芍薬(しゃくやく)とは?こむら返り筋けいれん・腹痛・月経痛月経不順・冷え貧血傾向に使う生薬を体質別に解説

芍薬(しゃくやく)は、「立てば芍薬」とうたわれる美しい花で知られる、ボタン科シャクヤクの根を用いる生薬です。血を養ってうるおいを保ち、肝の高ぶりをやわらげて筋のひきつり・痛みをしずめる働き(養血斂陰・柔肝止痛・平抑肝陽)から、こむら返り・筋けいれん、腹痛、月経痛・月経不順、冷え・貧血傾向のケアに用いられてきました。芍薬甘草湯・当帰芍薬散・四物湯・桂枝湯など、非常に多くの処方に欠かせない、婦人薬・鎮痛の要薬です。KanpoNowでは、この生薬を「血を養い、筋のひきつりと痛みをやわらげる生薬」として整理します。
- 芍薬(しゃくやく)はボタン科シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根を乾燥した生薬で、養血斂陰・柔肝止痛・平抑肝陽のはたらきが知られます。こむら返り・筋けいれん、腹痛、月経痛・月経不順、冷え・貧血傾向などに配合されます
- 主成分はモノテルペン配糖体のペオニフロリン、アルビフロリン、有機酸類などです
- 漢方では、血を養ってうるおいを保ち(養血斂陰)、肝の高ぶりをやわらげて筋のひきつり・痛みをしずめ(柔肝止痛)、肝の高ぶりをおさえる(平抑肝陽)働きで用いられます
- 体質や用量により胃部不快・軟便がみられることがあり、多くの場合、甘草など他の生薬と組み合わせて用いられます
芍薬は、体質や用量により胃部不快・軟便がみられることがあります。芍薬甘草湯など甘草を含む処方は、長期・多量で偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・低カリウム血症)に注意が必要です。持病や併用薬がある方、妊娠・授乳中の方は専門家に相談してください。
芍薬とは
芍薬(しゃくやく)は、ボタン科のシャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)の根を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。中国東北部や朝鮮半島に分布する多年草で、平安時代ごろに日本へ渡来しました。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」とうたわれる美しい花で知られ、観賞用にも多くの園芸種があります。外皮を除いた「白芍(びゃくしゃく)」、外皮つきの「赤芍(せきしゃく)」があり、一般に白芍は補い、赤芍は瘀血をさばくのに優れるとされます。『神農本草経』の中品に収載された、歴史の古い重要生薬です。
漢方薬剤師の視点では、芍薬は「婦人薬・鎮痛の要薬」です。血を養ってうるおいを保ち(養血斂陰)、肝の高ぶりをやわらげて筋のひきつり・痛みをしずめ(柔肝止痛)、肝の高ぶりをおさえます(平抑肝陽)。含まれるペオニフロリンには、筋肉や平滑筋の過度な興奮を抑える鎮痙・鎮痛作用が報告されています。こむら返り・筋けいれん、腹痛・胃けいれん、月経痛・月経不順、冷え・貧血傾向に用いられます。甘草と組む芍薬甘草湯、当帰芍薬散・四物湯・桂枝湯・葛根湯・小建中湯など、非常に多くの処方の中心となります。
基原・成分データ
芍薬の基本データを整理します。ペオニフロリンを含むこと、養血・柔肝止痛の生薬であることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。芍薬は、苦く酸っぱく、わずかに冷やす微寒で、肝・脾に働きます。
「酸」は引きしめうるおいを保つ味、「苦」はさばく味とされます。血を養い、うるおいを保ち、筋のひきつりをゆるめる働きと結びつきます。
「微寒(涼に近い)」はおだやかに冷やす性質で、肝の高ぶり・熱をやわらげる方向に働きます。
肝を養って血を補い、肝の高ぶりをやわらげて筋のひきつり・痛みをしずめ、脾を通じて腹痛をやわらげる方向に働きます。こむら返り・腹痛・月経痛に関わります。
漢方的な働きの軸
芍薬の働きは、大きく三つの軸で整理できます。血を養う軸、筋のひきつりと痛みをしずめる軸、肝の高ぶりをおさえる軸が重なり、血虚・筋けいれん・肝の高ぶりを整えます。
伝統的な使われ方
芍薬は古くから、養血斂陰・柔肝止痛・平抑肝陽を目的に用いられてきました。血虚による冷え・貧血傾向・月経不順、筋のひきつり(攣急)によるこむら返り・筋けいれん、腹痛・胃けいれん・下痢、月経痛、肝の高ぶりによるイライラ・のぼせなどのケアに配合された歴史があります。酸味と甘味を合わせて体のうるおい(陰)を増やす「酸甘化陰(さんかんかいん)」の考えから、甘草と組んで筋肉に栄養とうるおいを与え、急な収縮(けいれん)をしずめます。
甘草と組み合わせて、こむら返り・筋けいれん・急な痛みをしずめる処方(芍薬甘草湯)、当帰・川芎・白朮・茯苓・沢瀉と組み合わせて、冷え・貧血傾向・月経不順・むくみを整える処方(当帰芍薬散)、桂枝湯に芍薬を増やして腹痛・下痢・腹部膨満を整える処方(桂枝加芍薬湯)、さらに大黄を加えて腹痛・便秘を整える処方(桂枝加芍薬大黄湯)、膠飴などと組み合わせて虚弱・腹痛を整える処方(小建中湯)に配合されます。このほか四物湯・桂枝湯・葛根湯・十全大補湯・温清飲・加味逍遙散など、非常に多くの処方の中心となります。
