天門冬(てんもんどう)とは?から咳や声枯れ、口の渇き、乾燥便秘に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月10日 監修:堀口和彦
天門冬(てんもんどう)

天門冬(てんもんどう)は、クサスギカズラの根を蒸して乾燥した生薬です。肺の熱をさばく働き(清肺熱)、腎の陰を養う働き(滋腎陰)、うるおいを与え腸を潤す働き(潤燥・滑腸通便)から、から咳・声枯れ・粘った痰、のどや口の渇き、乾燥傾向の便秘などのケアに用いられてきました。よく似た働きをもつ麦門冬とともに「二冬」と呼ばれ、対で用いられることも多い生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「肺と腎を潤し、乾いた咳とうるおい不足を整える生薬」として整理します。

まずは要点
  • 天門冬(てんもんどう)はユリ科(キジカクシ科)クサスギカズラ(Asparagus cochinchinensis (Lour.) Merr.)のコルク化した外層を除いた根を、通例蒸してから乾燥した生薬です*①②
  • 主成分はステロイド(β-シトステロール等)、サポニンなどです*①②
  • 漢方では、肺の熱をさばき(清肺熱)、腎の陰を養い(滋腎陰)、うるおいを与え腸を潤す(潤燥)働きで用いられます*①②③
  • 甘微苦・大寒の性質で潤いが強いため、胃腸が弱く冷えやすい方には慎重に用います

天門冬は麦門冬・地黄など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。長引く咳に血痰や高熱を伴う、著しい体重減少がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

天門冬とは

天門冬(てんもんどう)は、ユリ科(キジカクシ科)クサスギカズラ(Asparagus cochinchinensis (Lour.) Merr.)のコルク化した外層の大部分を除いた根を、通例蒸してから乾燥させた生薬です。『神農本草経』の上品に収載される歴史ある生薬で、「草の茂る様子をモンといい、この草は蔓が茂り、効能が麦門冬と同じであることから天門冬という」と名前の由来が伝えられています。アスパラガスと同属(キジカクシ科クサスギカズラ属)の植物で、日本の海辺にも自生しています。

漢方薬剤師の視点では、天門冬は「滋陰薬(体液・陰を補う生薬)」に分類されます。肺腎の陰虚有熱による労熱咳嗽・燥咳痰粘・喀血、熱病傷陰の舌乾口渇、腎虚内熱の消渇などに適します。また滑腸通便にも働くため、腸燥津枯の大便秘結にも用いられます。麦門冬と比べると配合される処方は多くありませんが、滋陰による強精強壮効果が好まれ、中国では古くから食用としても重要な植物とされてきました。

ポイント:天門冬は「肺と腎を潤し、乾いた咳とうるおい不足を整える」生薬です。から咳・声枯れ・粘った痰、のどや口の渇き、乾燥傾向の便秘が気になるタイプに用いられてきました。麦門冬とともに「二冬」と呼ばれるのが特徴です。

基原・成分データ

天門冬の基本データを整理します。クサスギカズラの根を蒸して用いること、ステロイドなどの成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

天門冬(テンモンドウ)の生薬
天門冬の基礎データ
クサスギカズラの根を蒸して乾燥した生薬。肺と腎を潤し、乾いた咳とうるおい不足を整える働きがあります。
読み テンモンドウ(クサスギカズラの根を用いる生薬)
基原・由来 クサスギカズラ(Asparagus cochinchinensis (Lour.) Merr.)のコルク化した外層を除いた根を、通例蒸したもの *①②
主成分 ステロイド(β-シトステロール等)、サポニン *①②

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。天門冬は、甘く苦く、非常に冷やす性質(大寒)で、肺・腎に働きます。

味(五味)

「甘」は体液を生み潤す味、「苦」は熱をさばく味とされます。肺と腎を潤しながら熱をさばく働きと結びつきます。

性(四気)

「大寒」は非常に冷やす性質で、肺腎にこもった熱と乾燥を、強く潤しながら冷ます方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

肺に働いて乾いた咳を潤し、腎に働いて陰を養い、のどや口の渇き、乾燥便秘に関わります。

漢方的な働きの軸

天門冬の働きは、大きく三つの軸で整理できます。肺の熱をさばく軸、腎の陰を養う軸、うるおいを与え腸を潤す軸が重なり、乾いた咳・のどの渇き・便秘を整えます。

肺の熱をさばく軸 清肺熱 肺にこもった熱をさばいて、から咳・声枯れ・粘った痰、喀血をやわらげる方向に働きます。
腎の陰を養う軸 滋腎陰 腎の陰を養って、熱病後の口渇や、腎虚内熱による消渇をやわらげる方向に働きます。
うるおいを与え腸を潤す軸 潤燥・滑腸通便 体を潤して、腸燥津枯(腸の乾燥)による便秘をやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:天門冬は「肺と腎を潤し、乾いた咳とうるおい不足を整える」生薬です。から咳・声枯れ・粘った痰、のどや口の渇き、乾燥傾向の便秘のタイプに輪郭がはっきりします。麦門冬と対で「二冬」と呼ばれるのが持ち味です。

