生薬とは?漢方薬をつくる自然由来の素材と働きをわかりやすく解説

監修:堀口和彦|更新日:2026-06-25

生薬とは、漢方薬をつくる自然由来の素材です

生薬(しょうやく)とは、植物・動物・鉱物などを原料にし、乾燥・切断・蒸す・修治するなどの加工を経て、薬として使える形に整えたものです。漢方薬は、多くの場合、複数の生薬を組み合わせてつくられます。

たとえば、風邪の初期に知られる葛根湯には、葛根(かっこん)麻黄(まおう)桂皮(けいひ)芍薬(しゃくやく)甘草(かんぞう)生姜(しょうきょう)大棗(たいそう)などが組み合わされています。

KanpoNowでは、漢方薬を「商品名」だけで見るのではなく、どの生薬が、体のどこへ、どのような方向で働きかけるのかをわかりやすく整理していきます。

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生薬は何からできているのか

生薬の多くは植物由来ですが、すべてが植物とは限りません。動物由来、鉱物由来の生薬もあり、漢方ではそれぞれの性質を活かして方剤を組み立てます。

植物由来の生薬

根、根茎、葉、花、果実、種子、樹皮など、植物のさまざまな部位を使います。

動物由来の生薬

動物の角、殻、胆石などを用いるものがあります。補う、鎮める、意識をはっきりさせるなど、特徴的な働きを持つものがあります。

鉱物由来の生薬

自然界の鉱物を利用する生薬もあります。重い性質で気を鎮めたり、強い熱を冷ましたりする目的で使われます。

食材に近い生薬

生薬の中には、日常の食材としてもなじみ深いものがあります。漢方では「医食同源」の考え方があり、食と薬の境界は連続的に捉えられます。

生薬の性質を決める「四気」と「五味」

東洋医学では、生薬の働きを成分名だけで見るのではなく、「体を温めるのか、冷やすのか」「上に向かうのか、下に降ろすのか」「補うのか、巡らせるのか」といったベクトルで捉えます。その基本になるのが、四気と五味です。

四気:温めるか、冷やすか

四気とは、生薬が体に与える寒熱の性質です。寒・涼・温・熱に分け、どちらにも大きく偏らないものを平性と呼びます。

五味:味が持つ働きの方向

酸・苦・甘・辛・鹹という味は、単なる味覚ではなく、体内での働きの方向を示します。

同じ「胃の不調」でも、冷えて痛む場合、熱を持って痛む場合、気が詰まって張る場合、水が停滞してむかつく場合では、選ぶ生薬も漢方薬も変わります。KanpoNowでは、この違いを「気・血・水・精」と「寒熱」から整理します。

気・血・水・精で見る生薬の働き

漢方では、人の体を「気・血・水・精」のバランスで見ます。生薬は、このどこに偏りがあるのかを見極め、補う、巡らせる、冷ます、温める、さばく、引き締めるといった役割を担います。

気を補う・動かす生薬

気は、体を動かすエネルギーです。気が不足すれば疲れやすくなり、気が滞れば張り・つかえ・イライラ・胃もたれが出やすくなります。

血を養う・巡らせる生薬

血は、体を養い、潤し、温めるものです。血が不足すると乾燥・冷え・しびれ・疲れが出やすく、血が滞ると痛みやしこりにつながります。

水をさばく・潤す生薬

水は、体のうるおいと水分代謝です。余分な水が停滞すると、むくみ、めまい、下痢、胃のちゃぽちゃぽ感が出ます。一方で、潤いが不足すると、乾燥や空咳が出やすくなります。

精を支える生薬

精は、生命力・成長・老化・生殖・骨や髪などと深く関係する概念です。加齢や消耗が強いときは、腎精を補う視点が重要になります。

熱を冷ます生薬と、冷えを温める生薬

漢方で特に大切なのが、「熱」と「冷え」の見極めです。熱がある人に温める生薬ばかり使えば悪化し、冷えている人に冷ます生薬ばかり使えば、さらに体調を崩すことがあります。

