龍骨(りゅうこつ)とは?不安・動悸や不眠、寝汗・遺精・夜尿に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月13日 監修:堀口和彦
龍骨(りゅうこつ)

龍骨(りゅうこつ)は、大型哺乳動物の化石化した骨を粉砕した生薬です。精神を安定させる働き(安神)や、体液の漏出を防ぐ働き(収斂固渋)から、不安・動悸・不眠、寝汗・自汗、遺精・夜尿などのケアに用いられてきました。牡蛎と併用されることの多い、動物性化石の重鎮安神薬です。KanpoNowでは、この生薬を「心を鎮め、体液の漏れを防ぐ生薬」として整理します。

まずは要点
  • 龍骨(りゅうこつ)は哺乳類などの化石化した骨の化石(骨格化石)で、日本薬局方に規定されています*①②
  • 主成分は炭酸カルシウム(CaCO3)を主とし、リン酸カルシウムなどを含みます*②③
  • 漢方では、精神を安定させ(安神)、体液の漏出を防ぐ(収斂固渋)働きで用いられます*①②③
  • 便秘や腹部膨満を招くことがあり、長期・多量は避けます。腎機能低下や結石の既往がある場合は専門家に相談します

龍骨は牡蛎・桂枝・柴胡など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。胸痛や失神、強い不安発作、高熱や意識障害がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

龍骨とは

龍骨(りゅうこつ)は、古代象・三趾馬・化石鹿など多くの新生代の化石哺乳動物の遺骸が長く地層中に埋没し、骨格・牙・歯・角などの粗鬆質に変化した化石を粉砕した生薬です。『神農本草経』の上品に収載される歴史ある生薬で、「龍の骨」とはいえ龍は想像上の動物であり、実際には陝西省延安など特定地域から出土する大型哺乳動物の化石が用いられます。日本薬局方にも規定され、一般には牡蛎とともに用いられます。

漢方薬剤師の視点では、龍骨は「重鎮安神薬(重みのある鉱物・化石様生薬で精神を鎮める生薬)」に分類されます。心神不安による不眠・動悸・いらいら、体液の漏出傾向(寝汗・自汗・遺精・夜尿・多汗)などに対して用いられてきました。牡蛎と併用して収斂固渋を強め、桂枝・柴胡などと配合して気血の偏りを調えます(桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など)。

ポイント:龍骨は「心を鎮め、体液の漏れを防ぐ」生薬です。不安・動悸・不眠、寝汗・自汗、遺精・夜尿が気になるタイプに用いられてきました。牡蛎と併用されることの多い動物性化石の生薬なのが特徴です。

基原・成分データ

龍骨の基本データを整理します。大型哺乳動物の化石化した骨を用いること、炭酸カルシウムを主成分とすることが、用いられ方を理解する鍵になります。

龍骨(リュウコツ)の生薬
龍骨の基礎データ
大型哺乳動物の化石化した骨を粉砕した生薬。心を鎮め、体液の漏れを防ぐ働きがあります。
読み リュウコツ(大型哺乳動物の化石化した骨を用いる生薬)
基原・由来 哺乳類などの化石化した骨の化石(骨格化石) *①②
主成分 炭酸カルシウム(CaCO3)を主とし、リン酸カルシウム等を含む *②③

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。龍骨は、甘く渋く、偏りのない性質(平)で、心・肝・腎に働きます。

味(五味)

「甘」は補い養う味、「渋」は収斂し漏出を防ぐ味とされます。心を鎮め、体液の漏れを防ぐ働きと結びつきます。

性(四気)

「平」は偏りのない性質で、体を過度に温めたり冷やしたりせず、おだやかに精神を鎮める方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

心に働いて不安・動悸・不眠を、肝・腎に働いて体液の漏出傾向に関わります。

漢方的な働きの軸

龍骨の働きは、大きく二つの軸で整理できます。精神を安定させる軸、体液の漏出を防ぐ軸が重なり、不安・不眠・寝汗・遺精を整えます。

精神を安定させる軸 安神 重みのある性質で心を鎮めて、不安・動悸・不眠・いらいらをやわらげる方向に働きます。
体液の漏出を防ぐ軸 収斂固渋 体液の漏出を防いで、寝汗・自汗、遺精・夜尿・多汗をやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:龍骨は「心を鎮め、体液の漏れを防ぐ」生薬です。不安・動悸・不眠、寝汗・自汗、遺精・夜尿のタイプに輪郭がはっきりします。牡蛎と併用されることの多い動物性化石の生薬なのが持ち味です。

