山梔子(さんしし)とは?ほてりのぼせいらいら・目の充血・排尿痛・黄疸傾向・皮膚の赤みに使う生薬を体質別に解説

山梔子(さんしし)は、栗きんとんの黄色でおなじみのクチナシの果実を用いる生薬です。こもった熱を強く冷まし、血の熱をさばいて解毒し、湿熱による黄疸をさばき、いらだちをしずめる働き(清熱瀉火・涼血解毒・利湿退黄・除煩)から、ほてり・のぼせ・いらいら、目の充血、排尿痛・頻尿、黄疸傾向、皮膚の赤みのケアに用いられてきました。黄連解毒湯・加味逍遙散をはじめ、多くの清熱の処方に配合される要薬です。KanpoNowでは、この生薬を「こもった熱を冷まし、いらだちをしずめる生薬」として整理します。
- 山梔子(さんしし)はアカネ科クチナシ(Gardenia jasminoides)の成熟果実を乾燥した生薬で、清熱瀉火・涼血解毒・利湿退黄・除煩のはたらきが知られます。ほてり・口の苦み・いらいら、目の充血、排尿痛・頻尿、黄疸傾向や皮膚の赤みなどに配合されます
- 主成分はイリドイド配糖体(ゲニポシド等)、カロテノイド(クロシン類)、フラボノイドなどです
- 漢方では、こもった熱を強く冷まし(清熱瀉火)、血の熱をさばいて解毒し(涼血解毒)、湿熱による黄疸をさばき(利湿退黄)、いらだちをしずめる(除煩)働きで用いられます
- 体質により胃部不快・下痢が出ることがあり、冷えが強い虚寒体質では悪化することがあります
山梔子は冷やす性質が強く、体質により胃部不快・軟便・下痢が出ることがあります。冷えが強い虚寒体質では、症状が悪化することがあります。妊娠中は慎重に用い、持病や併用薬のある方は専門家に相談してください。
山梔子とは
山梔子(さんしし)は、アカネ科のクチナシ(Gardenia jasminoides J. Ellis)の成熟した果実を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。クチナシは初夏に白く甘い香りの花を咲かせる常緑低木で、静岡県以西・四国・九州・台湾・中国などに分布します。果実が熟しても口を開かない(裂開しない)ことから「口無し(クチナシ)」の名がついたとされます。飛鳥時代から黄色の染料として用いられ、今も栗きんとん・たくあんなどの着色料としておなじみです。『神農本草経』の中品に「梔子」として収載された、歴史の古い生薬です。
漢方薬剤師の視点では、山梔子は代表的な「清熱瀉火薬」です。上焦から下焦まで、体にこもった熱を強く冷まし、血の熱をさばいて解毒し、湿熱による黄疸をさばき、胸の中のいらだち(煩)をしずめます。ほてり・のぼせ・いらいら、目の充血、排尿痛・頻尿、黄疸傾向、皮膚の赤み・出血に用いられます。一般用漢方処方では、黄連解毒湯・加味逍遙散をはじめ22処方に配合される、清熱の要薬です。粉末を練って、打ち身・ねんざの外用にも用いられます。
基原・成分データ
山梔子の基本データを整理します。ゲニポシド・クロシンを含むこと、清熱瀉火薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。山梔子は、苦く、寒(強く冷やす)性質で、心・肺・肝・三焦に働きます。
「苦」は熱をさばいて下げ、乾かす味とされます。こもった熱を強く冷まし、いらだちをしずめる働きと結びつきます。
「寒」は強く冷やす性質で、こもった熱・ほてり・炎症を冷ます方向に働きます。冷えの強い体質には向きません。
心のいらだちをしずめ、肺・肝の熱をさばき、三焦を通じて全身の熱・湿熱をさばく方向に働きます。ほてり・いらいら・目の充血・黄疸に関わります。
漢方的な働きの軸
山梔子の働きは、大きく三つの軸で整理できます。熱を冷ます軸、血の熱をさばく軸、湿熱・いらだちをさばく軸が重なり、こもった熱による不調を整えます。
伝統的な使われ方
山梔子は古くから、清熱瀉火・涼血解毒・利湿退黄・除煩を目的に用いられてきました。熱による胸のいらだち・不眠・のぼせ、目の充血、口の苦み、湿熱による黄疸、排尿痛・頻尿・濁尿、血の熱による鼻血・血尿・皮膚の赤みなどのケアに配合された歴史があります。日本の民間療法では、消炎・止血・鎮静の目的で、粉末や黒焼き、煎じ液が用いられ、打ち身・ねんざには粉末を小麦粉や卵白で練って外用しました。
黄連・黄芩・黄柏と組み合わせて全身の熱をさばく処方(黄連解毒湯)、黄連解毒湯と四物湯を合わせて熱と血の不足をともに整える処方(温清飲)、当帰・芍薬・柴胡などと組み合わせて熱をさましのぼせ・いらだちを整える処方(加味逍遙散)、茵蔯蒿・大黄と組み合わせて湿熱の黄疸をさばく処方(茵蔯蒿湯)、帰脾湯に山梔子・柴胡を加えて熱を伴う不眠・不安を整える処方(加味帰脾湯)に配合されます。豆豉と組み合わせた梔子豉湯も、熱による胸のいらだち・不眠に用いられます。