熱を冷ます生薬

炎症、ほてり、のぼせ、口の渇き、いらだち、赤みなどが目立つときに用いられることがあります。

冷えを温める生薬

冷え、痛み、下痢、冷たい飲食で悪化する胃腸症状、温めると楽になる症状などに使われることがあります。

生薬は、組み合わせてはじめて「漢方薬」になります

生薬は単独でも個性を持っていますが、漢方薬の本質は「組み合わせ」にあります。複数の生薬が役割を分担し、ひとつの方剤として働きます。

補う

不足した気・血・水・精を補います。例:人参、当帰、地黄、山薬。

巡らせる

滞った気や血を動かします。例:柴胡、香附子、川芎、桃仁。

さばく

余分な水や湿を外へ出します。例:茯苓、沢瀉、猪苓、防己。

調和する

強い生薬の偏りをやわらげ、全体をまとめます。例:甘草、大棗、生姜。

たとえば、六君子湯では、人参や白朮が胃腸の力を補い、半夏や陳皮が吐き気やつかえを整えます。安中散では、良姜・茴香・延胡索・牡蛎などが組み合わされ、胃の冷え、痛み、胸やけ、緊張を整える構成になっています。

KanpoNowでは、漢方薬を「この症状にはこの薬」と単純化せず、構成生薬から見た働き、体質との相性、気血水精のバランスまで含めて説明します。

生薬ページの読み方

KanpoNowの生薬ページでは、各生薬を次のような視点で整理しています。

  • どの植物・動物・鉱物に由来するのか
  • 体を温めるのか、冷やすのか
  • 気・血・水・精のどこに働きやすいのか
  • どの漢方薬に含まれるのか
  • どんな体質・症状の人に向きやすいのか
  • 注意すべき体質や副作用はあるのか

生薬の知識が増えると、漢方薬の見方が大きく変わります。同じ「胃薬」でも、冷えを温める処方、気を巡らせる処方、胃の水をさばく処方、胃陰を潤す処方では、構成生薬がまったく違うからです。

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生薬は自然由来でも、自己判断には注意が必要です

生薬は自然由来の素材ですが、「自然由来だから安全」「長く飲めば飲むほどよい」とは限りません。体質に合わない生薬を使うと、冷え、のぼせ、胃腸障害、むくみ、動悸、下痢、便秘などが悪化することがあります。

たとえば、甘草を含む漢方薬を複数併用すると、摂取量が重なりやすくなります。大黄を含む処方では下痢や腹痛に注意が必要です。附子を含む処方では、しびれ、動悸、のぼせなどに注意しながら使う必要があります。

妊娠中、授乳中、持病がある方、複数の薬を飲んでいる方、高齢の方、小児に漢方薬を使う場合は、薬剤師・登録販売者・医師に相談してください。

よくある質問

Q. 生薬と漢方薬は同じですか?

A. 同じではありません。生薬は漢方薬を構成する原料です。漢方薬は、複数の生薬を組み合わせた方剤として作られます。たとえば葛根湯は、葛根、麻黄、桂皮、芍薬、甘草、生姜、大棗などの生薬で構成されます。

Q. 生薬はすべて植物ですか?

A. いいえ。多くは植物由来ですが、動物由来や鉱物由来の生薬もあります。牡蛎、龍骨、鹿茸、牛黄、石膏、芒硝などがその例です。

Q. 生薬は長く飲んでも大丈夫ですか?

A. 体質や処方によります。補う処方でも、体に合わない場合や、含まれる生薬が重複する場合には注意が必要です。長期服用する場合は、症状の変化や副作用の有無を確認しながら、薬剤師や医師に相談してください。

Q. 食材と生薬の違いは何ですか?

A. 生姜、山椒、大棗、薏苡仁など、食材に近い生薬もあります。ただし、医薬品として使う場合は、品質、用量、組み合わせ、体質との相性が重要になります。

Q. 生薬から漢方薬を選ぶことはできますか?

A. ある程度の参考にはなります。ただし、漢方薬は単一の生薬ではなく、複数の生薬の組み合わせで働きます。KanpoNowでは、生薬の働きだけでなく、体質、症状、気血水精のバランスから漢方薬を考えることを大切にしています。

*参考・出典

  1. 厚生労働省「日本薬局方」
  2. ツムラ「漢方Q&A 生薬とは?」
  3. 公益社団法人東京生薬協会
  4. 厚生労働省「一般用漢方製剤製造販売承認基準」
  5. 富山大学 和漢医薬学総合研究所「和漢薬データベースポータル」

監修:堀口和彦(漢方薬剤師)

KanpoNowでは、漢方薬を「症状名だけで選ぶ薬」としてではなく、体質・気血水精・構成生薬の働きから理解できるように整理しています。生薬ページでは、ひとつひとつの素材の由来、働き、含まれる漢方薬、安全性をわかりやすく解説していきます。