
陰虚が肺・腎・肝・心・皮膚にある方の体質改善の方法をお伝えします
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著者:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2025-09-02
陰虚とは?
陰虚とは、心身を潤しそれらの働きを円滑にする水が不足して、皮膚や筋肉、神経、内臓などの細胞の働きが低下した状態です。
陰虚が呼吸と循環、免疫、代謝、生殖、精神の機能に支障が出やすく、肺や腎、肝、心、肺(皮膚)の臓腑や部位と結びついた場合の体質改善の方法を解説します。
目次
1.肺陰虚
肺や気管、皮膚、粘膜の水が不足して、乾燥して炎症を起こして、呼吸機能や皮膚バリア機能が乱れます。
症状は、「鼻や口内乾燥・乾燥肌・口唇割れ・声枯れ・空咳・鼻づまり・口渇・身体の熱感(時に冷感)・夜間や疲労時手足のほてり・盗汗」があります。
「肺陰虚体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
食生活の改善を
体質は、遺伝と生活習慣で作られます。遺伝子治療が研究されていますが、まだ実用化はかなり先です。そこで、今できることは生活習慣を改善することです。その中でも、やはり食事は大きなウエイトを占めています。
糖分・脂肪分・コレステロールを少なめにすることは、糖尿病や高血圧など生活習慣病だけでなく、アレルギー体質の改善にも大切です。コーヒーやココアは良い面もありますが、鼻や目、のどや気管などを乾かし炎症を助長する作用がありますので、粘膜が敏感なアレルギー体質の方は控えてください。
アトピー性皮膚炎は親のプレッシャー
アトピー性皮膚炎が子供の成長に悪い影響はありません。そばに寄り添って自然体で子供に接してあげてください。
2.腎陰虚
腎臓や副腎の潤いが不足して炎症や細胞障害を起こして、腎機能や副腎機能が乱れている状態です。
症状は、「排尿異常(頻尿・尿量減少)・口渇・身体の熱感・手足のほてり・盗汗・頭ふらつき・ぼーっとする・耳鳴り・だるさ・顔手足のむくみ・性機能異常(性欲減退・夢精・無月経)」があります。
「腎陰虚体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
腎臓病の食事に注意
タンパク質を多く摂り過ぎると、腎臓からしか排泄されない尿素窒素やクレアチニン等が多くなり、腎臓への大きな負担になります。しかし、あまり食事中のタンパク質を減らすと、体内のタンパク質が分解されエネルギー源になり、血中の尿素窒素が増えるため、タンパク質の摂取量には注意が必要です。
慢性腎臓病ではナトリウムを排泄する能力が落ちていますので、塩分は控えましょう。特に高血圧の方は塩分摂取に注意しましょう。
さらに腎機能が低下して血液中のカリウム量が多くなり過ぎた時には、カリウムの摂取制限が必要になります。カリウムは水に流出しやすいので野菜・イモ類は小さめに切ってから茹でこぼすか水にさらしてから調理しましょう。また、水分の制限が必要になる場合もあります。
3.肺腎陰虚
肺や気管、皮膚、粘膜の水が不足して乾燥して炎症を起こし、さらに腎臓や副腎の潤いが不足して炎症や細胞障害を起こして、呼吸機能と腎機能、副腎機能が乱れている状態です。
症状は、「咳嗽・息切れ・鼻や口内乾燥・声枯れ・乾燥肌・口唇割れ・口渇・口内炎・身体の熱感(時に冷感)・夜間や疲労時手足のほてり・盗汗・足腰のだるさ・ふらつき・耳鳴り・頻尿(尿量少)」があります。
「肺腎陰虚体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
喫煙は止めて腹式呼吸を実践
喫煙は、気管や肺の粘膜の潤いを奪うだけでなく肺胞を壊します。肺腎陰虚が進行して、肺胞のダメージが進み血中の酸素濃度が低下した状態は、肺気虚となります。この時点でしっかりとした対処が必要です。腹式呼吸で肺の隅々まで空気を送り込める身体にしましょう。
のどの渇きが強い高張性脱水
多量な発汗や年齢的な体液の減少などにより、ナトリウムなど体内の塩分は不足せずに水分のみを多量に失った状態を高張性脱水と呼びます。水分補給と保湿が大切です。
4.肝陰虚
肝臓の潤いが不足して炎症や細胞障害を起こして、解毒代謝の機能が低下して老廃物の運搬と塩分の維持が滞り、運動機能の調節が乱れた状態です。
症状は、「足つれ・こむら返り・筋肉つれ・脇胸部張り・だるさ・かすみ目・ドライアイ・まぶしい」などがあります。
「肝陰虚体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
筋肉のつれには冷えと塩分ミネラルバランス
足つれやこむら返りは、だれにでも起こる症状です。血行不良や塩分とミネラル分不足などで筋肉と神経の連携が乱れて、脊髄から反射的に誤った指令が出されて、筋肉が痙攣するように収縮しますので注意してください。