形状・味・使われ方の体感
山梔子は、見た目・色・味に特徴があります。橙色の果実が生薬になります。
橙赤色の果実
長さ2〜3cmの卵形で、縦の稜(りょう)があり、先端にがくが残る橙赤色の果実。中に多数の種子が詰まっています。皮が薄く、色鮮やかなものが良品とされます。
鮮やかな黄色の色素
割ると、クロシンによる鮮やかな黄色の色素があふれます。この黄色は、飛鳥時代から染料・着色料として、栗きんとんやたくあんに用いられてきました。
強い苦味
弱いにおいがあり、味は強く苦いです。この苦味が、こもった熱を冷まし、いらだちをしずめる働きの中心です。生のまま、または黒く炒って(炒山梔子)用います。
体質別の向き・不向き
山梔子は強く冷やす生薬です。こもった熱・ほてり・いらだちがあるか、逆に冷えが強い虚寒体質でないかを見極めることが大切です。
ほてり・のぼせ・いらいら・不眠
熱がこもって、ほてり・のぼせ、いらいら・胸のいらだち、不眠が出るタイプに向きます。山梔子の中心的な使い道です。
判断ポイント:ほてり・いらいら・眠れない。目の充血、排尿痛、黄疸傾向、皮膚の赤み
目の充血、排尿痛・頻尿、黄疸傾向、皮膚の赤み・炎症のケアに用いられてきました。熱・湿熱・血の熱で候補になります。
判断ポイント:充血・排尿痛・黄疸・赤み。胃腸が弱く下しやすい方
強く冷やす性質のため、体質により胃部不快・軟便・下痢が出ることがあります。胃腸が弱く下しやすい方は、用量や配合に注意します。
判断ポイント:胃部不快・下痢が出れば調整。冷えが強い虚寒体質
強く冷やす性質のため、冷えが強い虚寒体質(顔色が青白い・下痢しやすい・冷たいものが苦手)では、症状が悪化することがあります。妊娠中も慎重にします。
判断ポイント:冷えが強い方には向かない。安全性と受診の目安
山梔子は冷やす性質が強く、体質により胃部不快・軟便・下痢が出ることがあります。冷えが強い虚寒体質では、症状が悪化することがあります。妊娠中は慎重に用いてください。なお、山梔子を長期・大量に用いた場合に、腸間膜静脈硬化症(腹痛・下痢・便秘などをくり返す)との関連が報告されています。長期連用は避け、腹部症状が続く場合は受診してください。黄疸(皮膚や白目が黄色い)、強い腹痛、血尿などの際は医療機関へご相談ください。
- すぐに相談:黄疸(皮膚や白目が黄色い)、強い腹痛、血尿、高熱、くり返す腹痛・下痢・便秘
- 服薬中:長期連用を避ける。胃部不快・下痢が続く、冷えで悪化する場合は中止し受診する。妊娠中・持病・他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
山梔子が気になる方は、イライラ、不眠、のぼせとの関係も確認すると理解が深まります。
山梔子を含む漢方薬
山梔子は、熱をさばく処方や、のぼせ・いらだちを整える処方に配合されます。同じ山梔子を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 食品の着色料と同じものですか?
基原は同じ、クチナシの果実です。クロシンによる鮮やかな黄色の色素は、飛鳥時代から栗きんとん・たくあんなどの着色に用いられてきました。生薬としては、こもった熱を冷まし、いらだちをしずめる目的で用いられます。
Q. 長期に飲み続けても大丈夫ですか?
山梔子を長期・大量に用いた場合に、腸間膜静脈硬化症(腹痛・下痢・便秘などをくり返す)との関連が報告されています。漫然とした長期連用は避け、腹部症状が続く場合は医療機関にご相談ください。
Q. 性味・帰経は?
性味は苦/寒、帰経は心・肺・肝・三焦とされます。こもった熱を強く冷まし、血の熱をさばいて解毒し、湿熱の黄疸をさばき、いらだちをしずめる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
山梔子は、こもった熱を冷ましいらだちをしずめる生薬ですが、ほてりやいらいら、のぼせの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。黄疸(皮膚や白目が黄色い)、強い腹痛、血尿、高熱などがある場合や、腹痛・下痢・便秘をくり返す場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。冷えが強い虚寒体質では悪化することがあり、妊娠中は慎重に用います。長期連用は避けてください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。