桂枝茯苓丸料とは?月経痛・更年期・肩こり・にきびに使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月7日 監修:堀口和彦
桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがんりょう)

桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがんりょう)は、血の巡りが滞る「瘀血(おけつ)」に用いられる代表的な漢方薬です。比較的体力があり、のぼせて足が冷える、下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、月経痛、更年期障害、しみ、にきびなどがある方で候補になります。KanpoNowでは、この処方を「骨盤内や末梢の血の滞りを動かし、冷えのぼせ・月経トラブル・肩こり・皮膚のくすみを整える漢方薬」として整理します。

桂枝茯苓丸料はこんな人に向いています
  • 生理痛が強く、経血にレバー状の塊が混じる
  • 下腹部が張る、押すと痛い、刺すような固定痛がある
  • 顔はのぼせるのに、足腰や下半身は冷えやすい
  • 肩こり、頭重、めまい、冷えのぼせが更年期に目立つ
  • 生理前に顎ニキビ、赤黒いニキビ跡、しみ、くすみが悪化しやすい

反対に、貧血傾向が強く、色白で華奢、冷えとむくみが中心の方、また生理後半から終了後にシクシク痛む血虚タイプでは、当帰芍薬散などを比較します。妊娠中または妊娠の可能性がある方は自己判断で使用しないでください。

桂枝茯苓丸料とは

桂枝茯苓丸料は、桂皮芍薬桃仁茯苓牡丹皮から構成される漢方薬です。

5味だけのシンプルな構成ですが、血を動かす桃仁・牡丹皮、巡りを温める桂皮、痛みや緊張をゆるめる芍薬、水分の偏りを整える茯苓が組み合わなり、血瘀による月経痛、冷えのぼせ、肩こり、皮膚のくすみを幅広く見ます。

ポイント:桂枝茯苓丸料は「血の滞り」を動かす処方です。体に必要な血を補う処方ではなく、滞って痛みやのぼせ、肩こり、皮膚トラブルを起こしている血の巡りを整える処方です。

古典における位置づけ

桂枝茯苓丸料の出典は『金匱要略』です。古典では婦人科領域の瘀血に関連する処方として位置づけられ、月経や妊娠に関わる血の滞り、下腹部の抵抗や痛み、上衝、心下悸などを手がかりに用いられてきました。

現代では、月経不順、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打撲、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきびなどに応用されます。共通する背景は、血の巡りが悪く、下腹部や末梢、皮膚、首肩などに停滞が起こっていることです。

漢方では、血が滞ると「通じなければ痛む」という考え方で、刺すような痛み、固定痛、しこり、経血の塊、くすみ、赤黒いにきび跡などが出やすくなります。桂枝茯苓丸料は、その血瘀を動かす代表処方です。

桂枝茯苓丸料らしさ:下腹部が張る。経血に塊がある。肩こりが頑固。顔はのぼせるのに足は冷える。にきび跡やしみが残りやすい。この「血瘀+冷えのぼせ」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、桂枝茯苓丸料が合う状態を、血瘀に気逆や水分の偏りが重なった状態として考えます。血が骨盤内や末梢で滞ると、痛み、冷え、のぼせ、肩こり、皮膚トラブルが連動して出やすくなります。

  • 血瘀:血の巡りが悪く、刺すような痛み、固定痛、しこり、経血の塊、くすみが出やすい状態
  • 気逆:気や熱が上へ突き上げ、のぼせ、頭重、めまい、顔の赤みとして現れる状態
  • 上熱下寒:顔や頭は熱いのに、足腰や下腹部は冷える状態
  • 末梢循環の滞り:しもやけ、打撲後のうっ血、肩こり、皮膚の色素沈着として現れやすい状態

生理前半の強い痛みや、レバー状の経血は、不要になった血を押し出そうとする過程で、骨盤内の巡りが詰まっているサインとして見ます。肩こりや頭重は、血の滞りが上半身の筋肉や頭部の巡りを妨げている状態です。

桂枝茯苓丸料は、桃仁・牡丹皮で滞った血を動かし、桂皮で温めながら巡りを後押しし、茯苓で水分の偏りを整え、芍薬で痛みや緊張をやわらげます。補うよりも「動かして通す」方向の処方です。

注意:妊娠中または妊娠の可能性がある方、極端に体力が落ちている方、出血傾向がある方、強い貧血がある方は自己判断で使用しないでください。桃仁・牡丹皮を含むため、妊娠関連では特に注意が必要です。

構成生薬と配合バランス

桂枝茯苓丸料は、5味がほぼ等量で組まれる無駄の少ない処方です。桃仁・牡丹皮で血を動かし、桂皮で巡りを温め、茯苓で水の偏りを整え、芍薬で痛みをやわらげます。

桂枝茯苓丸料の構成を、桂皮20%、芍薬20%、桃仁20%、茯苓20%、牡丹皮20%として合計100%で示した構成イメージです。 桂枝 茯苓丸
桂皮20%
芍薬20%
桃仁20%
茯苓20%
牡丹皮20%
桂枝茯苓丸料の内部構造
血を動かし、のぼせを鎮め、冷えと皮膚のくすみを血流から整える構成です。
駆瘀血の軸 桃仁・牡丹皮 滞った血を動かし、塊、固定痛、しこり、赤黒いくすみをほどく中心です。
巡りと上衝の軸 桂皮 血の巡りを温めて後押しし、上へ突き上げるのぼせや冷えのぼせを整えます。
水と痛みの軸 茯苓・芍薬 水分の偏りを整え、下腹部痛や筋肉の緊張をやわらげます。

