麻黄湯とは?強い悪寒・発熱・関節痛・汗が出ない風邪初期に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月4日 監修:堀口和彦
麻黄湯(まおうとう)

麻黄湯(まおうとう)は、『傷寒論』に記される、風邪の初期に使われる代表的な発汗処方です。強い寒気、発熱、頭痛、身体のふしぶしの痛みがあり、汗が出ていない状態を、麻黄と桂皮で体表を開き、汗とともに寒邪を外へ出すことで整えます。KanpoNowでは、この処方を「体力がある人の、汗が出ない強い悪寒・発熱・関節痛に使う急性期の漢方薬」として整理します。

麻黄湯はこんな人に向いています
  • 風邪のひきはじめで、ゾクゾクする強い寒気がある
  • 発熱しているのに汗が出ていない
  • 頭痛、腰痛、関節痛、筋肉痛が強い
  • 体力があり、発汗に耐えられる
  • せき、気管支炎、鼻づまりを伴う
  • 葛根湯よりも悪寒・節々の痛みが強い

すでに汗をかいている方、体力が落ちている方、高齢者、胃腸虚弱、心疾患、高血圧、甲状腺機能亢進症、排尿障害、前立腺肥大、妊娠中・授乳中の方は、自己判断での服用を避けて専門家に相談してください。

麻黄湯とは

麻黄湯は、杏仁麻黄桂皮甘草から構成される漢方薬です。

麻黄は閉じた体表を開いて発汗を促し、桂皮は体を温めて表の巡りを助けます。杏仁は肺の気を下ろして咳や呼吸のつかえを整え、甘草は強い作用を調和しながら、急な筋肉の緊張や痛みを和らげます。

ポイント:麻黄湯は、汗が出ていない強い表寒実証に使う処方です。すでに汗をかいている風邪、のどの痛みが強い熱性の風邪、体力がない方の風邪には向きません。

古典における位置づけ

麻黄湯は、中国の古典『傷寒論』を出典とする、太陽病の代表的な発汗処方です。処方名は、強力な発汗・平喘作用を持つ主薬である麻黄の名を冠しています。

古典的には、寒邪が体表に強く入り、毛穴が閉じ、汗が出ず、悪寒・発熱・頭痛・身体痛が出る状態で用いられます。体が熱を作って外邪を追い出そうとしているのに、出口である汗が開かないため、体内に熱と痛みがこもっている状態です。

現代では、感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり、インフルエンザ初期などで比較されます。ただし、発汗に耐えられる体力があり、汗が出ていないことが重要な判断点です。

麻黄湯らしさ:強い悪寒。発熱。汗が出ない。節々が痛い。頭痛。咳。鼻づまり。体力はある。この「表寒実証」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、麻黄湯が合う状態を、表寒実証、太陽病、無汗、肺気不宣として考えます。寒邪が体表に入り、毛穴が閉じると、汗が出ず、熱が内側にこもり、悪寒・発熱・関節痛が起こります。

  • 表寒実証:体表に寒邪が強く入り、毛穴が閉じ、汗が出ない状態
  • 太陽病:風邪の初期で、悪寒・発熱・頭痛・身体痛が出る段階
  • 無汗:発熱しているのに汗が出ず、邪気の出口が閉じている状態
  • 肺気不宣:肺の気がうまく巡らず、咳や鼻づまりが出る状態

寒邪が強く、体表が閉じていると、熱を外へ逃がせず、身体のふしぶしが痛み、頭痛や腰痛も出やすくなります。さらに肺の気がつかえると、咳、気管支炎、鼻づまりにつながります。

麻黄湯は、麻黄・桂皮で体表を開き、杏仁で肺の気を下ろし、甘草で全体を調和します。つまり、汗を出して表の邪を外へ逃がし、同時に咳と身体痛を整える、非常にシャープな処方です。

注意:麻黄湯は、体力がある人の急性期処方です。高齢者、体力低下、胃腸虚弱、心疾患、高血圧、甲状腺機能亢進症、排尿障害、前立腺肥大、不眠傾向のある方では、麻黄の交感神経刺激作用に注意が必要です。

構成生薬と配合バランス

麻黄湯は、杏仁・麻黄・桂皮・甘草の4生薬で構成される、非常にシンプルで強力な処方です。発汗、温め、咳を鎮める、調和するという役割が明確です。

麻黄湯の構成イメージを示す円グラフです。 麻黄湯
杏仁42%
麻黄30%
桂皮18%
甘草10%
麻黄湯の内部構造
閉じた体表を開き、肺の気を下ろし、汗と咳を同時に整える構成です。
発汗解表の軸 麻黄・桂皮 閉じた体表を開き、悪寒・発熱・無汗の状態から汗を出す方向へ導きます。
止咳平喘の軸 麻黄・杏仁 肺の気が巡らせ、咳、胸のつかえ、鼻づまりを整える方向に働きます。
調和緩急の軸 甘草 強い発汗作用を調和し、急な筋肉の緊張や痛みを和らげます。

