生姜(しょうきょう)とは?かぜの初期・胃の冷えの吐き気嘔吐・冷えの咳に使うショウガの生薬を体質別に解説

生姜(しょうきょう)は、私たちの食卓でおなじみのショウガの根茎を用いる、漢方の基本生薬のひとつです。体表の寒をさばいて発汗を助け、胃を温めて吐き気を止め、肺を温めて咳・痰をやわらげる働き(散寒解表・温中止嘔・温肺止咳)から、かぜの初期の悪寒・発熱、胃の冷えによる吐き気・嘔吐、冷えによる咳・水っぽい痰のケアに用いられてきました。桂枝湯・葛根湯・小柴胡湯など、大棗とともに極めて多くの処方に配合される名脇役です。KanpoNowでは、この生薬を「胃腸を温め、吐き気と咳をやわらげる生薬」として整理します。
- 生姜(ショウキョウ)はショウガ科ショウガ(Zingiber officinale)の根茎を用いる生薬で、散寒解表・温中止嘔・温肺止咳のはたらきが知られます。かぜの初期、悪心・嘔吐、胃の冷え、咳などに配合されます
- 主成分はジンゲロール、ショウガオール、精油成分(ジンギベレン、β-セスキフェランドレン等)です
- 漢方では、体表の寒をさばいて発汗を助け(散寒解表)、胃を温めて吐き気を鎮め(温中止嘔)、肺を温めて咳・痰をやわらげる(温肺止咳)目的で用いられます
- 体質や用量により、胸やけ・腹部不快などが出ることがあります。妊娠中の使用は自己判断を避け、専門家に相談してください
生姜は食品・生薬として一般に安全に用いられますが、量や体質により胸やけ・腹部不快・下痢が生じることがあります。妊娠中は自己判断を避け、専門家にご相談ください。抗凝固薬などとの併用は念のため注意が必要です。
生姜とは
生姜(しょうきょう)は、ショウガ科のショウガ(Zingiber officinale Roscoe)の根茎を用いる生薬で、日本薬局方にも収載されています。食卓でおなじみのショウガと同じ植物で、薬味・毒消しとして刺身や折り詰めに欠かせません。漢方では、加工の違いで使い分け、乾燥していない生のものを「鮮姜(せんきょう)」、乾燥したものを「生姜(乾生姜)」、蒸してから乾燥したものを「乾姜(かんきょう)」と呼びます(日本薬局方のショウキョウは、中医学でいう「乾生姜」にあたります)。『神農本草経』の中品に「乾薑」として収載された、歴史の古い生薬です。
漢方薬剤師の視点では、生姜は「辛温解表薬」に分類され、幅広い働きをもつ名脇役です。体表の寒をさばいて発汗を助け(散寒解表)、胃を温めて逆上した気を降ろし吐き気を鎮め(温中止嘔)、肺を温めて咳・痰をやわらげ(温肺止咳・化痰行水)、半夏・天南星や魚蟹の毒をやわらげます(解毒)。とくに「嘔家の聖薬(吐き気の名薬)」と呼ばれ、胃が冷えて気が上逆する吐き気に、単独あるいは半夏などと用いられます。桂枝湯・葛根湯・小柴胡湯・半夏厚朴湯・六君子湯など、大棗とともに、胃腸を守り薬性を調和させる目的で、極めて多くの処方に配合されます。
基原・成分データ
生姜の基本データを整理します。ジンゲロール・ショウガオールを含むこと、辛温解表薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。生姜は、辛く、温かい性質で、肺・脾・胃に働きます。
「辛」は発散させ、めぐらせる味とされます。体表の寒をさばき、胃の逆上した気を散じて吐き気を止める働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えた体表・胃・肺をあたためて、寒をさばき、吐き気・咳をやわらげる方向に働きます。
肺を温めて咳・痰をやわらげ、脾・胃を温めて吐き気・食欲不振をやわらげる方向に働きます。かぜの初期・吐き気・咳・胃の冷えに関わります。
漢方的な働きの軸
生姜の働きは、大きく三つの軸で整理できます。体表の寒をさばく軸、胃を温めて吐き気を止める軸、肺を温めて咳をやわらげる軸が重なり、冷えによる不調を整えます。
伝統的な使われ方
生姜は古くから、散寒解表・温中止嘔・温肺止咳・解毒を目的に用いられてきました。かぜの初期(風寒表証)の悪寒・発熱、胃の冷えによる吐き気・嘔吐・しゃっくり・食欲不振、冷えによる咳・白く水っぽい痰・水の停滞、半夏や天南星・魚蟹の中毒などのケアに用いられてきた歴史があります。とくに吐き気を止める作用が強く、つわりや車酔い・二日酔いにも用いられます。ショウガ湯・生姜紅茶として、体を温め発汗を促す身近な使い方も親しまれています。