※円グラフは、桂枝茯苓丸料の構成理解用イメージです。5味を各20%として合計100%で表示しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:桂枝茯苓丸料は、血を補う処方ではなく、滞った血を動かす処方です。月経痛、冷えのぼせ、肩こり、しみ・にきびなどが「血の滞り」でつながっている方に向きます。

桂枝茯苓丸料の味・香り・服用時の体感

桂枝茯苓丸料は、桂皮の甘くスパイシーな香りに、牡丹皮のほのかな苦み、桃仁の油分を含んだコクが重なります。強い甘みや発汗感よりも、巡りを動かすようなやや渋く落ち着いた印象があります。

苦み・甘み・油っぽさ

桂皮の甘み、牡丹皮の苦み、桃仁の油っぽいコクが混ざります。

桂皮の香り

シナモン様の甘くスパイシーな香りが立ち、巡りを温める処方らしさがあります。

褐色〜暗褐色

粉末・顆粒は褐色から暗褐色。血を動かす処方らしい、少し濃い色調です。

じわっと巡る

合う方では、上半身ののぼせが抜け、下半身の冷えや下腹部の重さが少しずつほどける感覚があります。

体験の流れ:桂皮の香りが立つ → 牡丹皮のほのかな苦みが残る → 体の巡りがじわっと動く → 顔ののぼせや肩の張りが軽くなる → 継続すると下腹部の重痛さ、経血の塊、皮膚のくすみが少しずつ整う感覚。短期の痛み止めというより、瘀血体質を動かす処方です。

症状別の向き・不向き

桂枝茯苓丸料は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、血瘀のサインがあるかです。経血の塊、固定痛、下腹部の圧痛、冷えのぼせ、肩こり、しみ・にきび跡が重要です。

生理前半の強い生理痛・経血の塊

生理1〜2日目に痛みが強く、レバー状の塊が混じるタイプで候補になります。骨盤内の血瘀を動かして痛みをほどく方向です。

判断ポイント:塊・刺す痛み・下腹部の圧痛。

のぼせ・肩こりが強い更年期障害

顔がのぼせ、足が冷え、肩こりや頭重が強い更年期症状で候補になります。精神症状より、血流障害による肉体症状が目立つタイプです。

判断ポイント:冷えのぼせ・肩こり・頭重。

生理前に悪化する顎ニキビ・赤黒いニキビ跡

ホルモン周期と連動し、顎まわりに赤く残るにきびや、跡・しみ・くすみが目立つ場合に比較します。皮膚の血瘀を見ます。

判断ポイント:生理前悪化・赤黒い跡・くすみ。

打撲後のうっ血・しもやけ

局所の血行不良やうっ血が残り、色が悪い、冷えると悪化するような状態で比較します。巡りを動かす処方です。

判断ポイント:うっ血・暗い色・冷えで悪化。

体力が落ちて胃腸が弱い方

桂枝茯苓丸料は補う処方ではないため、極端な虚弱、胃腸虚弱、貧血傾向が強い方では慎重に考えます。

判断ポイント:補うべき血虚か、動かすべき血瘀か。
×

生理後半〜終了後にシクシク痛む血虚タイプ

経血量が少なく、顔色が白く、疲れやすく、生理後半から終了後にシクシク痛む場合は血虚を考えます。当帰芍薬散など補血系を比較します。

判断ポイント:血を失った後に痛むなら不向き。

体質別の向き・不向き

桂枝茯苓丸料は、血瘀を中心に、気逆・冷えのぼせ・軽い水分の偏りがある方に向きます。実証〜中間証で、血を動かす力を受け止められる体質かどうかを見ます。

血瘀+実証〜中間証

体力が比較的あり、顔色が赤い、またはどす黒い、下腹部痛、肩こり、経血の塊、冷えのぼせがあるタイプです。

判断ポイント:滞った血を動かす余力がある。

気逆・上熱下寒

上半身はのぼせ、下半身は冷えるタイプです。桂皮と茯苓が、巡りと水分の偏りを整えながら上衝を鎮めます。

判断ポイント:顔は熱いのに足は冷える。

軽い湿痰・水分の偏り

茯苓を含むため、軽いむくみや水分の偏りが血瘀に重なる場合も比較します。ただし、水太り主役なら別処方も見ます。

判断ポイント:血瘀に水滞が少し重なる。

便秘・熱が強い血瘀

下腹部の張り、便秘、強いのぼせ、イライラが目立つ場合は、桃核承気湯や通導散など、下へ通す処方も比較します。

判断ポイント:便秘と熱が強いか。
×

気虚・気血両虚

極端に疲れやすい、食が細い、顔色が白い、めまい、貧血傾向が強い方には向きにくい処方です。補う処方を優先します。

判断ポイント:動かす前に補う必要があるか。

効能・効果

桂枝茯苓丸料の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、KanpoNowでは代表的に次のように整理しています。