※実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:麻黄湯は、体力がある人の「汗が出ない強い悪寒・発熱・関節痛」を、発汗で一気に外へ出す処方です。

麻黄湯の味・香り・服用時の体感

麻黄湯は、桂皮の甘くスパイシーな風味、甘草の甘み、麻黄のえぐみ、杏仁の独特な苦味が混ざった、比較的パンチのある味です。発汗処方らしく、飲んだ後に体が内側から温まり、汗が出る方向へ動く体感が出ることがあります。

辛味・甘味・えぐみ

桂皮の辛味と甘み、甘草の甘み、麻黄のえぐみ、杏仁の苦味が重なります。

シナモン様の香り

桂皮の甘くスパイシーな香りに、麻黄の特有の香りが加わります。

淡褐色〜褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では淡い褐色から褐色に見えます。

汗が出る体感

合う方では、悪寒がゆるみ、体が温まり、汗が出て節々の痛みが軽くなることがあります。

体験の流れ:温かいお湯で服用する → 体が内側から温まる → 閉じていた体表が開く → 汗が出る → 悪寒、発熱感、節々の痛みが軽くなる感覚。麻黄湯は、汗が出たら役目を終える急性期の処方です。

症状別の向き・不向き

麻黄湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、強い悪寒、発熱、無汗、関節痛、頭痛、体力充実です。

風邪・インフルエンザ初期の強い悪寒と関節痛

ゾクゾクする寒気が強く、発熱し、頭痛や身体のふしぶしの痛みがあり、汗が出ていない時に比較します。

判断ポイント:強い悪寒+無汗+体力あり。

汗が出ない高熱・頭痛・腰痛

体表が閉じて熱がこもり、頭痛や腰痛、筋肉痛が強い表寒実証に向きます。

判断ポイント:汗の出口が閉じている。

気管支炎・咳・鼻づまり

表寒に伴って肺の気がつかえ、咳、胸のつかえ、鼻づまりが出る時に比較します。

判断ポイント:寒気と咳が同時にある。

喘息・呼吸器症状

喘息や気管支症状で使われることがありますが、動悸や不眠、心疾患がある方では慎重に考えます。

判断ポイント:麻黄に耐えられるか。
×

すでに汗をかいている風邪

汗が出ている時に麻黄湯を使うと、発汗過多で体力を消耗することがあります。

判断ポイント:無汗が条件。
×

のどの強い痛み・黄色い痰・強い口渇

熱が進んだ肺熱・温病タイプでは、温めて発汗させる麻黄湯で炎症が悪化することがあります。

判断ポイント:寒邪か、熱邪か。

体質別の向き・不向き

麻黄湯は、表寒実証に使う処方です。強い発汗に耐えられる体力が必要で、気虚、陽虚、陰虚、胃腸虚弱、高齢者では慎重に考えます。

実証・体力充実タイプ

体力があり、発汗によって邪気を外へ出す力が残っているタイプに向きます。

判断ポイント:汗をかかせても消耗しすぎない。

表寒実証タイプ

寒邪が体表に強く入り、毛穴が閉じ、強い悪寒と無汗があるタイプです。

判断ポイント:寒気が強く汗が出ない。
×

気虚・脾気虚タイプ

疲れやすく、胃腸が弱く、食欲がない方では、発汗で体力を消耗することがあります。

判断ポイント:発汗に耐える体力がない。
×

陽虚・冷え虚弱タイプ

冷えているが体力がなく、微熱、全身倦怠、低血圧、四肢冷感がある場合は、麻黄附子細辛湯など別処方を比較します。

判断ポイント:実寒か、虚寒か。
×

陰虚・乾燥タイプ

体液が不足して乾燥、ほてり、口渇、寝汗がある方では、発汗によってさらに体液を消耗するおそれがあります。

判断ポイント:汗で出してよい体液があるか。

効能・効果

KanpoNowの麻黄湯ページ・商品ページでは、効能・効果は次ように整理されています。

体力充実して、かぜのひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり

※医療用添付文書では、悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの、感冒、インフルエンザ初期、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻閉塞、哺乳困難にも記載があります。実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

