釣藤散とは?慢性頭痛・めまい・肩こり・高血圧傾向に使う漢方薬を体質別に解説

釣藤散(ちょうとうさん)は、慢性的に続く頭痛、めまい、肩こり、高血圧傾向、神経の高ぶりに用いられる漢方薬です。特に、朝方に頭が重い、首すじや肩が張る、イライラしやすい、耳鳴りやのぼせを伴うような中高年の頭部症状で比較されます。KanpoNowでは、この処方を「上にのぼった気を鎮め、頭部の緊張と巡りを整える漢方薬」として整理します。
- 朝方や起床時に頭痛・頭重感が出やすい
- 慢性的な頭痛に、肩こり・首こり・めまいを伴う
- 血圧が高めで、のぼせ・イライラ・耳鳴りがある
- ストレスや緊張で首すじから頭にかけて張りやすい
- 中高年以降で、頭部の巡りの悪さや緊張が慢性化している
反対に、体が冷え切って吐き気を伴う激しい頭痛、雨の日に悪化してむくみや水様性下痢を伴う頭痛、突然の激しい頭痛や神経症状を伴う頭痛では、別の対応を優先します。
釣藤散とは
釣藤散は、石膏、釣藤鈎、陳皮、麦門冬、半夏、茯苓、菊花、人参、防風、甘草、生姜から構成される漢方薬です。
釣藤鈎・菊花で高ぶった気を鎮め、石膏で頭部にこもる熱を冷まし、半夏・陳皮・茯苓で余分な水や痰をさばきます。さらに人参・麦門冬・甘草で体の支えと潤いを補い、防風・生姜で頭部症状の背景にある風邪の影響や巡りを整えます。
古典における位置づけ
釣藤散は、中国宋代の医学書『普済本事方』に由来する処方として知られます。古典では、肝の気が上逆して頭部に症状が出る「肝厥頭暈」などを整える処方として扱われてきました。
釣藤散という名前は、主薬である釣藤鈎に由来します。釣藤鈎は、神経の高ぶりや頭部の緊張を鎮める方向で用いられる生薬で、現代では慢性的な頭痛、めまい、肩こり、高血圧傾向、イライラなどを伴う状態で比較されます。
ただし、頭痛ならすべて釣藤散というわけではありません。冷えで吐き気を伴う頭痛、水分停滞で雨の日に悪化する頭痛、突然の激しい頭痛では、それぞれ鑑別が必要です。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、釣藤散が合う状態を、気滞、気逆、肝陽上亢、血瘀、湿痰、血虚が複雑に絡んだ状態として考えます。ストレスや過労が続くと、気が上にのぼりやすくなり、首すじから頭にかけて緊張や熱感が集まります。
- 気滞:ストレスや緊張で気の巡りが渋滞し、首肩が張り、イライラしやすい状態
- 気逆・肝陽上亢:高ぶった気が頭に突き上げ、頭痛・のぼせ・めまい・耳鳴りが出る状態
- 血瘀:頭部や首肩の血流が滞り、慢性的な頭重感や肩こりが続く状態
- 湿痰:余分な水分や痰が頭部の巡りを妨げ、めまいや重だるさを起こす状態
- 血虚・陰虚:頭や耳を養う血や潤いが不足し、耳鳴りやふらつきが出やすい状態
釣藤鈎と菊花は、上にのぼった気を鎮めて、頭部の高ぶりを整えます。石膏はこもった熱を冷まし、半夏・陳皮・茯苓は余分な水分や痰をさばきます。人参・麦門冬・甘草は、慢性化で消耗した体の支えと潤いを補います。
そのため釣藤散は、「上がった気を降ろす」「頭の熱と緊張を冷ます」「湿痰をさばく」「慢性化した不足を支える」という方向を持つ処方です。
構成生薬と配合バランス
釣藤散は、11種類の生薬で構成されます。釣藤鈎・菊花で高ぶりを鎮め、石膏で頭部の熱を冷まし、半夏・陳皮・茯苓で湿痰をさばき、人参・麦門冬・甘草で慢性化した不足を支える処方です。










※円グラフは、釣藤散の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。
釣藤散の味・香り・服用時の体感
釣藤散は、石膏のやや粉っぽい味に、陳皮の柑橘系の香り、甘草や人参のほのかな甘みが重なる処方です。強烈に苦い処方ではなく、比較的飲みやすい部類ですが、石膏や釣藤鈎を含むため、すっきりとした清涼感もあります。
粉っぽさとほのかな甘み
石膏の粉っぽさに、甘草・人参の甘み、陳皮のさわやかさが重なります。
陳皮の柑橘香
陳皮の軽い柑橘系の香りと、漢方薬らしい落ち着いた香りがあります。
淡褐色〜黄褐色
製品により異なりますが、粉末・顆粒では淡い褐色から黄褐色寄りに見えます。
首筋の張りがほどける感覚
合う方では、頭にのぼった感じや首肩の張りが、少しずつ下がるように落ち着きます。
