甘露飲とは?口内炎・口の渇き・歯ぐきの炎症に使う漢方薬を体質別に解説

甘露飲(かんろいん)は、口内炎、舌の荒れや痛み、歯ぐきの腫れなど、口の中に出る炎症と乾きを同時に見る漢方薬です。胃腸にこもった熱と湿が上にのぼり、口の中を荒らす一方で、その熱によって粘膜の潤いが失われ、口の渇きやネバつきが起こる状態に用いられます。KanpoNowでは、この処方を「胃の熱を冷まし、乾いた口腔粘膜を潤し、口内炎・舌の痛み・歯ぐきの炎症を内側から整える漢方薬」として整理します。
- 口内炎を繰り返し、舌や口の中がヒリヒリ痛む
- 口が渇くのに、口の中がネバネバして不快
- 歯ぐきが腫れやすい、赤くなりやすい、出血しやすい
- 胃の熱、胸やけ、口臭、口の苦みが気になる
- 辛いもの、脂っこいもの、飲酒、ストレスで口の症状が悪化しやすい
反対に、口が渇かず、お腹が冷えて水様の下痢をしている方、胃腸が極端に弱い方、冷えが強い方には向きにくい処方です。地黄・麦門冬・天門冬・石斛など潤す生薬が多いため、胃もたれや軟便が出やすい体質では慎重に考えます。
甘露飲とは
甘露飲は、地黄、甘草、石斛、麦門冬、茵蔯蒿、黄芩、枳実、枇杷葉、天門冬などから構成される漢方薬です。文献や製剤により、生地黄・熟地黄を分けて考える場合や、枳殻と表記される場合がありますが、KanpoNow既存ページでは「地黄」「枳実」として確認しています。
漢方薬剤師の視点では、甘露飲は単なる「口内炎の薬」ではありません。胃腸や上部消化管にこもった熱を冷ましながら、熱で乾いて傷ついた口腔粘膜に潤いを戻す処方です。つまり、熱を冷ますだけでも、潤すだけでもなく、「熱」と「乾き」を同時に見る点が特徴です。
古典における位置づけ
甘露飲は、中国宋代の『太平恵民和剤局方』に記載される処方とされます。古典的には、胃腸に熱がこもり、口が渇き、口臭が強く、口内炎や歯ぐきの腫れ・出血があり、口の中がネバネバするような状態に用いられてきました。
「甘露」とは、天から降る甘い霊薬、恵みの露のような意味を持ちます。胃腸の熱によってカラカラに乾いた口や舌、歯ぐきに、潤いを与えて炎症を鎮める処方として理解できます。
現代では、口内炎、舌の荒れや痛み、歯周炎を中心に、口の渇き、口臭、口のネバつき、胸やけや胃熱を伴う口腔トラブルで検討されます。ただし、口の症状でも、冷えや胃腸虚弱が中心の場合は方向が異なります。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、甘露飲が合う状態を「胃経の湿熱」と「胃陰虚」が重なった状態として考えます。
- 胃経の湿熱:暴飲暴食、飲酒、脂っこい食事、ストレスなどで胃腸に熱と湿がこもり、口臭、口のネバつき、赤い炎症が出る状態
- 胃陰虚:胃や口腔粘膜の潤いが不足し、口が渇く、舌が荒れる、ヒリヒリ痛む、治りにくい状態
- 気逆:胃の熱や気が上にのぼり、胸やけ、吐き気、口臭、口の苦みとして現れる状態
胃腸に熱がこもると、その熱が上へ昇って口の中の粘膜を荒らします。すると、口内炎、舌の痛み、歯ぐきの腫れや出血、口臭が出やすくなります。同時に、熱が粘膜の潤いを奪うため、口が渇く、ネバつく、しみる、治りにくいという状態になります。
甘露飲は、黄芩・茵蔯蒿で湿熱を冷まし、地黄・麦門冬・天門冬・石斛で潤いを補い、枳実・枇杷葉で上にのぼる胃の気を下へ降ろします。このため、炎症と乾きが同時にある口腔トラブルに使いやすい処方です。
構成生薬と配合バランス
甘露飲は、湿熱を冷ます生薬、粘膜を潤す生薬、胃の気を下へ降ろす生薬が組み合わさった処方です。配合目安では、甘草以外の生薬が比較的均等に入り、潤す生薬群が厚く組まれているのが特徴です。
※配合比率は、黄芩・茵蔯蒿・生地黄・熟地黄・麦門冬・天門冬・石斛・枳実・枇杷葉を各2g、甘草を1gとした構成目安をもとにしたイメージです。小数点以下は丸めているため、表示上わずかな誤差があります。実際の配合量は製品や資料により異なります。
甘露飲の味・香り・服用時の体感
