更年期障害の病態と8つの体質別 漢方・養生ガイド
監修:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2026-06-14
更年期の不調を、8つの体質から見直してみませんか。
更年期には、ホルモンの大きな変動があります。この変動に関わる脳下垂体の近くには、自律神経の調節を担う視床下部があります。
そのため、更年期のホルモン変動は自律神経の乱れとも関係し、ホットフラッシュ、不眠、イライラ、むくみ、動悸、めまい、更年期の太りなど、多岐にわたる症状として現れることがあります。
漢方では、病名や表面的な症状だけで考えるのではなく、気・血・水・精のバランスから体質を見ていきます。
目次
更年期と自律神経の関係
更年期には、女性ホルモンの分泌が大きく変動します。このホルモン変動に対応しようとする過程で、自律神経のバランスも揺らぎやすくなります。
自律神経は、体温調節、発汗、動悸、睡眠、気分の安定などに関わっています。そのため、更年期にはホットフラッシュ、汗、冷え、動悸、不眠、イライラ、不安感など、身体と心の症状が同時に現れることがあります。
漢方では、こうした症状を単独で切り分けるのではなく、気・血・水・精のバランスの崩れとして捉えます。そして、その崩れ方を体質として見立て、漢方と養生の方針を考えていきます。
更年期の漢方で大切な視点
同じ「ほてり」や「不眠」でも、気滞、血瘀、血虚、陰虚、気虚、陽虚、湿痰、湿熱のどの体質が背景にあるかによって、漢方での考え方は変わります。
堀口メソッドの8つの体質
更年期の漢方を考えるうえで、まず見ておきたい代表的な体質は、気滞・血瘀・血虚の3つです。
ただし、実際の更年期症状では、複数の体質が重なっていることも少なくありません。強いほてり、寝汗、極度の疲労感、芯からの冷え、むくみ、肥満傾向、多汗などがある場合は、他の体質も関係している可能性があります。
気滞
イライラ、不安感、動悸、不眠など、気の巡りの滞りが目立つタイプです。
血瘀
冷えのぼせ、肩こり、頭痛、血の巡りの悪さが目立つタイプです。
血虚
ほてりと冷え、不眠、疲れやすさ、不安感が出やすいタイプです。
陰虚
強いほてり、寝汗、口の渇き、乾燥感が目立つタイプです。
気虚
極度の疲労感、気力低下、食欲不振、朝起きにくさが目立つタイプです。
陽虚
芯からの冷え、代謝低下、頻尿、腰や膝の弱りが目立つタイプです。
湿痰
むくみ、重だるさ、めまい、水太り、天気による不調が出やすいタイプです。
湿熱
多汗、熱感、肥満傾向、便秘、吹き出物などが目立つタイプです。
気滞(きたい)体質
気滞は、気の巡りが滞りやすいタイプです。更年期では、イライラ感、不眠、不安感、動悸といった精神的な症状が多い方に見られやすい体質です。
病態の考え方
気滞とは、生命エネルギーである「気」はあるものの、その流れが悪く、体内で渋滞しているような状態です。
更年期のホルモンバランスの乱れは、自律神経にも影響し、気を上半身に停滞させやすくなります。気が頭部や胸部に滞ると、イライラして落ち着かない、あちらこちらが痛む、症状が変化しやすいといった状態につながることがあります。
見られやすい症状
神経質、怒りっぽい、のぼせ、胸や腹が張って苦しい、不眠、不安感、動悸などが見られやすいタイプです。
漢方の考え方・処方例
このタイプでは、自律神経に働きかけ、心身の緊張をゆるめる考え方をとります。代表的には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが用いられることがあります。緊張感やイライラ感が強い場合には、抑肝散(よくかんさん)などを検討することもあります。
血瘀(けつお)体質
血瘀は、血の巡りが滞りやすいタイプです。更年期では、冷えのぼせ、のぼせ感、肩こり、頭痛、巡りの悪さが気になる方に見られやすい体質です。
病態の考え方
血瘀とは、血の巡りが悪くなり、体内で滞りが起こっている状態です。更年期においては、ホルモンバランスの変化が血行にも影響し、熱の分配が不均等になることがあります。
その結果、頭や上半身には熱がこもって熱いのに、手足の末端は冷えるという「冷えのぼせ」が起こりやすくなります。
見られやすい症状
頑固な肩こり、締め付けられるような頭痛、目の疲れ、冷えのぼせ、シミやくすみ、巡りの悪さなどが見られやすいタイプです。
漢方の考え方・処方例