体験の流れ:粉っぽさと柑橘香を感じる → 頭の熱感やのぼせが少し落ち着く → 首すじから肩にかけての緊張がほどける → 朝方の頭痛や耳鳴りが軽くなる感覚。釣藤散は、強く発散する処方ではなく、慢性的な高ぶりを穏やかに鎮める処方です。
症状別の向き・不向き
釣藤散は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、朝方の頭痛、慢性化、肩こり、高血圧傾向、イライラ、耳鳴り、めまい、冷え、雨天悪化、吐き気の性質です。
朝方の頭痛・頭重感
起床時に頭が重い、頭痛が出る、首肩がこわばるタイプに向きます。
判断ポイント:朝方・慢性・首肩の張り。高血圧傾向に伴う頭痛・肩こり
血圧が高めで、のぼせ、イライラ、頭痛、肩こりが重なる場合に比較します。
判断ポイント:頭に気がのぼる感じ。耳鳴り・めまい・首筋の緊張
ストレスや肩こりとともに耳鳴り、ふらつき、頭重感が出る場合に比較します。
判断ポイント:耳だけでなく首肩も張る。イライラを伴う慢性頭痛
精神的緊張が強く、怒りっぽさや眠りの浅さと頭痛が重なるタイプで比較します。
判断ポイント:肝の高ぶりと頭痛。冷えが強く、吐き気を伴う激しい頭痛
胃腸が冷え、温めると楽になり、吐き気や嘔吐を伴う頭痛では、呉茱萸湯を比較します。
判断ポイント:冷えと嘔吐が主役なら方向が違う。雨の日に悪化し、むくみを伴う頭痛
水分停滞が主役で、雨天・低気圧で悪化し、むくみや尿量低下を伴う場合は五苓散を比較します。
判断ポイント:水滞が主役か。体質別の向き・不向き
釣藤散は、気が上にのぼりやすく、慢性的な頭痛や肩こりがあり、血流や水分代謝の滞りも絡むタイプに向きます。虚実でいえば、極端な虚弱でも極端な実証でもなく、中間証からやや虚証寄りで使われることがあります。
気滞・気逆タイプ
ストレスで気が滞り、頭にのぼって、首肩の張り、イライラ、頭痛につながるタイプです。
判断ポイント:上に突き上げる緊張。肝陽上亢タイプ
のぼせ、血圧高め、頭痛、めまい、耳鳴りがあり、肝の高ぶりが頭部に集まるタイプです。
判断ポイント:高ぶり・のぼせ・頭部症状。血瘀・慢性こりタイプ
首肩こりが慢性化し、頭部の血流が滞って、頭重感や耳鳴りにつながる場合に比較します。
判断ポイント:慢性化と固定したこり。湿痰を伴う頭重タイプ
頭が重い、めまい、吐き気、胸のつかえがあり、半夏・陳皮・茯苓の働きを活かすタイプです。
判断ポイント:水や痰の重さが混じる。胃腸虚弱・冷えタイプ
人参や茯苓は入りますが、石膏を含むため、胃腸が極端に弱く冷えやすい方では胃もたれや食欲不振に注意します。
判断ポイント:冷えと胃腸の弱さ。効能・効果
釣藤散の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、代表的には次のように整理できます。
体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの次の諸症:慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるもの
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
釣藤散は、慢性頭痛や高血圧傾向に使われることがある処方ですが、甘草・石膏・半夏などを含むため、体質や併用薬、服用期間によって注意が必要です。
甘草による偽アルドステロン症への注意
甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。高血圧傾向の方が服用することもあるため、血圧やむくみの変化には特に注意してください。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意します。
胃腸が冷えやすい方への注意
石膏は熱を冷ます方向の生薬です。胃腸虚弱で冷えやすい方、食欲不振が出やすい方、下痢しやすい方では、胃部不快感、食欲不振、下痢が出ることがあります。
頭痛の鑑別を優先してください
釣藤散は、慢性的な頭痛・頭重・肩こりを見ます。突然の激しい頭痛、今まで経験したことのない頭痛、片側の麻痺やしびれ、ろれつ障害、視野異常、意識障害、発熱や首の硬さを伴う頭痛は、漢方で様子を見る状況ではありません。
妊娠中・授乳中・小児・高齢者
