猪苓湯(ちょれいとう)

猪苓湯(ちょれいとう)は、『傷寒論』『金匱要略』に記される、排尿トラブルの代表的な処方です。「体内に余分な水と熱がこもり、尿がスムーズに出ない」状態を整えるために用いられてきました。単に尿を出すだけでなく、体に必要なうるおいを守りながら、熱による刺激や違和感を取り除いていくのが特徴です。

成分(生薬)

滑石、沢瀉、猪苓、茯苓、阿膠

漢方的な考え方

漢方では、尿の悩みが生じる背景には「水の滞り」と「熱」があると考えます。尿路に熱を持った水分が溜まると、痛みや残尿感、頻尿が生じ、さらには体内の大切なうるおい(津液)を消耗させてしまいます。猪苓湯は、この余分な熱と水をさばきながら、渇いた部分を補うという高度なバランスで構成されています。

  • 排尿困難・残尿感: 水の巡りが悪いために尿の出が細くなったり、出し切った後もスッキリしない不快感が残ったりしている状態。
  • 排尿痛・頻尿・むくみ: 熱を帯びた水が尿路を刺激して痛みを感じたり、何度もトイレに行きたくなったり、あるいは体内に水が停留してむくみが生じている状態。
  • 口渇(のどの渇き): 余分な水が体にある一方で、熱によって本来必要なうるおいが奪われ、喉が強く渇いている状態。

構成生薬の役割

  • 水の通り道を整え導く: 猪苓(ちょれい)・沢瀉(たくしゃ)・茯苓(ぶくりょう)の三種が協力して、滞った水の巡りをスムーズにし、余分な水分を尿として外へ導き出します。
  • 熱を冷まし炎症を和らげる: 滑石(かっせき)が、尿路のこもった熱を鎮めながら尿の滑りを良くし、痛みや刺激を緩和します。
  • うるおいを補い傷めない: 阿膠(あきょう:ロバの皮の膠)が、利尿によって不足しがちなうるおいを補給し、粘膜を保護することで、体に負担をかけずに症状を整えます。

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堀口和彦(漢方薬剤師) 監修:堀口 和彦(漢方薬剤師)

執筆: KanpoNow編集部

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