
肌荒れの漢方とツボを3体質別に解説します(堀口メソッド)
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著者:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2025-09-15
肌荒れは漢方ではどう捉える?
漢方では陰虚(いんきょ)という言葉があるのですが、これは陰分といって体の中の体液や水分が不足した状態をそう呼んでいます。
特に肌荒れは、皮膚表面の水分が不足した状態が元になって肌が荒れてくると考えられます。漢方的には陰虚という状態を肌荒れと考えるのです。
実際、アトピー性皮膚炎やアレルギー性の皮膚炎なども、皮膚表面のバリア機能の低下が引き金になっているという考え方が出てきました。バリア機能の低下という考え方とも陰虚の概念が合致しているといえます。
このように、皮膚表面の潤い成分が不足した結果肌荒れになるわけですが、では、なぜそうなるかというところを深めて追及するのが、実際の漢方の治療法になってきます。
このページは、私、堀口和彦へのインタビュー内容をもとに、体質別に有効な漢方薬やツボをまとめました。
目次
説明者:堀口和彦 | インタビュー:KanpoNow 横山伸行
動画インタビュー
ここからは、体質別に解説していきます。
まず表面に潤い成分を送り込むものとして、血液というのがすごく重要です。血液が十分に供給されているかどうかが潤いを出させるポイントになってきます。
血虚体質
一つ目は血虚(けっきょ)といって、供給する血液が不足している状態です。こういった状態では、皮膚表面に養分も行きません、酸素も行きません。当然潤いも減ってきますので肌が荒れてしまうのです。
このタイプは、どちらかというと色白な方が多い。ちょっとぶつけるとすぐに痣(あざ)ができちゃったりするような方がこのタイプです。
漢方薬は、当帰飲子(とうきいんし)をよく用います。また、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)も使います。両方とも「当帰」が主成分です。
血瘀体質
血液の循環が悪い、血瘀(けつお)体質があります。血瘀というのは、血液は不足していないのですが停滞している状態です。滞ってしまって血液が十分に体のあちらこちらに行き届かないというか、あるいは血液が汚れてしまっていて詰まるようになっています。
この血瘀タイプの場合も、肌荒れの原因になります。
こういった方へは、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)あるいは桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがんりょう)などを使います。
これらは血行を良くする作用があります。血をきれいにするような作用が期待できます。
特に、血瘀タイプの方は、どちらかというと肌はやや黒っぽい色をしている。日焼けしたような色をしていたりとか、 シミ、場合によってはニキビとかができやすい体質になります。そのような方への効果が期待できます。
気滞体質
もう一つは、気滞(きたい)と言いまして、いわゆるストレスや精神的な面のイライラです。そういったのが肌荒れの原因にもなります。
イライラやストレスを受けると、頭に血が昇るという言葉もありますが、熱くなりますよね。 それにカッカするという言葉もありますが、そうなると熱感やほてりを感じてきます。
そういうイライラ感によってほてりが体の中に出てくると、熱を帯びてきますので、 特に皮膚表面の潤いが飛び蒸発してしまいます。
その結果、皮膚の表面の陰虚という潤い成分が不足した状態になって肌荒れになってしまうのです。
また痒みを伴う肌荒れも散見されます。 肌がカサカサして痒みが出る人が多く、かきむしりたくなることもあります。
よくストレスがかかると、グーっとかいてしまうようなことってあると思うんですが、気滞のタイプの肌荒れの方は、どちらかというと痒みに我慢できないタイプの方が多いですね。
こういう方の場合は、特に女神散(にょしんさん)がいいですね。
加えて、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)など気を沈め、精神的に安定させるような作用がある漢方薬を用います。
肌荒れのツボ
潤すっていうのが皮膚表面のポイントになるんですが、漢方的に考えると皮膚表面を潤すっていうのは、肺が重要な臓器と考えます。
魚際(ぎょさい)
肺の働きを高めるという肺経のツボとして、「魚際(ぎょさい)」というツボがおすすめですね。
ちょうど親指の付け根ですね。ちょっと押してみて、痛気持ちいいところなんですが、この親指の付け根をグッと押してください。ここはは、クリクリ痛くなってきますので、揉み潤すように押してあげると、肺の方の働きが上がり皮膚表面を潤す作用があります。
復溜(ふくりゅう)
もう一つは足のツボで腎経のツボです。
足の内くるぶしの少し上です。 このツボは副腎につながっている「復溜(ふくりゅう)」というツボです。副腎のステロイドホルモンってよく聞いたことあると思うんですが、 そういうホルモンを出させたりして、体の中の潤いとかを調整する役割があります。
皮膚を潤したり、痒みも抑える作用が期待できます。優しく揉みほぐしてあげるような押し方がいいと思います。
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堀口先生へ直接相談することも可能です。うち漢方という当社の関連サービスですのでお気軽にご利用ください(回答には2、3日いただいております。)。
FAQ(よくあるご質問)
肌荒れの代表的な原因は?
参考:日本皮膚科学会:皮膚科Q&A
日常でできる対策は?
参考:日本皮膚科学会:患者さん向け情報
市販薬や病院での治療は?
参考:日本皮膚科学会
受診の目安
- 発熱・痛み・膿・急速な拡大・水疱やただれ・粘膜(口・目・陰部)へ及ぶ発疹
- 全身に広がり長引く(2週間以上)/市販薬で悪化
- 小児・高齢者・妊娠中・基礎疾患のある方
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。持病や服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は自己判断で服用せず、事前にご相談ください。
著者プロフィール
堀口 和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)
光和堂薬局 院長
埼玉県生まれ
東京理科大学薬学部卒
同大学院修士課程修了
総合漢方研究会 学術部員
元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員
公益法人埼玉県鍼灸師会会員
さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)
一般財団法人日本漢方連盟 会員
著書:やさしい漢方入門(健友館)、パプアニューギニアの薬草文化(アボック社)、体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐(万来舎)など
販売薬局:光和堂薬局(さいたま市西区指扇領別所326-1)・許可(さ局)第7105号。