知母(ちも)とは?高熱・煩渇や陰虚火旺のほてり、乾燥便秘に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月12日 監修:堀口和彦
知母(ちも)

知母(ちも)は、ユリ科ハナスゲの根茎を乾燥した生薬です。体にこもった熱をさばく働き(清熱瀉火)や、陰を養い乾きを潤す働き(滋陰潤燥)から、高熱・煩渇、陰虚火旺によるほてり・寝汗、乾燥傾向の便秘などのケアに用いられてきました。苦く冷やす性質でありながら潤す力もあわせもつ、清熱と滋陰を兼ねる生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「熱をさばきながら、体を潤す生薬」として整理します。

まずは要点
  • 知母(ちも)はユリ科ハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides Bunge)の根茎を乾燥した生薬です*①②
  • 主成分はサポニン(知母サポニン類)、キサントン配糖体(マンギフェリン等)などです*①②③
  • 漢方では、体にこもった熱をさばき(清熱瀉火)、陰を養い乾きを潤す(滋陰潤燥)働きで用いられます*①②③
  • 性質が冷やして潤す方向にはたらくため、脾胃が虚弱で下痢しやすい方には向かないことがあります

知母は石膏・黄柏など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。高熱が続く、意識障害や強い脱水症状がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

知母とは

知母(ちも)は、ユリ科ハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides Bunge)の根茎を乾燥させた生薬です。中国北部を中心に自生・栽培され、苦寒でありながら質が柔潤(水分を含みしっとりしている)なのが大きな特徴です。この苦寒と潤いをあわせもつ性質から、上は肺、中は胃、下は腎の相火(余分な熱)をさばきながら、肺・胃・腎の陰を滋養するとされています。

漢方薬剤師の視点では、知母は「清熱瀉火薬(体にこもった熱を除去する生薬)」に分類されます。肺胃の実熱による高熱・煩渇には石膏と組み合わせ(白虎湯)、陰虚火旺による骨蒸潮熱・寝汗・いらだちには黄柏と組み合わせます(知柏地黄丸)。また、内熱傷津の消渇(口渇が強く水を欲する状態)には天花粉・葛根などと、腸燥便秘には生首烏・当帰・火麻仁などと組み合わせて用いられます。

ポイント:知母は「熱をさばきながら、体を潤す」生薬です。高熱・煩渇、陰虚火旺によるほてり・寝汗、乾燥傾向の便秘が気になるタイプに用いられてきました。苦寒でありながら潤す力もあわせもつのが特徴です。

基原・成分データ

知母の基本データを整理します。ハナスゲの根茎を用いること、サポニンなどの成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

知母(チモ)の生薬
知母の基礎データ
ハナスゲの根茎を乾燥した生薬。熱をさばきながら、体を潤す働きがあります。
読み チモ(ハナスゲの根茎を用いる生薬)
基原・由来 ユリ科ハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides Bunge)の根茎 *①②
主成分 サポニン(知母サポニン類)、キサントン配糖体(マンギフェリン等) *①②③

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。知母は、苦く甘く、冷やす性質(寒)で、肺・胃・腎に働きます。

味(五味)

「苦」は熱をさばく味、「甘」は潤し養う味とされます。熱をさばきながら体を潤す、知母ならではの働きと結びつきます。

性(四気)

「寒」は冷やす性質で、肺胃の実熱や陰虚火旺による熱をさばく方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

肺に働いて煩渇を、胃に働いて実熱を、腎に働いて陰虚火旺による骨蒸潮熱に関わります。

漢方的な働きの軸

知母の働きは、大きく二つの軸で整理できます。体にこもった熱をさばく軸、陰を養い乾きを潤す軸が重なり、高熱・煩渇・ほてり・乾燥便秘を整えます。

体にこもった熱をさばく軸 清熱瀉火 肺胃にこもった実熱をさばいて、高熱・煩渇・多汗をやわらげる方向に働きます。
陰を養い乾きを潤す軸 滋陰潤燥 肺・胃・腎の陰を養い、陰虚火旺によるほてり・寝汗、乾燥傾向の便秘をやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:知母は「熱をさばきながら、体を潤す」生薬です。高熱・煩渇、陰虚火旺によるほてり・寝汗、乾燥傾向の便秘のタイプに輪郭がはっきりします。苦寒でありながら潤す力をあわせもつのが持ち味です。

