六君子湯とは?胃もたれ・食欲不振・胃内停水・胃腸虚弱に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月14日 監修:堀口和彦
六君子湯(りっくんしとう)

六君子湯(りっくんしとう)は、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすい方に用いられる漢方薬です。胃腸のエネルギーを補う「四君子湯」の考え方に、胃の水分停滞や吐き気をさばく半夏・陳皮を加えた構成で、食べ物から元気を作る力と、胃にたまった余分な水を動かす力を同時に支えます。KanpoNowでは、この処方を「弱った胃腸を補いながら、胃内停水と胃もたれを整える漢方薬」として整理します。

六君子湯はこんな人に向いています
  • 食欲がない、食べたい気持ちが湧かない
  • 少し食べただけで胃が張る、すぐ満腹になる
  • みぞおちがつかえる、胃が重い、胃もたれしやすい
  • 吐き気、ムカムカ、胃のチャポチャポ感がある
  • 胃腸が弱く、疲れやすく、手足が冷えやすい
  • 病後・ストレス後・加齢で食欲が落ちた

急な強い腹痛、吐血・黒色便、体重減少、飲み込みにくさ、食後の強い嘔吐、発熱、長引く食欲不振、がん治療中の食欲低下などがある場合は、漢方だけで様子を見ず医療機関に相談してください。

六君子湯とは

六君子湯は、蒼朮人参半夏茯苓大棗陳皮甘草生姜から構成される漢方薬です。

人参・蒼朮・茯苓・甘草・大棗は、弱った胃腸の力を補い、食べ物から気を作る土台を整えます。半夏・陳皮は、胃に停滞した水分や痰飲をさばき、吐き気、胃もたれ、みぞおちのつかえを軽くします。生姜は胃を温め、吐き気を和らげ、処方全体の働きを助けます。

ポイント:六君子湯は、単に胃を動かすだけの薬ではありません。胃腸のエネルギー不足で食べられず、さらに胃に余分な水がたまって重くなる「脾気虚+胃内停水」を整える処方です。

古典における位置づけ

六君子湯は、『万病回春』などに由来する、胃腸虚弱と痰飲を整える代表処方です。胃腸を補う四君子湯を土台に、半夏・陳皮を加えることで、胃に停滞した水分や痰を動かす構成になっています。

処方名の「六君子」は、胃腸を支える優れた生薬群を意味します。胃腸が弱いだけであれば四君子湯的な補気で考えますが、六君子湯では、そこに「胃の中に水がたまる」「吐き気がする」「みぞおちがつかえる」という痰飲・湿痰の要素が加わります。

現代では、胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐で比較されます。機能性ディスペプシア、慢性胃炎、ストレスや疲労による食欲不振などでも、胃腸の弱さと胃内停水がある場合に検討されます。

六君子湯らしさ:胃腸が弱い。食欲がない。少し食べると胃が張る。みぞおちがつかえる。胃がチャポチャポする。吐き気がある。疲れやすく手足が冷える。この「補気+化痰」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、六君子湯が合う状態を、脾気虚、胃気虚、湿痰、痰飲、胃内停水として考えます。胃腸の働きが弱ると、飲食物を気血に変える力が落ち、同時に水分をさばく力も弱くなります。

  • 脾気虚:胃腸のエネルギーが不足し、食欲不振、疲れやすさ、消化不良が出る状態
  • 胃内停水:胃に余分な水分が停滞し、チャポチャポ感、吐き気、胃もたれが出る状態
  • 湿痰・痰飲:処理しきれない水が停滞し、重さ、つかえ、ムカムカを起こす状態
  • 胃気上逆:胃の気が下がらず、吐き気、げっぷ、嘔吐として上に逆流する状態

胃腸が弱い方は、食べ物を消化するだけでも大きなエネルギーを使います。そこに冷たい飲み物、食べ過ぎ、ストレス、疲労が重なると、胃の中に余分な水分や未消化物が残り、みぞおちのつかえ、胃もたれ、吐き気が出やすくなります。

六君子湯は、人参・蒼朮・茯苓・甘草・大棗で胃腸の力を補い、半夏・陳皮で胃の水分停滞と気のつかえを動かし、生姜で胃を温めて吐き気を和らげます。補うだけでなく、たまった水を動かすことが、この処方の強みです。

注意:食欲不振や胃もたれは、胃炎や機能性ディスペプシアだけでなく、胃潰瘍、胃がん、胆道疾患、膵疾患、甲状腺疾患、うつ病、薬剤性などが関係することがあります。体重減少、黒色便、吐血、強い痛み、飲み込みにくさがある場合は医療機関で確認してください。

構成生薬と配合バランス

六君子湯は、蒼朮・人参・半夏・茯苓・大棗・陳皮・甘草・生姜の8生薬で構成されます。胃腸を補う四君子湯的な軸と、胃内停水や吐き気をさばく二陳湯的な軸が組み合わされています。

