加味帰脾湯とは?不眠・不安・貧血に使う漢方薬

加味帰脾湯(かみきひとう)は、心身が疲れ、血色が悪く、不眠・不安・貧血傾向が重なる方に用いられる漢方薬です。胃腸の働きが弱り、気血を十分に作れなくなった「心脾両虚」を土台に、考えすぎ、緊張、軽いイライラ、のぼせ、熱感が加わった状態を考えます。KanpoNowでは、この処方を「気血を補い、心を養いながら、疲れた神経の高ぶりを整える漢方薬」として整理します。
- 疲れているのに眠れない、眠りが浅い
- 不安感、緊張、動悸、考えすぎがある
- 血色が悪く、貧血傾向、立ちくらみがある
- 食欲が落ち、胃腸が弱く、疲れが抜けにくい
- 夢が多い、物忘れが増えた、心が落ち着かない
- 疲労を背景に、軽いイライラ・のぼせ・熱感を伴う
強い不眠、うつ状態、希死念慮、激しい動悸、胸痛、息切れ、急な体重減少、出血、重い貧血が疑われる場合は、漢方だけで様子を見ず医療機関に相談してください。
加味帰脾湯とは
加味帰脾湯は、黄耆、柴胡、酸棗仁、蒼朮、人参、茯苓、竜眼肉、遠志、山梔子、大棗、当帰、甘草、生姜、木香から構成される漢方薬です。
胃腸を支えて気を補う生薬、血を補って心を養う生薬、不眠や不安を落ち着かせる生薬、軽い熱感やイライラを整える生薬が組み合わされています。帰脾湯に柴胡と山梔子を加えた処方であるため、気血不足だけでなく、疲労を背景にした軽い神経の高ぶりにも対応しやすい構成です。
古典における位置づけ
加味帰脾湯は、帰脾湯を土台に、柴胡と山梔子を加えた処方です。帰脾湯は、心労や過労によって胃腸の働きが弱り、気血が不足し、心が落ち着かなくなる状態を整えるために用いられてきました。
「帰脾」という名前は、弱った脾、つまり消化吸収の土台に力を戻すという意味で理解できます。漢方でいう脾は、現代医学の脾臓そのものではなく、食べたものから気血を作り、全身と心を養う働きとして考えます。
加味帰脾湯では、帰脾湯の「気血を補い、心を養う」働きに、柴胡・山梔子による「気の滞りや軽い熱感を鎮める」方向性が加わります。そのため、疲れているのに眠れない、弱っているのに焦る、血色が悪いのにほてる、という複雑な状態に使いやすい処方です。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、加味帰脾湯が合う状態を、気虚、血虚、心脾両虚、軽い気滞・虚熱として考えます。悩みすぎや過労によって胃腸が弱ると、食べたものから気血を作る力が落ちます。すると、体は疲れやすくなり、心を養う血も不足して、眠りや安心感が不安定になります。
- 気虚:疲れやすい、気力が出ない、食欲が落ちる、回復が遅い状態
- 血虚:顔色が悪い、眠りが浅い、動悸、不安、物忘れ、夢が多い状態
- 心脾両虚:胃腸が弱り、心を養う血が不足して、不眠・不安・健忘が出る状態
- 軽い虚熱・気滞:疲れているのに、焦る、イライラする、頭が熱い、考えが止まらない状態
加味帰脾湯は、人参・黄耆・蒼朮・茯苓などで胃腸を立て直し、当帰・竜眼肉・酸棗仁・遠志で血と心を養い、柴胡・山梔子で軽い熱感や気の滞りを整えます。補うだけでも、冷ますだけでもなく、疲れて弱った心身の土台を支えながら、神経の高ぶりを鎮める構成です。
構成生薬と配合バランス
加味帰脾湯は、14種類の生薬で構成される、補気・補血・安神・理気清熱の処方です。胃腸を支えて気を補い、血を補って心を養い、不眠や不安を落ち着かせ、疲労を背景にした軽い熱感やイライラを整えます。














※円グラフは、加味帰脾湯の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。
加味帰脾湯の味・香り・服用時の体感
加味帰脾湯は、人参・大棗・甘草・竜眼肉による穏やかな甘みに、柴胡・山梔子の軽い苦味、木香の芳香が重なります。補う生薬が多い一方で、柴胡・山梔子・木香が入ることで、重すぎず、気の巡りも意識した処方になっています。
甘みと軽い苦味