このタイプでは、血の巡りを良くして、冷えのぼせや巡りの偏りを整える考え方をとります。代表的には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などが用いられることがあります。便秘や下腹部の張りが強い場合には、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や通導散(つうどうさん)などを検討することもあります。
血虚(けっきょ)体質
血虚は、血が不足しやすいタイプです。更年期では、火照るのと冷えるのが交互に来る、不眠、疲れやすさ、不安感、イライラが気になる方に見られやすい体質です。
病態の考え方
血虚とは、心身に栄養を届ける「血」が不足している状態です。血は、身体を養うだけでなく、熱を落ち着かせる役割も持つと考えられます。
更年期に血が不足すると、自律神経のコントロールが乱れやすくなり、ほてりと冷えが一日の中で交互に現れることがあります。
見られやすい症状
浅い眠り、多夢、不安感、記憶力の低下、疲れやすさ、ドライアイ、抜け毛、皮膚の乾燥などが見られやすいタイプです。
漢方の考え方・処方例
このタイプでは、血を補いながら、気の巡りも整える考え方をとります。代表的には、加味逍遙散(かみしょうようさん)などが用いられることがあります。胃腸が弱く、疲労感や不安感が強い場合には、加味帰脾湯(かみきひとう)などを検討することもあります。
陰虚(いんきょ)体質
陰虚は、体を潤す力が不足し、熱がこもりやすいタイプです。激しいホットフラッシュ、寝汗、口の渇き、乾燥感に悩む方に見られやすい体質です。
病態の考え方
陰虚は、身体を潤し、熱を落ち着かせる体液が不足した状態です。体を冷ます力が弱くなるため、内側に熱がこもりやすくなります。
更年期特有の「突然カーッと熱くなる」「汗が出る」といった症状は、陰虚による熱のこもりと関係することがあります。
見られやすい症状
顔や頭からの発汗、手足のほてり、喉の渇き、皮膚の乾燥、寝汗、空咳、不眠などが見られやすいタイプです。
漢方の考え方・処方例
このタイプでは、熱を冷ましながら潤いを補う考え方をとります。全身のほてりが強い場合には白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、のぼせやイライラが強い場合には黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などを検討することがあります。
気虚(ききょ)体質
気虚は、生命エネルギーである「気」を作る力が不足しやすいタイプです。とにかく疲れやすい、やる気が出ない、食欲がない方に見られやすい体質です。
病態の考え方
胃腸の働きが弱く、食べ物から十分に栄養を取り込めず、気を作り出しにくい状態です。
更年期のホルモン変化という大きな負担に耐えるための体力が不足しているため、日常の家事や仕事でもすぐに疲れやすくなります。
見られやすい症状
口数が少ない、ため息が多い、朝起きられない、食後にだるくなる、風邪を引きやすい、全身がだるい、冷えやすいなどが見られやすいタイプです。
漢方の考え方・処方例
このタイプでは、胃腸の働きを助け、気を補う考え方をとります。代表的には、六君子湯(りっくんしとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが用いられることがあります。
陽虚(ようきょ)体質
陽虚は、体を温める力や新陳代謝の原動力が低下しやすいタイプです。芯からの冷え、頻尿、尿漏れ、腰や膝の弱りが気になる方に見られやすい体質です。
病態の考え方
陽虚とは、身体を温め、生命活動を維持する力が不足している状態です。更年期以降、ホルモン分泌や代謝が低下すると、体の中で熱を作りにくくなることがあります。
その結果、基礎代謝が落ち、体の芯から冷える、活動量が落ちる、腰や膝に力が入らないといった変化につながることがあります。
見られやすい症状
低体温、強い冷え、夜間頻尿、尿漏れ、腰や膝の弱り、未消化便、疲れやすさなどが見られやすいタイプです。
漢方の考え方・処方例
このタイプでは、体を深部から温め、腎の働きを補う考え方をとります。代表的には、八味地黄丸(はちみじおうがん)などが用いられることがあります。
湿痰(しったん)体質
湿痰は、体内の水はけが悪く、余分な水分が滞りやすいタイプです。むくみ、重だるさ、めまい、水太り、天候による不調に悩む方に見られやすい体質です。
病態の考え方
代謝の低下、運動不足、冷たい飲食などにより、体内の水分が停滞しやすくなった状態です。水分が滞ると、身体が重く、すっきりしない感覚につながります。
水は下に溜まりやすいため、下半身のむくみや冷え、重だるさとして現れることがあります。