甘露飲は、地黄や麦門冬などの潤す生薬が多いため、漢方薬らしい重みのある甘みと、黄芩などの苦みが混ざった味わいです。口や胃の熱感、粘膜の乾き、ネバつきがある方ほど、服用後の「スッと引く」「じんわり潤う」感覚をイメージしやすい処方です。
甘みと苦み
地黄・麦門冬・天門冬の甘みの中に、黄芩や茵蔯蒿の苦みが重なります。甘苦く、やや重みのある味です。
もったり香る
地黄の少しもったりした香りと、枇杷葉・枳実のような漢方薬らしい香りが混ざります。
濃い褐色
地黄を含むため、粉末や顆粒は茶褐色から黒褐色に近い印象になることがあります。
熱が引き潤う
合う方では、口の奥から食道、胃にかけてのイガイガ・ネバネバした熱感が引き, 粘膜がじんわり潤うように感じることがあります。
体験の流れ:地黄系の甘みと重み → 黄芩・茵蔯蒿の苦み → 濃い茶褐色の湯 → 口の熱感とネバつきが引き、乾いた粘膜がじんわり潤う感覚。口臭、口内炎、舌の痛み、歯ぐきの腫れが「熱と乾き」で起きているときほど、甘露飲らしさを感じることがあります。
症状別の向き・不向き
甘露飲は、症状名だけで選ぶ漢方薬ではありません。見るべきポイントは、口の炎症に「熱」と「乾き」が同時にあるかです。赤み、痛み、口臭、ネバつき、口渇が重なるほど、処方の輪郭ははっきりします。
口内炎・舌の荒れや痛み
赤く痛い口内炎、ヒリヒリする舌の荒れ、治りにくい口腔粘膜の炎症に向きます。胃熱と陰虚が重なり、炎症と乾燥が同時にある状態を見ます。
判断ポイント:赤み・痛み・乾き・ネバつきが重なる。歯ぐきの腫れ・出血・歯周炎
歯ぐきが赤く腫れる、出血しやすい、口の中に熱感があるタイプに向きます。熱を冷ましながら、乾いた粘膜の修復を支えます。
判断ポイント:歯ぐきの赤み・熱感・乾燥傾向。口臭・口のネバネバ・ドライマウス
胃熱による口臭や口の苦み、口腔粘膜の乾き、唾液不足によるネバつきがあるタイプで候補になります。口腔ケアだけでなく、胃腸の熱と潤い不足を合わせて見ます。
判断ポイント:口臭と口渇、ネバつきが同時にある。胸やけ・胃熱を伴う口腔トラブル
胃の熱や気逆が上にのぼり、胸やけ、口臭、口の苦み、吐き気とともに口内炎が出るタイプで比較します。枳実・枇杷葉が胃の気を下げる方向に働きます。
判断ポイント:胃の熱が上にのぼって口に出る。胃腸虚弱・食欲不振が強いタイプ
地黄、麦門冬、天門冬、石斛など潤す生薬が多いため、胃腸が弱い方では胃もたれ、腹部膨慢、軟便が出ることがあります。
判断ポイント:服用後の胃もたれ・下痢に注意。口が渇かず、水様便でお腹が冷えている状態
冷えが強い、口が渇かず、水様の下痢をしているタイプには向きません。冷やして潤す甘露飲を用いると、胃腸がさらに冷えて下痢や食欲不振が悪化することがあります。
判断ポイント:冷え・水様便・口渇なしなら避ける。体質別の向き・不向き
甘露飲は、湿熱と陰虚が同時にあるタイプに向きます。熱を冷ましながら潤す処方なので、冷えや胃腸虚弱が強い方では慎重に見ます。
湿熱+陰虚
暴飲暴食、飲酒、ストレスなどで胃腸に熱と湿がこもり、同時に口腔粘膜の潤いが不足しているタイプです。甘露飲の中心的な体質像です。
判断ポイント:熱・ネバつき・乾きが同時にある。胃陰虚・粘膜乾燥
口が渇く、舌が荒れる、ヒリヒリする、粘膜が弱く治りにくいタイプです。地黄・麦門冬・天門冬・石斛が潤いを補う軸になります。
判断ポイント:乾燥して痛み、治りにくい。脾気虚・胃腸虚弱
胃腸が極端に弱い方では、滋陰薬の重さが負担になり、食欲不振、胃もたれ、軟便が出ることがあります。少量からの確認や別処方の検討が必要です。
判断ポイント:胃腸が弱すぎる場合は慎重に。陽虚・強い冷え
体が冷え切っている方に、冷やして潤す甘露飲を用いると、冷え、下痢、胃もたれが悪化することがあります。温める処方との見極めが必要です。
判断ポイント:冷え・下痢・口渇なしは不向き。効能・効果
甘露飲の効能・効果は製品により表現が異なりますが、KanpoNow既存ページでは代表的に次のように整理されています。
体力中等度以下のものの次の諸症:
口内炎、舌の荒れや痛み、歯周炎
