葛根湯とは?風邪のひきはじめ・肩こり・頭痛に使う漢方薬

更新日:2026年7月6日 監修:堀口和彦
葛根湯(かっこんとう)

葛根湯(かっこんとう)は、風邪のひきはじめで、寒気、発熱、頭痛、首すじや肩のこわばりがあるときに用いられる漢方薬です。体を温めて表面の邪を発散し、こわばった筋肉をゆるめる処方として知られています。KanpoNowでは、この処方を「寒気と首肩のこわばりがある風邪初期に、体表を温めて発散する漢方薬」として整理します。

葛根湯はこんな人に向いています
  • 風邪の初期で、ゾクゾクする寒気がある
  • まだ自然な汗をかいていない
  • 首すじ・肩・背中がこわばる
  • 頭痛、発熱、鼻かぜの初期症状がある
  • 体力が比較的あり、体表の邪を発散する力が残っている

反対に、すでに汗をかいている風邪、強いだるさがある風邪、胃腸が弱い方、高齢の方、高血圧・心疾患・排尿障害・甲状腺機能亢進症などがある方は、自己判断での服用に注意が必要です。

葛根湯とは

葛根湯は、葛根麻黄大棗桂皮芍薬甘草生姜から構成される漢方薬です。代表的には、風邪の初期で、自然な汗が出ておらず、頭痛・発熱・悪寒・肩こりなどを伴う比較的体力のある方に用いられます。

一般に「風邪のひきはじめには葛根湯」と知られていますが、漢方薬剤師の視点では、より正確には「汗が出ていない寒気の風邪」「首肩のこわばりが目立つ風邪」に合いやすい処方です。症状名だけでなく、寒気、無汗、首肩のこわばり、体力の残り方を確認して選ぶことが大切です。

ポイント:葛根湯は「温めて、体表を開き、発汗を助ける」処方です。寒気があり、汗が出ず、首肩が固いときに合いやすい一方、汗をかいている人や消耗している人には強すぎることがあります。

古典における葛根湯の位置づけ

葛根湯は、古典『傷寒論』の太陽病編に登場する代表処方です。古典では、うなじから背中にかけて強くこわばり、汗が出ておらず、風に当たると寒気を感じる状態が目安になります。

また、『金匱要略』では、痙病と呼ばれる筋肉のこわばりや引きつりを伴う病態にも記載があります。ただし、現代医学でいう重い痙攣性疾患や神経症状は救急対応が必要な場合があります。古典上の記載を、現代で自己判断の治療に置き換えることはできません。

葛根湯らしさ:ただの「風邪薬」ではありません。首・肩・背中のこわばりを伴う、汗の出ない寒気タイプの初期症状に向きやすい漢方薬です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、葛根湯が合う状態を「表寒実証」と考えます。これは、冷えの邪気が体表に入り、毛穴が閉じて汗が出にくくなり、熱が内側にこもっている状態です。

  • 表:病邪がまだ体の浅いところ、つまり皮膚・筋肉・首肩まわりにある段階
  • 寒:ゾクゾクする寒気、風に当たると寒い、温めると楽になる状態
  • 実:病邪を外へ追い出すだけの体力がまだ残っている状態
  • 無汗:体表が閉じ、自然な汗が出にくい状態

葛根湯は、体表を温めて開き、汗を出す方向へ導く処方です。同時に、首すじから背中にかけてのこわばりにも働きかけます。だからこの処方を選ぶときは、「風邪かどうか」だけではなく、寒気·無汗・首肩のこわばりがあるかを見ることが重要です。

注意:葛根湯の目的は、漢方的には「邪気を発散する」ことです。ただし、ウイルスそのものを直接排除する薬という意味ではありません。高熱、強い咳、息苦しさ、強い喉の痛み、症状の長期化がある場合は医療機関への相談が必要です。

構成生薬と配合バランス

葛根湯は、7つの生薬がそれぞれ役割を持ちながら、ひとつの方向へ働くように組み立てられた処方です。中心には、首すじ・背中のこわばりをほどく葛根があり、その外側で麻黄・桂皮・生姜が体表を温めて発散をかけ、さらに大棗・甘草が胃腸への負担をやわらげます。