麻黄湯は、麻黄を含むため、交感神経刺激作用に関する注意が非常に重要です。また、甘草を含むため、偽アルドステロン症やミオパチーにも注意します。原則として、汗が出て熱や悪寒が下がったら続けない、短期・急性期の処方として考えます。

麻黄による注意

麻黄を含むため、不眠、発汗過多、頻脈、動悸、精神興奮、血圧上昇、排尿障害などに注意します。高齢者、高血圧、心疾患、甲状腺機能亢進症、排尿障害、前立腺肥大、不眠傾向がある方では、自己判断での服用は避けてください。

「汗が出たらやめる」を徹底する

麻黄湯は、汗が出ない表寒実証を発汗させる処方です。汗をかいて悪寒や発熱感が落ち着いた後も続けると、発汗過多、脱水、動悸、体力消耗につながることがあります。漫然と飲み続ける薬ではありません。

甘草による偽アルドステロン症への注意

甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。

服用時の養生

麻黄湯を使う場面では、温かいお湯で服用し、体を冷やさず、安静にして汗が出るのを待ちます。汗をかいたら、濡れた衣服を着替え、冷えないようにし、温かい水分を少量ずつ補給します。

受診を優先すべき感染症のサイン

高熱が続く、息苦しい、意識がぼんやりする、水分が取れない、尿が少ない、胸痛がある、乳幼児・高齢者・妊娠中・基礎疾患がある方の発熱では、漢方だけで様子を見ず医療機関に相談してください。

相談・受診を優先したいサイン

  • 動悸、不眠、発汗過多、血圧上昇、精神興奮がある
  • 排尿しにくい、尿が出にくい
  • 汗が出すぎる、脱水感がある
  • むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下がある
  • 高熱が続く、息苦しい、胸痛がある
  • 強いのどの痛み、黄色い痰、強い口渇がある
  • 水分が取れない、尿量が少ない、意識がぼんやりする
  • 服用しても改善しない、又は悪化する
すぐ相談:麻黄湯は強い発汗処方です。動悸、不眠、血圧上昇、排尿障害、発汗過多、脱水感、息苦しさ、高熱の持続がある場合は、服用を中止して専門家や医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

麻黄湯が気になる方は、咳・喘息、頭痛、冷え、ふらつき、症状一覧をあわせて見ると、表寒実証と呼吸器症状の全体像がつかみやすくなります。

風邪初期に使う漢方薬でも、汗が出ているか、悪寒が強いか、体力があるか、咳や鼻水が前面に出るかで選び方が変わります。麻黄湯は、体力があり、汗が出ていない強い表寒実証で比較します。

よくある質問

Q. 麻黄湯はどんな風邪に向いていますか?

強い悪寒、発熱、頭痛、関節痛があり、汗が出ていない風邪の初期に向きます。体力がある実証タイプで比較します。

Q. 葛根湯との違いは何ですか?

葛根湯は、風邪初期で首肩のこわばりが強い時に比較します。麻黄湯は、より強い悪寒、発熱、無汗、節々の痛みが前面に出る時に比較します。

Q. 汗が出た後も飲み続けてよいですか?

基本的には、汗が出て悪寒や発熱感が落ち着いたら続けない処方です。発汗後に続けると、発汗過多、脱水、動悸、体力消耗につながることがあります。

Q. 高齢者や体力がない人にも使えますか?

麻黄湯は体力がある実証向けです。高齢者、胃腸虚弱、体力低下、心疾患、高血圧、排尿障害がある方では慎重に考えます。虚弱者の悪寒では麻黄附子細辛湯など別処方を比較します。

Q. 麻黄の注意はありますか?

麻黄を含むため、不眠、動悸、発汗過多、頻脈、血圧上昇、排尿障害に注意します。症状が出た場合は服用を中止し、専門家に相談してください。

参考・出典

麻黄湯が合うか迷った方へ

麻黄湯は、強い悪寒、発熱、関節痛、汗が出ていない風邪初期に使われる漢方薬ですが、すべての風邪や咳に合うわけではありません。汗が出ているか、体力があるか、のどの痛みや口渇が強いか、咳が寒タイプか熱タイプかを見極めることが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。高熱が続く、息苦しい、胸痛がある、意識がぼんやりする、水分が取れない、尿が少ない、強いのどの痛みや黄色い痰がある場合は、医療機関にご相談ください。服用後に不眠、動悸、発汗過多、頻脈、血圧上昇、排尿障害、精神興奮、胃部不快感、悪心、嘔吐、むくみ、こむら返り、筋力低下、脱力感などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、心疾患、高血圧、甲状腺機能亢進症、排尿障害、前立腺肥大、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。