甘露飲とは?口内炎・口の渇き・歯ぐきの炎症に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月6日 監修:堀口和彦
甘露飲(かんろいん)

甘露飲(かんろいん)は、口内炎、舌の荒れや痛み、歯ぐきの腫れなど、口の中に出る炎症と乾きを同時に見る漢方薬です。胃腸にこもった熱と湿が上にのぼり、口の中を荒らす一方で、その熱によって粘膜の潤いが失われ、口の渇きやネバつきが起こる状態に用いられます。KanpoNowでは、この処方を「胃の熱を冷まし、乾いた口腔粘膜を潤し、口内炎・舌の痛み・歯ぐきの炎症を内側から整える漢方薬」として整理します。

甘露飲はこんな人に向いています
  • 口内炎を繰り返し、舌や口の中がヒリヒリ痛む
  • 口が渇くのに、口の中がネバネバして不快
  • 歯ぐきが腫れやすい、赤くなりやすい、出血しやすい
  • 胃の熱、胸やけ、口臭、口の苦みが気になる
  • 辛いもの、脂っこいもの、飲酒、ストレスで口の症状が悪化しやすい

反対に、口が渇かず、お腹が冷えて水様の下痢をしている方、胃腸が極端に弱い方、冷えが強い方には向きにくい処方です。地黄・麦門冬・天門冬・石斛など潤す生薬が多いため、胃もたれや軟便が出やすい体質では慎重に考えます。

甘露飲とは

甘露飲は、地黄甘草石斛麦門冬茵蔯蒿黄芩枳実枇杷葉天門冬などから構成される漢方薬です。文献や製剤により、生地黄・熟地黄を分けて考える場合や、枳殻と表記される場合がありますが、KanpoNow既存ページでは「地黄」「枳実」として確認しています。

漢方薬剤師の視点では、甘露飲は単なる「口内炎の薬」ではありません。胃腸や上部消化管にこもった熱を冷ましながら、熱で乾いて傷ついた口腔粘膜に潤いを戻す処方です。つまり、熱を冷ますだけでも、潤すだけでもなく、「熱」と「乾き」を同時に見る点が特徴です。

ポイント:甘露飲は「湿熱を冷ます」「陰を補って粘膜を潤す」「胃の気を下へ降ろす」を同時に行う処方です。口内炎、舌の荒れ、歯ぐきの腫れ、口の渇き・ネバつきが重なるタイプに向きます。

古典における位置づけ

甘露飲は、中国宋代の『太平恵民和剤局方』に記載される処方とされます。古典的には、胃腸に熱がこもり、口が渇き、口臭が強く、口内炎や歯ぐきの腫れ・出血があり、口の中がネバネバするような状態に用いられてきました。

「甘露」とは、天から降る甘い霊薬、恵みの露のような意味を持ちます。胃腸の熱によってカラカラに乾いた口や舌、歯ぐきに、潤いを与えて炎症を鎮める処方として理解できます。

現代では、口内炎、舌の荒れや痛み、歯周炎を中心に、口の渇き、口臭、口のネバつき、胸やけや胃熱を伴う口腔トラブルで検討されます。ただし、口の症状でも、冷えや胃腸虚弱が中心の場合は方向が異なります。

甘露飲らしさ:胃腸に熱と湿がこもって口の中が荒れ、同時に粘膜の潤いが不足して乾く。この「熱で荒れる」と「乾いて傷つく」が重なると、甘露飲の輪郭がはっきりします。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、甘露飲が合う状態を「胃経の湿熱」と「胃陰虚」が重なった状態として考えます。

  • 胃経の湿熱:暴飲暴食、飲酒、脂っこい食事、ストレスなどで胃腸に熱と湿がこもり、口臭、口のネバつき、赤い炎症が出る状態
  • 胃陰虚:胃や口腔粘膜の潤いが不足し、口が渇く、舌が荒れる、ヒリヒリ痛む、治りにくい状態
  • 気逆:胃の熱や気が上にのぼり、胸やけ、吐き気、口臭、口の苦みとして現れる状態

