清肺湯とは?痰の多い咳・気管支炎に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月9日 監修:堀口和彦
清肺湯(せいはいとう)

清肺湯(せいはいとう)は、体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくいものの、たんの多く出るせき、気管支炎に用いられる漢方薬です。漢方では、肺に熱がこもり、古い痰が粘って切れにくくなった「痰熱」の状態として考えます。KanpoNowでは、清肺湯を「肺の熱を冷まし、粘りつく痰をほどき、長引く咳を整える処方」として整理します。

清肺湯はこんな人に向いています
  • 痰が多く、粘って切れにくい
  • 黄色〜緑色寄りの濃い痰が出る
  • 咳が長引き、胸や気管支に熱っぽさがある
  • 慢性気管支炎、喫煙者の咳・痰で相談したい
  • 乾いた咳だけでなく、痰がからんで咳払いが多い

清肺湯は「痰が多くて切れにくい咳」に向く処方です。透明で水っぽい痰、冷えで悪化する咳、痰がほとんどない乾いた空咳では、別の処方を比較します。

清肺湯とは

清肺湯は、当帰麦門冬茯苓黄芩桔梗杏仁山梔子桑白皮大棗陳皮天門冬貝母甘草五味子生姜竹茹から構成される漢方薬です。

清肺湯は、肺の熱を冷まし、粘って切れにくい痰をほどき、咳の勢いを整える処方です。黄芩・山梔子・桑白皮で肺の熱を冷まし、麦門冬・天門冬・貝母・竹茹で乾いて粘る痰を潤してほどき、桔梗・杏仁・五味子で咳と痰の排出を助けます。

ポイント:清肺湯は、透明で水っぽい痰ではなく、黄色〜緑色寄りで粘る痰、切れにくい痰、長引く咳を目標にする処方です。

古典における位置づけ

清肺湯は、中国明代の医学書『万病回春』に記される処方です。処方名の通り、「肺を清める」、つまり肺にこもった熱を冷まし、痰によって汚れたような状態を整える目的で用いられてしてきました。

古典的には、痰火咳嗽、久咳不止、肺失清粛、上焦痰盛など、熱と痰が肺の働きを妨げ、咳や痰が長引く状態を想定します。肺の熱だけでなく、熱によって痰が煮詰まり、粘って切れにくくなる点が重要です。

現代では、痰の多く出る咳、気管支炎、慢性気管支炎、喫煙者の咳・痰、粘稠痰が続く状態などで比較されます。ただし、COPD、肺炎、結核、肺がん、気管支拡張症などの鑑別が必要な場合もあるため、長引く咳では医療機関での確認も大切です。

清肺湯らしさ:痰が多い。粘って切れにくい。黄色っぽい。咳が長引く。胸や気管支に熱っぽさがある。この「肺の痰熱」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、清肺湯が合う状態を、痰熱、肺熱、湿熱、肺陰の消耗、気逆として考えます。呼吸器の炎症が長引くと、肺に熱がこもり、気道の水分が煮詰まり、痰が粘って切れにくくなります。

  • 痰熱:熱と痰が結びつき、黄色く粘る痰、切れにくい痰、咳込みが続く状態
  • 肺熱:胸や気管支に熱がこもり、咳の勢いが強くなる状態
  • 湿熱:湿り気と熱が合わさり、濃い痰や重だるさとして残る状態
  • 肺陰の消耗:熱と咳の長期化で気道粘膜が傷つき、痰がへばりつく状態
  • 気逆:肺の気が下がらず、咳として上に突き上げる状態

黄芩・山梔子・桑白皮は肺の熱を冷まします。麦門冬・天門冬は気道粘膜に潤いを与え、熱で乾いて粘った痰をほどきます。貝母・竹茹は痰熱をさばき、桔梗・杏仁は痰の排出と咳の通りを助けます。茯苓・陳皮は痰が生まれやすい水分停滞を整え、当帰は長引く咳で消耗した組織の回復を支えます。