伝統的な使われ方

龍骨は古くから、安神・収斂固渋を目的に用いられてきました。心神不安による不眠・動悸・いらいら、体液の漏出傾向(寝汗・自汗・遺精・夜尿・多汗)などのケアに用いられてきた歴史があります。龍骨は心・肝・腎に入り、牡蛎と併用して収斂固渋を強め、桂枝・柴胡などと配合して気血の偏りを調えるのが特徴です。

牡蛎と組み合わせて、不眠・神経過敏・夜尿を整える処方(桂枝加竜骨牡蛎湯)、柴胡・半夏などと組み合わせて不眠・不安・動悸を整える処方(柴胡加竜骨牡蛎湯)に配合されます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

龍骨は、化石化した骨ならではの特徴をもつ生薬です。

化石化した骨の粉砕物

白地に錦紋様のあるもの、舐めると舌に粘りつくものが良品とされます。古代の大型哺乳動物の骨格・牙・歯・角などが化石化したものを用います。

甘み・渋みで平性

味は甘み・渋みが中心で、性質は平性。体を過度に温めたり冷やしたりせず、おだやかに精神を鎮める方向に働きます。

牡蛎と組み合わせて使用

牡蛎と組み合わせて安神の働きを強めるほか、桂枝・柴胡など他の生薬とも組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

龍骨は心を鎮め体液の漏れを防ぐ生薬です。不安・不眠・体液の漏出傾向があるか、逆に腎機能低下や結石の既往でないかを見極めることが大切です。

不安・不眠・動悸タイプ

心神不安による不安・動悸・不眠がみられるタイプに向きます。龍骨の中心的な使い道です。

判断ポイント:心神不安による不眠・動悸。

寝汗・遺精・夜尿タイプ

寝汗・自汗、遺精・夜尿のケアに用いられてきました。

判断ポイント:収斂固渋の働き。

牡蛎と併用するタイプ

牡蛎と併用して収斂固渋を強める使い方が一般的です。

判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。
×

腎機能低下・結石既往のタイプ

便秘や腹部膨満を招くことがあり、長期・多量は避けます。腎機能低下や結石の既往がある場合は専門家に相談してください。

判断ポイント:腎機能低下・結石既往は要相談。

安全性と受診の目安

龍骨は処方の中で用いられる重鎮安神薬ですが、便秘・腹部膨満・食欲不振などが出ることがあります。腎機能低下や結石の既往がある場合は専門家に相談してください。動悸・息切れが強い、不眠が長引く、血尿や背部痛など尿路症状がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。

  • すぐに相談:胸痛や失神、強い不安発作、高熱や意識障害、激しい背部痛や血尿
  • 服薬中:持病や他剤を併用している場合は自己判断での継続・中止を避け、専門家へ相談する
すぐ相談:胸痛や失神、強い不安発作、高熱や意識障害、激しい背部痛や血尿がある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

龍骨が気になる方は、不眠、動悸との関係も確認すると理解が深まります。

龍骨を含む漢方薬

龍骨は、不安・不眠・動悸を整える処方に配合されます。龍骨の心を鎮め体液の漏れを防ぐ働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

よくある質問

Q. 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)との違い・使い分けは?

桂枝加竜骨牡蛎湯は不眠・動悸・神経過敏・遺精などを目標に、桂枝・芍薬に竜骨・牡蛎を加えた構成です。単味の龍骨は収斂・安神が中心で、方剤全体で気血の偏りを整えます。

Q. 「龍」の骨とはどういう意味ですか?

「龍」は9種の動物に似た点(駝の頭、鹿の角、鬼の眼、牛の耳、蛇の項、蜃の腹、鯉の鱗、虎の掌、鷹の爪)を備えるとされる、四霊のひとつの想像上の動物です。実際には古代の大型哺乳動物(象・三趾馬・化石鹿など)の化石化した骨格が生薬として用いられます。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

不安・不眠・動悸や、寝汗・自汗・遺精・夜尿などの「漏れ」やすい傾向に向きます。体質に応じて牡蛎や桂枝・柴胡などと組み合わせます。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

龍骨は、心を鎮め体液の漏れを防ぐ生薬ですが、不安・不眠や動悸の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。胸痛や失神、強い不安発作がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。腎機能低下や結石の既往がある方は事前に相談し、症状が長引く・悪化する場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。