胃腸に熱がこもると、その熱が上へ昇って口の中の粘膜を荒らします。すると、口内炎、舌の痛み、歯ぐきの腫れや出血、口臭が出やすくなります。同時に、熱が粘膜の潤いを奪うため、口が渇く、ネバつく、しみる、治りにくいという状態になります。

甘露飲は、黄芩・茵蔯蒿で湿熱を冷まし、地黄・麦門冬・天門冬・石斛で潤いを補い、枳実・枇杷葉で上にのぼる胃の気を下へ降ろします。このため、炎症と乾きが同時にある口腔トラブルに使いやすい処方です。

注意:甘露飲は、冷やして潤す力が強い処方です。お腹が冷えている、口が渇かない、水様の下痢がある、食欲が極端に落ちている方では、胃腸がさらに重くなることがあります。強い痛み、発熱、長引く口内炎、出血、飲食困難がある場合は医療機関での確認も必要です。

構成生薬と配合バランス

甘露飲は、湿熱を冷ます生薬、粘膜を潤す生薬、胃の気を下へ降ろす生薬が組み合わさった処方です。配合目安では、甘草以外の生薬が比較的均等に入り、潤す生薬群が厚く組まれているのが特徴です。

甘露飲の構成生薬比率 黄芩・茵蔯蒿・生地黄・熟地黄・麦門冬・天門冬・石斛・枳実・枇杷葉を各約10.5%、甘草を約5.3%とした配合比率イメージです。 甘露
黄芩10.5%
茵蔯蒿10.5%
生地黄10.5%
熟地黄10.5%
麦門冬10.5%
天門冬10.5%
石斛10.5%
枳実10.5%
枇杷葉10.5%
甘草5.3%
甘露飲の内部構造
胃腸にこもった熱を冷まし、乾いた粘膜を潤し、上へ逆上する胃の気を下へ降ろす構成です。
湿熱を冷ます軸 黄芩・茵蔯蒿 胃腸にこもった熱と湿を冷まし、口臭、口のネバつき、赤く痛む口内炎や歯ぐきの炎症を整えます。
粘膜を潤す軸 地黄・麦門冬・天門冬・石斛 熱で乾いた胃や口腔粘膜に潤いを補い、ヒリヒリ感、乾燥、治りにくい炎症を支えます。
胃気を下げる軸 枳実・枇杷葉・甘草 上にのぼる胃の熱や気を下へ降ろし、胸やけ、口臭、吐き気、口の苦みを整え、処方全体を調和します。

※配合比率は、黄芩・茵蔯蒿・生地黄・熟地黄・麦門冬・天門冬・石斛・枳実・枇杷葉を各2g、甘草を1gとした構成目安をもとにしたイメージです。小数点以下は丸めているため、表示上わずかな誤差があります。実際の配合量は製品や資料により異なります。

一言でいうと:甘露飲は「胃の湿熱を冷ます黄芩・茵蔯蒿」と「粘膜を潤す地黄・麦門冬・天門冬・石斛」に、「胃気を下げる枳実・枇杷葉」を組み合わせた処方です。口の中が赤く荒れ、乾いてネバつくタイプに輪郭がはっきりします。

甘露飲の味・香り・服用時の体感

甘露飲は、地黄や麦門冬などの潤す生薬が多いため、漢方薬らしい重みのある甘みと、黄芩などの苦みが混ざった味わいです。口や胃の熱感、粘膜の乾き、ネバつきがある方ほど、服用後の「スッと引く」「じんわり潤う」感覚をイメージしやすい処方です。

甘みと苦み

地黄・麦門冬・天門冬の甘みの中に、黄芩や茵蔯蒿の苦みが重なります。甘苦く、やや重みのある味です。

もったり香る

地黄の少しもったりした香りと、枇杷葉・枳実のような漢方薬らしい香りが混ざります。

濃い褐色

地黄を含むため、粉末や顆粒は茶褐色から黒褐色に近い印象になることがあります。

熱が引き潤う

合う方では、口の奥から食道、胃にかけてのイガイガ・ネバネバした熱感が引き, 粘膜がじんわり潤うように感じることがあります。

体験の流れ:地黄系の甘みと重み → 黄芩・茵蔯蒿の苦み → 濃い茶褐色の湯 → 口の熱感とネバつきが引き、乾いた粘膜がじんわり潤う感覚。口臭、口内炎、舌の痛み、歯ぐきの腫れが「熱と乾き」で起きているときほど、甘露飲らしさを感じることがあります。