比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

桂枝茯苓丸料は、血を巡らせる処方です。とくに妊娠中または妊娠の可能性がある方、出血傾向のある方、著しく体力が衰えている方では注意が必要です。生理痛や更年期症状で長期的に使われることもありますが、漫然と続けず、症状の変化を確認します。

妊娠中・妊娠の可能性がある方

桂枝茯苓丸料には桃仁と牡丹皮が含まれます。妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいとされます。妊活中、妊娠の可能性が少しでもある場合、不正出血がある場合は自己判断で使用しないでください。

婦人科三大処方との使い分け

婦人科系の相談では、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸料、加味逍遙散の使い分けが重要です。色白で華奢、冷えとむくみ、貧血傾向があれば当帰芍薬散。体力中等度以上で、血瘀、のぼせ、足冷え、肩こり、月経痛があれば桂枝茯苓丸料。イライラや不安、症状が移り変わる気滞・虚熱が中心なら加味逍遙散を比較します。

甘草を含まないメリット

桂枝茯苓丸料には甘草が含まれません。そのため、甘草による偽アルドステロン症を主因とするむくみ、血圧上昇、低カリウム血症のリスクは、甘草含有処方より考えにくい点があります。ただし、これは副作用がないという意味ではありません。体質不適合、胃腸症状、出血関連の注意は必要です。

血を巡らせる生活養生

血瘀は、座りっぱなし、冷え、運動不足、睡眠不足、ストレスで悪化しやすい体質です。1時間に1回は立って歩く、ふくらはぎを動かす、湯船に浸かる、下腹部と足首を冷やさない、青魚・海藻・酢の物を取り入れるなど、血を巡らせる養生が大切です。

相談・受診を優先したいサイン

  • 妊娠中、妊娠の可能性がある、妊活中である
  • 不正出血、閉経後出血、強い月経痛、出血量の急な増加がある
  • 下腹部痛が強い、発熱を伴う、急に悪化する
  • 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣疾患などを指摘されている
  • 貧血、強いめまい、動悸、息切れがある
  • 服用後に胃部不快感、腹痛、下痢、発疹などが出る
すぐ相談:強い下腹部痛、不正出血、閉経後出血、妊娠の可能性、発熱を伴う腹痛、急に悪化する痛みがある場合は、漢方だけで様子を見ず婦人科など医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

桂枝茯苓丸料が気になる方は、生理不順、更年期、肩こり、肌荒れ、腹痛との関係も確認すると理解が深まります。

婦人科領域でよく比較される処方でも、血を補うのか、血を動かすのか、気を巡らせるのか、便で下へ通すのかで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 桂枝茯苓丸料はどんな生理痛に向いていますか?

生理1〜2日目に痛みが強く、経血にレバー状の塊が混じる、下腹部が張る、押すと痛いような血瘀タイプの生理痛に向きます。生理後半から終了後にシクシク痛む血虚タイプでは、当帰芍薬散などを比較します。

Q. 当帰芍薬散との違いは何ですか?

当帰芍薬散は、血を補いながら水をさばく処方で、色白・華奢・冷え・むくみ・貧血傾向に向きます。桂枝茯苓丸料は、血の滞りを動かす処方で、経血の塊、冷えのぼせ、肩こり、しみ・にきび跡などに向きます。

Q. 加味逍遙散との違いは何ですか?

加味逍遙散は、イライラ、不安、不眠、症状が移り変わる更年期やPMSで比較します。桂枝茯苓丸料は、精神症状よりも、のぼせ、肩こり、頭重、下腹部痛、経血の塊など、血瘀の肉体症状が目立つ場合に考えます。

Q. 男性のにきびや赤ら顔にも使われますか?

桂枝茯苓丸料は婦人科だけの処方ではありません。血瘀による赤ら顔、にきび、にきび跡、肩こり、のぼせがある男性にも応用されることがあります。ただし体質確認が必要です。

Q. 妊娠中に飲んでもよいですか?

妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいとされています。桃仁・牡丹皮を含むため、妊娠中、妊活中、妊娠の可能性がある方は自己判断で服用しないでください。

参考・出典

桂枝茯苓丸料が合うか迷った方へ

桂枝茯苓丸料は、月経痛、更年期障害、肩こり、しみ、にきびなどに使われる漢方薬ですが、すべての方に合うわけではありません。血瘀が主役なのか、血虚が主役なのか、気滞が主役なのか、便秘や熱が強いのか、妊娠の可能性がないかまで含めて判断することが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。妊娠中・妊娠の可能性がある方、不正出血、閉経後出血、強い下腹部痛、発熱、急に悪化する痛み、子宮筋腫・子宮内膜症などの婦人科疾患がある方、服用中の薬がある方は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。