六君子湯の構成イメージを示す円グラフです。 六君子湯
蒼朮20%
人参20%
半夏20%
茯苓20%
大棗10%
陳皮6%
甘草2%
生姜2%
六君子湯の内部構造
胃腸を補い、胃内停水をさばき、吐き気とみぞおちのつかえを整える構成です。
補気健脾の軸 人参・蒼朮・茯苓・甘草・大棗 弱った胃腸を支え、食べ物から気を作る土台を整えます。
理気化痰の軸 半夏・陳皮 胃に停滞した水分や痰飲を動かし、吐き気、胃もたれ、みぞおちのつかえを軽くします。
温胃調和の軸 生姜・大棗・甘草 胃を温め、胃気の上逆を鎮め、処方全体をやさしく調和します。

※円グラフは、蒼朮・人参・半夏・茯苓・大棗・陳皮・甘草・生姜の配合を、見やすく整数化した構成イメージです。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:六君子湯は、弱った胃腸を補いながら、胃にたまった余分な水をさばき、食欲不振・胃もたれ・吐き気を整える処方です。

六君子湯の味・香り・服用時の体感

六君子湯は、人参・甘草・大棗の甘み、陳皮の柑橘系の香り、半夏のかすかなえぐみ、生姜の温かみが混ざった味です。強い苦味よりも、胃腸を支える甘みと、陳皮のさわやかさが目立ち、比較的飲みやすい印象の処方です。

甘み・柑橘感・わずかな苦味

人参・甘草・大棗の甘みに、陳皮の柑橘風味、半夏のえぐみが少し重なります。

陳皮のさわやかな香り

陳皮の柑橘系の香りに、人参・生姜・大棗の温かみが加わります。

淡褐色〜黄褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では淡褐色から黄褐色に見えます。

胃が動き出す感覚

合う方では、胃のチャポチャポ感やムカムカが軽くなり、少しずつ食欲が戻る感覚があります。

体験の流れ:甘みと陳皮の香りを感じる → 胃がじんわり温まる → みぞおちのつつかえや水っぽい重さが軽くなる → 少し食べられそうな感覚が戻る。六君子湯は、胃腸を補いながら水の停滞を動かす処方です。

症状別の向き・不向き

六君子湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、胃腸虚弱、食欲不振、みぞおちのつかえ、胃内停水、吐き気、疲れやすさです。

食欲不振・胃もたれ・胃腸虚弱

胃腸が弱く、食べる気が起きない、食べるとすぐ重くなるタイプに向きます。

判断ポイント:胃腸の気が足りない。

胃のチャポチャポ感・吐き気

胃に水が停滞し、ムカムカ、吐き気、みぞおちのつかえが出る場合に比較します。

判断ポイント:胃内停水と痰飲。

少し食べると胃が張る・早期満腹感

胃の動きが鈍く、少量で満腹になり、食後に苦しくなる場合に比較します。

判断ポイント:胃排出と胃の受け入れ。

心身の疲れからくる食欲不振

ストレス、病後、加齢などで胃腸の力が落ち、食欲が戻りにくい場合に比較します。

判断ポイント:補って食べる力を戻す。
×

全身倦怠感・下垂感が主症状

胃の症状より、全身のだるさ、手足のだるさ、食後に横になりたい、内臓下垂感が中心なら補中益気湯を比較します。

判断ポイント:胃か、全身の気虚か。
×

食べ過ぎ・飲み過ぎによる胃もたれ

体力があり、食滞で胃が重い、げっぷ、口臭、腹部膨満が中心なら平胃散を比較します。

判断ポイント:補うべきか、さばくべきか。

体質別の向き・不向き

六君子湯は、脾気虚に湿痰・胃内停水が重なった体質に向く処方です。水をさばく生薬を含むため、強い乾燥や胃陰虚が中心の方では、長期服用に注意します。

脾気虚タイプ

胃腸の力が弱く、食欲不振、疲れやすさ、消化不良、手足の冷えが出るタイプです。

判断ポイント:食べて気を作れない。

湿痰・胃内停水タイプ

胃に水分が停滞し、チャポチャポ感、吐き気、胃もたれ、みぞおちのつかえが出るタイプです。

判断ポイント:水が胃を邪魔している。

病後・ストレス後の食欲低下

病後、疲労、ストレスで胃腸の力が落ち、食べる量が戻らない場合に比較します。

判断ポイント:胃腸の回復期。

陰虚・胃陰虚タイプ

口やのどが渇く、胃が焼ける、空腹時に痛む、乾燥が強い方では、燥湿作用で合わないことがあります。

判断ポイント:水をさばいてよいか。
×

実証の食滞タイプ

食べ過ぎ・飲み過ぎが原因で、胃に未消化物が詰まっているタイプでは、補うより平胃散などでさばく方向を比較します。

判断ポイント:虚か実か。

効能・効果

KanpoNowの六君子湯ページでは、効能・効果は次のように整理されています。

体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

※医療用添付文書では同趣旨の効能・効果が確認されています。実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

