのかまで含めて判断することが大切です。

AI漢方診断の案内

あなたに合う漢方薬を確認しませんか?

KanpoNowでは、症状と体質をもとに、あなたに合った漢方薬の候補をAIが提案します。滋腎通耳湯が合うタイプか、六味丸・八味地黄丸料・苓桂朮甘湯・釣藤散・当帰芍薬散など別の処方を考えた方がよいタイプかを確認したい方は、【AI漢方診断】をご利用ください。

AI漢方診断をする

免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。突然の難聴、片側だけの強い耳鳴り、激しいめまい、吐き気、歩行困難、拍動性耳鳴り、強い頭痛、ろれつが回らない、手足のしびれ、耳の痛み、耳だれ、発熱、服用後の吐き気・食欲不振・胃部不快感・腹痛・下痢などがある場合は、医療機関にご相談ください。妊娠中・授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、基礎疾患がある方、他のお薬を服用中の方も, 自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。