神秘湯(しんぴとう)

神秘湯(しんぴとう)は、古典『万病回春』に記される処方です。単なる痰の多い咳ではなく、「気の巡りの乱れ」によって呼吸が詰まり、息苦しさやゼーゼーという喘鳴(ぜんめい)が現れる状態を整えるために用いられてきました。胸の緊張をゆるめ、呼吸のリズムを正常へと導くのが特徴です。

成分(生薬)

麻黄、杏仁、厚朴、陳皮、甘草、柴胡、紫蘇葉

漢方的な考え方

漢方では、呼吸は「気の昇降」が円滑であることが重要と考えられています。ストレスや体質の偏りで気が上に逆流(気逆)すると、胸がつかえて呼吸が浅くなり、咳や喘鳴が生じます。神秘湯は、この逆流を正し、滞った気をのびやかに巡らせることで、苦しい呼吸を楽にします。

  • せき・喘鳴: 気道が緊張して狭くなり、ヒューヒュー、ゼーゼーといった音を伴う激しい咳や呼吸が出ている状態。
  • 息苦しさ・胸のつかえ: 胸部に気が停滞し、張りや圧迫感を感じることで、深く息が吸い込みにくい状態。
  • たんの少ない咳: 痰が絡んでいるわけではないのに、気の高ぶりや緊張によって咳が止まらなくなっている状態。

構成生薬の役割

  • 呼吸の門を開き鎮める: 麻黄(まおう)・杏仁(きょうにん)が肺の働きを助けて気道を開き、激しい咳や喘鳴を速やかに鎮めます。
  • 詰まった気をほどき流す: 厚朴(こうぼく)・陳皮(ちんぴ)が胸やお腹の張りをほどき、柴胡(さいこ)・紫蘇葉(しそよう)が逆流した気を正しい方向へ巡らせます。
  • 胸部の緊張を解除する: これら七種の生薬が協力し、気道と胸部の「過剰な緊張」を内側からゆるめることで、喘息のような苦しい症状を穏やかに整えます。

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堀口和彦(漢方薬剤師) 監修:堀口 和彦(漢方薬剤師)

執筆: KanpoNow編集部

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