妊娠中または妊娠している可能性がある方、授乳中の方、小児、高齢者、持病のある方、医師の治療を受けている方は、自己判断で服用せず、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。
生活習慣の注意
釣藤散が合うタイプでは、ストレス、睡眠不足、過労、塩分過多、飲酒、長時間のスマホ・パソコン作業が、頭痛や肩こり、血圧の不安定さを悪化させることがあります。水分をこまめにとり、首肩を冷やさず、朝の血圧や頭痛の出方を記録しておくと判断しやすくなります。
相談・受診を優先したいサイン
- 突然の激しい頭痛、今までにない頭痛がある
- ろれつが回らない、片側のしびれ・麻痺、視野異常がある
- 意識がぼんやりする、胸痛、息切れ、著しい血圧上昇がある
- 服用後に発疹・発赤・かゆみ、食欲不振、胃部不快感が出る
- むむくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下が出る
- 1か月程度服用しても症状がよくならない
- 妊娠中、授乳中、小児、高齢者、持病や併用薬がある
症状から理解を深める
釣藤散が気になる方は、頭痛、高血圧、肩こり、耳鳴り、めまいとの関係を確認すると理解が深まります。
似ている漢方薬・構成生薬
頭痛やめまいに使う漢方薬でも、気が上にのぼるのか、水が停滞するのか、冷えが主役なのか、風・湿・熱が強いのかで選び方が変わります。
よくある質問
Q. 釣藤散はどんな頭痛に向いていますか?
朝方に頭が重い、慢性的に頭痛が続く、肩こり・めまい・イライラ・高血圧傾向を伴うタイプに向きます。冷えで吐き気を伴う頭痛や、雨の日に悪化する水滞の頭痛とは見分けます。
Q. 高血圧の薬の代わりになりますか?
代わりにはなりません。釣藤散は、高血圧傾向に伴う頭痛や肩こりで比較される漢方薬ですが、血圧管理そのものは医師の判断が必要です。降圧薬を自己判断で中止しないでください。
Q. 耳鳴りにも使えますか?
首肩こり、ストレス、頭部の緊張、血圧高め傾向と重なる耳鳴りでは比較されます。ただし、急な难聴、強いめまい、片側だけの耳鳴り、拍動性の耳鳴りは耳鼻科での確認を優先してください。
Q. 五苓散との違いは何ですか?
五苓散は水分代謝の乱れによる頭痛、めまい、むくみ、尿量低下、雨天悪化を見ます。釣藤散は、気が上にのぼり、首肩の緊張や高血圧傾向を伴う慢性頭痛を見ます。
Q. 甘草の副作用は心配ですか?
甘草を含むため、長期服用や他の漢方薬との併用では、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下に注意します。高血圧傾向がある方では、特に血圧やむくみの変化を確認してください。
参考・出典
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- ツムラ「ツムラ釣藤散エキス顆粒(医療用)添付文書」
- ツムラ「ツムラ漢方釣藤散エキス顆粒」製品情報
- クラシエ「釣藤散」漢方セラピー 処方解説・製品情報
- 古典:『普済本事方』釣藤散関連記載
- 公益社団法人 東京生薬協会・富山大学 和漢医薬学総合研究所等の生薬資料
釣藤散が合うか迷った方へ
釣藤散は、慢性的な頭痛、めまい、肩こり、高血圧傾向、イライラを伴うタイプに使われる漢方薬ですが、すべての頭痛に合うわけではありません。冷えなのか、水滞なのか、血圧や頭部の緊張なのか、受診が必要な危険な頭痛ではないかまで含めて判断することが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。突然の激しい頭痛、麻痺、しびれ、ろれつ障害、視野異常、意識障害、胸痛、著しい血圧上昇、発熱や首の硬さを伴う頭痛がある場合は、医療機関にご相談ください。服用後に発疹・発赤・かゆみ、食欲不振、胃部不快感、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下などがある場合も、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、冷え症、高血圧、心臓病、腎臓病、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。