伝統的な使われ方

知母は古くから、清熱瀉火・滋陰潤燥を目的に用いられてきました。肺胃の実熱による高熱・煩渇、陰虚火旺による骨蒸潮熱・寝汗、内熱傷津の消渇、腸燥便秘などのケアに用いられてきた歴史があります。知母は肺・胃・腎に入り、苦寒でありながら質が柔潤なため、燥熱傷陰であれば虚実を問わず応用できるのが特徴です。

石膏と組み合わせて、肺胃の実熱による高熱・煩渇を整える処方(白虎湯)に配合されます。また、黄柏と組み合わせて陰虚火旺によるほてり・寝汗を整える処方(知柏地黄丸)、附子と組み合わせて湿邪が久しく体にあり患部がやせ衰え疼痛するときに用いる処方(桂枝芍薬知母湯)にも用いられます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

知母は、ハナスゲの根茎ならではの特徴をもつ生薬です。

細長い円柱形の根茎

細長い円柱形の根茎で、表面は黄褐色〜灰褐色をしています。折るとやや粘りけのある質感が特徴です。

苦みと甘みで寒性・柔潤

味は苦みと甘みがあり、性質は寒性。苦寒でありながら質が柔潤(しっとりとしている)のが大きな特徴です。

石膏・黄柏と組み合わせて使用

石膏や黄柏など、他の清熱薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

知母は熱をさばきながら体を潤す生薬です。高熱・煩渇・陰虚火旺があるか、逆に脾胃が虚弱で下痢しやすいタイプでないかを見極めることが大切です。

熱病の高熱・煩渇タイプ

高熱・煩渇・多汗がみられるタイプに向きます。知母の中心的な使い道です。

判断ポイント:肺胃実熱による高熱・煩渇。

陰虚火旺のほてり・寝汗タイプ

顔や手足のほてり、寝汗のケアに用いられてきました。

判断ポイント:滋陰潤燥の働き。

乾燥傾向の便秘タイプ

腸燥便秘には、生首烏・当帰・火麻仁などと組み合わせて用います。

判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。
×

脾胃虚寒・下痢しやすいタイプ

性質が寒く潤す方向にはたらくため、脾胃が虚弱で下痢しやすい方には基本的に不向きです。

判断ポイント:脾虚便溏には不向き。

安全性と受診の目安

知母は処方の中で用いられる清熱瀉火薬ですが、常規用量では大きな不適応反応は少ないとされる一方、脾胃が虚弱で下痢しやすい方には向かないことがあります。高熱が続く、意識障害や強い脱水症状がある、排尿困難・むくみが急激に悪化する場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。

  • すぐに相談:高熱が続く、意識障害や強い脱水症状、排尿困難・むくみの急激な悪化
  • 服薬中:脾胃が虚弱で下痢しやすい方、持病や他剤を併用している場合は専門家に相談する
すぐ相談:高熱が続く、意識障害や強い脱水症状がある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

知母が気になる方は、口の渇き、便秘との関係も確認すると理解が深まります。

知母を含む漢方薬

知母は、高熱・煩渇・陰虚火旺を整える処方に配合されます。知母の熱をさばきながら潤す働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

知母が配合される代表的な処方には、白虎湯(びゃっことう)があります。石膏とともに、発熱性の感染症による高熱・口渇・煩渇を改善する処方として知られています。また、黄柏と組み合わせて陰虚火旺のほてりを整える知柏地黄丸、附子と組み合わせて風湿による関節の疼痛を整える桂枝芍薬知母湯にも用いられます。KanpoNowでは知柏地黄丸は製品として取り扱いがありますが、いずれも単独の処方ページは確認できていません。

※お使いの製品にどの生薬が含まれるかは、製品の添付文書・成分表示をご確認ください。処方の選択や併用については、薬剤師・登録販売者など専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. 黄柏との違いは?

知母は肺・胃・腎の気分に働き、苦寒でありながら潤す力をあわせもつのに対し、黄柏は腎・膀胱の血分に働き、湿熱をさばく力に優れます。「蝦と水母のように必ず相依って行く」といわれ、しばしば併用されます。

Q. 白虎湯における知母の役割は?

白虎湯は石膏と知母を中心とした処方で、石膏が強い熱をさばく一方、知母は肺胃の実熱をさばきながら陰を養い、熱によって消耗した体液を補う役割を担います。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

高熱・煩渇、陰虚火旺によるほてり・寝汗、乾燥傾向の便秘のタイプに向きます。脾胃が虚弱で下痢しやすい方には向かないことがあります。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

知母は、熱をさばきながら体を潤す生薬ですが、高熱やほてりの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。高熱が続く、意識障害や強い脱水症状がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。脾胃が虚弱で下痢しやすい方には向かないことがあり、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。