形状・味・使われ方の体感
芍薬は、見た目・香り・味に特徴があります。太い根が生薬になります。
白い円柱状の根
外皮を除いた、白色〜淡紅白色の円柱状の根(白芍)。断面が白色で内部が充実したものが良品とされます。外皮つきのものは赤芍と呼ばれます。
特有の香り
特有の香りがあります。ガロタンニンなどを含むため変色しやすく、乾燥・調製時には注意を要します。
わずかな苦みと渋み
味はわずかに苦く、酸味・渋みがあります。この酸味と苦みが、血を養いうるおいを保ち、筋のひきつりをゆるめる働きの中心です。
体質別の向き・不向き
芍薬は血を養い、筋のひきつりをゆるめる生薬です。血虚・筋けいれん・肝の高ぶりがあるか、逆に冷えて下しやすくないかを見極めることが大切です。
こむら返り・筋けいれん、腹痛
筋のひきつりによるこむら返り・筋けいれん、腹痛・胃けいれんが出るタイプに向きます。芍薬の中心的な使い道で、芍薬甘草湯の主薬です。
判断ポイント:足がつる・筋けいれん・腹痛。月経痛・月経不順、冷え・貧血傾向
血虚による月経痛・月経不順、冷え・貧血傾向のケアに用いられてきました。婦人科系の不調や血を養いたいときに候補になります。
判断ポイント:月経痛・月経不順、冷え・貧血。胃腸が弱く下しやすい方
体質や用量により胃部不快・軟便がみられることがあります。冷えて下しやすい方は、用量や配合に注意します。多くの場合、他の生薬と組み合わせて用いられます。
判断ポイント:胃部不快・軟便が出れば調整。甘草含有処方の長期・多量使用
芍薬甘草湯など甘草を含む処方は、長期・多量で偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・低カリウム血症)に注意が必要です。むくみ・だるさ・脱力などが出たら中止し、専門家に相談してください。
判断ポイント:甘草含有処方の連用はむくみ・脱力に注意。安全性と受診の目安
芍薬は通常用量での安全性は一般に良好ですが、体質や用量により胃部不快・軟便がみられることがあります。芍薬甘草湯など甘草を含む処方は、長期・多量で偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・低カリウム血症)に注意が必要です。むくみ・だるさ・手足の脱力・こわばりなどが出たら、中止して医療機関へご相談ください。痛み・けいれんが強く続く、出血が増える、消化器症状が長引くなどの場合や、抗凝固薬を併用中の方、妊娠・授乳中の方は、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:むくみ・血圧上昇・手足の脱力やこわばり(偽アルドステロン症の疑い)、痛み・けいれんが強く続く、出血が増える
- 服薬中:妊娠・授乳中、抗凝固薬や他の生薬成分を含む製剤を併用中の方は事前に専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
芍薬が気になる方は、しびれ(筋のひきつり)、腹痛、生理不順との関係も確認すると理解が深まります。
芍薬を含む漢方薬
芍薬は、痛み・けいれんを整える処方や、婦人科系を整える処方に配合されます。同じ芍薬を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 芍薬と牡丹皮(ぼたんぴ)の違いは?
芍薬は血を補い、筋の攣急や痛みをやわらげる目的で使われます。牡丹皮は瘀血に対する活血の性質が強いとされ、体質や症状に応じて使い分けます。「立てば芍薬、座れば牡丹」とうたわれるように、花もよく似ています。
Q. 白芍(びゃくしゃく)と赤芍(せきしゃく)の違いは?
白芍は外皮を除いたもので、血を補いうるおいを保つ(補)働きに優れ、赤芍は外皮つきで、瘀血をさばく(散)働きに優れるとされます。日本の漢方処方では、一般に白芍が用いられます。
Q. 性味・帰経は?
性味は苦・酸/微寒、帰経は肝・脾とされます。血を養ってうるおいを保ち、肝の高ぶりをやわらげて筋のひきつり・痛みをしずめる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
芍薬は、血を養い、筋のひきつりと痛みをやわらげる生薬ですが、こむら返りや腹痛、月経の不調の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。むくみ・血圧上昇・手足の脱力やこわばり(偽アルドステロン症の疑い)、痛み・けいれんが強く続く、出血が増えるなどの場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。芍薬甘草湯など甘草を含む処方の長期・多量使用にはご注意ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬(抗凝固薬など)を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。