つまり清肺湯は、咳を無理に止める処方ではなく、肺にこびりついた熱と痰をほどいて、痰を出しやすくし、咳が続く土台を整える処方です。

注意:血痰、息切れ、胸痛、発熱、体重減少、夜間の強い咳、呼吸困難がある場合は、清肺湯で様子を見ず医療機関に相談してください。

構成生薬と配合バランス

清肺湯は、当帰、麦門冬、茯苓、黄芩、桔梗、杏仁、山梔子、桑白皮、大棗、陳皮、天門冬、貝母、甘草、五味子、生姜、竹茹の16味から構成されます。肺の熱を冷まし、粘る痰をほどき、咳の通りを整える16味の大処方です。

清肺湯の構成を、当帰9%、麦門冬9%、茯苓9%、黄芩6%、桔梗6%、杏仁6%、山梔子6%、桑白皮6%、大棗6%、陳皮6%、天門冬6%、貝母6%、竹茹6%、甘草3%、五味子3%、生姜3%として合計100%で示した構成イメージです。 清肺
当帰9%
麦門冬9%
茯苓9%
黄芩6%
桔梗6%
杏仁6%
山梔子6%
桑白皮6%
大棗6%
陳皮6%
天門冬6%
貝母6%
竹茹6%
甘草3%
五味子3%
生姜3%
清肺湯の内部構造
肺の熱を冷まし、粘る痰をほどき、咳の通りを整える16味の大処方です。
清熱の軸 黄芩・山梔子・桑白皮 肺にこもった熱、炎症感、黄色く粘る痰の背景を冷ます方向です。
化痰・潤肺の軸 麦門冬・天門冬・貝母・竹茹 乾いて粘る痰を潤してほどき、気道にへばりつく痰を出しやすくします。
止咳・排出の軸 桔梗・杏仁・五味子・陳皮・茯苓 咳の勢い、痰の通り、水分停滞、気道の詰まりを整えます。

※円グラフは、清肺湯の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:清肺湯は、肺にこもった熱と粘る痰をほどき、長引く痰の多い咳を整える処方です。

清肺湯の味・香り・服用時の体感

清肺湯は、黄芩・山梔子の苦味に、麦門冬・甘草・大棗の甘み、陳皮や生姜の香りが重なります。医療用製剤では黄褐色の顆粒で、特異なにおいがあり、甘くて苦い味とされています。

甘みと苦味

麦門冬や甘草の甘みに、黄芩・山梔子の苦味が重なります。

生薬らしい香り

陳皮・生姜の香りと、當帰・貝母などの落ち着いた生薬香があります。

黄褐色の顆粒

医療用顆粒では黄褐色とされます。製品により色調は異なります。

痰がほどける感覚

合う方では、へばりついた痰が柔らかくなり、咳払いで出しやすくなるように感じることがあります。

体験の流れ:甘苦い味を感じる → 胸や気管支の熱感を観察する → 痰の色・粘り・切れやすさを見る → 食欲不振・胃部不快感・下痢・むくみが出ないか確認する。清肺湯は生薬数が多く、長期服用時の安全確認が重要です。

症状別の向き・不向き

清肺湯は、咳という病名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、痰の量、痰の色、痰の粘り、熱感、冷え、乾燥、息切れ、長引き方です。

