栝楼仁(かろにん)とは?痰のからむ咳・胸の苦しさ・便秘に使う生薬を体質別に解説

栝楼仁(かろにん)は、ウリ科カラスウリ類の成熟した種子を用いる生薬です。肺をうるおして粘った痰をさばき、胸のつかえをほぐし、乾いた腸をうるおして便通を整える働き(潤肺化痰・寛胸・潤腸)から、痰のからむ咳、胸の苦しさ、乾燥性の便秘のケアに用いられてきました。同じカラスウリでも、根を使う栝楼根とは働きが異なります。KanpoNowでは、この生薬を「肺と腸をうるおし、痰と胸のつかえをさばく、潤肺化痰の生薬」として整理します。
- 栝楼仁は、ウリ科キカラスウリ・オオカラスウリ・トウカラスウリの成熟した種子からつくられる生薬です
- 主成分は脂肪油(リノール酸等)、サポニン、トリテルペン、有機酸などです
- 漢方では、肺をうるおして痰をさばき(潤肺化痰)、胸のつかえをほぐし(利気寛胸)、腸をうるおす(潤腸通便)働きで用いられます
- 種子の油分で腸をうるおすため、下痢しやすい方や胃腸の弱い方には不向きなことがあります
根を使う「栝楼根」とは薬用部位・働きが異なります。下痢しやすい方、持病や併用薬のある方、妊娠中の方は、自己判断での使用を避け、専門家に相談してください。
栝楼仁とは
栝楼仁(かろにん)は、ウリ科のキカラスウリ(Trichosanthes kirilowii var. japonica)、オオカラスウリ、トウカラスウリの成熟した種子を乾燥させた生薬です。同じ植物の根は「栝楼根(かろこん)」という別の生薬になり、薬用部位によって働きが分けられます。古くは果実・果皮・種子の別なく「瓜呂」として用いられましたが、後に部位ごとに使い分けられるようになりました。
漢方薬剤師の視点では、栝楼仁は代表的な「潤肺化痰・潤腸」の生薬です。種子の油分で肺と腸をうるおし、熱でねばった痰をさばき、胸のつかえをほぐし、乾いた腸をうるおして便通を整えます。うるおいを生んで口渇を治す栝楼根に対し、栝楼仁は「肺と腸をうるおして痰と便をさばく」点が特徴です。
基原・成分データ
栝楼仁の基本データを整理します。脂肪油を含むこと、潤肺化痰・潤腸の生薬であることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。栝楼仁は、甘く寒(冷やす)性質で、肺・胃・大腸に働きます。
「甘」はうるおし補う味とされます。種子の油分でうるおす、潤肺・潤腸の働きと結びつきます。
「寒」は冷やす性質で、肺や腸にこもった熱をやわらげる方向に働きます。
肺をうるおして痰をさばき、胃を通じて胸のつかえをほぐし、大腸をうるおす方向に働きます。痰・胸のつかえ・便秘に関わります。
漢方的な働きの軸
栝楼仁の働きは、大きく三つの軸で整理できます。痰をさばく軸、胸をほぐす軸、腸をうるおす軸が重なり、熱でねばった痰や胸のつかえ、乾いた便を整えます。
伝統的な使われ方
栝楼仁は古くから、潤肺化痰・利気寛胸・潤腸通便・消腫散結を目的に用いられてきました。肺熱による粘った痰や、痰熱による胸の苦しさ、乾燥性の便秘、腫れものなどに応用された歴史があります。とくに、胸のつかえや痛みをほぐす働き(寛胸)から、胸部の不快をともなう不調に用いられてきました。
半夏・黄連と組み合わせて気管支炎・肺炎などの痰をさばく処方(柴陥湯・小陥胸湯)、薤白(がいはく)と組み合わせて胸痛(肋間神経痛・狭心症様の痛み)を改善する処方(栝楼薤白半夏湯・栝楼薤白白酒湯)に配合されます。栝楼仁と薤白の組み合わせは、胸のつかえや痛みを治す代表的な配合です。
形状・味・使われ方の体感
栝楼仁は、見た目・味・使われ方に特徴があります。扁平で油分に富む種子が特徴です。
扁平な卵形の種子
扁平な卵形〜楕円形の種子で、外皮は淡褐色〜褐色。縁に溝状の帯がめぐるのが特徴です。
油分に富む風味
脂肪油を多く含み、味はほのかに甘く、油分に富みます。この油分が潤肺・潤腸の働きの中心です。
砕いて煎じる
種子を砕いて煎じ、化痰・潤腸の処方に配合されます。油分を除いた「栝楼霜」として用いることもあります。
体質別の向き・不向き
栝楼仁は肺と腸をうるおす生薬です。痰や胸のつかえ、乾いた便があるか、逆に下しやすくないかを見極めることが大切です。
痰のからむ咳・胸の苦しさ
熱でねばった切れにくい痰がからむ咳や、胸のつかえ・苦しさが出るタイプに向きます。栝楼仁の中心的な使い道です。
判断ポイント:切れにくい痰と胸のつかえ。乾燥性の便秘
うるおい不足で腸が乾いて生じる、乾燥性の便秘のケアに用いられてきました。種子の油分で腸をうるおして通じをつけます。
判断ポイント:コロコロ便・乾いた便秘。冷えが強い・胃腸が弱い方
甘く冷やしてうるおす性質のため、冷えが強い方や胃腸が弱い方では、冷えや胃部不快が出ることがあります。用量や配合に注意します。
判断ポイント:冷え・胃腸虚弱があれば注意。下痢しやすい・軟便が続く方
種子の油分で腸をうるおして通じをつける働きがあるため、もともと下痢しやすい方や軟便が続く方には不向きとされます。
判断ポイント:下痢・軟便が続くなら避ける。安全性と受診の目安
栝楼仁はうるおして痰と便をさばく生薬ですが、油分で腸をうるおすため、下痢しやすい方や胃腸の弱い方には不向きなことがあります。胸の痛みや苦しさが続く場合は、心臓など別の原因の確認が必要です。持病や併用薬がある場合は専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い胸の痛みや圧迫感、息切れ、血の混じった痰、下痢が続く
- 服薬中:心疾患などの持病がある、他の薬を併用している、妊娠中・授乳中の場合は、事前に専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
栝楼仁が気になる方は、咳、便秘との関係も確認すると理解が深まります。
栝楼仁を含む漢方薬
栝楼仁は、痰をさばく処方や、胸のつかえ・痛みをほぐす処方に配合されます。同じ栝楼仁を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 栝楼根(かろこん)とどう違うのですか?
同じカラスウリ類に由来しますが、栝楼仁は「種子」、栝楼根は「根」で、薬用部位が異なります。栝楼仁は肺と腸をうるおして痰・胸のつかえ・便通をさばく働きが中心、栝楼根はうるおいを生んで口渇を止める働きが中心です。
Q. 便秘にも使えますか?
種子の油分で腸をうるおすため、うるおい不足による乾燥性の便秘に用いられることがあります。ただし下痢しやすい方には不向きです。
Q. 性味・帰経は?
性味は甘/寒、帰経は肺・胃・大腸とされます。肺と腸をうるおして痰をさばき、胸のつかえをほぐし、便通を整える働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
栝楼仁は、肺と腸をうるおし痰と胸のつかえをさばく生薬ですが、咳や胸の苦しさ、便秘の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。強い胸の痛みや圧迫感、息切れ、血の混じった痰、下痢が続くといった場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。