細辛(さいしん)とは?冷えのかぜ鼻水・薄い痰の咳・頭痛歯痛関節痛に使う生薬を体質別に解説

細辛(さいしん)は、ウマノスズクサ科ウスバサイシンの根・根茎を用いる、舌がしびれるほど辛い生薬です。体表の寒けをさばき、肺を温めて薄い痰・水っぽい鼻水をさばき、風寒と痛みをさばく働き(散寒解表・温肺化飲・祛風止痛)から、冷えを伴うかぜの初期・鼻づまり・水様の鼻水、冷えによる薄い痰の咳、頭痛・歯痛・関節痛のケアに用いられてきました。作用が激しく、用量に注意を要する生薬として古くから知られます。KanpoNowでは、この生薬を「寒けをさばき、肺を温めて水をさばく生薬」として整理します。
- 細辛(さいしん)はウマノスズクサ科ウスバサイシン/ケイリンサイシンの根・根茎を乾燥した生薬で、散寒解表・温肺化飲・祛風止痛のはたらきが知られます。冷えのかぜ・鼻水・薄い痰の咳・頭痛歯痛などに配合されます
- 主成分は精油成分(メチルオイゲノール等)、アサリニンなどです
- 漢方では、体表の寒けをさばき(散寒解表)、肺を温めて薄い痰・水様の鼻水をさばき(温肺化飲)、風寒と痛みをさばく(祛風止痛)働きで用いられます
- 作用が激しく、古来「一銭(約3g)を過ぎるべからず」と用量が戒められてきた生薬です
細辛は作用の激しい生薬で、必ず適切な用量・専門家の指導のもとで用います。気虚で汗が多い方、うるおい不足で乾いて熱をもつ方、痰のない乾いた咳には適しません。妊娠・授乳中や持病・併用薬のある方は専門家に相談してください。
細辛とは
細辛(さいしん)は、ウマノスズクサ科のウスバサイシン(Asiasarum sieboldii)またはケイリンサイシン(Asiasarum heterotropoides var. mandshuricum)の根・根茎を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。ウスバサイシンは山地の日陰に生える多年草です。名の「細辛」は、根が極めて細く、山椒のように辛くて舌をしびれさせるほど烈しいことに由来します。新しく辛味の強いものが良品とされます。『神農本草経』の上品に収載されましたが、古来より「作用の激しい薬物」として、使用量に注意がうながされてきました。
漢方薬剤師の視点では、細辛は代表的な「辛温解表薬・温裏薬」です。体表の寒けをさばき、肺を温めて薄い痰・水っぽい鼻水(水飲)をさばき、風寒と痛みをさばきます。散寒の力は強いものの発汗力は弱いため、解表剤の主薬にはならず、麻黄・附子・桂枝などと組み合わせて用いられます。冷えを伴うかぜの初期・鼻づまり・水様の鼻水、冷えによる薄い痰の咳、頭痛・歯痛・関節痛に向くとされます。麻黄附子細辛湯・小青竜湯の重要な構成生薬です。
基原・成分データ
細辛の基本データを整理します。精油を含むこと、辛温解表薬・温裏薬に分類されること、作用が激しく用量に注意することが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。細辛は、烈しく辛く、温かい性質で、肺・腎に働きます。
「辛」は温めて発散させ、めぐらせる味とされます。烈しい辛味で、寒けをさばき、肺を温めて水をさばき、痛みをさばく働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、冷えて滞った寒けや水(水飲)をあたためながらさばく方向に働きます。
肺を温めて薄い痰・水様の鼻水をさばき、腎を温めて体表の寒けをさばく方向に働きます。冷えのかぜ・鼻水・薄い痰の咳・痛みに関わります。
漢方的な働きの軸
細辛の働きは、大きく三つの軸で整理できます。寒けをさばく軸、肺を温めて水をさばく軸、痛みをさばく軸が重なり、寒と水飲による不調を整えます。
伝統的な使われ方
細辛は古くから、散寒解表・温肺化飲・祛風止痛を目的に用いられてきました。風寒表証の発熱・悪寒・頭痛・身体痛・鼻閉、冷えによる薄い痰の咳・水様の鼻水、頭痛・歯痛、風湿による関節痛・神経痛などのケアに配合された歴史があります。散寒の力は強いものの発汗力は弱いため、麻黄・附子・桂枝などと組み合わせて用いられます。強い止痛の働きを目的に、寒熱いずれの痛みにも配合されることがあります。
麻黄・附子と組み合わせて、冷えの強いかぜの初期・気力の低下をさばく処方(麻黄附子細辛湯)、麻黄・乾姜・五味子などと組み合わせて水様の鼻水・薄い痰の咳・喘鳴をさばく処方(小青竜湯・苓甘姜味辛夏仁湯)、当帰・呉茱萸などと組み合わせて手足の冷え・冷えの頭痛をさばく処方(当帰四逆加呉茱萸生姜湯)、升麻などと組み合わせて歯痛をやわらげる処方(立効散)、独活などと組み合わせて関節痛をさばく処方(独活寄生湯)に配合されます。