5.心陰虚
心臓と大脳の潤いが不足して、炎症や細胞障害を起こして、血液循環や認知機能が乱れている状態です。
症状は、「のぼせ・焦燥・手足のほてり・口や喉の乾き・口渇・口内炎・目充血・盗汗・寝つきが悪い・不安感・物忘れ・頭ふらつく・動悸・高血圧」などがあります。
「心陰虚体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
心臓の負担を減らす
心臓は24時間365日働いており、一番過酷な任務をこなしています。その疲れと辛さが心臓周辺の筋肉に反映されているのです。そこで、心臓が楽に働けるように、周辺環境を良好にしましょう。
睡眠不足や疲労の蓄積、慢性的な首肩のこり、さらにイライラや怒りの感情にも注意してください。
6.心腎陰虚(心腎不交)
大脳と副腎の潤いが不足して炎症や細胞障害を起こして、認知機能や副腎機能が乱れ、さらに精神状態が不安定になっている状態です。
症状は、「心煩・不眠・心悸・口や喉の乾き・耳鳴り・集中力ない・落ち着きがない・腰や膝がだるい・性機能異常(性欲減退・勃起不全)・頻尿(尿量少)」があります。
「心腎陰虚体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
焦りは禁物
こころに潤いがない陰虚の方は、精神的に余裕がなく、不安感や焦燥感が起こりやすいです。何事も焦らずゆっくりとじっくりと行ないましょう。まず一呼吸そして深呼吸です。こころに余裕を作るためには、やはり腹式呼吸を習慣化することです。
朝起床前と夜就寝前に実践してください。丹田のある下腹を意識することで、陰部や膀胱を支配する神経を調整することができます。
7.肝腎陰虚
間脳の視床と視床下部、脳下垂体の潤いが不足してオーバーヒートして障害を起こして、視覚や自律神経とホルモンの働きが乱れている状態です。
症状は、「身体の熱感・手足のほてり・口や喉の乾き・口渇・頭のふらつき・耳鳴り・盗汗・疲れ目・かすみ目・ドライアイ・まぶしい・視力減退・眠りが浅い・夢が多い・筋肉つれ・手足のしびれ・月経血少ない・性欲減退」などです。
「肝腎陰虚体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
白内障は紫外線が影響
現在は日帰り手術も可能ですが、進行を遅らせるにはサングラスなどで紫外線から目を守ることと、シミ予防と同様に老廃物を溜めないことです。
緑内障は目の疲れを溜めない
進行を遅らせるには、血行を良くし、血圧を上手に管理しましょう。高血圧は眼圧を上げる一因です。疲れ目を放置せず、房水の流れを良くしましょう。目の周りのツボ指圧がお勧めです。
網膜症や黄斑変性症には食事の見直しも
進行を遅らせるには、食事の見直しが大切です。ビタミンCやビタミンE、カロテン、不飽和脂肪酸などが豊富な緑黄色野菜や果物は、目の疲れを癒してくれます。一方、香辛料系の刺激物は目の充血を助長しますので控えましょう。
陰虚も含め、その他の体質改善方法をまとめた記事になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
執筆・監修:堀口和彦/編集:KanpoNow横山伸行
出典:やさしい漢方入門、体質で決まる漢方と養生
著者プロフィール
堀口 和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)
光和堂薬局 院長
埼玉県生まれ
東京理科大学薬学部卒
同大学院修士課程修了
総合漢方研究会 学術部員
元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員
公益法人埼玉県鍼灸師会会員
さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)
一般財団法人日本漢方連盟 会員
著書:やさしい漢方入門(健友館)、パプアニューギニアの薬草文化(アボック社)、体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐(万来舎)など
販売薬局:光和堂薬局(さいたま市西区指扇領別所326-1)・許可(さ局)第7105号。
FAQ
腹式呼吸でなくて深呼吸でもいいか?
リンパマッサージのやり方は?
休日のお勧めの過ごし方は?
体質改善に向かっている目安は?
例えば、小便や大便の量が増えているようであれば、改善方向に向かっているといえます。体内の水分代謝の活性化や血行促進による疲労物質の解毒が進んでいるということです。そうなると、例えば、足のむくみ腫れや膝の痛みなどは治っていくことでしょう。
体質が改善すれば漢方薬をやめてよいか?
※これらは歴史的・伝統的文献に基づく一般的な情報であり、現代医学的な診断・治療を置き換えるものではありません。
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