ほてりと息切れに、強い動悸が重なる
月経が半年なく、婦人科で閉経相当のホルモン値と説明されていました。動悸、息切れ、体のほてりが続き、動悸について検査を受けても異常なしとされた例です。
突然、胸がドキドキする。夜、横になると鼓動が気になる。動悸が始まると、「心臓の病気では」と不安になる。
更年期の女性に動悸や息苦しさが現れることはあります。ただし、動悸は更年期だけに特有の症状ではありません。心臓や肺の病気、不整脈、甲状腺の異常、貧血、薬やカフェインの影響などでも起こります。
漢方で体質を考える前に、危険な動悸を見逃さないことが大前提です。医療機関で重大な病気がないことを確認したうえで、不安、不眠、ほてり、発汗、冷え、疲労、めまい、胃腸などを含めて体質を比較します。
胸痛・胸の圧迫感、失神、呼吸が苦しく会話しにくい、顔色や唇の色が悪い、冷や汗を伴う場合は、救急要請を含めて速やかに医療機関へ相談してください。
心臓病の治療中の方に、これまでなかった動悸、息切れ、失神、めまいが出た場合も、担当医へ早めに連絡してください。
動悸とは、心臓の拍動を「ドキドキする」「強く打つ」「速く感じる」「脈が飛ぶ・乱れる」などと自覚する症状です。更年期の女性に動悸や息苦しさが現れることはありますが、日本女性医学学会は、ほてりや発汗ほど女性ホルモン低下との関連が深い症状とは限らず、心臓・肺などの病気がないことが前提だと説明しています。
そのため、まだ心電図、心臓超音波、胸部検査などを受けていない場合は、「更年期だろう」と決めつけず、まず呼吸・循環器系の診察を受けることが重要です。貧血や甲状腺異常などがないことも確認します。
「検査で異常なし」でも、つらさが存在しないわけではありません。
重大な心肺疾患が否定されたあとも、女性ホルモン変動、睡眠不足、不安、ほてり、疲労などが重なり、拍動を強く感じることがあります。その段階で、婦人科治療や漢方を含む選択肢を検討します。
不安、不眠、胸や喉のつかえ、ため息が重なる場合は、気滞などを比較します。
不眠、寝汗、乾燥、冷えなどを確認します。ただし、安静時の不整脈もあるため反復時は受診します。
陰虚、湿熱、血瘀などを比較します。脈が著しく速い場合は医療評価が必要です。
血虚、気虚、陽虚、湿痰などを比較します。貧血、出血、甲状腺異常も確認します。
「脈が飛ぶ・抜ける・乱れる」は、体質分類より先に医療機関で確認してください。
一拍だけ飛ぶ感覚でも、不整脈の症状であることがあります。特に初めて出た、回数が増えた、めまい・息切れ・胸痛を伴う場合は、循環器内科へ相談してください。
始まった時刻、持続時間、安静時か運動時か、月経やほてりとの関係を記録します。
可能なら1分間の脈拍数と、規則的か、抜ける感じがあるかを記録します。
胸痛、息苦しさ、めまい、失神、冷や汗、ほてり、不安、服用薬を伝えます。
※強い症状がある場合は、記録や脈の測定に時間をかけず、受診を優先してください。
更年期には女性ホルモンが大きく変動し、ほてり、発汗、気分の揺らぎなど、さまざまな症状が現れます。
不眠や緊張が続くと、普段は意識しない拍動を強く感じやすくなる場合があります。
不整脈、心疾患、呼吸器疾患、貧血、甲状腺異常、薬剤などを除外してから更年期との関係を考えます。
漢方では、動悸だけを見て処方を決めません。不安や緊張で気が上がっているのか、血や潤いが不足して心身が過敏なのか、熱がこもっているのか、冷えと疲労が強いのか、水分停滞や胃腸の弱りがあるのかを比較します。
体質は1つに分かれず、動悸では安全確認が体質判定より先です。
気滞に陰虚が重なる、血虚に気虚が重なるなど、複数の体質が同時に見られます。ただし、漢方的な説明ができても、心疾患を否定したことにはなりません。
| 体質 | 動悸の出方 | 一緒に出やすい不調 | 漢方で見るポイント | 詳しく見る |
|---|---|---|---|---|
| 気滞 | 不安・緊張でドキドキする | 不眠、胸・喉のつかえ、ため息 | 気の滞りと神経の高ぶり | 気滞へ |
| 陰虚 | 夜やほてり時に拍動が気になる | 寝汗、乾燥、不眠、焦燥 | 潤い不足と虚熱 | 陰虚へ |
| 血虚 | 疲労・不安・ふらつきと重なる | 立ちくらみ、顔色不良、月経変化 | 心身を養う血の不足 | 血虚へ |
| 湿熱 | ほてり・発汗と強い拍動が出る | 便秘、熱感、口の粘り | 余分な熱と水分の停滞 | 湿熱へ |
| 陽虚 | 冷え・消耗時に動悸を感じる | 冷え、下痢、夜間頻尿、めまい | 温め支える力の不足 | 陽虚へ |
| 気虚 | 少し動くと動悸・息切れ | 疲労、食欲低下、だるさ | 気力と回復力の不足 | 気虚へ |