形状・味・使われ方の体感
細辛は、見た目・香り・味に強い特徴があります。細い根が生薬になります。
極めて細い根
極めて細い根が集まった生薬。外面は淡褐色、内部は白色。根が細く辛いことが名の由来で、細く新しく辛味の強いものが良品とされます。
強い特有の芳香
特有の強い芳香があります。この精油成分の香りが、寒けをさばき、肺を温めて水をさばく働きの中心です。
舌がしびれる烈しい辛味
山椒のように烈しく辛く、舌をしびれさせるほどです。「飲むと本当にピリピリした」と言われるほどで、この辛味が働きの中心です。作用が激しいため用量に注意します。
体質別の向き・不向き
細辛は作用の激しい、温めてさばく生薬です。冷えや水飲があるか、逆にうるおい不足や気虚がないかを慎重に見極めることが大切です。
冷えのかぜ・水様の鼻水・薄い痰の咳
冷えを伴うかぜの初期、水っぽい鼻水・鼻づまり、冷えによる薄い痰の咳が出るタイプに向きます。細辛の中心的な使い道です。
判断ポイント:冷えて水っぽい鼻水・薄い痰。冷えの頭痛・歯痛・関節痛
冷えによる頭痛・歯痛、風湿による関節痛・神経痛のケアに用いられてきました。強い止痛の働きで、冷えの痛みに候補になります。
判断ポイント:冷えると強まる頭痛・歯痛・関節痛。用量に厳重な注意が必要
作用が激しく、古来「一銭(約3g)を過ぎるべからず」と戒められてきました。必ず適切な用量・専門家の指導のもとで用い、自己判断での過量は避けます。
判断ポイント:必ず適量・専門家の指導で。気虚多汗・うるおい不足・乾いた咳
烈しく発散させる性質のため、気虚で汗が多い方、うるおい不足で乾いて熱をもつ方、痰のない乾いた咳には適しません(禁忌とされます)。
判断ポイント:多汗・乾き・乾いた咳には使わない。安全性と受診の目安
細辛は作用の激しい生薬で、古来より使用量が厳しく戒められてきました。必ず適切な用量・専門家の指導のもとで用い、自己判断での過量・長期連用は避けてください。気虚で汗が多い方、うるおい不足で乾いて熱をもつ方、痰のない乾いた咳には適しません。強い動悸・のぼせ・息苦しさ、高熱や強い痛みが続く場合は、別の原因の確認が必要です。妊娠・授乳中や持病・併用薬のある方は専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い動悸・のぼせ・息苦しさ、高熱や激しい痛みが続く、しびれや悪心
- 服薬中:用法・用量を必ず守る。妊娠・授乳中、持病や他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
細辛が気になる方は、咳・喘息、冷え、頭痛との関係も確認すると理解が深まります。
細辛を含む漢方薬
細辛は、冷えの咳・鼻水を整える処方や、冷えのかぜ・痛みをさばく処方に配合されます。同じ細辛を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 辛夷(しんい)との違いは?
どちらも鼻症状に使いますが、細辛は散寒解表・止痛寄りで、悪寒を伴うかぜの初期や冷えの咳に向きます。辛夷は通鼻の主薬として、慢性副鼻腔炎や花粉症の鼻づまり・鼻汁に比重があります。併用される処方もあります。
Q. なぜ用量に注意が必要なのですか?
細辛は作用が激しく、古来「一銭(約3g)を過ぎるべからず」と戒められてきました。過量では気のめぐりを乱すおそれがあるため、必ず適切な用量・専門家の指導のもとで用います。なお、葉には腎障害を起こすアリストロキア酸が含まれるため、日本薬局方は根・根茎を規定しています。
Q. 性味・帰経は?
性味は辛/温、帰経は肺・腎とされます。体表の寒けをさばき、肺を温めて薄い痰・水様の鼻水をさばき、風寒と痛みをさばく働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
細辛は、寒けをさばき肺を温めて水をさばく生薬ですが、冷えのかぜや咳、痛みの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。細辛は作用の激しい生薬です。必ず適切な用量・専門家の指導のもとでお使いください。強い動悸・のぼせ・息苦しさ、高熱や激しい痛みが続く、しびれや悪心などがある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。