牡蛎(ぼれい)
まずは要点
- どんな生薬? 牡蛎(ぼれい)はカキ(Ostrea gigas など)の貝殻を焼成・粉砕した生薬で、安神・収斂固渋・軟堅散結のはたらきが知られます。不安・不眠や動悸、寝汗・多汗、しこり・腫れの改善を狙って配合されます。*①②③
- 中身は? 主成分は炭酸カルシウム(CaCO3)で、酸に対する緩衝・制酸作用が報告されています。焼成条件により酸化カルシウムを含みます。*②③
- 注意点 便秘傾向・胃酸低下のある人は服用で胃もたれ等が出ることがあります。長期連用・高用量は避け、妊娠・授乳中や腎機能低下では専門家に相談します。*②④
牡蛎の基礎データ
- 読み方: ぼれい
- 基原・由来: カキ(Ostrea 属)の貝殻を焼成・粉砕したもの。日本薬局方に収載。*①②
- 主要成分: 炭酸カルシウム主体(焼成で酸化カルシウム成分を含むことあり)。*②③
- 性味: 鹹・渋 / 微寒 帰経: 肝・腎。*①③
伝統的な使われ方
不安・不眠・動悸などの精神神経症状、寝汗・多汗などの汗出過多、しこり・腫れ(甲状腺腫やリンパ腫の記載を含む)などに対して用いられてきました。安神には竜骨と、止汗には黄耆や麻黄根と、軟堅には昆布・海藻などと組み合わせます。*①②③
この生薬を含む漢方薬例
- 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)(不眠、神経症、興奮など)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)(不眠、動悸、不安など)
安全性と受診の目安
体質や体調により胃部不快・便秘・腹部膨満などが出ることがあります。動悸・息切れが強い、不眠が長引く、しこりが増大する、発熱を伴う場合は医療機関へ。自己判断での長期連用は避けます。*②④
- すぐ相談: 胸痛や失神を伴う動悸、38℃以上の発熱が続く、しこりが急に大きくなる。
- 服薬中: 持病や他剤を併用している場合は自己判断での継続・中止を避け、専門家へ。
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
よくある質問
Q. 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)との関係は?
A. 本方は柴胡・半夏などで気の巡りを整えつつ、竜骨・牡蛎で安神・鎮静を補強する処方です。不安・不眠、いらいら、動悸などを目標に用いられます。*②③
Q. どんな体質・症状に向きますか?
A. 不安・不眠や動悸、寝汗・多汗、しこり・腫れなどに向きます。体質・症状に応じて配合を調整します。*①②③
*参考・出典
- 公益社団法人 東京生薬協会 ①
- ツムラ「漢方ビュー|生薬辞典:牡蛎」 ②
- 富山大学 和漢医薬学総合研究所「伝統医薬DB:牡蛎」 ③
- MSDマニュアル家庭版(受診目安の一般情報) ④