症状別の向き・不向き

甘露飲は、症状名だけで選ぶ漢方薬ではありません。見るべきポイントは、口の炎症に「熱」と「乾き」が同時にあるかです。赤み、痛み、口臭、ネバつき、口渇が重なるほど、処方の輪郭ははっきりします。

口内炎・舌の荒れや痛み

赤く痛い口内炎、ヒリヒリする舌の荒れ、治りにくい口腔粘膜の炎症に向きます。胃熱と陰虚が重なり、炎症と乾燥が同時にある状態を見ます。

判断ポイント:赤み・痛み・乾き・ネバつきが重なる。

歯ぐきの腫れ・出血・歯周炎

歯ぐきが赤く腫れる、出血しやすい、口の中に熱感があるタイプに向きます。熱を冷ましながら、乾いた粘膜の修復を支えます。

判断ポイント:歯ぐきの赤み・熱感・乾燥傾向。

口臭・口のネバネバ・ドライマウス

胃熱による口臭や口の苦み、口腔粘膜の乾き、唾液不足によるネバつきがあるタイプで候補になります。口腔ケアだけでなく、胃腸の熱と潤い不足を合わせて見ます。

判断ポイント:口臭と口渇、ネバつきが同時にある。

胸やけ・胃熱を伴う口腔トラブル

胃の熱や気逆が上にのぼり、胸やけ、口臭、口の苦み、吐き気とともに口内炎が出るタイプで比較します。枳実・枇杷葉が胃の気を下げる方向に働きます。

判断ポイント:胃の熱が上にのぼって口に出る。

胃腸虚弱・食欲不振が強いタイプ

地黄、麦門冬、天門冬、石斛など潤す生薬が多いため、胃腸が弱い方では胃もたれ、腹部膨慢、軟便が出ることがあります。

判断ポイント:服用後の胃もたれ・下痢に注意。
×

口が渇かず、水様便でお腹が冷えている状態

冷えが強い、口が渇かず、水様の下痢をしているタイプには向きません。冷やして潤す甘露飲を用いると、胃腸がさらに冷えて下痢や食欲不振が悪化することがあります。

判断ポイント:冷え・水様便・口渇なしなら避ける。

体質別の向き・不向き

甘露飲は、湿熱と陰虚が同時にあるタイプに向きます。熱を冷ましながら潤す処方なので、冷えや胃腸虚弱が強い方では慎重に見ます。

湿熱+陰虚

暴飲暴食、飲酒、ストレスなどで胃腸に熱と湿がこもり、同時に口腔粘膜の潤いが不足しているタイプです。甘露飲の中心的な体質像です。

判断ポイント:熱・ネバつき・乾きが同時にある。

胃陰虚・粘膜乾燥

口が渇く、舌が荒れる、ヒリヒリする、粘膜が弱く治りにくいタイプです。地黄・麦門冬・天門冬・石斛が潤いを補う軸になります。

判断ポイント:乾燥して痛み、治りにくい。

脾気虚・胃腸虚弱

胃腸が極端に弱い方では、滋陰薬の重さが負担になり、食欲不振、胃もたれ、軟便が出ることがあります。少量からの確認や別処方の検討が必要です。

判断ポイント:胃腸が弱すぎる場合は慎重に。
×

陽虚・強い冷え

体が冷え切っている方に、冷やして潤す甘露飲を用いると、冷え、下痢、胃もたれが悪化することがあります。温める処方との見極めが必要です。

判断ポイント:冷え・下痢・口渇なしは不向き。

効能・効果

甘露飲の効能・効果は製品により表現が異なりますが、KanpoNow既存ページでは代表的に次のように整理されています。

体力中等度以下のものの次の諸症:
口内炎、舌の荒れや痛み、歯周炎

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

甘露飲は、口腔粘膜の炎症と乾燥を同時に見る処方ですが、地黄などの滋陰薬、黄芩、甘草を含むため、胃腸症状・肝機能・間質性肺炎・偽アルドステロン症には注意が必要です。