桂枝・芍薬・大棗・甘草とともに、かぜの初期を整える処方(桂枝湯)、葛根・麻黄などとともに、悪寒・発熱・肩こりを整える処方(葛根湯)、麻黄・細辛・半夏などとともに、鼻水・くしゃみ・咳を整える処方(小青竜湯)、半夏・厚朴・茯苓・蘇葉とともに、のどのつかえ感・不安・咳を整える処方(半夏厚朴湯)、人参・白朮・茯苓とともに、胃腸虚弱・下痢・腹痛を整える処方(人参湯・六君子湯)に配合されます。多くの処方で、大棗とペアを組み、胃腸を守り、他の生薬の働きを調和させます。
形状・味・使われ方の体感
生姜は、私たちのよく知るショウガの特徴をもちます。
手のひら状の根茎
不規則に枝分かれした、手のひら状〜塊状の根茎。淡黄褐色で、輪切りや薄切りにして用います。香りが強く、辛味のしっかりしたものが良品とされます。
爽やかな芳香
ショウガ特有の爽やかな芳香(精油)があります。この香りと、発汗・健胃・鎮吐の働きが結びつきます。
ぴりっとした辛味
味はぴりっと辛く、ジンゲロール・ショウガオールによります。この辛味が、体を温め、寒をさばき、吐き気を止める働きの中心です。加熱すると温める力が高まります。
体質別の向き・不向き
生姜は身近で使いやすい温めの生薬です。冷えによる不調があるか、逆にうるおい不足で熱をもっていないかを見極めることが大切です。
胃の冷えによる吐き気・嘔吐
胃が冷えて気が上逆し、吐き気・嘔吐・しゃっくりが出るタイプに向きます。生姜の中心的な使い道で、「嘔家の聖薬」と呼ばれます。つわり・車酔いにも。
判断ポイント:胃の冷えによる吐き気・嘔吐。かぜの初期、冷えの咳・水っぽい痰
かぜの初期の悪寒・発熱、冷えによる咳・白く水っぽい痰・食欲不振のケアに用いられてきました。体を温めたいときに候補になります。
判断ポイント:ゾクゾクするかぜ、水っぽい鼻水・痰。胃腸が敏感で胸やけしやすい方
辛味の刺激で、体質や量により胸やけ・腹部不快が出ることがあります。使いすぎると胃荒れを招くため、食後にする・減量するなどの工夫をします。
判断ポイント:胸やけ・腹部不快が出れば調整。うるおい不足で熱をもつ方・妊娠中の多用
温める性質のため、うるおい不足で熱をもつ方(陰虚・実熱)、のぼせ・ほてり・から咳の強い方には多量は向きません。妊娠中の使用は自己判断を避けます。
判断ポイント:ほてりが強い方・妊娠中は要注意。安全性と受診の目安
生姜は食品・生薬として一般に安全に用いられますが、量や体質により、胸やけ・腹部不快・下痢が生じることがあります。妊娠中は自己判断を避け、医療専門家へご相談ください。抗凝固薬などとの併用は念のため注意が必要です。強い腹痛・下痢が続く、皮疹・かゆみなどが出る場合は、摂取を中止してご相談ください。消化器疾患のある方、授乳中の方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い腹痛・下痢が続く、皮疹・かゆみなどが出るとき
- 服薬中:妊娠中・授乳中、抗凝固薬等を服用中、消化器疾患のある方は事前に専門家へ相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
生姜が気になる方は、冷え、食欲不振、咳・喘息との関係も確認すると理解が深まります。
生姜を含む漢方薬
生姜は、かぜ・吐き気・胃腸の不調を整える処方に幅広く配合されます。同じ生姜を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 乾姜(かんきょう)との違いは?
乾姜は生姜を乾燥・炮製したもので、より強く体を温める方向に用いられます。生姜は発汗解表・止嘔(吐き気止め)に優れ、乾姜は温中散寒(体の芯を温める)に優れます。用途は処方ごとに異なります。
Q. 胸やけが出ます。飲み方の工夫は?
体質や量で刺激となることがあります。食後にする、量を減らす、配合処方へ切り替えるなどの工夫が考えられます。気になる場合は、薬剤師など専門家にご相談ください。
Q. 性味・帰経は?
性味は辛/温、帰経は肺・脾・胃とされます。体表の寒をさばいて発汗を助け、胃を温めて吐き気を鎮め、肺を温めて咳・痰をやわらげる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
生姜は、胃腸を温め、吐き気と咳をやわらげる生薬ですが、冷えや吐き気、咳の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い腹痛・下痢が続く、皮疹・かゆみなどが出るときは、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。うるおい不足で熱をもつ方には多量は向きません。妊娠中は自己判断を避け、抗凝固薬などとの併用は注意が必要です。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。