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
甘露飲は、口腔粘膜の炎症と乾燥を同時に見る処方ですが、地黄などの滋陰薬、黄芩、甘草を含むため、胃腸症状・肝機能・間質性肺炎・偽アルドステロン症には注意が必要です。
地黄などによる胃腸障害への注意
甘露飲には、地黄、麦門冬、天門冬、石斛など、潤いを補う生薬が多く含まれます。これらは乾いた粘膜を支える一方で、胃腸が弱い方には重く感じられ、胃もたれ、食欲不振、腹部膨満、軟便、下痢が出ることがあります。
黄芩による間質性肺炎・肝機能障害への注意
黄芩を含む漢方薬では、まれに間質性肺炎や肝機能障害が問題になることがあります。発熱、空咳、息切れ、強いだるさ、黄疸、尿の色が濃いなどの症状が出た場合は、自己判断で継続せず、医師・薬剤師に相談してください。
甘草による注意
甘露飲には甘草が含まれます。甘草を含む漢方薬を複数併用したり、長期間服用したりすると、偽アルドステロン症と呼ばれる副作用に注意が必要です。
- 手足のむくみ
- 血圧上昇
- 体重増加
- だるさ、脱力感
- こむら返り、筋肉のけいれん
相談・受診を優先したいサイン
- 口内炎が2週間以上治らない、急に多発する
- 強い痛み、出血、発熱、飲食困難がある
- 歯ぐきの腫れや出血が続く、歯周病が疑われる
- 服用後に胃もたれ、食欲不振、下痢が出る
- 発熱、空咳、息切れ、強いだるさ、黄疸が出る
- むくみ、脱力感、こむら返り、血圧上昇が出る
症状から理解を深める
甘露飲が気になる方は、口内炎、口の渇き、便秘、食欲不振、下痢との関係も確認すると理解が深まります。
似ている漢方薬・構成生薬
口内炎や口の渇きに使われる処方でも、熱を冷ますのか、潤いを補うのか、膿や腫れを動かすのか、胃腸を立て直すのかで選び方が変わります。
よくある質問
Q. 甘露飲はどんな口内炎に向いていますか?
赤く痛い口内炎、舌の荒れ、歯ぐきの腫れに加えて、口の渇き、ネバつき、口臭、胃熱があるタイプに向きます。熱と乾きが同時にあるかが大切です。
Q. ドライマウスにも使われますか?
口の渇きや粘膜の乾燥があり、同時に口の中の熱感、炎症、ネバつきがあるタイプでは候補になります。ただし、乾きだけで炎症や胃熱がない場合は、別処方を考えることがあります。
Q. 胸やけや逆流感がある場合にも合いますか?
胃の熱や気が上にのぼり、胸やけ、口臭、口の苦み、口内炎がつながっている場合は比較対象になります。ただし、強い胃痛、吐血、黒色便、体重減少がある場合は医療機関で確認してください。
Q. 胃腸が弱くても飲めますか?
胃腸が極端に弱い方では、地黄や麦門冬など潤す生薬が重く感じられ、胃もたれ、食欲低下、軟便、下痢が出ることがあります。服用後に胃腸症状が悪化する場合は相談してください。
Q. 長く飲んでもよいですか?
長期服用では、甘草によるむくみ・血圧上昇・低カリウム血症、黄芩による肝機能障害や間質性肺炎の初期症状に注意が必要です。長く続ける場合は専門家に相談してください。
参考・出典
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- PMDA「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」
- 古典:『太平恵民和剤局方』甘露飲
- 一般用漢方製剤製造販売承認基準
甘露飲が合うか迷った方へ
甘露飲は、口内炎や歯ぐきの炎症、口の渇きに使われる漢方薬ですが、すべての方に合うわけではありません。湿熱、陰虚、胃の気逆、胃腸虚弱、冷え、便通、口腔内の炎症の強さまで含めて判断することが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。長引く口内炎、強い痛み、出血、発熱、飲食困難、歯ぐきの腫れや出血が続く場合は、歯科・口腔外科・耳鼻咽喉科などにご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。