葛根湯の構成生薬比率 葛根32%、麻黄16%、大棗16%、桂皮12%、芍薬12%、甘草8%、生姜4%の配合比率イメージです。 葛根湯 配合比率
葛根32%
麻黄16%
大棗16%
桂皮12%
芍薬12%
甘草8%
生姜4%
葛根湯の内部構造
配合量の中心は葛根です。そこに、発汗の推進力と、消耗を抑える緩衝材が組み合わさります。
こわばりをほどく軸 葛根・芍薬 首すじから背中の張りをほどき、葛根湯の「効きどころ」を決めます。
発汗の推進力 麻黄・桂皮・生姜 冷えて閉じた体表を温め、汗を出して外へ逃がす方向に働きます。
消耗を抑える支え 大棗・甘草 強い発散で削れすぎないように、胃腸と処方全体を支えます。

※配合比率は、葛根8g・麻黄4g・大棗4g・桂皮3g・芍薬3g・甘草2g・生姜1gを基準にしたイメージです。実際の配合量は製品により異なります。

一言でいうと:葛根湯は「首肩をゆるめる薬」に、発汗スイッチを組み込んだ処方です。寒気だけでなく、首すじ・背中のこわばりがあるときに輪郭がはっきりします。

葛根湯の味・香り・服用時の体感

葛根湯の体験は、ばらばらに「香り」「味」「見た目」を見るより、飲む前から飲んだ後までの流れで捉えると分かりやすくなります。冷えて閉じた体表を内側から温めて開く処方であり、その性格は香り・味・飲後感にも表れます。

茶褐色に広がる

顆粒をお湯に溶かすと、少し濁った茶褐色に。まず「温める処方」の雰囲気が立ち上がります。

桂皮と生姜が立つ

甘くスパイシーな香りに、生姜の爽やかな辛みが重なります。温感のある香りです。

甘みから辛みへ

入口は甘草・大棗のほのかな甘み。続いて桂皮・生姜の辛み、麻黄・芍薬のわずかな苦みが追いかけます。

首背中へ広がる

合っていると、胃のあたりから温まり、首すじや背中へじんわり広がる感覚があります。うっすら汗ばむこともあります。

体験の流れ:茶褐色のスパイス湯 → 桂皮と生姜の温かい香り → 甘み・辛み・少しの苦み → 首背中がほどけるような温感。寒気があり、汗が出ず、首肩が固いときほど、この流れが自然に感じられることがあります。

症状別の向き・不向き

葛根湯は、症状名だけで選ぶ漢方薬ではありません。見るべきポイントは、汗が出ていないか、寒気があるか、首肩がこわばっているかです。この3つが揃うほど、処方の輪郭ははっきりします。

風邪の初期・無汗・悪寒

葛根湯の最も典型的な場面です。寒気がして、汗が出ず、体表が閉じている。ここで温めて発散するのが本領です。

判断ポイント:寒気が強いのに、まだ汗が出ていない。

首すじ・肩・背中のこわばり

うなじから背中にかけて張る、肩がこる、頭痛がするという場合は、葛根湯らしさが出ます。

判断ポイント:風邪の入口に首肩が固くなる。

頭痛・鼻かぜの初期

寒気、無汗、首肩のこわばりと一緒に頭痛や鼻かぜ症状がある場合に候補になります。鼻水が水っぽく長引く場合は別処方も比較します。

判断ポイント:頭痛だけでなく、寒気と無汗があるか。

肩こり・筋肉痛

風邪や冷えをきっかけに、首肩や背中がこわばるタイプで比較されます。慢性的な肩こりだけで選ぶ処方ではありません。

判断ポイント:冷えや風邪初期と連動しているか。

咳や喉の痛みが強い風邪

咳、息苦しさ、強い喉の痛み、高熱が前面に出る場合は、葛根湯だけで考えない方がよいことがあります。受診も含めて判断します。

判断ポイント:呼吸器症状や高熱が強い場合は受診を優先。
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汗をかいている風邪・虚弱な風邪

すでに汗をかいている、強いだるさがある、胃腸が弱い、高齢で体力が落ちている場合は、発汗力が負担になることがあります。

判断ポイント:汗が出ている、消耗している、胃腸が弱い場合は慎重に。

体質別の向き・不向き

葛根湯は、比較的体力があり、体表に邪気がとどまっている「表寒実証」に向く処方です。補う薬ではなく、発散する薬なので、体質との相性を見ることが重要です。

表寒実証

寒気があり、汗が出ず、首肩がこわばり、体力がまだ残っているタイプです。葛根湯の中心的な体質像です。

判断ポイント:寒気・無汗・首肩のこわばり・体力がそろう。

冷えで筋肉がこわばるタイプ

冷えると首肩が張る、背中が固くなる、風に当たると体調を崩すタイプでは候補になります。

判断ポイント:冷えと筋肉のこわばりが結びついている。

気虚・胃腸虚弱

疲れやすい、食が細い、下痢しやすい方では、発散の力が負担になることがあります。胃腸の弱りが強い場合は慎重に判断します。

判断ポイント:発散する力に体がついていけるか。
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陰虚・乾燥とほてり

