牡蛎(ぼれい)とは?不安・不眠や動悸、寝汗・多汗、しこりに使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月12日 監修:堀口和彦
牡蛎(ぼれい)

牡蛎(ぼれい)は、カキの貝殻を焼成・粉砕した生薬です。精神を安定させる働き(安神)、体液の漏出を防ぐ働き(収斂固渋)、かたく凝り固まったしこりをやわらげる働き(軟堅散結)から、不安・不眠や動悸、寝汗・多汗、しこり・腫れなどのケアに用いられてきました。竜骨と併用されることの多い、動物性の鉱物様生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「心を鎮め、体液の漏れとしこりを整える生薬」として整理します。

まずは要点
  • 牡蛎(ぼれい)はカキ(Ostrea属)の貝殻を焼成・粉砕した生薬で、日本薬局方に収載されています*①②
  • 主成分は炭酸カルシウム(CaCO3)主体で、焼成条件により酸化カルシウム成分を含むことがあります*②③
  • 漢方では、精神を安定させ(安神)、体液の漏出を防ぎ(収斂固渋)、しこりをやわらげる(軟堅散結)働きで用いられます*①②③
  • 便秘傾向・胃酸低下のある人は服用で胃もたれ等が出ることがあります。長期連用・高用量は避けます

牡蛎は竜骨・黄耆・昆布など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。胸痛や失神を伴う動悸、38℃以上の発熱が続く、しこりが急に大きくなる場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

牡蛎とは

牡蛎(ぼれい)は、イタボガキ科カキ(Ostrea gigas Thunbergなど)の貝殻を焼成・粉砕させた生薬です。日本薬局方に収載され、食用としてなじみ深いカキの貝殻を薬用に加工したものです。カキの肉ではなく殻を用いる点が特徴で、竜骨と並んで動物由来の鉱物様生薬として、多くの精神安定処方に配合されてきました。

漢方薬剤師の視点では、牡蛎は「重鎮安神薬(重みのある鉱物様生薬で精神を鎮める生薬)」に分類されます。不安・不眠・動悸などの精神神経症状、寝汗・多汗などの汗出過多、しこり・腫れ(甲状腺腫やリンパ腫の記載を含む)などに対して用いられてきました。安神には竜骨と、止汗には黄耆や麻黄根と、軟堅には昆布・海藻などと組み合わせます。

ポイント:牡蛎は「心を鎮め、体液の漏れとしこりを整える」生薬です。不安・不眠や動悸、寝汗・多汗、しこり・腫れが気になるタイプに用いられてきました。竜骨と併用されることの多い動物性の生薬なのが特徴です。

基原・成分データ

牡蛎の基本データを整理します。カキの貝殻を焼成・粉砕すること、炭酸カルシウムを主成分とすることが、用いられ方を理解する鍵になります。

牡蛎(ボレイ)の生薬
牡蛎の基礎データ
カキの貝殻を焼成・粉砕した生薬。心を鎮め、体液の漏れとしこりを整える働きがあります。
読み ボレイ(カキの貝殻を用いる生薬)
基原・由来 カキ(Ostrea属)の貝殻を焼成・粉砕したもの(日本薬局方収載) *①②
主成分 炭酸カルシウム(CaCO3)主体(焼成で酸化カルシウム成分を含むことあり) *②③

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。牡蛎は、鹹く渋く、やや冷やす性質(微寒)で、肝・腎に働きます。

味(五味)

「鹹」はやわらげ軟化させる味、「渋」は収斂し漏出を防ぐ味とされます。しこりをやわらげ、体液の漏れを防ぐ働きと結びつきます。

性(四気)

「微寒」はやや涼〜寒寄りの性質で、心の高ぶりをおだやかに鎮める方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

肝に働いて精神の高ぶりを鎮め、腎に働いて体液の漏出やしこりに関わります。

漢方的な働きの軸

牡蛎の働きは、大きく三つの軸で整理できます。精神を安定させる軸、体液の漏出を防ぐ軸、しこりをやわらげる軸が重なり、不安・不眠・寝汗・しこりを整えます。

精神を安定させる軸 安神 重みのある性質で心を鎮めて、不安・不眠・動悸をやわらげる方向に働きます。
体液の漏出を防ぐ軸 収斂固渋 体液の漏出を防いで、寝汗・多汗をやわらげる方向に働きます。
しこりをやわらげる軸 軟堅散結 かたく凝り固まったしこりをやわらげて、甲状腺腫やリンパ腫などの腫れをやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:牡蛎は「心を鎮め、体液の漏れとしこりを整える」生薬です。不安・不眠や動悸、寝汗・多汗、しこり・腫れのタイプに輪郭がはっきりします。竜骨と併用されることの多い動物性の生薬なのが持ち味です。