人参・大棗・甘草・竜眼肉の甘みに、柴胡・山梔子の軽い苦味が混ざります。
甘い香りと木香の芳香
補う処方らしい甘い香りに、木香のややスパイシーな香りが重なります。
淡褐色〜褐色
製品により異なりますが、粉末・顆黎では淡褐色から褐色に見えます。
心身がほどける感覚
合う方では、胃腸の底力が戻り、不安、焦り、眠りの浅さが少しずつ穏やかになります。
体験の流れ:やわらかな甘みを感じる → 胃腸と体力が支えられる → 胸の不安や動悸が落ち着く → 眠りが少しずつ深くなる感覚。加味帰脾湯は、眠れる心身の土台を作る処方です。
症状別の向き・不向き
加味帰脾湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、疲労、胃腸虚弱、血色不良、不眠、不安、動悸、軽いイライラ・のぼせが重なっているかどうかです。
疲れているのに眠れない不眠
体力が落ち、気血が不足し、心が養われないことで眠りが浅くなるタイプに向きます。
判断ポイント:疲れているのに眠れない。不安・動悸・考えすぎ
血虚と心脾両虚により、胸が落ち着かず、不安、動悸、考えすぎが出る場合に比較します。
判断ポイント:不安と疲労が同時にある。血色不良・貧血傾向・立ちくらみ
顔色が悪い、疲れやすい、動悸、立ちくらみ、眠りの浅さが重なる血虚タイプに向きます。
判断ポイント:血の不足が見える。産後・育児疲れの不安定さ
産後の血の消耗、睡眠不足、胃腸の弱り、不安、イライラが重なる場合に比較します。
判断ポイント:消耗と不安が中心。体力があり、怒り・便秘・強い実熱が目立つ
顔が赤く、便秘が強く、怒りや興奮が前面に出るタイプでは、補う処方が重くなることがあります。
判断ポイント:虚証か実証か。胃もたれ・痰湿が強いタイプ
補う生薬が多いため、舌苔が厚い、胃もたれ、悪心、痰が多いタイプでは重く感じることがあります。
判断ポイント:補える胃腸か。体質別の向き・不向き
加味帰脾湯は、気虚・血虚・心脾両虚に向く処方です。疲労と不安が重なり、胃腸の弱り、血色不良、不眠、動悸がある方で比較します。
気虚タイプ
疲れやすい、気力が出ない、食欲が落ちる、回復が遅いタイプです。
判断ポイント:胃腸と体力の弱り。血虚タイプ
顔色が悪い、眠りが浅い、動悸、不安、夢が多い、物忘れがあるタイプです。
判断ポイント:心を養う血が不足。心脾両虚タイプ
考えすぎや心労で胃腸が弱り、気血不足から不眠・不安・動悸が出るタイプです。
判断ポイント:胃腸と心の両方が弱る。軽い気滞・虚熱タイプ
疲労ベースに、焦り、軽いイライラ、のぼせ、頭の熱感が加わる場合に比較します。
判断ポイント:虚が土台の高ぶり。実熱・湿熱タイプ
便秘、強い口渇、赤ら顔、強い怒り、炎症が目立つ場合は、別方向の処方を比較します。
判断ポイント:補うより瀉す状態か。効能・効果
加味帰脾湯は、一般に、体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの、不眠症、精神不安、神経症、貧血などに用いられる処方として整理されます。
体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
加味帰脾湯は、気血を補い心を養う処方ですが、甘草、山梔子を含むため、長期服用や併用時には注意が必要です。また、不眠・不安・貧血傾向は、医療機関での確認が必要な場合があります。
甘草による偽アルドステロン症への注意
甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。
山梔子による長期服用リスク
山梔子を含む漢方薬では、長期服用により腸間膜静脈硬化症が報告されています。長期服用中に、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満、便潜血陽性などが続く場合は、医師・薬剤師に相談してください。
胃もたれ・食欲低下への注意