地黄などによる胃腸障害への注意

甘露飲には、地黄、麦門冬、天門冬、石斛など、潤いを補う生薬が多く含まれます。これらは乾いた粘膜を支える一方で、胃腸が弱い方には重く感じられ、胃もたれ、食欲不振、腹部膨満、軟便、下痢が出ることがあります。

黄芩による間質性肺炎・肝機能障害への注意

黄芩を含む漢方薬では、まれに間質性肺炎や肝機能障害が問題になることがあります。発熱、空咳、息切れ、強いだるさ、黄疸、尿の色が濃いなどの症状が出た場合は、自己判断で継続せず、医師・薬剤師に相談してください。

甘草による注意

甘露飲には甘草が含まれます。甘草を含む漢方薬を複数併用したり、長期間服用したりすると、偽アルドステロン症と呼ばれる副作用に注意が必要です。

  • 手足のむくみ
  • 血圧上昇
  • 体重増加
  • だるさ、脱力感
  • こむら返り、筋肉のけいれん

相談・受診を優先したいサイン

  • 口内炎が2週間以上治らない、急に多発する
  • 強い痛み、出血、発熱、飲食困難がある
  • 歯ぐきの腫れや出血が続く、歯周病が疑われる
  • 服用後に胃もたれ、食欲不振、下痢が出る
  • 発熱、空咳、息切れ、強いだるさ、黄疸が出る
  • むくみ、脱力感、こむら返り、血圧上昇が出る
すぐ相談:長引く口内炎、出血、強い痛み、飲食困難、発熱を伴う口腔症状は、歯科・口腔外科・耳鼻咽喉科などで確認してください。黄芩や甘草による副作用が疑われる場合も、自己判断で継続しないでください。

症状から理解を深める

甘露飲が気になる方は、口内炎、口の渇き、便秘、食欲不振、下痢との関係も確認すると理解が深まります。

口内炎や口の渇きに使われる処方でも、熱を冷ますのか、潤いを補うのか、膿や腫れを動かすのか、胃腸を立て直すのかで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 甘露飲はどんな口内炎に向いていますか?

赤く痛い口内炎、舌の荒れ、歯ぐきの腫れに加えて、口の渇き、ネバつき、口臭、胃熱があるタイプに向きます。熱と乾きが同時にあるかが大切です。

Q. ドライマウスにも使われますか?

口の渇きや粘膜の乾燥があり、同時に口の中の熱感、炎症、ネバつきがあるタイプでは候補になります。ただし、乾きだけで炎症や胃熱がない場合は、別処方を考えることがあります。

Q. 胸やけや逆流感がある場合にも合いますか?

胃の熱や気が上にのぼり、胸やけ、口臭、口の苦み、口内炎がつながっている場合は比較対象になります。ただし、強い胃痛、吐血、黒色便、体重減少がある場合は医療機関で確認してください。

Q. 胃腸が弱くても飲めますか?

胃腸が極端に弱い方では、地黄や麦門冬など潤す生薬が重く感じられ、胃もたれ、食欲低下、軟便、下痢が出ることがあります。服用後に胃腸症状が悪化する場合は相談してください。

Q. 長く飲んでもよいですか?

長期服用では、甘草によるむくみ・血圧上昇・低カリウム血症、黄芩による肝機能障害や間質性肺炎の初期症状に注意が必要です。長く続ける場合は専門家に相談してください。

参考・出典

甘露飲が合うか迷った方へ

甘露飲は、口内炎や歯ぐきの炎症、口の渇きに使われる漢方薬ですが、すべての方に合うわけではありません。湿熱、陰虚、胃の気逆、胃腸虚弱、冷え、便通、口腔内の炎症の強さまで含めて判断することが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。長引く口内炎、強い痛み、出血、発熱、飲食困難、歯ぐきの腫れや出血が続く場合は、歯科・口腔外科・耳鼻咽喉科などにご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。