伝統的な使われ方

牡蛎は古くから、安神・収斂固渋・軟堅散結を目的に用いられてきました。不安・不眠・動悸などの精神神経症状、寝汗・多汗などの汗出過多、しこり・腫れなどのケアに用いられてきた歴史があります。牡蛎は肝・腎に入り、安神には竜骨と、止汗には黄耆や麻黄根と、軟堅には昆布・海藻などと組み合わせるのが特徴です。

竜骨と組み合わせて、不眠・神経症・興奮を整える処方(桂枝加竜骨牡蛎湯)、柴胡・半夏などと組み合わせて不眠・動悸・不安を整える処方(柴胡加竜骨牡蛎湯)に配合されます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

牡蛎は、カキの貝殻ならではの特徴をもつ生薬です。

焼成・粉砕された貝殻

カキの貝殻を焼成・粉砕したもので、白色〜灰白色をしています。重みのある鉱物様の質感が特徴です。

鹹み・渋みで微寒性

味は鹹み・渋みが中心で、性質は微寒。心の高ぶりをおだやかに鎮める方向に働きます。

竜骨と組み合わせて使用

竜骨と組み合わせて安神の働きを強めるほか、黄耆・昆布・海藻など、他の生薬とも組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

牡蛎は心を鎮め体液の漏れとしこりを整える生薬です。不安・不眠・動悸があるか、逆に便秘傾向・胃酸低下でないかを見極めることが大切です。

不安・不眠・動悸タイプ

不安・不眠、動悸がみられるタイプに向きます。牡蛎の中心的な使い道です。

判断ポイント:精神の高ぶりによる不眠・動悸。

寝汗・多汗タイプ

寝汗・多汗などの汗出過多のケアに用いられてきました。

判断ポイント:収斂固渋の働き。

しこり・腫れタイプ

甲状腺腫やリンパ腫などのしこり・腫れには、昆布・海藻など他の生薬と組み合わせて用います。

判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。
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便秘傾向・胃酸低下のタイプ

便秘傾向・胃酸低下のある人は、服用で胃もたれ等が出ることがあるため注意が必要です。

判断ポイント:便秘・胃酸低下には注意。

安全性と受診の目安

牡蛎は処方の中で用いられる重鎮安神薬ですが、体質や体調により胃部不快・便秘・腹部膨満などが出ることがあります。便秘傾向・胃酸低下のある人は服用で胃もたれ等が出ることがあります。長期連用・高用量は避け、妊娠・授乳中や腎機能低下では専門家に相談します。胸痛や失神を伴う動悸、38℃以上の発熱が続く、しこりが急に大きくなる場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。

  • すぐに相談:胸痛や失神を伴う動悸、38℃以上の発熱が続く、しこりが急に大きくなる
  • 服薬中:持病や他剤を併用している場合は自己判断での継続・中止を避け、専門家へ相談する
すぐ相談:胸痛や失神を伴う動悸、38℃以上の発熱が続く、しこりが急に大きくなる場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

牡蛎が気になる方は、不眠、動悸との関係も確認すると理解が深まります。

牡蛎を含む漢方薬

牡蛎は、不安・不眠・動悸を整える処方に配合されます。牡蛎の心を鎮める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

よくある質問

Q. 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)との関係は?

本方は柴胡・半夏などで気の巡りを整えつつ、竜骨・牡蛎で安神・鎮静を補強する処方です。不安・不眠、いらいら、動悸などを目標に用いられます。

Q. 竜骨(りゅうこつ)との違いは?

竜骨は大型哺乳類の化石化した骨や歯を、牡蛎はカキの貝殻を用います。ともに重鎮安神薬として似た働きをもち、併用して安神・収斂固渋を強める使い方がよく知られています。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

不安・不眠や動悸、寝汗・多汗、しこり・腫れなどに向きます。体質・症状に応じて配合を調整します。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

牡蛎は、心を鎮め体液の漏れとしこりを整える生薬ですが、不安・不眠や動悸の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。胸痛や失神を伴う動悸、38℃以上の発熱が続く場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。妊娠・授乳中の方、腎機能低下のある方は事前に相談し、症状が長引く・悪化する場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。