伝統的な使われ方

天門冬は古くから、清肺熱・滋腎陰・潤燥を目的に用いられてきました。肺腎の陰虚有熱による労熱咳嗽・燥咳痰粘・喀血、熱病傷陰の舌乾口渇、腎虚内熱の消渇、腸燥津枯の大便秘結などのケアに用いられてきた歴史があります。天門冬は肺・腎に入り、麦門冬と同時に使うことで「二冬」と呼ばれ、対で用いられることも多いのが特徴です。

他の滋陰薬と組み合わせて、のどの渇き・虚弱体質の乾いた咳を整える処方(滋陰降火湯)、たんの多く出るせき・気管支炎を整える処方(清肺湯)に配合されます。肺は回復に時間がかかる臓とされるため、根気よく服用することが大切とされています。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

天門冬は、クサスギカズラの根ならではの特徴をもつ生薬です。

紡錘形に肥大した塊根

短い根に紡錘形に肥大した塊根が多数ついています。コルク化した外層を除き、蒸してから乾燥させたものを用います。

甘みと苦みで大寒性

味は甘みと苦みがあり、性質は大寒。肺腎にこもった熱を強く冷ましながら、うるおいを与える方向に働きます。

麦門冬と対で使用

麦門冬と同時に使うことで「二冬」と呼ばれ、他の滋陰薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

天門冬は肺と腎を潤す生薬です。から咳・のどの渇きがあるか、逆に胃腸が弱く冷えやすいタイプでないかを見極めることが大切です。

から咳・声枯れタイプ

から咳・声枯れ・粘った痰がみられるタイプに向きます。天門冬の中心的な使い道です。

判断ポイント:肺陰虚によるから咳。

のど・口の渇きタイプ

熱病後のうるおい不足による口渇のケアに用いられてきました。

判断ポイント:滋腎陰の働き。

乾燥傾向の便秘タイプ

腸燥津枯による便秘には、他の潤腸薬と組み合わせて用います。

判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。
×

胃腸が弱く冷えやすいタイプ

大寒の性質で潤いが強いため、胃腸が弱く冷えやすい方には基本的に不向きです。

判断ポイント:脾胃虚寒には不向き。

安全性と受診の目安

天門冬は処方の中で用いられる滋陰薬ですが、甘微苦・大寒の性質で潤いが強いため、胃腸が弱く冷えやすい方には慎重に用います。長引く咳に血痰や高熱を伴う、著しい体重減少や強い倦怠感が続く場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。

  • すぐに相談:血痰を伴う咳、高熱が続く、著しい体重減少・強い倦怠感
  • 服薬中:胃腸が弱く冷えやすい方、持病や他剤を併用している場合は専門家に相談する
すぐ相談:血痰を伴う咳、高熱が続く、著しい体重減少・強い倦怠感がある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

天門冬が気になる方は、咳・喘息、口の渇き、便秘との関係も確認すると理解が深まります。

天門冬を含む漢方薬

天門冬は、乾いた咳・のどの渇きを整える処方に配合されます。天門冬の肺と腎を潤す働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

よくある質問

Q. 麦門冬との違いは?

どちらも滋陰潤肺の働きをもち「二冬」と呼ばれますが、麦門冬は肺・胃・心に働き養胃生津の力もあわせもつのに対し、天門冬は肺・腎に働き滋腎の力が強く、大寒でより強く潤す性質があるとされ、使い分けられます。

Q. アスパラガスと同じ仲間なのですか?

天門冬の原植物クサスギカズラは、キジカクシ科クサスギカズラ属でアスパラガスと同属の植物です。杉の葉に似た棒状の葉をもち、蔓状に茂ることから「天門冬」の名がつけられたと伝えられています。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

肺腎の陰虚有熱によるから咳・声枯れ・粘った痰、熱病後の口渇、乾燥傾向の便秘のタイプに向きます。胃腸が弱く冷えやすい方には慎重に用います。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

天門冬は、肺と腎を潤し乾いた咳とうるおい不足を整える生薬ですが、咳や渇きの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。血痰を伴う咳、高熱が続く、著しい体重減少がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。胃腸が弱く冷えやすい方は慎重に用い、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。