六君子湯は、胃腸虚弱や食欲不振に使われる処方ですが、甘草を含むため、長期服用や他の漢方薬との併用では偽アルドステロン症に注意します。また、食欲不振や胃もたれが長引く場合には、背景疾患の確認も重要です。

甘草による偽アルドステロン症への注意

甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。

胃腸症状が悪化する場合

服用後に食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢などが出る場合があります。胃腸薬だからといって、すべての胃症状に合うわけではありません。悪化する場合は服用を中止して相談してください。

消化力に見合った食事を選ぶ

胃腸が弱い方は、体力をつけようとして焼肉、揚げ物、うなぎ、冷たい飲み物、甘いものを無理に入れると、かえって胃腸に負担がかかります。お腹が空いたと感じてから、温かいお粥、うどん、やわらかく煮た野菜などを、よく噛んで少量ずつ食べることが大切です。

食べないことも胃腸の休息になる

食欲がない時は、胃腸が休みたいサインであることがあります。「食べないと体力が落ちる」と焦って無理に食べるより、胃腸を休ませる方が回復につながる場合があります。脱水に注意しつつ、無理に量を増やさないことが重要です。

水分のがぶ飲みを避ける

六君子湯が合う方では、胃に水が停滞していることがあります。冷たい飲み物のがぶ飲みは、胃腸の働きを落とし、胃内停水を悪化させることがあります。喉が渇いた時に、常温から温かいものを、一口ずつ飲むようにします。

相談・受診を優先したいサイン

  • 体重減少、食欲不振が長く続く
  • 吐血、黒色便、血便がある
  • 強い胃痛、腹痛、背中に抜ける痛みがある
  • 飲み込みにくい、食べ物がつかえる
  • 嘔吐を繰り返す、脱水がある
  • 発熱、黄疸、強いだるさがある
  • むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下がある
  • 服用しても改善しない、又は悪化する
すぐ相談:六君子湯は胃腸虚弱に使う処方ですが、体重減少、黒色便、吐血、強い胃痛、飲み込みにくさ、嘔吐の反復がある場合は、医療機関での確認を優先してください。

症状から理解を深める

六君子湯が気になる方は、食欲不振、腹痛、下痢、冷え、むくみ、症状一覧をあわせて見ると、胃腸虚弱・胃内停水・脾気虚の全体像がつかみやすくなります。

胃腸に使う漢方薬でも、胃腸虚弱なのか、全身の気虚なのか、食べ過ぎによる食滞なのか、冷えが強いのか、ストレスによるつかえなのかで選び方が変わります。六君子湯は、胃腸虚弱と胃内停水を中心に考える処方です。

よくある質問

Q. 六君子湯はどんな胃もたれに向いていますか?

胃腸が弱く、食欲がなく、少し食べるとみぞおちがつかえ、胃に水がたまったようなチャポチャポ感や吐き気があるタイプに向きます。

Q. 機能性ディスペプシアにも使えますか?

胃もたれ、早期満腹感、食欲不振などがあり、胃腸虚弱と胃内停水がある場合に比較されます。ただし、体重減少、黒色便、強い痛み、嘔吐の反復がある場合は医療機関で確認してください。

Q. 補中益気湯との違いは何ですか?

補中益気湯は、全身の倦怠感、気力低下、内臓下垂感、食後に横になりたいような全身の気虚が中心です。六君子湯は、胃もたれ、吐き気、みぞおちのつかえ、胃内停水など胃の症状が中心です。

Q. 平胃散との違いは何ですか?

平胃散は、食べ過ぎ・飲み過ぎによる食滞、げっぷ、口臭、胃の重さに比較します。六君子湯は、胃腸が弱く、食欲が出ない虚証寄りの胃もたれに使います。

Q. 甘草の注意はありますか?

甘草を含むため、長期服用や他の漢方薬との併用では、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下に注意します。

参考・出典

六君子湯が合うか迷った方へ

六君子湯は、胃腸虚弱、食欲不振、胃もたれ、みぞおちのつかえ、吐き気に使われる漢方薬ですが、すべての胃症状に合うわけではありません。胃腸の気が足りないのか、胃に水が停滞しているのか、食べ過ぎによる食滞なのか、全身の気虚なのかを見極めることが大切です。

AI漢方診断の案内

あなたに合う漢方薬を確認しませんか?

KanpoNowでは、症状と体質をもとに、あなたに合った漢方薬の候補をAIが提案します。六君子湯が合う脾気虚・胃内停水タイプか、補中益気湯・平胃散・人参湯・半夏厚朴湯など別の処方を考えた方がよいタイプかを確認したい方は、【AI漢方診断】をご利用ください。

AI漢方診断をする

免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。体重減少、黒色便、吐血、強い胃痛、飲み込みにくさ、嘔吐の反復、発熱、黄疸、強いだるさがある場合は、医療機関にご相談ください。服用後に食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢、むくみ、血圧上昇、急な体重増加、こむら返り、筋力低下、脱力感などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、心疾患、腎疾患、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。