見られやすい症状
太ももから下の冷え、むくみ、水太り、頭の重さ、めまい、雨の日の不調、身体の重だるさなどが見られやすいタイプです。
漢方の考え方・処方例
このタイプでは、水分代謝を整え、余分な水をさばく考え方をとります。代表的には、五苓散(ごれいさん)、苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)などが用いられることがあります。
湿熱(しつねつ)体質
湿熱は、余分な水分と熱が体内にこもりやすいタイプです。肥満傾向、多汗、熱感、便秘、吹き出物などが気になる方に見られやすい体質です。
病態の考え方
食べ過ぎ、運動不足、代謝の低下などにより、体内に余分な熱と湿がこもっている状態です。更年期でも、食欲が落ちず、カロリー過多が続く場合には、体内に熱や脂肪がこもりやすくなります。
見られやすい症状
暑がり、多汗、肥満傾向、便秘、吹き出物、熱感、関節のこわばりや痛みなどが見られやすいタイプです。
漢方の考え方・処方例
このタイプでは、体内にこもった熱や余分なものを排出する考え方をとります。代表的には、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)や越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)などが用いられることがあります。
漢方薬と養生の両輪で更年期を乗り越える
更年期の不調と一口に言っても、背景にある体質は8つのいずれか、あるいは複数が複雑に絡み合っています。
たとえば、イライラや不安が強い「気滞」と、冷えのぼせが目立つ「血瘀」が重なる場合もあります。火照りと不眠がある「血虚」に、寝汗や乾燥が目立つ「陰虚」が重なることもあります。
漢方の大切な考え方に、同病異治(どうびょういち)があります。同じ「ほてり」や「不眠」であっても、背景にある体質が異なれば、漢方での考え方も変わります。
また、更年期では薬だけに頼るのではなく、養生も大切です。特に更年期は体が変化している時期です。その変化を無理に押さえ込むのではなく、自分の体の状態を見直す機会として捉えることが大切です。
更年期の養生で意識したいこと
睡眠を十分にとる、夜更かしを避ける、冷たい飲食を控える、無理なダイエットを避ける、軽い運動で巡りを整える。こうした生活習慣の見直しは、更年期を快適に過ごし、その後の健康の土台を作る助けになります。
関連ページ
更年期の症状別に詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。
よくある質問
更年期に漢方は効きますか?
更年期の不調は、ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れを背景に起こります。漢方では、身体全体のバランスを見ながら、症状と体質の両面から考えます。
ホットフラッシュにはどの漢方がよいですか?
ホットフラッシュがあるからといって、すべての方に同じ漢方が合うわけではありません。冷えのぼせ、寝汗、動悸、不安感、不眠、血の巡りなどを合わせて見ることが大切です。
8つの体質のうち、自分がどれか分かりません。
更年期では、複数の体質が重なっていることがあります。自己判断で決めつけず、症状全体を整理しながら、薬剤師や医師に相談することをおすすめします。
ホルモン補充療法(HRT)と漢方は併用できますか?
治療中の方、ホルモン補充療法を受けている方、服薬中の方は、自己判断で併用せず、医師または薬剤師に相談してください。
受診の目安
以下のような症状がある場合は、自己判断で漢方を選ばず、医療機関を受診してください。
- 胸痛・息切れ・めまい・失神など、急性症状を伴う場合
- 過多月経・不正出血など、月経異常が続く場合
- 抑うつ・不安が強く、日常生活に支障がある場合
- 脚の片側だけの腫れ・痛み・熱感・色調変化がある場合
体質チェックへ
更年期の不調は、同じ症状でも体質によって考え方が変わります。
ホットフラッシュ、不眠、イライラ、むくみ、動悸、めまい、更年期の太り。どれかひとつでも気になる方は、まずはAI漢方診断をお試しください。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。持病がある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は自己判断で服用せず、事前に医師または薬剤師にご相談ください。