補気・補血の生薬が多いため、体質によっては胃もたれ、食欲低下、悪心、腹痛、下痢などが出ることがあります。服用後に胃腸症状が出る場合は、無理に続けず相談してください。
睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬との併用
加味帰脾湯は、西洋薬の代わりに自己判断で使うものではありません。睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬を服用中の方は、自己判断で中止・減量せず、医師または薬剤師に相談してください。
相談・受診を優先したいサイン
- 不眠や不安が強く、日常生活に支障がある
- 気分の落ち込みが強い、希死念慮がある
- 胸痛、強い動悸、息切れ、失神がある
- 出血、重い貧血、急な体重減少がある
- むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下がある
- 腹痛、下痢、便秘、腹部膨満が長く続く
- 服用しても改善しない、又は悪化する
症状から理解を深める
加味帰脾湯が気になる方は、不眠、不安、貧血、動悸、更年期の不眠、症状一覧をあわせて見ると、心脾両虚・気虚・血虚の全体像がつかみやすくなります。
似ている漢方薬・構成生薬
不眠や不安に使う漢方薬でも、気血不足なのか、実証の緊張なのか、気滞なのか、陰虚のほてりなのかで選び方が変わります。加味帰脾湯は、疲労・胃腸虚弱・血色不良を土台にした不眠・不安に向く処方です。
よくある質問
Q. 加味帰脾湯はどんな不眠に向いていますか?
疲れているのに眠れない、眠りが浅い、夢が多い、考えごとが止まらない、不安や動悸を伴う不眠に向きます。体力があり、便秘や強い熱感が前面に出る不眠では別処方を考えます。
Q. 加味帰脾湯は更年期にも使えますか?
疲労、血色不良、不安、不眠が土台にあり、軽いほてりやイライラが重なる更年期タイプでは候補になります。強いのぼせ、便秘、怒り、実熱が目立つ場合は体質確認が必要です。
Q. 睡眠薬を飲んでいても相談できますか?
相談は可能ですが、睡眠薬を自己判断で中止・減量しないでください。併用薬、日中の眠気、ふらつき、持病、血圧などを確認したうえで、医師または薬剤師に相談することが大切です。
Q. 長く飲んでもよい漢方薬ですか?
長期服用では、甘草によるむくみ・血圧上昇・低カリウム血症、山梔子含有製剤による腸間膜静脈硬化症に注意が必要です。症状が改善しない場合や長く続ける場合は、専門家の確認を受けてください。
参考・出典
- ツムラ「加味帰脾湯エキス顆粒(医療用)添付文書」
- J-STAGE 日本東洋医学雑誌「帰脾湯及び加味帰脾湯の出典」
- 漢方スクエア「加味帰脾湯(かみきひとう)」
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
加味帰脾湯が合うか迷った方へ
加味帰脾湯は、不眠、不安、疲労感、血色不良、胃腸の弱り、軽いほてりやイライラが重なる方に使われる漢方薬ですが、すべての不眠や不安に合うわけではありません。気血不足なのか、実証の緊張なのか、気滞なのか、陰虚のほてりなのかを見極めることが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。不眠、不安、動悸、貧血傾向、血色不良、疲労感は、うつ病、不安症、甲状腺疾患、心疾患、貧血、消化器疾患などが関係することがあります。強い不眠、不安、抑うつ、希死念慮、胸痛、強い動悸、息切れ、出血、重い貧血が疑われる場合は医療機関にご相談ください。服用後にむくみ、血圧上昇、急な体重増加、こむら返り、筋力低下、脱力感、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満、発疹、発赤、かゆみ、胃部不快感、悪心などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。