| 血瘀 | 冷えのぼせ・肩こりと重なる | 頭痛、月経痛、下腹部の張り | 血の巡りと熱の偏り | 血瘀へ |
| 湿痰 | めまい・胸のつかえと重なる | 胃もたれ、むくみ、頭重 | 水分・痰と気の停滞 | 湿痰へ |
横にスクロールしてご覧いただけます。脈が飛ぶ・乱れる場合は、体質表より受診を優先してください。
気滞は、ストレスや不安で気の巡りが滞った状態です。人間関係や考え事をきっかけに、胸の拍動を強く感じたり、喉やみぞおちがつかえたりします。
陰虚は、心身を潤し熱を落ち着かせる力が不足した状態です。寝る前や明け方に鼓動が気になり、ほてり、寝汗、口の渇き、不眠が重なることがあります。
血虚は、心身を養う血が不足した状態です。疲労、立ちくらみ、眠りの浅さ、月経変化などと動悸が重なる場合に比較します。ただし、医学的な貧血は検査で確認します。
湿熱は、余分な水分と熱が停滞した状態です。ホットフラッシュ、多汗、顔の赤み、便秘、熱感などと動悸が重なる場合に比較します。
陽虚は、体を温め支える力が不足した状態です。冷え、下痢、めまい、夜間頻尿、疲労があり、動悸を感じる場合に比較します。
気虚は、心身を動かし回復させる気が不足した状態です。疲れやすい、食欲がない、朝つらい、少しの動作で動悸や息切れが出る場合に比較します。
比較される漢方薬:加味帰脾湯など。
心身の疲労、食欲低下、不安、不眠、血色不良などが目立つ場合に比較します。息切れが進行する場合は漢方で様子を見ないでください。
血瘀は、血の巡りが滞った状態です。冷えのぼせ、肩こり、頭痛、月経痛、下腹部の張りなどと動悸が重なる場合に比較します。
比較される漢方薬:桂枝茯苓丸料など。
比較的体力があり、冷えのぼせ、肩こり、頭重、月経トラブルなどがある場合に比較します。妊娠の可能性、出血傾向、強い貧血がある場合は自己判断で使用しないでください。
湿痰は、余分な水分や濁りが停滞した状態です。めまい、頭重、胃もたれ、むくみ、胸やみぞおちのつかえと動悸が重なる場合に比較します。
動悸に使われる漢方薬でも、不安、ほてり、疲労、冷え、めまい、胃腸など、背景によって方向性が異なります。処方前に心肺疾患・不整脈などの評価が必要です。
| 漢方薬 | 比較するときの特徴 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 柴胡加竜骨牡蛎湯 | 不安、不眠、イライラ、胸の緊張、便秘 | 比較的体力があり、熱と高ぶりがあるか |
| 桂枝加竜骨牡蛎湯 | 疲れやすい、神経過敏、不眠、動悸 | 虚弱で、消耗と高ぶりが重なるか |
| 半夏厚朴湯 | 喉・胸のつかえ、不安、吐き気、食欲低下 | 気滞と湿痰、胃腸症状が中心か |
| 女神散 | 更年期ののぼせ、めまい、精神的な高ぶり | 上半身の熱と気血水の乱れがあるか |
| 柴胡桂枝乾姜湯 | 冷え、頭部の発汗、口渇、動悸、不眠 | 体力が低下し、冷えと神経過敏が重なるか |
| 苓桂朮甘湯 | めまい、立ちくらみ、動悸、水分停滞 | 頭重、胃内停水など水の偏りがあるか |
心臓・血圧・甲状腺・貧血の治療中は、処方薬を自己判断で中止・変更しないでください。
漢方薬にも甘草などの生薬が含まれ、利尿薬、心臓病・高血圧の薬などとの併用で注意が必要な場合があります。医師または薬剤師へ相談してください。
時刻、持続時間、脈拍、規則性、直前の行動、月経、ほてり、一緒に出た症状を記録します。
コーヒー、濃いお茶、エナジードリンク、飲酒、喫煙、風邪薬などの後に悪化していないか確認します。
空腹、脱水、無理なダイエットで動悸やふらつきを感じる場合があります。規則的に食事を取ります。
不眠が続くと拍動への不安が強くなることがあります。眠りの悩みは更年期の不眠も確認してください。
動悸の原因が未確認の段階で、激しい運動による自己テストをしないでください。医師に運動可否を確認します。
検査で重大な病気が否定され、不安・緊張で悪化する場合は、ゆっくり息を吐く呼吸が役立つことがあります。受診の代わりにはなりません。
更年期の女性に、特に明確なきっかけがなく動悸や息苦しさが現れることはあります。ただし、ほてりや発汗ほど女性ホルモン低下との関連が明確な症状とは限りません。心臓・肺・甲状腺・貧血など、ほかの原因がないことを確認することが大切です。
初めての動悸、繰り返す動悸、脈が飛ぶ・乱れる感じがある場合は、まず内科または循環器内科が基本です。息苦しさが強い場合は呼吸器内科も候補になります。心肺疾患が否定され、更年期症状もある場合は婦人科や更年期外来で相談できます。
自己判断で更年期と決めつけないでください。胸痛、胸の圧迫感、失神、強い息苦しさ、冷や汗、急に速くなった脈、脈の明らかな乱れがある場合は、漢方より医療機関での評価を優先します。
