蘇葉(そよう)とは?胃腸型のかぜや食欲不振、魚介の食あたりに使う生薬を体質別に解説

蘇葉(そよう)は、シソ科シソまたはチリメンジソの葉と枝先を乾燥した生薬です。おだやかに発汗させ体表の風寒を散らす働き(散寒解表)や、気をめぐらせ胃腸のつかえを緩める働き(理気寛中)、魚介類の毒を解く働き(解魚蟹毒)から、胃腸症状をともなうかぜ、食欲不振や胸のつかえ、魚介類による食あたりのケアに用いられてきました。刺身に青じそが添えられるのも、この解毒の知恵に由来するといわれます。KanpoNowでは、この生薬を「かぜと気滞をやわらげ、魚介の毒を解く生薬」として整理します。
- 蘇葉(そよう)はシソ科シソ(Perilla frutescens var. crispa)またはチリメンジソの葉および枝先を乾燥した生薬で、日本薬局方に収載されています*①③
- 主成分は精油(ペリルアルデヒド、リモネン、α-ピネン等)、ロスマリン酸、赤紫色素(シソニン)などです*②③
- 漢方では、体表の風寒をおだやかに散らし(散寒解表)、気をめぐらせ胃腸のつかえを緩め(理気寛中)、魚介類の毒を解く(解魚蟹毒)働きで用いられます*①②③
- 発汗力は麻黄・桂枝ほど強くないため、風寒表証の軽症〜胃腸型の感冒に用いられます
蘇葉は香附子・陳皮・生姜など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。強い発熱や息苦しさが続く、食あたりの症状が重い場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
蘇葉とは
蘇葉(そよう)は、シソ科シソ(Perilla frutescens Britton var. acuta Kudo)またはチリメンジソ(Perilla frutescens var. crispa)の葉および枝先を乾燥させた生薬で、紫蘇葉(しそよう)とも呼ばれます。中国から伝えられ、縄文時代から栽培されてきたともいわれる日本人になじみ深い植物です。かにを食べて食あたりを起こした少年に紫蘇を与えたところ元気を取り戻した(蘇った)という逸話が「紫蘇」の名の由来とされています。
漢方薬剤師の視点では、蘇葉は「辛温解表薬(体を温めながら体表の邪を発散させる生薬)」に分類されます。辛温芳香で気分をめぐらせ、外感風寒の悪寒発熱・無汗の表証や、脾肺気滞による咳嗽・胸のつかえ・悪心嘔吐に用いられ、とくに風寒表証に胸のつかえ・嘔気をともなうときに適するとされます。あわせて解魚蟹毒の働きもあり、魚介類による中毒の腹痛・吐瀉にも応用されます。
基原・成分データ
蘇葉の基本データを整理します。シソ科シソの葉と枝先を用いること、香り成分ペリルアルデヒドを含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。蘇葉は、辛く、温める性質で、肺・脾に働きます。
「辛」は発散させめぐらせる味とされます。体表の風寒を散らし、気を下ろして胃腸のつかえを緩める働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えをともなう風寒表証や胃腸の冷えを、あたためて発散させる方向に働きます。
肺に働いて体表の風寒を散らし、脾に働いて気をめぐらせ胃腸のつかえを緩める方向に働きます。
漢方的な働きの軸
蘇葉の働きは、大きく三つの軸で整理できます。体表の風寒を散らす軸、気をめぐらせ胃腸を整える軸、魚介の毒を解く軸が重なり、胃腸型のかぜ・気滞・食あたりを整えます。
伝統的な使われ方
蘇葉は古くから、散寒解表・理気寛中・解魚蟹毒を目的に用いられてきました。外感風寒の悪寒発熱・無汗の表証、脾肺気滞による咳嗽・胸のつかえ・悪心嘔吐、とくに胃腸型の感冒(風寒表証に胸のつかえ・吐き気をともなうもの)、魚介類による中毒の腹痛・吐瀉などのケアに用いられてきた歴史があります。蘇葉の発汗作用は麻黄・桂枝に比べると弱いため、風寒表証の軽症に用いられます。
香附子・陳皮などと組み合わせて、気分のふさがり・胃腸機能の低下・かぜ気味の症状を整える処方(香蘇散)、半夏・茯苓・生姜などと組み合わせて、のどのつかえ感や不安に伴う症状を整える処方(半夏厚朴湯)に配合されます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
蘇葉は、日本人になじみ深いシソならではの特徴をもつ生薬です。
紫色の縮れた葉
開花直前の葉身で、葉が大きく肉が厚く紫色で、砕けておらず枝や柄のないものが良品とされます。両面または下面が紫色のもの(チリメンジソ)が香気が強く良品とされます。
特有の強い芳香
ペリルアルデヒドによる特有の香気があり、味は辛みが中心です。香りが強いものほど良品とされます。
気密保存が望ましい
精油の揮散を防ぐため気密保存が望ましいとされます。他の生薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。
体質別の向き・不向き
蘇葉は体表の風寒を散らしながら気をめぐらせる生薬です。胃腸型のかぜ・気滞があるか、逆に強い発汗が必要な重い表証でないかを見極めることが大切です。
胃腸型感冒・風寒表証タイプ
悪寒発熱・無汗に、胸苦しさや吐き気をともなうかぜのタイプに向きます。蘇葉の中心的な使い道です。
判断ポイント:胃腸症状をともなうかぜ。気滞・食欲不振タイプ
食欲不振、胸のつかえ、妊娠悪阻などのケアに用いられてきました。
判断ポイント:気の滞りによる胃腸症状。魚介中毒の予防・軽症タイプ
魚介類による軽い中毒の予防や補助に用いられますが、症状が重い場合は他の対応が優先されます。
判断ポイント:重症時は受診を優先。強い発汗が必要な重い表証タイプ
発汗力は麻黄・桂枝ほど強くないため、強い風寒表証には力不足で、他の生薬との組み合わせが必要です。
判断ポイント:重い表証には力不足。安全性と受診の目安
蘇葉は処方の中で用いられる辛温解表薬ですが、体質や体調によりまれに胃部不快が出ることがあります。強い発熱が続く、息苦しさが悪化する、魚介類による症状が重い(意識障害・呼吸苦・全身のじんましんなど)場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い発熱が続く、息苦しさが悪化する、魚介類による症状が重い(呼吸苦・全身のじんましん・意識障害)
- 服薬中:症状が改善しない・悪化する場合は中止し受診する。妊娠中の方、持病・他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
蘇葉が気になる方は、咳・喘息、食欲不振、花粉症との関係も確認すると理解が深まります。
蘇葉を含む漢方薬
蘇葉は、胃腸型のかぜ・気滞を整える処方に配合されます。蘇葉のかぜと気滞をやわらげる働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 蘇葉と紫蘇子(種子)の違いは?
同じシソでも、葉と枝先を用いる蘇葉は散寒解表・理気寛中に、種子を用いる紫蘇子は下気定咳・止咳消痰に優れるとされ、用いる部位によって働きが使い分けられます。
Q. なぜ刺身に青じそが添えられるのですか?
蘇葉には解魚蟹毒の働きが知られ、魚介類による食あたりの予防・解毒に用いられてきた歴史があります。刺身に青じそが添えられるのも、この昔からの知恵に由来するといわれています。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
胃腸症状をともなうかぜ、食欲不振や胸のつかえ、魚介類による食あたりのタイプに向きます。発汗力は麻黄・桂枝ほど強くないため、風寒表証の軽症に適します。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
蘇葉は、かぜと気滞をやわらげ魚介の毒を解く生薬ですが、かぜや不調の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い発熱が続く、息苦しさが悪化する場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。