粘り気の強い黄色〜緑色の痰

肺に熱がこもり、痰が濃く粘って切れにくいタイプで候補になります。

判断ポイント:黄色い・粘る・切れにくい。

痰が多く出る咳

咳のたびに痰がからみ、咳払いが多く、気道にへばりつく感じがある場合に比較します。

判断ポイント:痰が主役の咳。

気管支炎・慢性化した咳

咳と痰が長引き、肺の炎症感や痰熱が残っているタイプで候補になります。

判断ポイント:熱と痰が残る。

喫煙者の咳・痰

喫煙や慢性的な気道刺激で痰が多く、切れにくい場合に比較します。禁煙・減煙も同時に重要です。

判断ポイント:刺激が続く肺の痰熱。

COPD・気管支拡張症などの持持病がある咳

慢性呼吸器疾患では医療管理が前提です。自己判断で漢方だけに切り替えず、主治医に相談してください。

判断ポイント:医療管理を優先。
×

水っぽい鼻水・透明で薄い痰

冷えと水毒が主役の咳では、小青竜湯など温めて水をさばく処方を比較します。

判断ポイント:透明でサラサラなら別方向。
×

痰がほとんどない乾いた空咳

肺の潤い不足が主役の場合は、麦門冬湯や滋陰降火湯など潤す処方を比較します。

判断ポイント:痰熱ではなく肺陰虚。

体質別の向き・不向き

清肺湯は、肺の痰熱を中心に見る処方です。体力は中等度を目安にし、痰が多く粘る方に向きます。一方で、著しい胃腸虚弱、冷えが強い方、透明な水様痰、乾いた空咳だけの方では慎重に見分けます。

湿熱・痰熱タイプ

黄色く粘る痰、胸の熱感、咳込み、痰が切れにくいタイプです。清肺湯の中心像です。

判断ポイント:肺に熱と痰。

体力中等度タイプ

強い虚弱ではなく、痰熱を冷まして出す力をある程度受け止められる方で候補になります。

判断ポイント:冷やしすぎない体力。

長引く咳で粘膜が疲れたタイプ

咳が続き、気道が乾き気味で痰がへばりつく場合、潤肺薬を含む清肺湯を比較します。

判断ポイント:痰熱+粘膜の消耗。

脾気虚・胃腸虚弱タイプ

生薬数が多く、黄芩・山梔子・当帰などが胃腸に負担になることがあります。

判断ポイント:食欲不振・下痢に注意。
×

陽虚・寒飲タイプ

冷えると悪化し、透明で薄い痰や鼻水が多いタイプでは、温める処方を比較します。

判断ポイント:冷えの水なら不向き。
×

陰虚の乾いた空咳タイプ

痰が少なく、コンコンと乾いた咳だけが続く場合は、清肺湯より潤す処方を中心に考えます。

判断ポイント:痰が主役かを確認。

効能・効果

清肺湯の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、KanpoNowでは代表的に次のように整理しています。

体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくいものの次の諸症:たんの多く出るせき、気管支炎

※医療用製剤では「痰の多く出る咳」と表現される場合があります。実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

清肺湯は、痰の多い咳に用いられる処方ですが、甘草、山梔子、黄芩を含むため、安全確認が重要です。また、咳や痰が長引く場合には、背景に呼吸器疾患が隠れていることがあります。

長引く咳は原因確認を

咳が長引く場合、気管支炎だけでなく、咳喘息、気管支喘息、COPD、肺炎、結核、気管支拡張症、肺がん、逆流性食道炎、薬剤性咳嗽などが関係することがあります。血痰、息苦しさ、胸痛、発熱、体重減少、夜間の強い咳がある場合は受診を優先してください。

甘草による偽アルドステロン症への注意

清肺湯には甘草が含まれます。むくみ、血圧上昇、体重増加、だるさ、こむら返り、筋力低下、脱力感などが出る場合は、服用を中止して医師・薬剤師に相談してください。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意が必要です。

山梔子による腸間膜静脈硬化症への注意

清肺湯には山梔子が含まれます。山梔子含有製剤の長期服用では、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などを繰り返す場合、腸間膜静脈硬化症に注意が必要です。数年単位で漫然と続けることは避け、専門家の管理下で確認します。

黄芩による間質性肺炎・肝機能障害に注意

清肺湯には黄芩が含まれます。発熱、空咳、息切れ、呼吸困難、強いだるさが出た場合は、服用を中止して医療機関に相談してください。黄疸、褐色尿、食欲不振、吐き気、強い倦怠感が続く場合も注意が必要です。

胃腸が弱い方は慎重に

清肺湯は生薬数が多く、清熱薬や当帰を含みます。著しく胃腸が弱い方、食欲不振、悪心、嘔吐がある方では、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢などが出ることがあります。

痰の色と粘度を確認する

清肺湯は、黄色〜緑色寄りで粘る痰、痰が多く切れにくい咳に向きます。透明でサラサラした痰、冷えると悪化する咳では、小青竜湯など温めて水をさばく処方を比較します。痰がほとんどない乾いた空咳では、麦門冬湯など潤す処方を比較します。

喫煙者の生活指導

喫煙は気道の炎症と痰を長引かせる大きな要因です。清肺湯で痰を整えるだけでなく、禁煙、減煙、受動煙の回避、室内の加湿、睡眠の確保を同時に行うことが大切です。

相談・受診を優先したいサイン

  • 血痰、胸痛、呼吸困難、強い息切れがある
  • 発熱が続く、黄色や緑色の痰が急に増える
  • 咳が3週間以上続く、体重減少、寝汗、強い倦怠感がある
  • 服用後に発疹・蕁麻疹、息切れ、空咳、発熱が出る
  • むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下が出る
  • 腹痛、下痢、便秘、腹部膨満を繰り返す
  • 黄疸、褐色尿、強い倦怠感、食欲不振、吐き気が続く
  • 妊娠中・授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、持病がある、他の薬を服用中
すぐ相談:血痰、息苦しさ、胸痛、発熱、体重減少、強い倦怠感がある場合は、清肺湯で様子を見ず医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

清肺湯が気になる方は、咳・喘息、気管支炎、口の渇き、ストレス、症状全体の見方を確認すると、咳と痰の背景を整理しやすくなります。

咳・痰の漢方薬は、痰が黄色く粘るのか、透明で水っぽいのか、乾いた空咳なのか、喘鳴が強いのか、肺の潤い不足なのかで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 清肺湯はどんな咳に向いていますか?

痰が多く、粘って切れにくい咳に向いています。黄色〜緑色寄りの濃い痰、胸や気管支の熱感、長引く咳がある場合に候補になります。

Q. 透明な痰や鼻水にも使いますか?

透明でサラサラした痰や鼻水、冷えで悪化する咳では、小青竜湯など温めて水をさばく処方を比較します。清肺湯は冷まして痰熱をさばく方向です。

Q. 麦門冬湯との違いは何ですか?

麦門冬湯は、痰が少ない乾いた空咳、喉の乾燥、会話で出る咳に向きます。清肺湯は、痰が多く粘って切れにくい咳に向きます。

Q. 喫煙者の咳や痰にも使いますか?

喫煙などで痰が多く、切れにくい咳が続く場合に比較されます。ただし、喫煙を続けると炎症と痰の原因が残るため、禁煙・減煙と医療的な確認も重要です。

Q. 甘草は入っていますか?

はい。清肺湯には甘草が含まれます。むくみ、血圧上昇、体重増加、こむら返り、筋力低下、だるさなどが出る場合は、服用を中止して専門家に相談してください。他の漢方薬との併用時は甘草の重複にも注意が必要です。

参考・出典

清肺湯が合うか迷った方へ

清肺湯は、痰の多い咳、気管支炎、粘って切れにくい痰に使われる漢方薬ですが、すべての咳に合うわけではありません。痰熱なのか、水っぽい寒飲なのか、乾いた肺陰虚なのか、喘鳴が中心なのか、胃腸が受け止められるか、甘草・山梔子・黄芩の注意に該当しないかまで含めて判断することが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。血痰、息苦しさ、胸痛、発熱、体重減少、強い倦怠感、長引く咳がある場合は、医療機関にご相談ください。服用後に発疹・蕁麻疹、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下、発熱・空咳・息切れ、黄疸、褐色尿、腹痛・下痢・便秘・腹部膨満などがある場合も服用を中止し専門家に相談してください。妊娠中・授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、持病がある方、他のお薬や漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

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堀口和彦(漢方薬剤師) 監修:堀口 和彦(漢方薬剤師)

執筆: KanpoNow編集部

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