寝汗、ほてり、口の渇き、乾燥感が強いタイプでは、発汗方向が負担になることがあります。

判断ポイント:汗や潤いを失いやすいタイプでは慎重に。
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高血圧・動悸・不眠が出やすいタイプ

麻黄を含むため、動悸、不眠、血圧上昇、発汗過多が出やすい方では注意が必要です。

判断ポイント:麻黄に反応しやすい体質か確認する。

効能・効果

葛根湯の効能・効果は製品により表現が異なりますが、代表的には次のような内容が記載されています。

自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:
感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患、肩こり、上半身の神経痛、じんましん など

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

葛根湯はよく知られた漢方薬ですが、麻黄と甘草を含むため、誰にでも気軽に長く使ってよい処方ではありません。特に、高齢者、胃腸が弱い方、心疾患・高血圧・排尿障害・甲状腺機能亢進症などがある方は注意が必要です。

麻黄による注意

葛根湯には麻黄が含まれます。麻黄は発汗や気道を開く方向に働きますが、体質によっては交感神経を刺激するような反応が出ることがあります。

  • 不眠
  • 動悸、頻脈
  • 発汗過多
  • 血圧上昇
  • 排尿しにくさ
  • 精神興奮、落ち着かなさ

甘草による注意

葛根湯には甘草も含まれます。甘草を含む漢方薬を複数併用したり、長期間服用したりすると、偽アルドステロン症と呼ばれる副作用に注意が必要です。

  • 手足のむくみ
  • 血圧上昇
  • 体重増加
  • だるさ、脱力感
  • こむら返り、筋肉のけいれん

受診を優先したいサイン

  • 高熱が続く、または急に悪化している
  • 息苦しさ、強い咳、胸痛がある
  • 強い喉の痛みや飲み込みにくさがある
  • 強い頭痛、意識がぼんやりする、脱水が疑われる
  • 発疹、かゆみ、黄疸、強いだるさが出た
  • 服用後に動悸、不眠、発汗過多、血圧上昇が強く出た
すぐ相談:服用後に、動悸、不眠、発汗過多、血圧上昇、排尿しにくさ、むくみ、脱力感、こむら返り、発疹、かゆみ、強い胃部不快感などが出た場合は服用を中止し、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。

症状から理解を深める

葛根湯が気になる方は、風邪の初期だけでなく、頭痛、肩こり、鼻づまり、咳、冷えとの関係も確認すると理解が深まります。

葛根湯と似て見える処方でも、寒気を温めて発散するのか、鼻症状を整えるのか、咳や水様鼻水をさばくのか、熱を冷ますのかで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 葛根湯はどんな風邪に向いていますか?

風邪の初期で、寒気があり、まだ汗が出ておらず、首すじや肩・背中がこわばるタイプに向きやすい漢方薬です。すでに汗をかいている風邪や、強いだるさがある風邪には合わないことがあります。

Q. 葛根湯は肩こりにも使いますか?

肩こりや首すじの張りに使われることがあります。ただし、葛根湯らしい肩こりは、冷えや風邪初期、体表のこわばりと関係するものです。慢性的な肩こりだけで判断する処方ではありません。

Q. 葛根湯は汗をかいているときにも飲めますか?

すでに汗をかいている場合は、葛根湯の発汗方向が合わないことがあります。汗が出て消耗している、だるさが強い、胃腸が弱い場合は別の見立てが必要です。

Q. 高血圧や動悸がある人は注意が必要ですか?

葛根湯には麻黄が含まれるため、動悸、不眠、血圧上昇、発汗過多などに注意が必要です。高血圧、心疾患、甲状腺機能亢進症、排尿障害などがある方は、自己判断で服用せず医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。

Q. 葛根湯は長く飲み続けてもよいですか?

葛根湯は、風邪の初期など短期的な場面で使うことが多い処方です。麻黄と甘草を含むため、漫然と長く続けることはおすすめしません。症状が改善しない場合や悪化する場合は相談してください。

参考・出典

葛根湯が合うか迷った方へ

葛根湯は、知名度の高い漢方薬ですが、すべての風邪や肩こりに合うわけではありません。寒気、汗の有無、首肩のこわばり、体力、胃腸の状態、麻黄への注意点まで含めて判断することが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。症状が強い場合、長引く場合、急な悪化がある場合、高熱・息苦しさ・胸痛・強い咳・強い頭痛などがある場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、小児・高齢者の場合は、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。