一つの漢方薬に決めることはできません。不安や不眠を伴う、ほてりや発汗と一緒に出る、疲労やめまいが強い、冷えや胃腸の弱りがあるなど、動悸以外の症状と体質を比較します。持病・血圧・脈拍・服用薬の確認も必要です。
いいえ。柴胡加竜骨牡蛎湯は、比較的体力があり、不安、不眠、イライラ、胸やみぞおちの緊張、便秘などを伴う場合に比較されます。冷え、下痢、著しい虚弱、胃腸の弱さが強い場合は、別の処方を検討します。
更年期の自律神経症状や不安、不眠で、安静時に拍動を意識しやすくなることはあります。しかし、不整脈や心疾患でも夜間や安静時に症状が出ることがあります。繰り返す場合は心電図などの検査を受けてください。
陰虚、湿熱、血瘀、気滞などを比較します。寝汗や乾燥があれば陰虚、発汗・便秘・熱感が強ければ湿熱、冷えのぼせや肩こりがあれば血瘀、不安や緊張が強ければ気滞の要素を確認します。
診断の代わりにはなりませんが、症状が出た時刻、持続時間、1分間の脈拍数、規則的か、脈が抜ける感じがあるかを記録すると、受診時の参考になります。強い症状がある場合は、測定に時間をかけず受診を優先してください。
併用できる場合はありますが、治療内容、血圧、心臓・腎臓の状態、利尿薬や抗不整脈薬などの服用状況によって判断が必要です。処方薬を自己判断で中止・変更せず、医師または薬剤師へ相談してください。
いいえ。処方件数は効果や推奨の順位ではありません。堀口先生が、動悸だけでなく、不安、不眠、ほてり、めまい、月経、胃腸、体力、血圧、服用薬などを含めて選定した記録です。
初めて・反復する動悸は内科または循環器内科が基本です。心肺疾患などが否定され、更年期症状もある場合は、婦人科・更年期外来で治療を相談できます。緊急性に迷う場合は、地域の救急相談窓口も利用してください。
堀口和彦先生による過去の漢方相談・処方選定データを整備した「更年期症例」から、動悸が主訴として分類された全51件を整理しました。
体質、併発症状、漢方薬は1人に複数記録される場合があります。
体質判定で最も多く確認されました。
次に多く確認された体質です。
一緒に記録された症状で最も多い項目です。
柴胡桂枝乾姜湯が最も多く記録されました。
※1人に複数の体質が記録されるため、合計は51件を超えることがあります。
※処方件数は効果や推奨の順位ではありません。相談時の体質、体力、便通、胃腸、睡眠、持病、服薬状況などを含めた選定記録です。
月経が半年なく、婦人科で閉経相当のホルモン値と説明されていました。動悸、息切れ、体のほてりが続き、動悸について検査を受けても異常なしとされた例です。
卵巣摘出後、動悸、体のしびれ、不眠、ホットフラッシュが現れ、明け方に動悸と不安で目が覚めて熟睡できない状態でした。
更年期のホットフラッシュと動悸があり、夏場は特に汗が多く、軟便も続いていました。上半身の熱と水分代謝の偏りを確認した例です。
生理前後の長い期間、目の奥の痛み、頭重、めまい、吐き気、胃もたれ、肩こり、動悸が重なっていました。
朝から午前中、特に通勤中に動悸とふわふわするめまいが出やすく、頭痛、肩こり、吐き気、胃もたれも生理前後に悪化していました。
※この集計と相談例は、堀口和彦先生による「うち漢方/光和堂薬局」時代の漢方相談・処方選定データを、個人が特定されない形で公開用に匿名化・要約したものです。KanpoNow薬局の販売実績・改善実績を示すものではなく、特定の漢方薬の効果を保証するものでもありません。
医療機関で重大な病気がないことを確認したあと、動悸と一緒に出る症状から体質を考えます。
不安、不眠、ほてり、冷え、疲労、めまい、胃腸、月経まで含めて、自分の体質傾向を確認してください。
KanpoNowのAI漢方診断は、堀口先生の漢方相談・処方選定の考え方をもとに、症状と複数の体質傾向から漢方薬の候補を提案します。
AI漢方診断をする(無料)本ページは一般的な健康情報と、匿名化された過去の相談データをもとに漢方の考え方を紹介するものであり、診断・治療・服薬指示を目的とするものではありません。動悸は心疾患、不整脈、呼吸器疾患、甲状腺疾患、貧血、薬剤などでも起こります。持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方、ホルモン補充療法や心臓・血圧の薬などを使用中の方は、自己判断で薬を中止・変更せず、医師または薬剤師へ相談してください。胸痛、失神、強い息苦しさ、冷や汗、著しい頻脈などがある場合は、速やかに医療機関へ相談してください。
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。